(ワイヤーグリッド) の製作技術開発

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Transcript (ワイヤーグリッド) の製作技術開発

ミリ波・サブミリ波帯WG製作
ものづくり博2013 全学技術センター
河合利秀
1、製作方法の変遷
2、~2007年(低温、サブミリ波帯)
3、~2009年(サブミリ波帯WGの高精度化)
4、2012年~大面積ミリ波帯
5、まとめ
ワイヤーグリッド(WG)とは


金属線を規則正しく並べたもの
偏波素子


縦偏波=反射、横偏波=透過
例えば、マーチンパープッレット型分光計では


ビームスプリッターとして機能する
ミリ波~サブミリ波帯(高価)



WGを作るオリジナルな方法を考えてきた
d/a ・・・・0.25~0.33
d 15μm~50μm の金属線・・・・

放電加工用タングステンワイヤーを用いる
使用場所:低温で使えるように・・・
ALMA受信機のWG(Band8)を目標に
ワイヤーグリッド:金属線を並べたもの
金属線
d
透過波
E
a
θ
E
E
E
反射波
このあたりを狙う
WG製作方法と仕様の変遷
天文学会発表
特性測定年度
機構
汎用旋盤
巻枠の棒
溝付き
接着剤
使用温度
WG
d/a
誤差
小型旋盤
溝
(200μm)
瞬間
接着剤
専
エポキシ系
接着剤
な
し
16μm
機
溝付き
溝付き
(61.2μm)
(150μm)
ウレタン系
接着剤
スタイキャスト
2850FT
常温
100GHz
400GHz
(50/200) (20/100)
用
低温
400GHz
(20/60)
1THz
(15/46)
8μm
1THz
40GHz
(20/61) (50/150)
3μm
5μm
サブミリ波帯ワイヤーグリッドの仕様

基本仕様
d=20μm、
a=60μm

偏波弁別比:
25dB以上

波長依存性
100GHz~1THz

aのばらつき
10%以内を目標に
 実際に作れるWGの仕様
1. d:20μm、a:60μm
2. d:50μm、a:150μm
3. d:15μm、a:45μm
1990年、汎用旋盤で100GHz帯に挑戦
d:50μm、a:200μm、巻枠の棒に溝あり
四面取れる巻枠
汎用旋盤の刃物台
パーマトルク
タングステンワイヤー
汎用旋盤の主軸
四面取れる巻枠、4本の棒に溝あり
旋盤のネジ切り機構でネジ溝を切っておく
ピッチ200μmで
溝を切った棒
4本のねじ溝付き棒:溝の位相を合わせる
1992年小型旋盤で400GHz帯に挑戦
d:20μm、a:100μm、巻枠の棒に溝なし
巻枠
小型旋盤の主軸
パーマトルク
1998年専用巻き取り機を製作
d:20μm、a:60μm、巻枠に溝なし
汎用スピンドル
60rpmで回転
巻枠、溝なし
ステッピングモータ
パーマトルク
タングステンワイヤー
LMガイド
WG製作の手順~2004年
1、タングステンワイヤーを巻枠に巻く
タングステン線 直径20μm、間隔60μm
巻枠は4サイズ、一回巻くと4面取れる
2、固定枠に接着剤でワイヤーを固定
接着剤:スタイキャスト2850FT
固定枠:アルミニウム製、
3、巻枠の張力除去、ワイヤー切断
固定枠の接着剤が固まったら
巻枠の張力を解除してワイヤーを切断
一度にWG4枚作れる
フーリエ分光光度計による測定(2004年)
フーリエ分光器
被測定WGの挿入位置
光源
基準となるWG
検出器(ボロメータ)
WGの偏波特性(2004年)
製作方法の改良(2007年)
製作手順の各段階における高精度化
ワイヤー繰り出し機構の改善
ワイヤー巻取り枠の改善
接着方法の改善
誤差の度数分布を大きく改善できた
16μmから目標の6μmに近付く
THz領域まで安定した弁別比が得られるようになった
ワイヤー位置決め機構の改善

ワイヤー繰り出し
部分のふらつき
を小さくする
繰り出し部の
ふらつき誤差・・・
5μmから
3μmへ
ピッチエラー
(2007年)
接着の問題点~2004年
接着したあとに
張力が抜けてしまう!
NG!!
ワイヤーの表面が
綺麗になったため?
スタイキャスト2850FT
スタイキャスト中最強だが
別の接着剤を試す!!
放電加工用ワイヤーは
ワックス処理されていた!
液体窒素温度と室温とを繰り返す実験
(2008年、この写真は5回ほど繰り返したもの)
表面に割れが入ったが
ワイヤーは大丈夫
2008年 発想の転換

巻枠の棒に溝を入れる



60μmピッチの正確な溝加工
常識では不可能
汎用旋盤を最高速で運転、自動送りで

±1μm以内の精度で溝加工できる
バイト先端角100°
 超硬バイト先端R10μm


ピッチが僅かに大きい・・・61.3μm
シャフトに溝を切ってみる
r:10μm、ピッチ60μm
実際にはピッチ:61.3μm
溝加工の結果は?
ワイヤーを巻いてみる
溝あり
問題点:所々で重なったり飛んだりする
・・・・位相合わせが必要!
ピッチの違いにより重なるところがある
溝なし
統計誤差:3μm
完成したWG・・・間隔精度測定中!
2008年のまとめ

ピッチの違い


旋盤の自動送りピッチ :61.3μm
巻き取り機の送りピッチ:60.0μm



ピッチをあわせると不安定領域拡大・・・NG
結論=適当に違っていた方が結果的に良い可能性
サブミリ波帯WG



巻き枠に溝を入れる方法は精度向上に有効
今後、張力の最適化で接着安定性を向上させる
低温(4K)での偏波特性を測定したい
2012年、大面積のミリ波帯WG

大面積のミリ波帯WG
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
20~40GHz、有効径200mm
タングステンワイヤー価格高騰
SPワイヤー(真鍮メッキピアノ線)
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引っ張り強度、電気抵抗、直径精度・・・OK
ワックス処理のないものも入手可
線の材質
引っ張り強さ
(N/mm2)
電気抵抗率
(x10-8Ω・m)
線径誤差
(μm)
タングステン線
2300~3800
5.5
±1
SPワイヤー
2160
6.3(真鍮)
+0、-3
銅線
345<
1.55
±10
d:50μm、a:150μmで試作
ネジ切り機構でピッチ150μmのネジ溝を加工
中心値:150μm
誤差:5μm
まとめ

大面積ミリ波帯WG
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Φ200mm(有効径)まで製作可能
巻き取り枠の棒にねじ溝をつけて高精度化


ワイヤー素材を変更


150μmに対し、5μmの誤差
タングステンから真鍮メッキピアノ線へ
今後の問題点
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

さらなる大面積化
ネジ溝ピッチ・・・わずかに変える方がいい?
技術移転・・・若手に継承
接着部分の評価
1、ワイヤー張力と接着強度
ワイヤー張力・・・
50g(1本あたり)
Φ20μm 接着面積 0.3mm2
枠の幅10mmに働く張力・・・~8Kg
2、接着強度・・・せん断接着強さ(Kg/cm2)
一般のエポキシ系・・・・・100~150
シアノアクリレート系・・・3.0~5.0
張力が強すぎる?
接着剤の性能(スタイキャスト)
現状
スタイキャスト2850FT
スタイキャスト中最強!
引張り強度:60MPa
剥離はないが
ワイヤー張力が抜ける
・・・・・なぜ?
使用できないことはないが
製作者としては不満!


試験
スタイキャスト1266
引張り強度:40MPa
接着強度不足
すぐに剥離
別の接着剤を考える
改めて様々な接着剤を試すことに・・・

エポキシ系接着剤(2液混合)
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
瞬間接着剤(ゼリー状のもの)
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
アラルダイト ラピッド
緩みが生じる
アロンアルファ#31303
スコッチ 70402E
剥離する
小西六の一液型機械金属系接着剤
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SUタイプ・・・・良好!!
WGの問題点(2004年)
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
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ワイヤー径20μm
ピッチ
60μm
ピッチエラー
平均16μm
改善の余地あり
張力が抜ける・・・・
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改善できず!
後に原因解明:ワイヤーがワックス処理されていた