C型慢性肝炎の治療について

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C型慢性肝炎の治療について
―2014年版ガイドラインを踏まえて―

福山市民病院 肝臓内科 辰川匡史

2014年11月20日


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肝臓の構造・機能
消化管で吸収された栄養
を取り込んで合成する
各種化学物質の代謝
体内不要物質の解毒
胆汁の合成


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C型慢性肝炎




いろいろな理由(母子感染・性行為などによる感染、
幼少期の予防注射、いれずみ、鍼灸、昔の手術や輸
血など)により体内にC型肝炎ウイルス(HCV)が侵
入することがあります。
C型肝炎ウイルスは風邪やインフルエンザのような急性の
症状はあまり起こしませんが、体内から出て行かずに、長
くとどまります。


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C型肝炎ウイルスが体内にあると…





ウイルスと自分の免疫がたたかいを続ける=炎症
肝臓が徐々に荒廃し、肝硬変になります。肝硬変になる速度はさまざま
ですが、肝臓の検査値(AST/ALT)が高ければ高いほど、肝硬変への
移行が早い。
ウイルスによって、肝臓癌が起こりやすくなります。癌の発生リスクは肝硬
変に進むにつれて高くなります。(C型肝硬変の発癌リスクは年57%)

これがC型肝炎ウイルスを排除した方がいい理由です。


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C型慢性肝炎の治療

じゃあどうする?

 原因を断つ=ウイルスを駆除する



現時点では治療の主軸はインターフェロンと経口剤
状態に応じて薬剤の使い分けを行う

根治的な治療ができない場合は…


肝炎がそれ以上悪くなるのを予防する




いわゆる肝庇護療法 ウルソ・強ミノ など
瀉血療法
インターフェロン少量長期療法


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ウイルスを駆除する治療=ウイルスの種
類・量によって異なります。




同じC型肝炎ウイルスでも排除しやすいタイプと排除しにくい
タイプ(Genotype 1b)があります。日本人に多く感染して
いるウイルスは排除しにくいタイプです。
同じウイルスのタイプなら、ウイルスの量が少ない人が駆除し
やすいです。
それ以外

Genotype 1b
2014年9月内服薬が発売
ダクルインザ・スンベプラ
インターフェロン

インターフェロンが治療の主軸
ウイルスの状態に応じて
リバビリン
ソブリアード(もしくはテラビック)
を併用


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2014年:C型慢性肝炎に対する初回治療ガイドライン
ジェノタイプ 1
高ウイルス量

5.0

Log IU/mL
以上

低ウイルス量

5.0

Peg-IFN+RBV
(24週)
+SMV(12週)
もしくは経口二剤
IFN(24週)

ジェノタイプ 2
Peg-IFNα2b
+RBV(24週)
IFNβ
+RBV(24週)
IFN(8~24週)

Log IU/mL
Peg-IFNα2a(24~48週) Peg-IFNα2a(24~48週)
未満

■の部分以外はここ5年間変化なし(大体80-90%の割合で治療成功)
★ Genotype 1・高ウイルス量症例では、治療効果に寄与するホスト側の因子であるIL28Bの遺伝子及び
ウイルス側の因子である遺伝子変異(ISDR及びCore領域aa70)等を参考にして、治療の開始を決定する
のが望ましい。
★ Genotype 1, 2ともにうつ病・うつ状態などの副作用の出現が予測される症例、高齢者などの副作用出現の
リスクが高い症例に対してはIFNβ+Ribavirin併用療法を選択することが望ましい。


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ここまでのまとめ






C型慢性肝炎ウイルスによって起こること
「肝硬変」「肝癌」→楽しい老後のじゃまになる。
可能ならばウイルス駆除を行う。インターフェロンか、経
口剤か。ただし難しい場合は進行を遅らせる治療を行う。
消えにくいタイプ=Genotype 1bでは、治療方法は複数
ある。それ以外の場合は半年のインターフェロン治療で
8−9割は消える。


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Genotype 1b型・高ウイルス症例(初回治療)


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Genotype 1b高ウイルス例に対する治療
シメプレビル三剤併用療法

経口二剤療法





ダクルインザ
スンベプラ
2014年9月から発売
飲み薬を6か月間





シメプレビル(内服)3カ月
インターフェロン(週に一
度の皮下注射)6カ月
リバビリン(内服)3カ月


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どっちがいいの?
経口二剤療法






耐性ウイルスの問題(耐
性ウイルスは治療前の時
点で15%程度にある)この
場合成功確率が低く、さら
なる耐性化によって次世
代の治療確率も下がって
しまう
副作用(比較的弱いが、
ゼロではない)
肝硬変でも使いやすい
コスト高

シメプレビル三剤併用療法





インターフェロンの副作用は
やはり多彩(宿主の免疫を
賦活するため)
適応が限られる
インターフェロン治療はウイ
ルス駆除だけではなく明ら
かに肝癌の発癌リスクを下
げることがわかっている


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現在積極的な治療を選ばない場合


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インターフェロンの副作用―

残念ながらいろいろあります

ほとんどの方に生じる自覚症状の明らかなもの



発熱・けん怠感・関節痛・悪寒・食欲不振・
抑うつ症状・脱毛

自覚症状はあまりないが、採血データの変化を伴うもの




貧血
白血球減少
血小板低下

めったに起こらないが時に重篤な状態を起こすもの




間質性肺炎・眼底出血・脳血管障害
甲状腺機能異常、自己免疫疾患の発生など