ビオトープ水田内の環境変化が 淡水魚に与える影響

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Transcript ビオトープ水田内の環境変化が 淡水魚に与える影響

水利環境学研究室
大橋 知明
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背景
いくつかの種類の淡水魚は
水田のような一時的水域を生息産卵の場として利用
分断・減少
休耕田を湛水させ魚道を設置
し
ビオトープ水田として利用
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研究目的
過年度の調査より
様々な魚類の利用が確認
植生の乏しい環境
環境変化が魚類に与える影響を考
察
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調査地
旧谷汲村
農
道
揚水ポン
プ
:ソダ
:ヤシロール
:水稲耕作区
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調査内容
 水温調査:水田内の中央部および水稲耕作区中心部
で
30分間隔で水温の自記記録を行っ
た
 魚類調査 :水田内の水を落水し魚類を採捕
⇒2ヵ月に1回(3月・5月・
7月・9月・11月)
水温計(Green Line)
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代表魚種
タイリクバラタナゴ タモロコ
カワバタモロコ
淡水二枚貝に産卵
モツゴ
ヌマムツ
植物の茎や石の表面などに産卵床
をつくり産卵
なわばりを持ち、他の雄や魚類を
攻撃
オイカワ
メダカ
流れの緩やかな
砂礫底に産卵床
をつくり産卵
受精後メスは卵を
持ったまま泳ぎ、水
草などに付着
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発育ステージ
 仔稚魚:孵化後うろこが形成されるまで
 未成魚:うろこが形成されてから最初の成熟まで
 成魚 :最初の成熟以降
魚類の発育ステージ
種
タイリクバラタナゴ
モツゴ
オイカワ
ヌマムツ
メダカ
カワバタモロコ
タモロコ
体長(mm)
仔稚魚
未成魚
~19
20~34
~24
25~39
~29
30~69
~29
30~69
~19
20~24
~29
30~39
~24
25~49
成魚
35~
40~
70~
70~
25~
40~
50~
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解析方法
 Simpsonの多様度指数Dを応用した森下の多様度指数β
β =1/D
D=Σ{nⅰ(nⅰ-1)/N(N-1)}
(n:種数
採捕数)
N:各種の
⇒値が大きいほど多様性が高いことを示す
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 昨年度(植生などの設置前)と今年度(設置
後)の結果を比較
⇒水温と仔稚魚の個体数に違いがみられた
(遡上の調査より仔稚魚の遡上はほとんど確
認されていない)
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水温
水温(℃)
40
30
20
10
0
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月
2008
2007
気温(℃)
40
30
 気温の影響
20
 7月から揚水ポンプが2台から1台に減少
10
 植生などの設置による影響
0
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月
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水温
差=水稲耕作区の日平均水温-水田中央部の日平均水温
平均
平均水温
35
30
25
20
15
10
5
0
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
差(℃)
4
3
2
1
0
-1
-2
平均水温(℃)
差
 調査期間中の71%で水稲耕作区の方が水温が高い
 特に9月中頃からは常に高い
 調査期間全体では高水温期が長期化
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仔稚魚の採捕数と多様度指数の変動
カワバタモロコ
タイリクバラタナゴ
β
その他
ヌマムツ
(※
い)
オイカワ
モツゴ
βは値が大きいほど多様性が高
3
1000
タイリクバラタナゴの個体
数が7月~11月まで確認
800
2
β
600
400
1
200
0
11月
9月
7月
5月
2008年/3月
11月
9月
7月
5月
0
2007年/3月
採捕数(尾)
メダカ
産卵期は5~9月
12/18
40
水温(℃)
30
20
2007
2008
1
6
10
0
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月
タイリクバラタナゴにおける産卵期の開始要因は日
長にかかわらず16℃(Simizu and Hanyu,1982)
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仔稚魚の採捕数と多様度指数の変動
カワバタモロコ
タイリクバラタナゴ
β
その他
ヌマムツ
(※
い)
オイカワ
モツゴ
βは値が大きいほど多様性が高
1000
3
タイリクバラタナゴの個体
数が7月~11月まで確認
800
2
β
600
400
産卵期は5~9月
1
200
11月
9月
7月
5月
2008年/3月
11月
9月
7月
0
5月
0
2007年/3月
採捕数(尾)
メダカ
水温が影響
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仔稚魚の採捕数と多様度指数の変動
(タイリクバラタナゴを除く)
カワバタモロコ
カ
モツゴ
その他
ヌマムツ
β (※
い)
オイカワ
βは値が大きいほど多様性が高
400
5
①モツゴが増加
4
300
②メダカが増加
β
3
200
2
100
1
11月
9月
7月
5月
2008年/3月
11月
9月
7月
0
5月
0
2007年/3月
採捕数(尾)
メダ
③オイカワが減
少
④種構成が変化
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まとめ
 環境変化
①植生の設置による生息場・産卵場の多様化
②水稲耕作区などの設置とポンプの減少による水
温の
上昇と高水温期の長期化
 魚類の変化
①タイリクバラタナゴの産卵期が長期化
②モツゴとメダカの個体数は増加
③オイカワの個体数は減少
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考察
 タイリクバラタナゴは高水温により産卵期が長く
なった
 モツゴとメダカは植生などが産卵場となった
しか
し
 水田にはカワバタモロコなど他にも植生を産卵に利
用
する魚類が生息しているが増加しなかった
 モツゴの雄は産卵期に他の魚類を攻撃
 モツゴの産卵床で植生が飽和状態であった可能
性
 水の流れのある区域とない区域が必要
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今後の課題
 植生などの設置が魚類の産卵場を提供する可能性が高
い
⇒植生を増やし他の魚類に対しても効果があるのか
流速が魚類に与える影響を調査
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