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平成24年4月17日
担当;前田伸子
学習目標
●学習目標;感染症としてのう蝕の特徴を説明
する。
① 口腔生態系とは何かを説明する。
② 歯垢の形成機序を概説する。
③ 歯垢の潜在的病原性を説明する。
④ 口腔感染症としてのう蝕の特徴を説明する。
今日の講義内容
1 口腔の生態系
2 歯垢の潜在的病原性
3 う蝕の病理
4 う蝕原性菌〜硬組織の種類別〜
5 ミュータンスレンサ球菌のう蝕病原因子
口腔の生態系
●その場に棲む細菌の集団=常在細菌叢
●これを取り巻く環境
●齲蝕の発症に関係する口腔内の生態系
は歯肉縁上の硬組織
隣接面
小窩裂溝
平滑面
歯肉縁上
歯頚部
歯肉縁下
歯垢(バイオフィルム)
歯垢とは微生物の塊そのもので
数百種類以上の細菌を含む
歯垢(バイオフィルム)の形
成機序
ペリクル
↓
初期歯垢
↓
成熟歯垢
PRPs
PRPs
ムチン
ムチン
ペリクルの形成
+
Ca2+
ペリクル
エナメル質
Ca2+
2価の陽イオンをはさんで陰イオンのタン
パク質が陰イオンに荷電したエナメル質に
付着する
初期歯垢形成
早期定着菌
特定の付着のための構造を表層にもつ細菌が選択
的に付着/増殖(定着)することにより初期歯垢
の形成がスタートする
歯垢の成熟化
細菌間を菌体外多糖体が埋める。嫌気性が上
昇する。細菌同士の共凝集が起こり、細菌の
種類/数が増加し、歯垢は成熟する。
歯肉縁上
唾液
歯冠部
歯肉縁下歯垢には歯根部セメント質に
付着するもの(a)、歯肉溝液内で浮遊
するもの(b)、歯肉に付着するもの
(c)の3つに分けられ、いずれにして
も歯肉溝液の影響を受ける
歯肉溝液;歯肉の毛細血管から血清成
分が歯肉溝液として滲出
歯冠部
a
b
c
歯
根
部
セ
メ
ン
ト
質
歯肉
成熟歯垢の特徴
比較的大きな桿菌を軸にして周囲に球菌が付着し
た状態をコーンコブ(トウモロコシの穂軸)状と
表現し、これが成熟歯垢の特徴の一つである
歯口清掃が正しくされて
いれば・・・
初期歯垢の状態で成熟化はないはずだが、しかし、実際は
歯垢が落ちにくい部位(不潔域)があり、そこの歯垢は成熟化
し、う蝕発症の可能性もあり・・
隣接面
小窩裂溝
歯頚部
不潔域
歯垢の潜在的病原性
●齲蝕を起こす力(病原性)のある細
菌を含んでいる
●この他にも歯周病に関連する細菌も
いる・・・
齲蝕の病理
●硬組織(エナメル質・象牙質・セメント質)
が酸により脱灰されていく一連の過程
→有機質成分が多い象牙質でも脱灰が先
行する
→しかし、一方的に脱灰するのではない
→脱灰と再石灰化を繰り返す
硬組織表面は脱灰と再石灰化
の間を揺れ動く
ショ糖(スクロース)
Ca2+
Ca2+
PO43-
Ca2+
PO43-
PO43-
Ca2+
Ca2+
脱
PO43-
灰
PO43-
唾液(緩衝作用)
Ca2+
Ca2+
PO43-
Ca2+
Ca2+
PO43-
Ca2+
PO43PO43-
再石灰化
PO43-
飲食と脱灰・再石灰化
pH
飲食
7
飲食
再石灰化
6
飲食
再石灰化
臨界pH
5
4
脱灰
脱灰
脱灰
時 間
硬組織の種類により
う蝕原性菌が違う!
●エナメル質う蝕;初期病変
ミュータンスレンサ球菌
●象牙質う蝕;進行病変
グラム陽性桿菌群;乳酸桿菌、放線菌、ビフィズス菌
●(歯)根面う蝕*;通常ならう蝕にならない
乳酸桿菌とミュータンスレンサ球菌
(歯)根面う蝕
通常なら歯肉縁下にある歯根面がう蝕になるのは歯
肉の退縮により縁上に露出するから
→歯根面のセメント質は薄いので象牙質がすぐ剥き
出しになるため象牙質う蝕に似る
●乳幼児期、中高生の齲蝕は減少傾向が著しい。
●高齢社会における中高年以降の根面齲蝕は増加傾
向にある。
ミュータンスレンサ球菌
GC含量
血清型
タンパク抗原
S. mutans
36-38%
c, e, f
I/II
S. rattus
41-43%
b
III
S.cricetus
42-44%
a
I/II
S. sobrinus
44-46%
d, g
III
I/II
バシトラシン耐性
+
+/+/-
S. ferus
43-45%
c
I/II, III
-
S. macacae
35-36%
c
I/II, III
-
S. downei
41-42%
h
I/II
-
S. mutansとS. sobrinus
●動物実験でS. sobrinusの方がS. mutans
よりも齲蝕誘発能が強い
●疫学調査の結果、S. sobrinusの方が齲蝕
の発症に関連がある
ミュータンスレンサ球菌の
齲蝕原性
●初期の付着
●菌体外多糖体→不溶性グルカン
●多量の乳酸産生性
●耐酸性
ミュータンスレンサ球菌の
付着
●初期付着;
細胞壁蛋白;I/II, antigen B, antigen P1 がペ
リクルへの最初の付着に関係する
●その後の付着;
いったん、ペリクルへ付着し、周囲にスクロースが
十分あると不溶性グルカンを産生し、強固に定着
する
グルカンの結合様式
CH2
CH2
o
o
o
OH
HO
o
OH
OH
HO
HO
OH
CH2
o
o
o
OH
CH2
4
o
1
o
2
3
o
o
5
HO
CH2
HO
OH
OH
6
o
OH
OH
o
o
OH
o
CH2
CHα2 (1-6) 結合
OH
α(1-3) 結合
OH
OH
α(1-3) 結合が多いものが不溶性
α(1-6) 結合が多いものが水溶性
ミュータンスレンサ球菌の
乳酸産生性
環境にあるスクロース量によりミュータン
スレンサ球菌の糖代謝が変わる→生態
系内で環境の変化に合わせて生き物の
性質が変化し、それが環境に影響を与
えることの良い例
環境にあるスクロース量でミュータンス
レンサ球菌の糖代謝がどう変化するか
ミュータンスレンサ球菌
スクロース
スクロース
スクロース
菌体内多糖体
菌体外多糖体
=不溶性グルカン
ATP
乳
酸
フルクトース
ATP
乳 酸
ATP
乳
酸
スクロース;ショ糖
グルコース;ブドウ糖
フルクトース;果糖
CH 2 OH
O
OH
グルカン
OH
O
OH
OH
O
OH
ATPと酸
CH 2 OH
ミュータンスレンサ球菌の
不溶性グルカン産生
glucosyltransferase; GTF
↑
スクロースを基質として
不溶性グルカン(グルコース重合体)
を合成する
ミュータンスレンサ球菌の耐酸性の
メカニズム
H + -ATPase
外へ汲み出す
乳酸
S. mutans
乳酸
乳酸
これらの齲蝕病原因子が
結果的に・・・
抵 抗
唾液による希釈
および緩衝作用
不溶性グルカン
耐酸性
乳
酸
エナメル質表層の下から
脱灰
プレポストテスト;4/17/12
正しいのはaに誤っているのはbにマークして下さい。
①齲蝕の発症に関係するのは歯肉縁下の口腔生態系である。
②口腔に歯垢が除去しにくい場所はない。
③歯垢形成機序の第一歩はペリクルの形成である。
④歯肉縁上の歯垢は歯肉溝液の影響を受ける。
⑤いったん脱灰された硬組織表面は再石灰化されない。
⑥ミュータンスレンサ球菌はエナメル質齲蝕の原因菌である。
⑦歯肉縁下の歯根面にも齲蝕は起こる。
⑧ミュータンスレンサ球菌の細胞壁表層のタンパクは初期付着に関係する。
⑨ミュータンスレンサ球菌はグルコースからグルカンを作る。
⑩ミュータンスレンサ球菌には耐酸性がある。