小型S-band linacを用いたTHz光源開発と

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ビーム物理研究会2010 11/11-12 @ 理化学研究所
S-band Linacを用いた
THz波発生とイメージング応用
~接着剤の透過イメージング測定~
早稲田大学 先進理工学部4年
鷲尾研究室所属
熊木 雅史
黒田隆之助A)、山口映理子A)、豊川弘之A) 、
坂上和之、鈴木達也、大山(五輪)智子、川内洋平、
山田家和勝A) 、鷲尾方一
A)産業技術総合研究所
& 早稲田大学鷲尾研究室
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Outline
1. THz波の特徴と発生原理
2. 実験目的・実験装置
• 目的
• 装置/セットアップ
• 測定試料
3. 結果と考察
• 試料①
• 試料②
4. まとめ
& 早稲田大学鷲尾研究室
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1.THz波の特徴と発生原理
& 早稲田大学鷲尾研究室
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THz波
携帯などで用いられている電波よりも周波数が高く,
赤外線よりも周波数が低い領域の電磁波を指す
周波数
波長
0.1 THz ~ 10 THz
30 μm ~ 3 mm
THz波の特徴




紙・プラスチックに対する透過性
物質固有のスペクトルを持つ(THz指紋スペクトル)
水に吸収される・金属で反射する
非破壊検査に用いられている(封筒内の薬物検査など)
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発生原理
高エネルギーの電子が偏向電磁石(Bending Magnet)によって
曲げられるときに,周波数の連続的な電磁波が放射される
この電磁波の放射はシンクロトロン放射(SR)と呼ばれており,
コヒーレント放射を用いて高強度THz波を発生させる
偏向電磁石
(Bending Magnet)
THz波放射
短バンチ電子
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出力の高強度化
電子にバンチ圧縮をかけ短バンチにすることにより
CSR(コヒーレント シンクロトロン放射)発生
高出力のTHz波が得られる
@30MeV
 インコヒーレントなSR (バンチ長>SR波長)
電子バンチ
~×109~10
P∝N
 CSR:コヒーレントなSR (バンチ長<SR波長)
P ∝ N2
P : シンクロトロン放射光(SR)の強度
N : バンチ内に存在する電子の数
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2.実験目的・実験装置
& 早稲田大学鷲尾研究室
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実験目的
有機高分子材料における重合を
THz波を用いて評価する
接着剤の透過イメージング測定
•
時間経過によって重合し,高分子化することで硬化する
•
高出力なので透過測定を短時間に行うことが出来る
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実験装置
電子
パラメータ
①電荷量
1 nC
Cs2Te
RFGun
バンチ長
3ps(rms)程度
①
圧縮後
パラメータ
Klystron
20MW
②電荷量
0.9nC
S-band linac
(1.5m×2)
45°Bending
magnet
Q-magnet
エネルギー
37.5MeV
バンチ長
1ps(rms)以下
90°Bending
magnet
THz pulse
Achromatic
arc section
(バンチ圧縮部)
②
Beam dump
Sample
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Detector
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Achromatic arc section
バンチ圧縮
加速器の位相を調整することで,一つの電子バンチ内部で
エネルギーの高い電子が前に,低い電子が後ろとなる
z’
進行方向
低
z
高
入射後
longitudinal
これを利用して, Achromatic arc sectionで
エネルギー毎に光路を変えて,バンチ長を圧縮する
高エネルギーの電子は遅れる
低エネルギーの電子は進む
入射前
Q-magnetで
光路差を調整する
z’
z
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検出部
短バンチにしたものを
Bending Magnetで曲げることにより
THz-CSRを出す
出たTHz波は右表の二種類の
ダイオード検波器で検出した
クォーツ窓
Wise Wave
FAS10SF-01
Virginia
Diodes, Inc.
WR-3.4ZBD
Aperture [mm]
1 (H) × 2 (V)
1 (H) × 1 (V)
周波数帯 [THz]
0.075 ~0.11
0.22~0.33
感度 [mV/mW]
500
500
導波管
検波器
THz-CSR
アンテナ
Sample
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作成サンプル例(酢酸ビニル)
測定試料
接着剤のTHz透過特性を観測
ポリプロピレン(PP)板
Lab VIEW 自作プログラム
1mm
二軸ステージに固定したサンプルを
1mmステップで走査イメージング
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二種類の物質の透過測定
• 接着剤①「酢酸ビニル樹脂 40% + 水 60%」
⇒水の蒸発によりポリ酢酸ビニル化
(木工用ボンド)
• 接着剤②「シアノアクリレート」 (アロンアルファ® )
⇒水を触媒として高分子化する
• 二重結合解離
• 連鎖重合反応
• 反応終了
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3.結果と考察
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実験結果①
• 接着剤①「酢酸ビニル樹脂 40% + 水 60%」
⇒水の蒸発によりポリ酢酸ビニル化
(木工用ボンド)
• 接着剤②「シアノアクリレート」 (アロンアルファ® )
⇒水を触媒として高分子化する
• 二重結合解離
• 連鎖重合反応
• 反応終了
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塗布から30分経過した接着剤①
(V)
5~20%透過
0.1THz
(cm)
0.1THzに比べて0.3THzの吸収が強い
(V)
0.3THz
透過見られず
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(cm)
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塗布から1週間経過した接着剤①
0.1THz
2mm
2mm
前頁の0.1THzで用いた
ボンドを一週間放置したもの
0.3THz
0.3THzでは硬化部分の
エッジが強調されている
2mm
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接着剤①時間経過
一週間(175h)経過
0.1THz
0.3THz
元々含まれていた水分の減少による硬化が確認できた
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実験結果②
• 接着剤①「酢酸ビニル樹脂 40% + 水 60%」
⇒水の蒸発によりポリ酢酸ビニル化
(木工用ボンド)
• 接着剤②「シアノアクリレート」 (アロンアルファ® )
⇒水を触媒として高分子化する
• 二重結合解離
• 連鎖重合反応
• 反応終了
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接着剤②時間経過 (0.1THz)
1.5時間経過
3時間経過
シアノアクリレートはPP板に接着せず,
極性を持った物質に触れるまで気化している
表面のゴミに接着することで高分子化した,
シアノアクリレートの膜が観測できた
一度気化した
接着剤が硬化した
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1週間経過した接着剤②
0.1THz
6mm
6mm
0.3THz
高分子化して白くなった接着剤②は
• 0.1THzの波を吸収する
• 0.3THzの波を透過する
THz指紋スペクトルが示唆される
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6mm
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まとめ
•
小型S-band Linacで電子バンチを加速・圧縮を行い,
CSR(コヒーレント放射)によるTHz波を発生させた
•
得られたTHz波により,ポリプロピレン板の内部に挟んだ
接着剤①(酢酸ビニル樹脂 40% + 水 60% ),
接着剤②(シアノアクリレート)
二種類の材料の透過イメージングに成功した
•
接着剤①の硬化(脱水・高分子化)に伴って
THz波の吸収率の時間変化を観測出来た
•
接着剤②が硬化(高分子化)した状態で
0.1THz帯と0.3THz帯の波の吸収に違いがみられ,
THz指紋スペクトルが示唆される
今後
CSRのTHz波を用いた時間領域分光(THz-TDS)によって,
試料の周波数スペクトルを得ることを目指す
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