2015年4月21日(高松由佳)(2.4MB)

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Landesberg G et al . Crit Care Med 2014;42:790-800.
聖マリアンナ医科大学病院
2015/4/21 高松由佳
背景
 Non-ACSにおいてトロポニン(TnT)値が重要な死亡予測因子である理由
については不明確であった
Ex)SepsisにおけるTnT値上昇との関連
 SepsisでTnT値が上昇する仮説: 炎症反応物質や治療に伴う心毒性、
volume overloadからの心筋壁へのストレス、腎機能障害など。
Babuin L, Jaffe AS. Troponin: The biomarker of choice for the detection of
cardiac injury. CMAJ. 2005;173:1191–1202
 収縮不全に比し、左室拡張不全がSevere sepsis, septic shockにおける
死亡率とより関連している。
→3Dエコーによる心室腔測定やストレイン、ストレインレートを使用
Landesberg G, Gilon D, Meroz Y, et al. Diastolic dysfunction and mortality in severe sepsis
and septic shock. Eur Heart J. 2012;33:895–903
心エコー図により詳細に心機能を評価し、TnT上昇の原因および
TnTのsepsisにおける死亡率との関連について調べた
方法
 前向きコホート研究
 期間:2009年4月ー2011年3月
 施設:3次指定医療機関
 対象:ICUに入室したSevere sepsisおよびseptic shock患者
<Severe sepsis定義> 以下1)-3)全てを満たすもの
1)感染症を疑う 2)SIRS2点以上 3)1つ以上の臓器障害
<Septic shock定義>
Severe sepsisに加えSBP<90が1時間以上、カテコラミンを要するもの
 除外:大動脈弁疾患(mild以上)、エコーで(陳旧性)心筋梗塞を疑
わせる所見、描出不良な患者、心房細動のある患者
 担当医師により全ての心エコー結果が把握されていたが、
異常な結果に対しての介入はされなかった。
データ集積法
 心エコー図:Philip’s IE33を用い2D,3Dエコーを実施.
ICU入室後に速やかに測定.
測定はエコー技師が一人で全て行う.
二人の解析者が患者情報に無関係に解析した.
★評価項目:左室流入血流波形(E・A波)、DcT(E波減速時間)、カラードプラ
を用いたM弁流入伝播速度、三尖弁収縮期圧較差、TDI(組
織ドプラ)を用いたs’波・e’波・a’波流速
★心室腔測定:modifired Simpson法による左室拡張末期容量(LVEV)、
収縮末期容量(LVSV)、stroke volume、EF測定.
3D apical viewでも測定.
★ストレイン、ストレインレート: 伸縮の変化、単位時間あたりの長さ変化
 採血検査:入院時に採血し-70℃に保存した検体でTnTを測定.
(14pg/mL以下が基準値)
 臨床データ:
★患者情報、身体所見、血行動態、採血結果、eGFR、APACHEⅡ
⇒診断がついた時点 と エコー検査実施日で集積された.
★死亡率は入院中 と 1年後にフォロー
補足:拡張障害における左室流入血流波速と
僧帽弁輪部速度(E’:本文ではe’)の関係
DcT
E/e’
<10
<10
≧10
≧10
心臓超音波検査の有用性
−心機能評価と負荷心エコーを中心に− 聖マリアンナ医科大学超音波センターより抜粋
補足: 心筋ストレイン/ストレインレート考え方
補足:拡張早期ピーク値SRe’を計測しているところ
スペックルトラッキング心エコー法を用いた心筋機能分析に基づく左室拡張機能の研究 2013
より抜粋
統計処理
• hs-TnT値は指数関数で近似するため、エコー図と
log hsTnTの関連は線形混合モデル(GLMs)を用い
た.
• 多変量解析:①log TnTと関連する臨床変数、エ
コー図変数をそれぞれ決定、②それら変数を用
いて多変量解析を行った
10
10
• 単一変量・多変量ロジスティック回帰分析:院内死亡率
• ROC curve:hs-TNTのカットオフポイント
• P値 < 0.05を有意差とした
• SPSS 19.0 software
結果
計106人の患者
⇒計225例の心エコー測定値とhs-TnT値
除外: エコー描出不良(14例)、心房細動(4例)、エコー上虚血所見が
明らかであるもの(8例)、moderate-severe M弁/A弁弁膜症(6例)
3Dエコー施行例数: LV volume(216例/96%) 、RV volume(200例/89%)、
長軸strain rate(209例/92%)、短軸strain rate(202例/91%)
hs-TnT: 14pg/ml以上(93例/88%)、100pg/ml以上(77例/73%)
平均43pg/ml
死亡率: 院内死亡(41例/39%)、1年内死亡(51例/48%)
平均ICU入室日数: 29±45日
平均在院日数:
47±63日
患者背景
 全例人工呼吸管理(エコー実施中も)
 Septisの原因: ⇒感染源は消化器系が半数近くを占める
Gastrointestinal 48例(45%), multitrauma wound 19例(18%),
pulmonary 13例(12%), vascular surgery/limb ischemia 10例(9%),
genitourinary 8例(8%), orthopedic/skeletal 5例(5%), burns 3例(3%)
 培養陽性:104例(98%) うち少なくとも1セット血培陽性 48例(46%)
 血圧低下:93例(88%)
■ 血圧低下持続時間:平均6.1±3.7hr
 大量補液に反応しない:67例(63%)
→Norepinephrine 66例(62%), epinephrine 27例(25%),
vasopressin 20例(19%), Dopamine/dobutamine 6例(6%)
Characteristics of Patients Who Died or Survived the Hospitalization-①
腎機能
①
②
①-②
①‘
②‘
①‘-②’
EF
ん
APACHEⅡ
血管収縮薬使用
hs-TnT値
Characteristics of Patients Who Died or Survived the Hospitalization-②
DcT (160-240)
等容弛緩時間(70-90)
収縮期波
拡張早期ピーク僧帽弁輪運動速度
心房収縮ピーク僧帽弁輪運動速度
 e’はseptalもlateralも生存者群で有意に高く、
E/e’は有意差みられないが生存者群で低かった。
補足:E/e’≧10→左室拡張末期圧≧15mmHg
すなわちE/e’が高値なほど左室拡張不全の存在を示す
*(カッコ内は正常値)
Characteristics of Patients Who Died or Survived the Hospitalization-③
ストレイン
ストレインレート
 SRe’波すなわち(ストレインレートを使用した)拡張早期のピーク流速は、
長軸測定でも短軸測定でも生存者群で有意にはやかった。
臨床像とhs-cTnT値、院内死亡率との関連性
TnTとの関連性
臨床像(変数)
ACS既往
収縮期血圧
eGFR
APACHEⅡ
院内死亡率との関連性
心エコー変数とhs-TnT、院内死亡率との関連性-①
TnTとの関連性
院内死亡率との関連性
心エコー図
(変数)
右室収縮末期
容量index
 右室収縮末期容量indexはTnTとも院内死亡率とも相関する。
心エコー変数とhs-TnT、院内死亡率との関連性-②
TnTとの関連性
院内死亡率との関連性
心エコー図
(変数)
院内死亡率と
相関
hs-TnTと相関
拡張早期のピーク流速
ストレインレート
のE/e’
三尖弁収縮期圧較差
 E/Sre’(ストレインレートのE/e’)はhs-TnTと相関する。
 Sre’(拡張早期ピーク流速)、三尖弁収縮圧較差は院内死亡率と相関する。
hs-TnTと拡張早期のピーク流速 e’(cm/s)、右室収縮末期
容量indexとの相関関係(散布図)
 拡張早期のピーク流速e’(cm/s)と
Log(hsTnT)
⇒負の相関(r=-0.356)
 右室収縮末期容量index
とLog(hsTnT)
⇒正の相関(r=0.383)
多変量解析による
臨床像、心エコー図とhs-TnT、院内死亡率との関係
(これまでのまとめ)
 hs-TnTと相関:eGFR・APACHEⅡ・右室収縮末期容量index
・E/SRe’(ストレインレートから計測)
 院内死亡率と相関:APACHEⅡ・右室収縮末期容量index・
SRe’(ストレインレートから計測した拡張早期ピーク流速)
hs-TnTのカットオフ値による比較
hs-TnTのカットオフ値
Hs-TnT>14pg/mL
>43pg/mL
>100pg/mL
>200pg/mL
hs-TnTは
●eGFR、APACHEⅡスコア: どのcutoffで解析しても相関した
●右室収縮末期容量index、SRe’、TDIe’:100、200>pg/mLをcutoffとすると相関した
●E/SRe’、E/TDIe’: 14、43pg/mLをcutoffとすると相関した
hs-TnTのcutoff値による生存率曲線
hs-TnT値が高くなると、
生存率が低くなる。
⇒TnT値は死亡率に関する
一変量予測値である
Discussion-①
本研究での重要事項
 severe sepsis/septic shockでhs-TnT値が高い患者は、
(APACHEⅡやeGFRと独立して)左室拡張障害や右室拡張
と良く相関する。
 左室拡張障害や右室拡張は院内死亡率に関して、
hs-TnTよりもよく相関する。
⇒拡張障害がhs-TnTに関連し、同時にsepsisの死亡
率とも関連しているのではないか。
 今回心エコーにおいて、収縮・拡張障害評価の際に、
組織ドプラだけでなくストレインレートを用いたことや、
心腔volume評価に2Dだけでなく3Dを使用している点で、
意義がある。
Discussion-②
 Septic shock患者の血清をラットに注入
⇒心収縮低下、炎症サイトカイン↑により心抑制物質を
誘導するという報告がある。
⇒しかしTnT上昇に関する報告はなく、また収縮障害と
の関連しか示されていなかった(拡張障害ではなく)。
 内因性および外因性カテコラミンも、septic shockにおける心
毒性と言われてきた。本研究においても用量負荷に反応せ
ずカテコラミンを使用した症例でTnT値が上昇した。
⇒しかし左室拡張障害や右室拡張から独立してTnTと
shockとの関連を示すことはできなかった。
以上から、左室拡張障害や右室拡張がTnTと関連していること
がうかがえる。
Discussion-③
拡張障害を認める疾患(心不全、CKDなど)と同様、
sepsis患者でも組織ドプラにおいて拡張障害とTnTとの
関連が示されてきた。
⇒これまで小規模studyかつ報告例は少数であり、
全症例の収縮期・拡張期エコー所見とTnTとの関連が
調べられたわけではなかった。
組織ドプラのe’は拡張障害の指標に利用されるが、それ以上
にストレインレートのSRe’がより強く相関されることが示されて
おり、本studyでも使用している。
組織ドプラE/e’とストレインレートE/e’はいずれもTnT値
14pg/mLをcut offとすると相関し、組織ドプラe’とストレイン
レートe’はTnT43をcut offとすると相関した。
Limitations
• もともとの患者情報がない(心エコ-図やTnT値)ため、
sepsisがどの程度所見の悪化に関連していたかが不明。
• 新しい心エコーの技術を利用し人工呼吸管理中の患者
でも収縮/拡張障害を評価できるようになったが、
highPEEP管理が必要な超重症患者においては、エコー
が入らない。
結論
• 心筋障害(収縮障害)によりTnT値は上昇し、
その値は死亡率に関連する。
• 拡張障害(non-ACSにおいてもみられる)でも、
TnT値は上昇する。
今後は、severe sepsis/septic shock患者の拡張障害に
対してミルリノンなどの治療介入をすることで、
TnT上昇や死亡率を抑えることができるかどうかの検証
が望まれる。