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生物学
第22回 これまでの講義のまとめ
和田 勝
地球上には様々な生物が、、
カワセミ
ヤマセミ
Common kingfisher Greater pied kingfisher
アカショウビン
Ruddy kingfisher
地球上には様々な生物が、、
時間軸を入れると
時間軸を入れると
時間
空間
地球上には様々な生物が、、
同じFamily(科)だけど違うSpeceis
(種)
カワセミ
ヤマセミ
Common kingfisher Greater pied kingfisher
アカショウビン
Ruddy kingfisher
生物多様性の起源
カワセミ類は、脊椎動物の鳥類に属
しますが、これ以外にも鳥の仲間は
たくさんいます。哺乳類も、カエルの
仲間も、たくさんいます。
このような生物多様性はどのようにし
て生じたのでしょうか。
19世紀まで、生物は神が創造したと
いうことをほとんどの人が信じていま
した。
ダーウィンの登場
ダーウィンは1831年、22歳
のとき、ビーグル号による
世界一周の航海に出まし
た。
船長の話し相手兼
博物学者として乗
船したのです。
自然選択による進化
この航海で、種は神が創造したことに疑
問を持ち、帰国後、さまざまな研究を行
ないます(フジツボ、ミミズ、鳩の交雑)。
ウォーレスの手紙に押される
ように、1858年リンネ学会で発
表し、
翌年、それまで書き溜めてい
たノートの内容をまとめて『種
の起源』を出版します。
自然選択による進化
1)生物の集団には変異(variations)
が存在する
2)変異は親から子に伝わる
3)すべての子が、生まれ出た生息環
境で生き残ることはできない
4)変異によって生き残る確率に差が
ある(適応度が高いものほど生き
残って子を作ることができる)
自然選択による進化
自然選択によって進化が起こって、
生物多様性が生まれたことを疑うヒ
トはいません(一部の原理主義者を
除いて))。
現在では、自然選択のもとになる変
異は、遺伝子DNA分子の突然変異
によって生じることがわかっています
が、ダーウィンはもちろん遺伝子は
知りませんでした。
キーワード「遺伝子」
「遺伝子DNA」が、形や機能を実現
する「実働部隊であるタンパク質」の
設計図です。
遺伝というのは、子は親に似るとい
うことです。
遺伝学とメンデル
変異があり遺伝するとはどういうこ
とかを、メンデルはエンドウを使っ
た実験で明らかにしました。
子が親に似ることはわかっていま
したが、メンデル(1822-1884)以
前にはこれを説明することはでき
ませんでした。メンデルは粒子的
な要素を仮定して見事に遺伝の
法則を説明することに成功しまし
た。
遺伝子の本体
メンデルの想定した要素は、後に「遺
伝子(gene)」と名づけられ、複数の遺
伝子が染色体に線状に配列している
ことが明らかになっていきます。
さらに、遺伝子の本体はDNAである
ことが、1953年に明らかになります。
今の知識で優劣の法則は
たとえば種子の形
優性が「丸い種子」で、劣性が「しわ
になる」です。
しわになるのは、種子中に蓄えられ
過ぎた水が失われるからです。
でんぷん貯蔵の過程で
グルコースからでんぷんが作られて
種子に蓄えられます(これが発芽の
栄養になる)。
ところがグルコースをつなぎ合わせて
でんぷんにする酵素(タンパク質)が
劣性では欠陥品になるため、グルコ
ースが余ってしまいます。
そのため、種子中に(浸透圧のため)
水が蓄えられ過ぎてしまうのです。
血友病
第8因子(タンパク質)の遺伝
子はX染色体の長い腕の
末端近くにあります。
第8因子(タンパク質)が欠陥品にな
ると、血液凝固カスケード反応が進ま
なくなってしまいます。
そのため、血液凝固がおこらなくなっ
てしまいます。
血友病
男子の場合、Y染色体は
X染色体に比べてとても
小さいので、YにはXの末
端に対応する部位があり
ません。
そのため、男子ではXが劣性(つまり
欠陥タンパク質をコード)だと、そのま
ま劣性が表現型に出てしまうのです
。
つまり
目に見える表現型は、遺伝子型によ
って規定されているのです。
表現型(生物の形やはたらき)はタン
パク質によって実現されており、その
タンパク質を作る設計図は遺伝子の
本体であるDNAなのです。
DNA
DNAは、ヌクレオチドが鎖状に連結し
たものですが、難しいことを考えなけ
れば、ACGTという4つの文字で書か
れた文字列だということができます。
このACGTの並び方が、アミノ酸の並
び方を決める(コードする)設計図と
なっているのです。
遺伝という現象の捉え方
遺伝子型
(genotype)
DNA
→
表現型
(phenotype)
→
タンパク質
遺伝という現象の捉え方
タンパク質が欠陥品になるのは、遺
伝子が異常になるからです。
遺伝子が異常になることを、「突然変
異(mutation)」と言います。遺伝子す
なわちDNAにおこる突然変異とはな
んでしょうか。
すべての生物は細胞から
ヒトを含めてすべての生物は細胞から
できています。
すべての細胞には、遺伝情報が書き
込まれた染色体が核に納められてい
ます。
細胞によって使われている遺伝情報
が異なるため、異なる形や機能を発
揮できるのです。
DNAはATCGの4文字で、
細胞の核は「図書館」に、染色体は
そこに納められている本にたとえる
ことができます。
この本は、ATCGのたった4文字で書
かれている本です。本のページをめ
くって、必要な設計図を探して、文字
列はmRNAに写し取られます。
サイトゾール
DNA
リボソーム
核
mRNA
細胞膜
ゴルジ装置
粗面小胞体
原料のアミノ酸
DNAからタンパク質へ
1)DNAからmRNAへ
この過程は、図書室で必要な本(染
色体)を広げ、必要な箇所(遺伝子)
の塩基配列をmRNAへ書き写す(コ
ピーする)過程です。
この過程を転写(transcription)と呼
びます。
DNAからタンパク質へ
2)mRNAからタンパク質へ
この過程は、コピーしたテープ(
mRNA)を、プレーヤー(リボソーム)
にかける過程です。もとの塩基配列
に従ったタンパク質が生まれます。
この過程を翻訳(translation)と呼び
ます。
タンパク質の形が重要
タンパク質の立体構造が、大事です。
たとえば酵素は、熱を加えたり、pHが
偏ったりすると、この形が崩れて、酵素
としての働きが失われてしまいます。
酵素に活性を表すための、最適温度や
最適pHが存在するのはこのためです。
タンパク質の形が重要
タンパク質の立体構造は、アミノ酸の並
び方で決まります。
すでに述べましたが、アミノ酸の並び方
は、設計図であるDNAのACGTの四文
字の並び方で決まります。
この四文字の並び方が変わってしまう
ことが突然変異です。設計図が変わっ
てしまったために欠陥品タンパク質にな
ってしまいます。
体細胞分裂
たった一つの受精卵から60兆個の細
胞からなるヒトができるのは、体細胞
分裂によって細胞の数を増やすから
です。
●DNAを正確にコピーして2倍にし、
それから染色体を複製する。
●ミトコンドリアのような細胞小器官も
均等に分配する。
●細胞質を2つの娘細胞に分離する。
子を作る 減数分裂
発生と個体を維持す
るのに必要な細胞数
を増やす過程で体細
胞分裂
配偶子を形成する過
程で減数分裂
減数分裂による遺伝的多様性
1)中期Ⅰで父方と母方の染色体が
交叉によって混ぜ合わされ、まった
く新しい組み合わせが生じる。
2)後期Ⅰで各対の一方が独立して
ランダムに分配される。
上の2つのことがby chanceでおこって
多様性が確保されています。
生命と情報
DNAの情報を誤りなく受け渡すこと
により、生命は活動を続けます。
その一方で、有性生殖には本質的
に多様性を保証する仕組みが隠さ
れているのです。
さらにDNAの塩基の変化(突然変
異)と自然選択により生命は進化し
てきました。
突然変異
体細胞に起こった突然変異によって
、ガンが生じることがあります。でも
一代限りです。
一方、生殖細胞(精子や卵)に突然
変異が起こると、子に伝わります。
この二つの考えの融合
突然変異によって、遺伝子が変化し、
それが形質に現れることが明らかに
なり、この二つは必然的に融合される
のです。
突然変異によって生じた変異のうち、
その生物が生息する環境に生きていく
のに有利な形質が残っていくのが、ダ
ーウィンの考えた「自然選択」です。
突然変異はなぜ起こる
●自然突然変異(natural mutation)
DNAの複製過程で、正しくない塩基(
正確にはヌクレオチド)を使ってしまう
ことがおこります。
酸素はある意味で、細胞にとって毒に
なります。特に細胞の呼吸で発生す
る活性酸素がDNAに働いて悪さをす
ることがあります。
突然変異はなぜ起こる
●誘発突然変異(induced mutation)
外的な要因で引き起こされる突然
変異で、紫外線、放射線、化学物
質にさらされることでDNAの損傷
が起こるのです。
チミンダイマー
紫外線により
塩基が変化し
て複製の障害
になる
地球と生命の歴史
地球の長い歴史を経て、現在の地球環
境があり、そこに適応して生物が生息し
ているのです。
環境の多様性こそが、生物の多様性を
保証します。
つまり、環境が彫刻の鑿の役割をして
いるのです。
脳の発達したヒト
ヒトの脳の発生の様子を見ましたよね。
ヒトの脳は他の霊長類に比べても大きく
発達しました。その結果、(介在)ニュー
ロンの数が圧倒的に多くなりました。
神経系
・いろいろな動物の神経系
・脊椎動物では神経細胞は神経管から分化しま
す。
神経系
●基本形
感覚器官
介在ニュ
ーロン
筋
肉
筋
肉
●ヒトの場合
感覚器官
多数の介在
ニューロンの
ネットワーク
(言語や思考)
ヒトとは何か
発達した脳を占める多数のニューロン
の繋ぎ方は遺伝子に大まかに決まって
いますが、すべて決まっているわけでは
ありません。
ニューロン間の接続にはかなりの可塑
性があることが分かっています。
環境(子宮内の環境や、その後の経験
など)が繋ぎ方を決めているのです。
ヒトとは何か
「Nature or Nurture」という言葉を聞いた
ことがあると思います。日本語では「氏
より育ち」と言います。
多くの動物は「Nature」すなわち遺伝子
DNAによって多くのことが決まってしま
いますが、脳が著しく発達したヒトでは
「Nurture」すなわち「育ち」が大きくもの
をいうのです。言語も情報の伝達という
点では遺伝子と同じように重要です。
最後に
「Nurture」は発育の過程だけでなく、大
人になっても効いてくると考えられてい
ます。
常にいろいろなことに興味を持って(生
物学にも少しはね)、よい作品を創って
いってください。
長い間、聴いてくださり、ありがとうござ
いました。