土木計画学研究発表会2011春大会

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Transcript 土木計画学研究発表会2011春大会

1
欧米では・・・
都市問題
土地利用モデルの研究・開発が進められ、
実際の都市計画・政策評価に活用
交通渋滞
環境負荷
交通が起因
相互作用
交通
土地利用
複雑化
近年、日本では少子高齢化によって世帯構
成が変化し、ライフスタイルも多様化している
影響評価するには
土地利用-交通の相互作用を考慮した都市・
土地利用モデルが必要
日本でも開発が求められている
詳細な分析
土地利用モデル
マイクロシミュレーション
最小分析単位である個人・世帯等
の個々の行動主体を分析単位とし
たシミュレーション
マイクロシミュレーションモデルの特徴
▼個々の活動主体の選択行動を確率的に表現し,個別の行動の結果を積み上げて
都市全体の動きを表現する
▼個々の世帯に着目しているために,各世帯単位に与える政策評価が可能
2
土地利用マイクロシミュレーションの課題
マイクロシミュレーションによる居住地選択モデルを構築するとき,その選択肢は膨大
になり,主体の選好を反映させるのが難しい
特徴
マッチング理論
労働市場における労働者の割り
当て,研修医の病院への割り当
て,学校選択,男女の結婚問題
等幅広い分野に応用されている
主体の希望順位リストからマッチングをするた
め主体の選好を反映できる
マッチングにおいて現在のペアより,好ましい
相手が存在しない状態である安定マッチング
が少なくとも1つ存在する
土地利用マイクロシミュレーションモデルでは多数の世帯による居住地選択を表現できな
ければならない.しかし,対象の居住地は有限であるため,全ての世帯の選好を反映で
きるとは限らない
研究の目的
マッチング理論を用いて世帯の居住地選択を表現した土地利用
マイクロシミュレーションモデルの構築
3
使用するデータについて
使用データ
北海道
道央都市圏パーソントリップ調査
付随の世帯票
地価データ
道央都市圏パーソントリップ調査
2006年に実施
対象地域;
札幌市(10区)
札幌市周辺の9市町
サンプル数;19394世帯
(大ゾーン19、小ゾーン322)
道央都市圏の住宅選択行動を分析
地価データ
地価公示時系列データ 平成17年版(平成17年3月24日発表)
都道府県地価調査時系列データ 平成17年版(平成17年9月21日発表)
4
道央都市圏パーソントリップ調査のデータの転居行動に関する
データの集計・分析
マッチング理論を用いた,世帯の居住地選択の表現
プログラムの作成(土地利用モデル)(C言語)
土地利用モデルの検証とシミュレーションの実行
マッチング理論を用いたときの特徴や課題の検討
5
・アルゴリズムは世帯遷移モデルと住み替えモデルに分かれる
土地利用モデル
世帯遷移モデル
世帯遷移モデル
加齢処理
住み替えモデル
死亡処理
転居発生
加齢,死亡,結婚,出生な
どのイベントによって世帯
構成の変化を表現している
住宅タイプ選択
結婚処理
出生処理
世帯データの
更新
住み替えモデル
世帯のゾーンに対
する順位表の作成
ゾーンの世帯に対
する順位表の作成
転居発生,住宅タイプ選択,
マッチングモデルを用いた
居住地選択を行う
マッチングモデル
世帯類型
居住地の決定
類型1
類型2
類型3
類型4
類型5
類型6
類型7
単身世帯
・非高齢者
単身世帯
・高齢者
2人世帯
・高齢者なし
2人世帯
・高齢者あり
2人世帯
・高齢者のみ
3人以上世帯 ・高齢者なし
3人以上世帯 ・高齢者あり
6
・個人単位のイベント発生に基づいて世帯の遷移を表現
・加齢,死亡,結婚,出生をイベントとして考慮
・各イベントの死亡率,初婚率,出生率は厚生労働省統計局の人口動態調査の
北海道のデータを代用
死亡率
死亡モデル
個人データ
年齢
死亡率照会
0歳
1
2
3
4
5--9
10--14
15--19
20--24
25--29
30--34
35--39
40--44
45--49
50--54
55--59
60--64
65--69
70--74
75--79
80--84
85--89
90--94
95--99
100歳以上
(厚生労働省統計局・人
口動態調査より)
乱数発生
乱数>死亡率
yes
世帯死亡更新
個人削除処理
終了
no
昭和60年
1985
男
女
Male
Female
5.9
0.9
0.6
0.4
0.3
0.3
0.2
0.7
0.8
0.8
0.9
1.3
2.3
3.7
6.2
9.1
13.1
21.6
37.1
65.8
108.0
181.4
a)254.3
///
///
5.1
0.8
0.4
0.3
0.2
0.2
0.1
0.2
0.3
0.4
0.6
0.8
1.2
1.8
2.9
4.1
6.6
11.1
20.0
38.7
71.7
130.7
a)224.9
///
///
平成2年
1990
男
女
Male
Female
5.0
0.9
0.5
0.4
0.3
0.2
0.2
0.6
0.8
0.7
0.8
1.2
1.8
3.2
5.1
8.7
13.2
19.5
33.2
57.9
100.1
165.4
a)268.0
///
///
4.2
0.7
0.4
0.3
0.2
0.1
0.1
0.2
0.3
0.3
0.5
0.7
1.0
1.7
2.5
3.7
5.7
9.4
16.9
32.0
62.1
117.6
a)216.1
///
///
7年
12年
1995
16年
2000
17年
2004
2005
女
男
女
男
女
男
女
Female
Male
Female
Male
Female
Male
Female
死亡率(人口1,000につき)
4.6
3.9
3.4
3.0
3.0
2.6
3.0
2.5
0.7
0.7
0.6
0.5
0.5
0.4
0.5
0.4
0.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.2
0.3
0.2
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
0.1
0.2
0.1
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.2
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.1
0.6
0.2
0.5
0.2
0.4
0.2
0.4
0.2
0.7
0.3
0.7
0.3
0.6
0.3
0.6
0.3
0.7
0.3
0.7
0.3
0.6
0.3
0.7
0.3
0.8
0.5
0.9
0.4
0.8
0.4
0.8
0.4
1.1
0.6
1.1
0.6
1.1
0.6
1.1
0.6
1.8
1.0
1.8
1.0
1.7
0.9
1.7
0.9
3.0
1.6
3.0
1.5
2.8
1.4
2.8
1.4
5.0
2.5
4.6
2.3
4.6
2.2
4.5
2.1
7.8
3.5
7.5
3.2
6.7
3.0
6.8
3.0
13.1
5.5
11.3
4.6
10.3
4.2
10.5
4.3
20.0
8.6
18.2
7.5
16.1
6.7
15.6
6.6
31.5
15.1
28.7
12.4
26.5
11.2
26.4
11.3
54.6
28.1
45.6
22.7
43.5
19.9
44.0
20.0
94.8
54.3
80.5
43.3
71.7
38.1
73.3
38.7
156.5
100.7
131.6
81.8
124.2
75.4
126.4
73.6
a)267.3 a)195.7 a)223.7
a)163.1 a)209.4
a)151.9
202.2
134.8
///
///
///
///
///
///
309.4
221.8
///
///
///
///
///
///
461.6
363.1
男
Male
男性の
死亡率
女性の
死亡率
(参考資料;厚生労働省統計局『人口動態調査』)
7
転居発生モデル
住み替えモデル
転居発生
世帯による転居が発生するか
・世帯属性(世帯人数,世帯主年齢)の変化による
現在の住居への不満などを反映
住宅タイプ選択
住宅タイプ選択モデル
世帯のゾーン
順位表の作成
ゾーンの世帯に対
する順位表の作成
転居後の住宅タイプの選択
・戸建持家,集合持家,戸建賃貸,集合賃貸の4タイプ
マッチングモデル
マッチングモデル
居住地の決定
転居後の居住地の選択
・マッチングを行うには,世帯と居住地の
希望順位表が必要になる
8
1
Gale Shapleyのアルゴリズム
男性と女性の結婚問題を対象として、
プレイヤーの集合が2つのグループに
分かれている場合をモデル化したもの
2
× ×
4
×
すべての女性はプロ
ポーズされた男性の中
で最も好ましい人と一
時的にペアを組む
女性は婚約している男
性と新しくプロポーズ
を受けた男性の中で
最も好ましい男性と改
めてペアを組む
3
5
すべての男性は女性
の中で最も望ましい
女性にプロポーズを
する
プロポーズを拒否さ
れた男性は、まだプ
ロポーズを拒否され
ていない女性の中で
最も好ましい女性に
プロポーズをする
今までの手順を繰り
返し、どの男性もプ
ロポーズを拒否され
なくなったら終了
マッチングの安定
9
開始
世帯と居住地の順
位リストの読み込み
no
世帯の番号順での
処理終わっていな
い世帯がある
次の世帯番号の処理を行う
yes
現在順位リストの中で
応募していない居住地
がある
no
男女の結婚問題から土地利用モデル
に適用する際に男性を世帯,女性を居
住地に置き換えてアルゴリズムを構築し
た
yes
ペアを解消された
世帯の処理を行う
応募をしていない居住地の中で一番上
位の居住地に応募する
yes
居住地の枠に空
きはあるか?
no
現在ペアを組んでいる世帯の中で順位
リストの順位が最も低い世帯を選ぶ
no
応募した居住地が現在ペアである
世帯より新たに応募した世帯の方が
順位リストで上位である
yes
応募した世帯とペアを組む
yes
ペアを解消された世
帯はいるか?
土地利用モデルに適用する際
の改良点
居住地は複数の世帯を受け入れな
ければならないので1対多数問題に
改良を行い,居住地が複数の世帯と
ペアを組めるようにアルゴリズムを構
築した
no
終了
10
・全ての世帯と居住地は希望順位リストを持っている
・居住地は複数の世帯とペアを組むことができる
希望順位リスト
第1希望 ○○○
第2希望 △△△
第3希望 ×××
第4希望 ◇◇◇
A
11
世帯の居住地に対する希望順位表について
居住地の属性を考慮した効用関数から効用を求め,効用の大きい居住地から順番に
希望順位表を作成する構造になっている
効用関数
u = α+β1x1+ β2x2+ β3x3+・・・
説明変数
世帯類型2
世帯類型3
世帯類型4
世帯類型5
2
2
2
t
値
t
値
t
値
パラメータ
尤度比ρ パラメータ
尤度比ρ パラメータ
尤度比ρ パラメータ t 値
尤度比ρ 2
札幌市内中央区以外ダミー
1.369
札幌市以外ダミー
-0.505
JR学研都市線ダミー
JR函館本線ダミー
-0.483
JR千歳線ダミー
-1.195
地下鉄ダミー
0.626
有料道路(放射状道路)ダミー
1.856
環状道路(小)ダミー
-0.606
環状道路(大)ダミー
世帯主の勤務地ダミー
平成17年度の平均地価
-8.02E-06
2.691
-3.562
-2.087
-3.046
3.203
5.732
-3.763
0.136
初期尤度
1233.719932
最終尤度
1065.424673
対数最大尤度
-1.884
-1065.420
-0.812
0.191
-8.345
2.657
0.391
0.451
0.477
4.218
3.624
7.196
0.359
初期尤度
10791.36886
最終尤度
0.497
3.314
-5.03E-06
-2.613
0.401
7.004
6468.40284
86.507 対数最大尤度
-9.956
-6468.400
-4.321
-0.763
0.062
0.671
0.657
0.389
6.515
3.620
3.922
3.36E-06
4.491
初期尤度
2458.606546
最終尤度
2305.675583
0.074
0.501
0.520
0.354
0.505
2.461
4.874
2.225
5.080
1.58E-06
2.110
対数最大尤度
-2305.680
初期尤度
2535.161961
最終尤度
2347.161692
対数最大尤度
12
-2347.160
居住地の世帯に対する希望順位表について
世帯の居住地に対する付け値を想定し,付け値の高い世帯から順に希望順位表を作
成する構造になっている.ただし,各世帯の付け値を得るのに重要な所得が分からな
いので世帯主年齢から1世帯当たりの平均所得を調べ使用した
世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たりー世帯人員1人当たり平均所得額
800
700
600
500
1世帯当たり平均所得
400
世帯人員1人当たり平均所得額
300
200
100
0
29歳以下 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上 65歳以上
厚生労働省:国民生活基礎調査より
13
2005年に関してはアンケート結果から転居行動が把握できているのでシミュレーション結
果と比較して下記の式から転居発生の的中率と推計率を求めた
ゾーンが一致した世帯 数
推計率=
実際に転居した世帯数
転居発生が一致した世 帯数
転居発生の的中率=
全世帯数
転居発生の的中率
0.778
0.776
0.774
0.772
0.77
0.768
0.766
0.764
0.762
0.76
転居発生の的中率
平均値=0.7772
最大値=0.7776
最小値=0.7668
1回目 5回目
10回目 15回目 20回目
推計率
0.51
0.5
0.49
0.48
0.47
0.46
0.45
0.44
0.43
0.42
推計率
平均値=0.4768
最大値=0.5059
最小値=0.4541
1
回
目
5
回
目
10
回
目
15
回
目
20
回
目
19,000の世帯が322ゾーンを選択するモデルとしては推計率からみると
大きく外れてはいないことが確認できた
14
2000年から2030年までのシミュレーションを20回行った
2030年の居住地322ゾーンごとの世帯数を出し,分散を算出した
分散値の最小値は0.048,最大値は175.64,平均値は13.6であった
この結果からゾーンによってばらつきがないゾーンとばらつきの大きいゾーンがあることが確認できた
2030年の居住地別の世帯数と分散
ゾーン 1回目
311
2回目
9
3回目
7
4回目
5
5回目
5
6回目
5
7回目
7
8回目
5
9回目
8
10回目 11回目 12回目 13回目 14回目 15回目 16回目 17回目 18回目 19回目 20回目 分散
5
5
8
10
7
6
7
7
5
13
7
8
4.0475
312
3
2
1
3
2
2
2
3
5
3
4
4
3
4
7
7
3
4
2
1
2.5875
313
196
195
173
182
191
193
200
165
190
192
195
201
176
151
195
185
173
198
192
205
175.64
314
200
184
203
206
207
181
217
192
213
198
198
193
209
177
217
196
214
176
194
186 156.6475
315
21
23
28
30
31
34
33
24
27
21
25
24
27
19
22
35
24
24
28
25 19.2875
316
111
108
117
128
107
118
108
92
99
108
104
126
116
102
114
106
122
114
106
107 75.2275
317
62
70
65
68
65
70
62
61
70
84
63
63
68
79
53
66
70
58
64
55
49.96
318
7
6
7
6
9
11
10
7
9
7
6
6
8
7
6
6
8
10
6
6
2.44
319
94
93
85
96
120
116
105
97
90
120
95
90
94
102
105
87
85
93
88
320
7
4
6
7
7
5
5
4
5
9
4
7
5
10
5
3
11
4
4
5
4.4275
321
39
47
46
41
39
50
42
38
35
49
33
44
43
43
48
49
55
35
40
38
31.91
322
12
13
21
12
12
13
20
18
13
12
13
15
14
14
10
15
12
14
11
10
8.31
88 113.7275
ばらつきの大きい地区があるので,そのような場合は都市政策を慎重に行う必要がある
15
本研究では2GBメモリーのデスクトップパソコンで2000年から2030年の5年おき計6回
のシミュレーションを20回行った
計算時間を計測した結果と世界の実用土地利用モデルの計算時間を以下に示す
世界の実用型土地利用モデルの計算時間と並列計算の可否
計算時間(分)
22.2
22.1
モデル名
計算時間
並列計算の可否
UrbanSim
1年のシミュレーションでおよそ12
分
○(実施テストした段階)
DELTA
1年のシミュレーションで10~40分
-
MUSSA-Ⅱ
4~10分
-
PECAS
PC1台で30年の予測に60時間
○(32個のCPUで実施)
ILUTE
まだ不明
○ ※将来的には実行可
能
IRPUD
3分
-
RUBAN
6分程度
必要がない
22
21.9
21.8
計算時間(分)
21.7
21.6
21.5
21.4
1回目
5回目
10回目
15回目
20回目
平均値=21分52秒
最大値=22分05秒
最小値=21分38秒
宮本和明、北詰恵一、鈴木温、杉木直、Varameth Vichiensan :
世界における実用都市モデルの実態調査とその理論・機能と適用対象の体系 参照
16
本研究により得られた知見
•マッチング理論を世帯の居住地選択に適用したモデルを
作成した
•マッチング理論を用いた土地利用マイクロシミュレーションモデル
のパフォーマンスを確認した
・離婚,再婚,就職,就学などのイベントを入れていないのでよ
り詳細なシミュレーションを行うためには考慮する必要がある
・より細かな分析を行うにはマッチングモデルの希望順位表の
作成を詳細に行うことが重要である
17