レジュメ4

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年金の積立方式と賦課方式
世代重複モデル
• 世代重複モデルとは
• 人々の人生を「現役期」と「高齢期」の2期間だ
けで表したもの
• 「世代」とは生まれ年が同じ人々という意味
• 支払う保険料の総額を灰色の楕円の大きさで
示し、高齢期の生活費必要額を点線の白い楕
円で示す。
図表 2-2 世代重複モデルによる「積立方式」の説明
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• 第1期世代の下に右にずれて示されているの
が第2期世代の人々。
• 第2期世代は、第1期世代が高齢期を迎えて
いる時に、ちょうど現役時代を送っている人々
で、両者は1期間だけ縦に重なるように描かれ
ている。
• 図表の1番下に両矢印付きで示されているの
は「時代(期間)」であり、左から第1期、第2期
と段々将来に向かって時代が過ぎてゆく。
• 各世代が1期間ずれて互いに「重なり合う」よう
に描かれているため、「世代間重複モデル」と
呼ぶ。
• 積立方式とは
• 1期世代以降の各世代とも、保険料は自分達
の老後のために積み立ているので、両世代
の人々は互いに助け合うことはない。
• 互いに全く干渉し合わないので、他の世代が
たくさんいようと少なかろうと、自分の世代の
老後の生活費には全く影響がない。
• 年金創設期の高齢者は、通常の積立方式で
は年金を受け取ることは出来ない。
• 賦課方式とは
• 一方、賦課方式の場合には、創設期の高齢
者も年金を受け取ることが可能。
• 第1期という時代を一緒に生きている現役の
人々が保険料を支払い、支えてくれる。
• 第1期世代は自分の老後のために保険料を
積み立てておくことが出来ないため、次の第2
期世代に助けてもらう。
• これが、賦課方式が、「世代間の助け合い」と
いわれる所以。永遠に次の世代に負担をバト
ンタッチしてゆかなければこの年金制度は成
立しない。
図表 2-3 世代重複モデルによる「賦課方式」の説明
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• はじめから賦課方式だったわけではない
• 図表2-2の積立方式では、創設期の高齢者に年
金受給を認めていない。しかし、わが国の場合、
この創設期の世代というのは、戦争で大変な被
害を受けた人々なので、救済のため、保険料の
積み立てをしていなくてもある程度受給を認め
た。
• 他の先進国も多かれ少なかれ同じような状況。
• ただし、創設期の高齢者の年金受給を認めた途
端、年金は賦課方式で運営せざるを得ず、積立
方式の年金制度を選択することは不可能であっ
たとする主張は間違い。
• 創設期の高齢者への年金受給支払いを、「歴
史的負債(Legacy debt)」と呼ぶ。しかし、その
救済を何もその時代の現役世代だけが、全て
背負わなければならない理屈はない。
• 歴史的負債は、その救済を決めた国の政府
がまず国債などの形で「国の負債」として背負
い、その負債を、将来の世代が何世代にもわ
たって少しずつ負担して返済してゆけば良い。
図表 2-4 歴史的負債(Legacy debt)とその積立方式下での処理
国の負債
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• 創設期の高齢者への年金給付は、賦課方式
として第1期世代が負担するのではなく、国が
負債を負って支払う。この負債は、国が国債
などで使って、借りたり返したりを繰り返し、何
十年にもわたってロールオーバーすることが
できる。第1期世代だけではなく、第2期世代、
第3期世代・・・と将来にわたる様々な世代が、
少しずつ負担し返済してゆくことが可能。
• 国債発行の必要性も無い
• 歴史的負債の資金調達のために、国が借
金を背負い、国債を発行するのは政治的に困
難なのではないかとの見方がある。
• 現実には、国債を発行する必要も全くない。な
ぜならば、年金創設以降、各現役世代は保険
料を支払う一方で、年金財政には多額の積立
金が急速に積み上がってゆくため、その積立
金の中から資金調達をすれば良いから。
• 特に人口構成が若い時代は簡単にそれが可
能
• わが国の厚生年金は、まだ戦時中であった
1941年に設立された労働者年金制度がス
タート。その後、1944年に厚生年金制度とな
る。
• そもそも戦時公債を積立金によって吸収させ
ることが、年金設立の目的。戦費調達の国債
まで背負うことが出来るのだから、創設期の
高齢者の年金給付分などで、国がわざわざ
新たに国債を発行する必要はない。歴史的負
債は、積立金の中から調達できた。
• 積立方式と賦課方式の間
•
積立方式とはいっても、創設期の高齢者の
支払いを第1期世代の積立金で賄っているで、
それは賦課方式に限りなく近い。
• 実は、積立方式と賦課方式の差というのは、
模式図でみるほど明確なものではない。賦課
方式は積立方式に変えてゆくことが出来るし、
逆に、積立方式は賦課方式に変更することが
出来る。その途中にあるときには、積立方式
と賦課方式の間とでもいうべき制度。
• 賦課方式で決まる保険料率よりも、歴史的負
債の処理分だけわずかに保険料率を高く設
定しておけば、将来は必ず、積立金の過不足
の無い完全な積立方式の年金制度になる。
• 逆に、積立方式で制度が設立されたとしても、
歴史的負債に対する追加負担分の保険料引
上げを行なわなかったり、年金給付に見合わ
ないほど低い保険料に設定したりすれば、い
ずれ年金制度は完全な賦課方式となる。
図表 2-6 積立方式から賦課方式への移行
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役時代
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• 「修正積立方式」はまぎらわしい
• 実は、わが国の年金財政の歴史は、このよう
なプロセスで、積立方式から賦課方式に移行
していった。
• その理由は、まず第一に、歴史的負債に対す
る追加負担分の保険料率引上げを怠ってき
たこと、第二に経済成長をする中で保険料率
を低く据え置いてきたこと、第三に給付水準を
保険料に見合わないほど安易に引き上げて
きたことが挙げられる。
• 特に第三の給付水準引上げは、既に少子高
齢化が徐々に進行しつつあった1970年代初
めからまさに「大盤振る舞い」と呼ぶべき状況。
• 時の首相は田中角栄。1973年を福祉元年と
位置づけ、社会保障の安易なばら撒き政治
が行なわれた。具体的には、年金について
は、給付水準の大幅な引き上げ、物価スライ
ド・賃金スライドの導入など、医療について
は、老人医療費無料制度の創設、健康保険
の被扶養者の給付率引上げ、高額療養費制
度の導入などが挙げられる。
• 何れも甘い経済見通しの下で、十分な保険料
負担を伴わないで実行されたため、積立方式
の年金はみるまに賦課方式へと変貌を遂げ
た。
• 現在でもわが国の年金財政は、積立方式で
あったときの名残で、厚生年金と国民年金を合
わせて、約130兆円の年金積立金を保有。しか
し、これは本来、積立方式で運営され続けてい
た場合に存在していたはずの積立金額のほん
の一部。厚生年金の場合について計算すると、
2010年現在で本来あるべき積立金は約700兆
円。これに対して、実際に存在する積立金は約
130兆円なので、本来の2割に満たない水準。
• 現在の年金収支は、賦課方式であるが、厚生
労働省は、「修正積立方式」と呼称。この紛ら
わしい名称が、国民に、年金があたかも積立
方式で運営されているかのような誤解を抱か
せる原因。
• 賦課方式に移行する理由1:社会保険のパラドッ
クス
• 積立方式の年金制度が賦課方式に移行してし
まったという状況は、わが国に限ったことではな
い。アメリカを始め、他の先進国でも多かれ少な
かれ同じようなプロセスを辿って、賦課方式と
なって行った。その背景には、大きく分けて2つの
理由。
• その一つは、年金の創設期のように人口構成
が若く、人口成長率の高い時代においては、「賦
課方式の年金の収益率は、積立方式を上回る」
ということ。つまり、その時代に限っては、賦課方
式の方が積立方式よりも「全ての人々にとって
得」という状況。
• このため、政府が賦課方式に移行するのは、
ある意味で正当化され得る。この状況を「社
会保険のパラドックス」と呼ぶ。
• 図表2-7は、積立方式と賦課方式の収益率の
比較。現役期に1000万円の保険料の積み立
てを行った人が、10%の利子率で運用すれば、
高齢期に受け取る年金額は1100万円。
• 一方、賦課方式の場合、10人の現役で100万
円ずつ保険料負担を行い、1000万円の年金
を高齢者に支払うことを政府が計画。予想外
に人口が増え、現役がもう1人増えて11人に
なると、100万円×11人=1100万円。これは、
「人口増のボーナス」と言われる。
図表 2-7 社会保険のパラドックス
1000万円
1100万円
利子率
現役期
高齢期
人口成長率
1000万円
現役期
• 戦後すぐのわが国のように人口構成が若く、
一家庭で3人も4人も子供を産む社会では、人
口の成長率はもっと高いので、賦課方式の年
金よりも「得」ということになる。
• もし、この人口成長率よりも利子率が高い(人
口成長率>利子率)という状況が、その後の
時代についてもずっと成り立ち続けるのであれ
ば、全ての人々にとって得である「賦課方式」
を政府が採用することは合理的。
• 人口の成長率が非常に高い時代には、政府
は、積立方式の年金を賦課方式に移行させる
動機を持つ。
• 賦課方式に移行する理由2:宙に浮いた資金
• しかも、賦課方式に移行してしまえば、これま
で積み上がっていた多額の積立金は、賦課方式
の年金の運営にとって特に必要なものではなく
なるので、「宙に浮いた資金」。これは、政治家
や官僚にとって大変な魅力。これが、政府が賦
課方式への移行を行ってしまう第2の理由。
• 時の政治家や官僚にとっては「打ち出の小槌」。
政治家はそれを元手に、人気取りのための大盤
振る舞いを始め、官僚達はこの積立金に寄生す
る天下り特殊法人をたくさん作ったり、グリーン
ピア、サンピアの建設を始めた。こうして、積立
金が浪費されていき、賦課方式となっていった。
• 例え「人口成長率>利子率」という状況下で、
賦課方式の採用が合理的であったとしても、
これまで積み立ててきた積立金を勝手に使っ
てもよい理屈にはならない。
• 賦課方式への移行と、それまで積み立てて
あった積立金を勝手に浪費するということとは
全く別の話、別次元の問題。
• 積立金は、税収とは異なり「国民に帰属する
財産」なので、官僚や政治家がこれを勝手に
使うのは犯罪。
• どの国でも人口成長率は下がっていく
• それでも、「人口成長率>利子率」という状況が未来
永劫続くのであれば、積立金を勝手に浪費してしまっ
たことはごまかし続けられる。問題は、時代を経るに
従って、人口成長率は低下し、「人口成長率<利子
率」という状況に変わってしまうこと。
• その理由は、①女性の高学歴化・社会進出、②子供
の教育費増などで、先進国共通の現象。
• 「人口成長率>利子率」が「人口成長率<利子率」と
いう状況に逆転すると、まさにパラドックスと同じメカニ
ズムによって、積立方式の方が、逆転以降の「全ての
人々にとって得」。政府は元の積立方式に年金制度を
戻さなければならなくなる。
• 賦課方式から抜け出せない政治経済学
• しかしながら、ここで困った問題は、積立方式
に戻そうにも既に積立金の大部分を使ってし
まっているので、簡単には元に戻れないこと。
• そのため、今から積立方式に戻るためには、
政治家の大盤振る舞いや官僚の無駄遣いに
よって失われた積立金を、もう一度、国民が
追加の負担をして元に戻さなければない。
• 当然、国民は怒り、責任の所在を明らかにす
る必要がでてくる。その責任を問われる政治
家や官僚が、積立方式への移行に反対する
のは当然。
• しかも、現在の賦課方式の年金制度によって
被害を受ける世代は、比較的若い世代なので、
今の政治家にとって大票田である現在の高
齢者は、全く被害を受けない。むしろ、積立方
式移行を行ってしまうと、高齢者たちにも追加
負担を迫るので、大票田に不人気な政策を決
断するはずがない。
• くわえて、若者は投票率が低く、高齢者は投
票率が高いということも、政治家が、現在の高
齢者達の既得権益保護や利益供与のために
行動する合理的な動機となる。
• 今後、団塊の世代が大量退職し、この得する
高齢者の利益集団が益々多くなってゆくの
で、このメカニズムは強化される(シルバー民
主主義)。
• さらに、政治家の大半はすでに高齢者なの
で、賦課方式を続けることによる悲惨な未来
を見ないで済む。
• 厚生官僚にしても2-3年で部署が変わるという
人事ローテーションなので、わざわざ自分の
任期中に「火中の栗」を拾ってまで改革を行う
必要はない。政治家や官僚の「時間的視野」
は非常に短い。
• かくして、現在の若い世代や将来の世代が、
いかに悲惨な未来に直面することがわかろう
とも、問題解決は先送りされ続けることになる。
• 政治家や官僚が情報を操作してまで国民に真
実を知らせないようにすることは、誠に自然な
成り行きである。
• また、改革として、本質的でないその場限りの
延命策が用いられ、抜本的改革がいつまでも
先送りになるのも、合理的な行動。
わが国の公的年金制度
図表 2-12 年金制度の仕組み
2
階
厚生年金
共済年金
国民年金
1
階
基 礎 年 金 制 度
1号被保険者
2号被保険者 3号被保険者 2号被保険者
•
①職域別の分立した制度に、②横断的な財
政調整が入った仕組み。
• 基礎年金制度が設立される1985年以前には、
「共済年金」、「厚生年金」、「国民年金」の3種
類の年金がそれぞれ分立。
• 歴史的には公務員は戦前から恩給制度があ
り、それを受け継ぐ形で作られたのが公務員
達の共済年金。多数の共済があるが、国家
公務員共済と地方公務員共済組合、私学学
校教職員共済の3種類にまとめられ、2012年
度末現在で、440万人の加入者数。
• 企業に勤めるサラリーマンが加入する年金は、
厚生年金。現在、旧社会保険庁から名前が変
わった日本年金機構が運営を行なっており、
2012年度末現在で、3,472万人が加入をしてい
る。
• 共済年金と厚生年金の2つを合わせて、被用者
年金と呼ぶ。
• 1961年には、サラリーマン以外の農林水産業従
事者や自営業者が加入できる国民年金が設立
され、皆年金が達成された。
• 国民年金も財政基盤は脆弱なため、1985年の年
金改革において、制度横断的な財政調整制度で
ある基礎年金制度が設立。
• この基礎年金の受給額は、国民年金と等しくな
るように小さく設計。
• これまでの厚生年金、共済年金として受給して
いた年金額は、基礎年金とそれを上回る分に名
目上区分されることとなり、基礎年金分を1階部
分、それ以上の部分を2階部分報酬比例部分と
呼ぶ。企業年金に当たる部分は3階部分と呼ば
れている。
• 国民年金の受給額は1階部分のみ。また、それ
に伴って、これまで被用者年金の中で一緒に支
給されていた専業主婦等のサラリーマンの配偶
者の年金も、1階部分の基礎年金として独立。
• 国民年金に加入している自営業や農林水産業
の人々は第1号被保険者、被用者年金に加入し
ているサラリーマン本人達を第2号被保険者、
サラリーマン達の専業主婦の配偶者たちを第3
号被保険者と呼ぶ。2012年度末現在、それぞ
れ、1864万人、3793万人、960万人の構成。
• 基礎年金制度は「基礎年金勘定」という特別
会計で運営。この特別会計の「支出面」は、基
礎年金を受給する高齢者全員に支払う総費用
(基礎年金給付費)。「収入面」は各保険から徴
収される「基礎年金拠出金」と税金の投入であ
る「国庫負担」から成り立つ。
• 2009年度からは給付費の1/3から、1/2の比率
に引上げられた。
•
「基礎年金拠出金」とは、簡単に言ってしまえ
ば、各年金制度に加入している被保険者数の
割合に応じて負担を「割り勘」する仕組み。
• この割り勘は被用者年金には高く、国民年金の
1号被保険者には軽いという不公平な割り勘。
• 1号被保険者の数は、未納者や減免者、猶予
者を本来含んでいるはずだが、基礎年金拠出
金を計算する際には、彼等をほぼ除いて計算。
その分、被用者年金が多く払い、肩代わりをす
るという仕組み。
• 実際には、積立金を取り崩して充当するので、
将来の被用者年金加入者が負担を負う。
保険料負担と所得再分配
• 年金の保険料負担は、国民年金が2014年度
で、月額1万5250円の定額で、20歳から60歳
までの人々から徴収。
• 一方、共済年金や厚生年金の保険料は、保
険料率(保険料額/ボーナスを含む賃金)と
して徴収されている。現在、厚生年金の保険
料率は2014年9月から17.474%、共済年金の
保険料率はそれよりやや低い値でまちまち。
• 年金には、通常の年金である老齢年金以外に、
障害年金、遺族年金といった仕組みがある。
• 国民年金の支給額は、2014年度、満額で月6万
4,400円の定額で、65歳から支給。
• この満額を受け取るためには、40年間保険料を
納付しなければならず、それよりも納付期間が短
い場合には、その長さに応じて年金受給額が減
額される仕組み。
• また、国民年金(基礎年金)を受け取るために
は、資格期間も重要。資格期間というのは、保険
料納付期間と減免をうけている期間合計した期
間の概念で、これが、25年以上無いと、年金支給
は全く行なわれない。ただし、2015年10月から10
年に短縮される予定。未納・未加入期間が長い
と、「低年金者」「無年金者」となり、近年の生活
保護受給者増の一因となる。
•
•
•
•
•
厚生年金については、報酬比例の保険料率を支
払っているために、賃金が高いほど支払う保険料額
は高く、したがってその支払った保険料額の多寡に
応じた年金額が給付。これが2階部分を報酬比例年
金と呼ぶ所以。年金額は、保険料の納付期間に応じ
ても変わってくし、生まれ年によっても変わる。
65歳時点で受け取る年金額は、2004年改革以前は、
所得代替率を目標値水準の60%から乖離させないよ
うに設定されてきた。
「所得代替率」とは、「40年加入のモデル世帯の年金
受給額/その時の現役世代の男子の手取り賃金平
均額」と定義。
これを維持するために、手取賃金の伸び率で年金額
を増額させることを賃金スライドと呼ぶ。
66歳以降に受け取る年金額は、65歳時点の年金に
物価上昇率を乗じて計算。この仕組みを物価スライド
と呼ぶ。
2004年年金改革の概要
図表 2-14 2004 年年金改革の概要
① 保険料水準固定方式の導入(厚生年金 18.3%、国民年金 16,900 円)
② マクロ経済スライドの導入と所得代替率下限(50%)の設定
③ 基礎年金国庫負担割合の 1/3 から 1/2 への引上げ
④ 有限均衡方式の導入
• このうち、①「保険料水準固定方式」と②「マクロ経
済スライド」の導入は、これまでの改革が「給付水準
に合わせて保険料率を上げてゆく」という考えに立っ
ていたのに対して、発想を逆にして、「保険料負担の
限界を設定し、それに合わせて給付水準を下げる」
という転換を行なったものとして、大変意義深い。
• まず、厚生年金の保険料率については、2004年の
13.58%から0.354%ずつ引き上げて行き、2017年に
18.30%となったところで将来にわたって固定。
• また、国民年金の保険料も2004年の月1万3300円
から毎年280円ずつ増加して2017年に1万6900円
(2004年価格)となったところで固定。
• 保険料率水準を固定した上で、財政を均衡させるた
めには、その反対側である給付水準をカットしなけ
ればならない。そのために導入されたのが、マクロ
経済スライド。
• これは、65歳時点の年金額決定に使われる賃金ス
ライドと、66歳以降の年金額に使われる物価スライド
の伸び率を小さくし、伸び率を低くすることで将来の
年金給付をカットするという仕組み。
• 具体的には、それぞれの賃金スライド率、物価スラ
イド率から、「スライド調整率」と呼ばれるものを差し
引くことで、それぞれのスライド率(伸び率)を小さく
する。
• 具体的にこのスライド調整率は、①公的年金の全被
保険者数の減少率の実績(3年平均)と、②平均余命
の伸び率を勘案して設定した一定率(0.3%)を足した
ものであり、およそ毎年0.9%の率となる。
• このスライド調整率は、公的年金の全被保険者数の
減少率が考慮されているから、少子化が今予想され
ているよりも進行し、被保険者数が減れば、給付カッ
トが追加的に行なわれることになる。このため厚生
労働省は、「マクロ経済スライド」を、少子高齢化の
進展を自動的に調整する自動安定化装置であると
して、盛んに宣伝を行なってきた。
• また、「年金、社会保障の専門家」と呼ばれる人々も、
盛んにこのマクロ経済スライドという仕組みを賞賛す
るものが多い。しかしながら、後述のように、これは
「自動安定装置」ではない。むしろ、単純な給付カット
と見るべきである。
• このマクロ経済スライドによる給付カットは永遠に続く
ものではない。2004年改革から、年金財政の計画期
間は100年ということになり、100年後におよそ1年分
の年金支出分の積立金が残るように、給付水準が決
定される。
• このように100年後という有限の期間に計画期間を
定めて、積立金を取り崩して財政均衡を図ることを有
限均衡方式と呼ぶ。具体的には、100年後に所定の
積立金が残せるようになるまで給付カットと積立金取
り崩しが続いてゆき、積立金が残ると分かった時点
でマクロ経済スライドが停止される。
• 2004年の改革以降、一度も発動されない「伝家の宝
刀」だったが、2015年度からデフレ解消によって発動
されるようになった。
年金財政の現状
• 2004年改革で、「100年安心」をうたった政府で
あったが、その後の5年で、見込み通りの経済成
長率、出生率、納付率等が達成できず、大幅に見
込みが狂った状態に。
• 2009年の財政検証年金の健康診断前には、リー
マンショックが起き、不況のどん底に。
• しかし、厚生労働省は、「粉飾決算」と言うべき財
政検証を発表し、100年安心が堅持していると公
表した。例えば、運用利回りは今後100年近く
4.2%もの高利回りで運用するという前提。
• リーマンショック後の統計には一切触れず。その
後も5年間、何も見直しを行わなかった。
2009年財政検証で用いられた経済想定値
2009年
2010年
2011-15年
2016年以降
運用利回り
1.5
1.8
3.2→2.9 *
3.2→4.1 **
賃金上昇率
0.1
3.4
2.1→2.7
2.1→2.5
物価上昇率
-0.4
0.2
1.0→1.9
1.0→1.0
合計特殊出生率
労働力率
国民年金未納率
2050年に1.39→1.26
労働市場改革が成功し、女性、高齢者で相当の上昇
2009年から既に2割に低下(現状は約4割)
注)太字が財政検証の想定値。→の左の細字は2004年改革時点の想定値。*は2011-19年、**は2020年以降。
• その後、さらに東日本大震災、民主党政権下のデ
フレ深刻化等にともなって、①マクロ経済スライド
は発動できず、②運用利回りは低迷、③保険料収
入も想定外の低さに留まり、積立金取り崩しが続
く。
• アベノミクスでやや積立金が増えたものの、想定
外の積立金取り崩しが起きている状況は変わら
ず。
• こうした中、厚労省は2014年に新しい「財政検証」
を公表。目くらましのようにたくさんのシナリオを提
示したが、政府の議論では「100年安心」が続いて
いる想定が使われている。
• したがって、抜本改革は決まらず。GPIF改革で株
への運用割合が増し、その想定が毎年6%を超え
る上昇となる。逆に言えば、そう想定しなければ、
2014年財政検証で用いられた経済想定値
成長率
(名目)
ケースA
ケースB
ケースC
ケースD
ケースE
ケースF
ケースG
ケースH
100年後までの 運用利回り運用利回り
賃金上昇率
結果
←
ア
ベ
ノ
ミ
ク
ス
→
3.4%
5.4%
1.1%
100年安心
2.9%
5.1%
1.2%
100年安心
2.5%
4.8%
1.4%
100年安心
2.1%
4.5%
1.5%
100年安心
1.6%
4.2%
1.7%
100年安心
←
低
成
長
→
1.3%
4.0%
1.5%
2040年で見直し
0.7%
3.1%
1.2%
2038年で見直し
0.2%
2.3%
1.0%
2036年で見直し
運用利回り4.2%を達成するための株価、
為替レート
日経平均株価*
為替レート(円ドル)
現在
2030年
1万5千円
3万8千円
102円
212円
2050年
2110年
12万2千円 400万2千円
529円
*現在の実質価格で評価。インフレで上がっているわけではない。
8207円
現実的な年金予測
• 現実的な経済想定(長期的な名目利回り2.5%
等。アベノミクスによる株高を織り込む)のもとで
計算すると、2040年代には積立金が枯渇する。
• 積立金が枯渇するとどうなるのか。
• 保険料引き上げや給付カットであるが、保険料
引上げが最も可能性が高い。
• 保険料率を2035年までに24.8%にする改革を行
えば、100年安心プランは維持可能。
• 消費税引上げは年金財政を改善しない。
厚生年金の積立金予測
兆円
150.0
100.0
50.0
0.0
-50.0
-100.0
-150.0
-200.0
-250.0
-300.0
2040年
国民年金の積立金予測
兆円
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
-25.0
-30.0
2041年
2040年
2038年
2036年
2034年
2032年
2030年
2028年
2026年
2024年
2022年
2020年
2018年
2016年
2014年
2012年
2010年
厚生年金の保険料率の推移
26.0
%
24.0
22.0
20.0
18.0
100年安心プラン
16.0
保険料率再引上げ
14.0
12.0
10.0
保険料を引き上げた場合の厚生年金
の積立金予測
兆円
140.0
120.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
年金破綻は起きるのか
• 年金破綻は本質的な問題では無い。負担引
き上げで財政維持は可能。
• 本質的な問題は、巨大な世代間不公平の存
在。若者、将来世代は支払ったものが返って
こないという現実。
• 保険料引き上げの代わりに、税金投入や給
付カットをしても世代間不公平はあまり変わら
ない。
• 積立方式でも長生き保険という機能は変わり
ない。個人の破産は無い。
• 少子高齢化時代にもっともふさわしい制度。
• 実は、積立方式で始まった年金制度。
• 1970年代初頭にはじまった大盤振る舞い。
• その結果として生じた莫大な債務超過。
• 厚労省も認めた800兆円の債務超過。
• 債務超過の存在は、世代間不公平の証拠で
もある。
厚生労働省による年金債務の試算結果
単位:兆円
合計
うち厚生年金 うち国民年金
(1)年金債務
950
830
120
(2)積立金
150
140
10
(3)年金純債務A((1)-(3))
800
690
110
(4)国庫負担分
250
190
60
(5)年金純債務B((1)-(2)-(3))
550
500
50
公的年金全体の年金純債務の試算結果
単位:兆円
合計
うち厚生年金 うち国民年金 うち共済年金
(1)年金債務(国庫負担分を除く)
920
702
66
152
(2)積立金
183
127
8
48
(3)年金純債務
737
574
58
104
厚生年金の世代間不公平の実態
生まれ年
保険料引上げ
支給開始年齢引上げ
1940
1945
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
3,170
1,930
1,030
470
40
-380
-790
-1,160
-1,510
-1,790
-2,030
-2,230
-2,390
-2,500
-2,550
3,170
1,930
1,030
490
120
-480
-1,060
-1,690
-2,110
-2,270
-2,330
-2,360
-2,370
-2,370
-2,370
現実的な改革手段
• 2015年度の年金改革で、その必要性が議論され
ていた選択肢。ほとんどが取りやめ。
• マクロ経済スライドの強化→×、先送り案へ
• 年金の支給開始年年齢引き上げ→×
• 保険料納付期間延長→×
• 年金課税の強化→×
• パート労働者への加入拡大→△
• 専業主婦の年金保険料徴収→?
• 高額年金受給者に対するカット→経済財政諮問
会議が提案
支給開始年齢引き上げと年金財政
兆円
150.0
100.0
50.0
現状(改革なし)
0.0
2038年
2054年
-50.0
支給開始年齢70歳
-100.0
-150.0
支給開始年齢75.5歳
-200.0
-250.0
2100
2095
2090
2085
2080
2075
2070
2065
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2025
2020
2015
-300.0
支給開始年齢引き上げと年金財政2
兆円
150.0
100.0
50.0
支給開始年齢65歳
0.0
2038年
2068年
-50.0
支給開始年齢70歳
-100.0
-150.0
支給開始年齢72.5歳
-200.0
-250.0
2100
2095
2090
2085
2080
2075
2070
2065
2060
2055
2050
2045
2040
2035
2030
2025
2020
2015
-300.0
先進各国の支給開始年齢
日本
アメリカ
イギリス
フランス
ドイツ
ノルウェー
支給開始年齢
65
67
68
67
67
67
到達年
2025(男)、
2030(女)
2027
2046
2018
2029
年金改革による世代間不公平の変化
万円
4,000
3,000
2,000
1,000
保険料引上げ
支給開始年齢引上げ
0
-1,000
-2,000
1940
1945
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
-3,000
注)厚生年金に40年加入の男性、専業主婦の有配偶者のいるケース。厚生年金は、現状では100年後までの財政均衡
は達成されていないため、保険料率は2017年度に18.3%に達して以降も引上げ続け、2032年に23.8%まで引き上げてそ
の後固定する改革を行なうと想定した(それに伴って、マクロ経済スライドも2041年度まで適用)。一方、支給開始年齢引
上げは、現在と同じペースで上げ続け、75.5歳まで引き上げるケース。
積立方式移行による抜本改革
• 白いキャンバスに絵を一から描くことはできな
い。
• 積立方式移行」とは、「積立方式の年金制度
を今から新しく設立する」ことでは無い。
• 積立方式移行とは、「賦課方式の債務処理+
積立方式の年金設立」。
• 積立方式移行は、JRの経営再建と同じ。
• 年金清算事業団方式による改革。新年金制
度は、積立方式。
•
•
•
•
年金改革における「同等命題」。
しかし、本当は、同等命題では無い。
相続資産からの徴収のメリット。
長期間で薄く広く徴収する追加所得税。
• そのために、年金清算事業団は、国債により
資金調達。
• 資金調達は新年金制度の積立金を使って行
う。
積立方式移行の実際
年金清算事業団の支出の推移
兆円
50.0
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
• 年金清算事業団がおった年金純債務は、直ぐ
にキャッシュで用意する必要は無い。
• 財源は、①積立金、②新型相続税、③追加所
得税、④年金事業団債による資金調達。⑤掛
け捨てがある程度できれば、所得税は下がる。
• 相続資産は年間50兆円の安定財源。新型相
続税は、基礎控除無しで、時限的な税。
• 不動産からの相続税徴収をどう進めるか。
• 掛け捨てのロジック(防貧保険、生活保護ただ
乗り防止)。
• 資金調達は、積立方式の新年金制度を使う。
25.0
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
2065
2070
2075
2080
2085
2090
2095
2100
年金清算事業団に投入される新型相続税と
高資産者の年金掛け捨て額
兆円
20.0
15.0
相続税20%
相続税40%
10.0
掛け捨て
5.0
0.0
750兆円の債務処理に必要な追加所得税率
(100年返済のケース)
掛け捨てあり
相続税20%
相続税40%
なし
1.12%
1.93%
(336万円)
(579万円)
0.36%
1.18%
(108万円)
(354万円)
(150年返済のケース)
掛け捨てあり
相続税20%
相続税40%
なし
0.84%
1.44%
(252万円)
(432万円)
0.27%
0.88%
(81万円)
(264万円)
年金清算事業団の財政収支1(相続税率
20%、掛け捨てあり、所得税率1.12%のケー
ス)
支出
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
2065
2070
2075
2080
2085
2090
2095
2100
42.7
42.2
40.1
37.3
34.3
29.8
26.2
22.3
18.0
13.5
9.5
6.3
4.0
2.6
2.0
1.7
1.8
1.8
収入
合計
うち相続税 うち所得税 うち掛け捨て
18.2
10.7
3.9
3.5
18.3
10.4
4.1
3.8
17.6
9.6
4.2
3.8
16.4
8.3
4.3
3.8
14.9
6.6
4.5
3.9
13.1
4.5
4.6
4.0
11.2
2.3
4.7
4.1
9.2
0.0
4.9
4.3
9.4
0.0
5.0
4.4
9.6
0.0
5.2
4.4
9.7
0.0
5.3
4.4
9.8
0.0
5.5
4.3
9.9
0.0
5.7
4.2
10.0
0.0
5.8
4.2
10.1
0.0
6.0
4.1
10.2
0.0
6.2
4.0
10.4
0.0
6.4
4.0
10.4
0.0
6.6
3.8
単位:兆円
収支
-24.4
-23.9
-22.5
-20.9
-19.4
-16.7
-15.0
-13.1
-8.6
-4.0
0.2
3.5
5.9
7.4
8.1
8.5
8.6
8.7
年金清算事業団の財政収支2(相続税率40%、
掛け捨てなし、所得税率1.18%のケース)
支出
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
2065
2070
2075
2080
2085
2090
2095
2100
42.7
42.2
40.1
37.3
34.3
29.8
26.2
22.3
18.0
13.5
9.5
6.3
4.0
2.6
2.0
1.7
1.8
1.8
収入
合計
うち相続税 うち所得税 うち掛け捨て
25.6
21.5
4.2
0.0
25.1
20.8
4.3
0.0
23.5
19.1
4.4
0.0
21.1
16.5
4.6
0.0
17.8
13.1
4.7
0.0
13.9
9.1
4.8
0.0
9.6
4.6
5.0
0.0
5.1
0.0
5.1
0.0
5.3
0.0
5.3
0.0
5.5
0.0
5.5
0.0
5.6
0.0
5.6
0.0
5.8
0.0
5.8
0.0
6.0
0.0
6.0
0.0
6.1
0.0
6.1
0.0
6.3
0.0
6.3
0.0
6.5
0.0
6.5
0.0
6.7
0.0
6.7
0.0
6.9
0.0
6.9
0.0
単位:兆円
収支
-17.0
-17.1
-16.6
-16.2
-16.5
-15.9
-16.6
-17.2
-12.7
-8.1
-3.9
-0.5
2.0
3.6
4.4
4.9
5.0
5.2
新年金制度(積立方式)の財政収支
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
2065
2070
2075
2080
2085
2090
2095
2100
支出
0.2
0.7
1.9
4.4
8.8
14.9
21.3
28.2
34.8
41.2
47.0
50.8
52.8
53.9
54.0
53.1
52.5
51.0
収入
27.5
28.4
29.3
29.7
30.0
30.9
31.8
33.4
34.7
36.1
37.1
37.5
37.3
37.1
36.6
36.3
35.6
34.6
収支
27.3
27.7
27.3
25.3
21.3
16.0
10.5
5.2
-0.1
-5.0
-9.9
-13.3
-15.5
-16.8
-17.4
-16.8
-17.0
-16.4
新年金制度(積立方式)の積立金の推移
兆円
700.0
600.0
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
0.0
年金清算事業団債の残高の推移
兆円
700.0
600.0
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
0.0
-100.0
-200.0
相続税20%、掛け捨
て、所得税1.12%
相続税40%、所得税
1.18%
新年金積立金
世代間格差の改善(厚生年金加入者、100年
間で債務返済のケース)
生まれ年
1940年生まれ
1945年生まれ
1950年生まれ
1955年生まれ
1960年生まれ
1965年生まれ
1970年生まれ
1975年生まれ
1980年生まれ
1985年生まれ
1990年生まれ
1995年生まれ
2000年生まれ
2005年生まれ
2010年生まれ
2015年生まれ
現行(再掲)
3,460
2,340
1,490
970
460
-40
-560
-1,030
-1,480
-1,840
-2,150
-2,420
-2,610
-2,750
-2,830
-2,860
積立方式移行1
積立方式移行2
積立方式移行3
積立方式移行4
相続税20%
相続税20%
相続税40%
相続税40%
掛け捨てなし
掛け捨てあり
掛け捨てなし
掛け捨てあり
所得税率1.93% 所得税率1.12% 所得税率1.18% 所得税率0.36%
3,460
3,460
3,460
3,460
2,340
2,340
2,340
2,340
1,500
1,510
1,510
1,520
1,020
1,050
1,050
1,080
600
660
650
710
260
340
340
420
-30
80
80
200
-250
-100
-110
40
-420
-240
-260
-80
-510
-300
-320
-110
-560
-330
-350
-120
-590
-350
-370
-120
-590
-350
-370
-120
-590
-350
-370
-120
-590
-350
-370
-120
-590
-350
-370
-120
積立方式に対する誤解とその答え
• 現在の高齢者やもうすぐ高齢者になる世代
は、積立方式移行によって年金が大きく減額
され、大変な痛みを味わう。
• →この主張は全くの嘘。積立方式移行で、現
在の高齢者やもうすぐ高齢者となる世代の年
金が減額される必然性はない。
• 積立方式移行で積立金が再び大きく積み上
がる。そして、その資産運用が大変である。
• →積立方式で運営する「新年金制度」の積立
金は大きく積み上がるが、一方で、年金債務
を引き受けた「年金清算事業団」は当初は赤
字運営で、「年金清算事業団債」を発行。
• 積立金の多くがその公債引き受けに使われる
ので、新年金制度が資産運用に困ることはな
い。
• 積立方式はインフレに弱く、資産価値が大きく
目減りする。
→戦後直ぐの時期や1970年代初めのオイル
ショック時などの「規制金利」の時代の話。自
由金利の現代では、「フィッシャー効果」が働
き問題ない。
残存期間の長い国債保有の問題を回避した
ければ、「物価連動債」を発行すればよい。年
金事業団債は物価連動債とする。
8
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
国債金利と物価変動率の連動
14
%
12
10
国債流通利回り
消費者物価指数前年比
6
4
2
0
-2
-4
• 積立方式移行のためには、現在の年金制度
が抱える800兆円もの債務を、直ぐにキャッ
シュとして用意しなければならない。
• →年金純債務が全額、直ちに表面化すること
はありえない。「年金清算事業団」が毎年、年
金受給者に支払う年金額は40兆円ほどで、し
かも急速にその金額は減少してゆく。毎年、
それだけの支払い額を、種々の税金投入や
「年金清算事業団債」でファイナンスすれば良
いだけ。
• 800兆円の年金債務を処理するために、買い
手がつくかどうかわからない新規赤字国債を
大量に発行する必要がある。そのため、国債
マーケットが大混乱に陥る。
• →年金債務の多くは、「年金清算事業団」が
発行する「年金事業団債」の発行という形で
出現。それは全て、「新年金制度」に積み上げ
られる積立金で消化可能。国債マーケットが
大混乱に陥る心配は全くない。
• 改革時の現役世代が背負う「二重の負担」は、
積立方式に移行する時のみに発生する。また、
改革による「二重の負担」が重すぎて、現役世代
はその痛みに耐えられないから、年金改革は実
行不能である。
• →特に政治家の間に非常に良く流布されている
が、完璧な間違い。そもそも「二重の負担」とは、
賦課方式のもとでも発生。
• 積立方式では、各世代の二重の負担はむしろ、
賦課方式のもとで発生する二重の負担よりも小
さな金額。
生涯保険料率の区分経理
1980年生まれ 2010年生まれ
現行制度の生涯保険料率
20.1%
24.7%
積立方式の場合の生涯保険料率
15.1%
15.3%
支払超過(2重の負担)
4.9%
9.4%
• 賦課方式と、「積立方式移行+年金債務清算」
は、トータルで見て同じことであり、だから現
在の賦課方式のままで良い。
• →「同等命題」。賦課方式と積立方式移行が
なぜ「同等」になるかと言えば、債務処理をす
る人間がどちらも同じ若者世代や将来世代で
あると想定。
• 税の処理では、逃げ切り老人に負担を負わせ
ること可能。将来世代の負担についても、積
立金をマイナスにしない制約がかかっている
現行制度の保険料負担よりも、税負担で行う
方が、より長期にわたり、広く薄い負担に均す
ことが可能。
• 現在の賦課方式から全く違う財政方式に移
行するので、大変大きな制度変更が必要であ
り、積立方式移行は現実的ではない。
• →賦課方式と積立方式移行は、本質的に大
きく異なる財政方式ではない。大きな制度変
更が必要とは言えない。
• 積立方式移行には長期の移行期間が必要で
あり、その改革の果実はすぐに得られない。
• →これも全くの誤解。改革は直ちに行うことが
可能。改革したその直後から、改革の果実を
皆が味わうことができる。