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ITの視点から 日本の医療を問い直す

日医総研委託研究員 岡田武夫

Information and communication is not technical matter but political issue.

「欧州の電子カルテ オランダ・スコットランド編」より

情報

 一般には、森鴎外がクラウゼビッツの戦争 論を訳出するときに「 nachricht 」の訳語とし て使ったのが最初、と言われている。  明治最初期のフランス陸軍の歩兵の演習 軌典の訳書に「情報」という言葉があると いう。  「敵情報告」を省略して「情報」にした? 2001/5/19

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2001/5/19 information inform form

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データ(

data

) 数字・文字の羅列 1通のメール 情報(

information

) データ・アーカイブ メーリングリスト 知識(

intelligence

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2001/5/19

2001/5/19

医療行為とは?

 Data の収集 – 診察・検査 …  Information の形成 – 診断・評価  Intelligence の使用 – 治療方針の決定・評価

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2001/5/19

医療行為とは?

 Data の収集 – 根性の問題  Information の形成 – 根性と知恵  Intelligence – 知恵  治療行為 – 根性

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EBMとは?

 信頼できる証拠( Evidence )を一人ひとりの 医師が自分の目で判断する – – 証拠を批判的に吟味する 科学者としての基本的な能力  患者の価値観や希望を十分に聞き取る – コミュニケーション能力  証拠と患者の価値観や希望を基に「理に かなった診療」を行う 2001/5/19

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2001/5/19

情報化 検索できる形で データの集合体を 蓄積する

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2001/5/19 データ GOT 20,GPT 22,γGTP 90 1997/05/08 1999/05/17 2000/06/01 2001/05/18 GOT 18 22 19 20 GPT 21 20 25 22 γGTP 48 66 78 90 知識

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商売人の視点から 日本の医療を問い直す

2001/5/19

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お客様は神様です

 現金を持っているヤツが一番強い。  お客様にお金を払ってもらわないと、生活 が成り立たない。  お金を払うかどうかはお客様の都合。  お金を払ってもらうために、お客様とこびへ つらう必要がある。  それ以外に方法はないのか? 2001/5/19

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医療の世界のお金の流れ

 国民皆保険である – ほとんどの医療費は、医療保険にまつわるも のである  保険料負担と自己負担 2001/5/19

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医療費の割合(経費)

経費 50.3% 25.2% 24.5% 人件費 材料費 その他 2001/5/19 0% 20% 40% 60%

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80% 100%

制度

制度別の医療費

33.3% 4.8%13.7% 政管健保 組合健保 船員保険 共済組合 国保 労災他 老人保健給付分 公費負担医療給付 患者負担 0% 2001/5/19 20% 40% 60% 80% 100%

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医療費の負担割合

負担 24.4% 7.8% 54.0% 13.8% 国庫負担 地方負担 保険料 患者負担など 0% 2001/5/19 20% 40% 60%

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80% 100%

お金を持っているヤツが 一番偉い

 誰が誰にお金を払うのか? 国民 患者 保険者 医療機関

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2001/5/19

交渉を行うときの鉄則

 誰が誰に影響力を持っているか? – 現物を持っているものが強い  お金は借りた人のもの  モノは借りた人のもの  近攻遠交 2001/5/19

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医療機関の味方は?

 お金の流れから見ると「一般国民」  「患者」は「一般国民の代表」であるが、マ イナーな勢力に過ぎない。  病院へ来ない人にどうアピールするか? 2001/5/19

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組織外に情報を流すメリット

 組織外の人も組織内の人も同じ「人間」で ある。  組織外の人は、潜在的な応援団である。  組織内にいる人は、組織外の情報(善意 の第三者)をより信頼する傾向がある。 – これらをフルに利用したのが「小泉首相」 2001/5/19

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本当に出来高払い?

 本来の出来高払いは、青天井のはず。  医療保険の保険料は、給与所得などで決 定される。  公費投入部分は国や自治体の裁量。  すなわち、医療費の総枠は、国民所得や 財政によって決定される。  実質的な「総枠予算制」 2001/5/19

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本当に出来高払い?(2)

 「出来高払い」=「医療機関の言い値が通る 世界」  すべての医療機関、すべての保険者が、基 本的に同一の点数表を使っているというの は不思議。  「出来高払い」ならば、複数の点数表があっ ても良いのでは? 2001/5/19

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フリー・アクセス

 大病院志向 – ワンストップサービス  コンビニとショッピングセンター・専門店の 使い分け – コンビニは、身の回りのモノ・緊急避難 – – ショッピングセンターは、まとめ買いの出来る 日用品 専門店は、趣味のモノ、とっておきのモノ 2001/5/19

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昔は?

 個人商店は、事実上、年中無休・24時間 営業だった。  事実上、今のコンビニと同じ機能を果たし ていた。  現在のコンビニの多くは、元をただせば個 人商店 2001/5/19

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機能分化=点数表の分化

営利企業の目的

 利潤を産み 続ける こと  「続ける」ためには何が必要か? – 信頼性の確保 – 徹底したリスクマネジメント – 徹底したリスクコントロール  航空会社の多くは「営利企業」 2001/5/19

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営利と非営利

 「非営利」の意味は果実の「非分配」である  営利企業は、株主(出資者)のものである。  営利企業は株主に果実を配当するために 利益を追求する。  非営利事業の基本条件は、出資者に経済 的な果実を分配しないことであって、利益 や内部留保を生まないことではない。 2001/5/19

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NPOの経営とガバナンス

 株式会社の場合 – 株主総会・取締役(会)・監査役・監査法人 – 開示すべき情報の明示  NPOの場合 – 民法上は、理事以外の規定は曖昧。 – ガバナンス・外部監査・情報開示の面で、株式 会社と同様な体制を整える必要がある。 2001/5/19

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医療機関はNPO でなければならない

 医療は公益事業である。  民間が積極的に公益を担う必要がある。 – サービスには民間の自由な発想が必要。 2001/5/19

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医療費の負担割合

負担 24.4% 7.8% 54.0% 13.8% 国庫負担 地方負担 保険料 患者負担など 0% 2001/5/19 20% 40% 60%

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80% 100%

医療機関はNPO でなければならない

 特定の個人・法人に果実が分配されてはならな い。  果実の分配は、税や公益事業への寄付・出資な どで行われる必要がある。  出資者・寄付者に対しては、寄付税制の拡充な どで報いる必要がある。  ガバナンス体制の確立・第三者による監査・情報 開示は、社会的認知を得るために必須。 2001/5/19

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医師会はNPOである

 特定の個人・法人に果実が分配されてはならな い。  果実の分配は、税や公益事業への寄付・出資な どで行われる必要がある。  出資者・寄付者に対しては、寄付税制の拡充な どで報いる必要がある。  ガバナンス体制の確立・第三者による監査・情報 開示は、社会的認知を得るために必須。 2001/5/19

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日医総研はNPO である必要はない

 特定の個人・法人である医師会員・医師会 だけに果実が分配されるべきである。  医師や医師会は、分配された果実で公益 事業をより効果的に行い、社会に対して果 実を還元できる。  ガバナンス体制の確立・第三者による監 査・情報開示は、社会的認知を得るために 必須。 2001/5/19

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診療録とは何か?

 「カルテ」をどう書くべきか?  記載方法 POMRを日医も推奨  POMRは紙媒体では面倒くさい  なぜなら、POMRは「電子カルテ」を前提 にした方式だから。 – Problem list を Master Table とする Database 2001/5/19

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診療と情報

 診療を行うために必要な情報 – 医学的な情報 – 社会・経済的情報  診療の結果生じた情報 – 診察所見・検査所見・投薬内容 …  円滑な医療者・患者関係を作るために必 要な情報 2001/5/19

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診療録に何を書くのか?

 患者の主訴  各種の計測値 – 身長・体重・体温・血圧・脈拍・ …  オーダー情報・指示 – 検査の指示・処方・ …  アセスメント – 客観的・主観的 2001/5/19

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書かなくても良いのでは?

 個人の趣味・性癖  その他、プライバシーに直接関わる情報 – 家族構成 – 自宅での生活状況 2001/5/19

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紙のメリット・デメリット

 一覧性  必要なところを強調する、不必要なところを 隠す、と言ったことが出来ない  強調や隠蔽が事実を歪める可能性は否定 できない 2001/5/19

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紙のデメリット

 一度に一ヶ所にしか存在できない – 真正性を主張する場合は有利  多人数による共同作業には不向き  多人数が情報を共有するためには、場所 や時間を共有する必要がある。 2001/5/19

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電子カルテを使った医療

 コンピュータ=石頭計算機 – 融通が利かない点をどう活用するか?  医療のワークフローの徹底的な見直し – 従来通りのやり方を踏襲する必要はない。 – 電子カルテは、紙カルテの代替物ではない。 2001/5/19

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工程管理・品質管理

 最低レベルの引き上げ – つまらない見落としの排除 – 頼れるアドバイザが必要  セーフティネットの確立  ベテランにはベテランらしい医療を  初心者にはベテランの知恵を 2001/5/19

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航空機の運航

 定期航空会社は、スケジュール通りに航 空機を飛ばす。  気象データの入手経路 – – – – – 気象庁のデータ(天気図) 飛行場や気象観測施設のデータ 飛行場の気象レーダ 気象衛星 パイロットレポート 2001/5/19

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航空機の運航2

 ディスパッチャー – フライトプランの作成  パイロット – 実際に航空機を運航する  ディスパッチャーとパイロットの意見が一致 しない場合、航空機は出発できない。 2001/5/19

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ブリーフィング

 ディスパッチ・ブリーフィング – コックピットクルーとディスパッチャー  キャビン・ブリーフィング – キャビンクルー  合同ブリーフィング – コックピットクルーとキャビンクルー  デ・ブリーフィング 2001/5/19

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電子カルテの必要性

 アシスタントとしてのコンピュータ – 備忘録・注意喚起・参考書 – ログブック(業務日誌)  診療の工程管理 – 見落としの排除 – Negative data の重要性  本当になかったのか?  見落としただけなのか? 2001/5/19

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現在の医療の欠陥?

 「実施」の確認の欠如  医師は指示するだけでよいのか? – 実施状況の確認 – 実施後の変化の確認  医師の業務とは何か?  権限と権限委譲のルール – – 看護婦の業務は? 薬剤師の業務は? コメディカルの業務は? 2001/5/19

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電子カルテの役割

 状況の監視と確認 – その場にいる必要がない  委譲した権限の管理ツール 2001/5/19

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IT

にはお金がかかる

 コンビニエンスストアは、なぜ値引きをしな いのか?  情報インフラと配送システムの維持管理に かかる莫大な経費  他品種少量展開・個別配送の宿命か? 2001/5/19

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医療の情報化の 経費を誰が払うのか?

 社会サービスの一環としての医療を支える システム  医療機関が連携するためのシステム  他と差別化するためのシステム 2001/5/19

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ORCA(仮称)とは?

 医療機関にネットワークを  医療機関(特に診療所)にとってメリットの あるシステムは何か?  レセコンを使わない医療機関は無かろう – レセコンの費用の問題  ネットワークを介してサポートするタイプの レセコンを開発 2001/5/19

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ORCA

(仮称)のめざすもの

 情報システムにおける主導権の確保 – システムを作ることが目的ではない – 実例を示すためにシステムを作る  医療機関間の情報交換の促進 – 実のある病診連携・診診連携をするために – 交換方法の提案 – データの共有や二次利用はその先にある話 2001/5/19

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ORCA

(仮称)の究極の目的?

 ORCA が不要となること  医師主導で円滑な情報交換を可能とする システムが存在していればよい  そう言うシステムが、複数存在していれば なお良い  ORCA がその一つである必要はない 2001/5/19

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