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聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
救命救急センター
野村 悠
Back ground
Severe sepsisとseptic shock
ICUでの死亡や合併症の原因となる
論文ではseptic shockの院内死亡率25-70%
the Surviving Sepsis Campaign in 2004 and 2008
EDからICUにおけるケアの適切な要素を合わせたバンドルを促
進→蘇生バンドルと維持バンドル
バンドルケアによる標準化
基礎的臨床レベルを共有化
→医師同士のばらつきを減らす
→医師個人の内にあるばらつきを減らす
バンドルケアの要素は臨床的に妥当か評価される
Back ground
SSCG実施における苦悩
個々のバンドル要素と効果の関連が不明
特に、
早期バンドルで重症度軽減に至るのか
早期バンドルで以後のバンドルが不要にできるのか
が明確でない
本研究の目的
(1)septic shockバンドルを導入実行する
(2)死亡率の変化
(3)死亡率予測因子となる個別バンドルを見つける
仮説
・バンドル順守は低死亡率に関連する
・早期蘇生バンドルで重症化を減らし、以後のバンドルを不
要にする
これらは先行論文要旨で報告されている
( Acad Emerg Med 2010;17:S130 )
( Am J Respir Crit Care Med 2012;185:A1142 )
METHODS -Study Design観察研究
多施設研究
11病院から18のICU(ユタ州とアイダホ州)
対象者
EDからICUへ直接入院したsever sepsisとseptic shockの患者
期間:2004年1月1日~2010年12月31日
(1)ベースラインとバンドルの発展時期(第1期)
2004年1月1日~2004年12月31日(1年間)
(2)実施時期(第2期)
2005年1月1日~2007年12月31日(3年間)
(3)追跡時期(第3期)
2008年1月1日~2010年12月31日(3年間)
METHODS -Study Design1. ベースラインとバンドルの発展時期
2004年1月1日~2004年12月31日(1年間)
・バンドル要素と適正を明らかにする
・データ収集の調整
2. 実施時期
2005年1月1日~2007年12月31日(3年間)
・バンドルの要素とその意味に関する広範囲への教育
3. 追跡時期
2008年1月1日~2010年12月31日(3年間)
・インターマウンテンヘルスケアが組織的にバンドルを
従わせた時期
METHODS –Data Collection and Definition対象患者
EDからICUへの直接入院もしくは手術室経由
〈除外〉
・直接ICUへ入院しなかった患者(他病棟入院)
・18歳以下
バンドルデザイン
EDからICUにかけての蘇生治療向けに作られた
(他部署では対応できないseptic shockを対象)
METHODS –Data Collection and Definitionデータ判定
・訓練されたコーディネーターが記録を確認
・sepsisのクライテリアを満たすか判定
Severe sepsis:
・sever sepsisかseptic shockに分類
sepsis +
コーディネーターのreview
個々が使用したバンドル要素
医師との直接対話
電子記録の確認など
臓器障害もしくは乳酸2mmol/L以上
Septic shock:
sever sepsis +
輸液蘇生に反応しない低血圧
もしくは乳酸4mmol/L以上
患者情報
年齢、性別、人種、民族、sepsisの重症度、APS、CCIS、院内
死亡率
METHODS –Data Collection and Definitionバンドル要素の分類
7つの蘇生バンドル+4つの維持バンドル
7つの蘇生バンドル
最初の3要素:
重症度に関係なく適用(入院3時間以内に達成)
次の4要素(入院6時間以内に達成)
要素4ー11を後期(later)バンドルと評価
重症度が決まってからの対応
→後期バンドル不適応例と死亡率との関係検証
Severe Sepsis and Septic Shock Management Bundle Elements by Bundle Type
蘇生バンドル
1. 乳酸測定(ED到着3時間以内)
2. 抗菌薬投与前の血培採取(ED到着3時間以内)
3. 広域抗菌薬投与(ED到着3時間以内)
later bundle
4. 低血圧か乳酸高値なら輸液蘇生(20-40 mL/kg crystalloid)
(SBP≦90かMAP≦65、乳酸≧4mmol/L)
5. 輸液蘇生後に低血圧なら血管収縮薬投与
6. 敗血症性ショックか乳酸高値ならCVPとScvO2を定期測定
(目標CVP ≥8 cm H2O、ScvO2 ≥70% )
7. CVP ≥8 cm H2OかつScvO2 <70%で強心薬投与
(Ht<30%なら赤血球輸血も投与)
Severe Sepsis and Septic Shock Management Bundle Elements by Bundle Type
維持バンドル
8. 平均血糖≤180 mg/dL(入院12~24時間)
9. 十分な輸液後(CVP≥8 cm H2O)に血管収縮薬1種以上もしく
は単剤で通常量を超える場合、グルココルチコイド投与
10. 院内ガイドラインに沿ってDrotrecogin alfa(遺伝子組換え型
ヒト活性化プロテインC)適応を考慮
11. 人工呼吸器を使用する場合は肺保護戦略を行う
(一回換気量 6mL/kgにとどめる)
METHODS –Data Collection and Definitionバンドル要素適応順守の分類
要素1-3および8(血糖値):
「適応かつ順守」か「適応かつ非順守」
要素4-7および9-11:
「適応かつ順守」、「適応かつ非順守」、「不適応」
バンドル順守は全か無かで決定(入院24時間時点)
一要素も行っていないものは非順守
単一要素の順守は「適応かつ順守」か「不適応」例でみられた
RESULTS-figure1-
患者情報 –table1-
患者背景、APS、CCIS、Sepsisの重症度を表示
死亡ー生存で比較すると、
年齢
APS
CCIS
sepsis重症度 で差あり
初期乳酸値、初期収縮期血圧、ED滞在時間
→2004年から2010年にかけて変化なし
(データ提示なし)
観察期間中の死亡率 12.1%
septic shock患者の死亡率 17.0%
sever sepsis患者の死亡率 8.9%
RESULTS-figure2A.バンドル順守率と死亡率
バンドル順守率(all-or-none)向上(+68.5)
4.9%(2004年)→73.4%(2010年)
相対的死亡率は低下(-59.0)
21.2%(2004年)→8.7%(2010年)
蘇生バンドルと維持バンドルも同様に死亡率を改善
(データ提示なし)
B.Septic shockに限定
バンドル順守率
7.0%(2004年)→60.0%(2010年)
死亡率
19.9%(2004年)→12.2%(2010年)
RESULTS
非順守群の死亡率も低下(表E5?)
21.7%(2004年)→9.7%(2010年)
付随して非順守バンドル数も減少
4項目(2004年)
→2項目(2005ー2007)
→1項目(2008ー2010)
RESULTS-table2APS、CCISで調整後の結果
年齢、sepsisの重症度、多くのバンドル要素
→死亡率と関連あり
多変量モデルの結果
年齢および次のバンドル順守
→APS、CCIS調整後の死亡率改善と関連あり
強心薬と赤血球輸血
ステロイド投与
肺保護戦略の順守
RESULTS
グルココルチコイド、乳酸、輸液蘇生
→sepsisの病型(shockかseverか)とは相互関係なし
(データ提示なし)
18名のみが手術室経由でICU入室した
→2名が死亡(P=0.89、直接ICU入院と比較)
RESULTS-tableE6後期バンドル不適応の割合は年ごとに増加
RESULTS
要素8の血糖コントロール
定義的に、すべての例で必要と考えられた
蘇生バンドルの順守(年齢、APS、CCISの調整後)
→強心薬と赤血球輸血、ステロイド投与、肺保護戦略の不適
応となるオッズ比を高めた
不適応予測
・乳酸測定順守(p<0.001)
・血培採取順守(p<0.0001)
・抗菌薬投与順守(p<0.01)
RESULTS
2084例でpropensity score analysis
1042例ー最初の3要素を非順守
1042例ー最初の3要素を順守
→同様の結果
最初の3要素を順守
不適応予測
強心薬と輸血(OR, 1.40; 95% CI, 1.10–1.79)
ステロイド(OR, 1.30; 95% CI, 1.06–1.60)
肺保護戦略(OR, 1.48; 95% CI, 1.14–1.91)
RESULTS
後期バンドルの内の3要素
強心薬と輸血
ステロイド
肺保護戦略
は、「適応かつ順守」群と「適応かつ非順守」群とで死亡率が
変わらない
3要素のどれも「不適応」では適応群より死亡率が低い
DISCUSSION
今回の結果
多施設でバンドルを発展、導入したところ、
・バンドル順守率は68.5%向上した
・院内死亡率は相対的に59%減少した
蘇生バンドルの最初の3要素を順守すると、
・以下のバンドル不適応の予測ができる
・強心薬と輸血、ステロイド、肺保護戦略
これは、24時間で早期バンドルが実施されるような重症疾患
の進行率低下と矛盾しない
DISCUSSION
今回の研究は先行研究と比較して4つの長所
DISCUSSION
1:先行研究と比較して死亡率が大きく減少
・長年にわたる施設の取り組みが関係しているかもしれない
(practiceの内容、sepsisオーダーセット、sepsisの早期認識など)
・対象患者間の数値(APSやCCIS)では示せない違いを反映して
いるかもしれない
・バンドル順守率が先行研究より高い
・バンドル順守にはEDとICUとの強い連携が必要
DISCUSSION
2:先行研究の結果を立証した
より小規模なブラジルの1施設での研究
septic shockバンドル導入により、
ステロイドと肺保護戦略の順守率向上は死亡率を改善した
( PLoS ONE 2011;6:e26790. )
DISCUSSION
3:生存率改善のための3要素がわかった
(1)強心薬と赤血球輸血
EGDTの一部
RCT中にずっと最大酸素供給は保てるわけでない
(2)グルココルチコイド投与
本研究は興味深い結果
安全性や利益については議論が残る
(3)肺保護戦略
ARDSの生存率を改善させる
sepsisには肺障害がよく合併するが特異的治療はない
DISCUSSION
4:なぜ後期バンドルが死亡率に関連するか調査
先行研究は後期バンドル不適応の影響を述べていない
・本研究の重症度が年月をかけて下がったから?
→本研究では示せない
・早期バンドル順守が重症化に有効だから?
→二つの観察研究が支持
→前向き試験が必要
DISCUSSION -Limitation1:大きな後ろ向きコホートである
→無意識に選択バイアス、測定バイアスが存在
第2期から第3期にかけての対象数増加
(1)sever sepsis患者の自然増
(2)sepsisの同定を強く意識
(3)病院開設でICU増床
コーディネーターの取り扱い人数増による選択バイアス
第1期でsepsis重症度の抜けが多い測定バイアス
DISCUSSION -Limitation2:時間経過に伴う変化が除外できない(重症度など)
APSは2期から3期にかけて増加したが死亡率は低下した
入院直後から早期蘇生バンドルを開始することで引き続く重症
化が抑えられたのではないか
(APSは入院24時間で最低値を集計する)
DISCUSSION -Limitation3:死亡率が低い理由
先行研究より軽症を扱っていた可能性
4つの理由が考えられる
(1)転院症例は除外した
(2)本ICUのコホートベースラインは他より軽症
(3)院内やICU滞在中に発症したsepsisを除外
(4)手術室経由は18例しかない
DISCUSSION -Limitation4:人種のバランス
今回の所見の妥当性は限定的かもしれない
5:非順守群の死亡率減少が順守群の死亡率
減少を反映しているかもしれない
→総バンドル順守だけが死亡率減少の主因ではないのかも
しれない
結語
EDからICUへ直接入院したseptic shock例
・バンドル順守が生存率上昇に関連している
・酸素供給増、グルココルチコイド、肺保護戦略は死亡率低
下に関連している
・早期蘇生バンドル順守はそれ以後のバンドルが必要となる
可能性を下げる
Severe sepsisやseptic shockにバンドルケアを
行うことは有用と考えられた