Transcript 講義資料
日本と東アジアの成長と貿易 日本経済入門(二) アジア研究所 小山直則 1 講義計画 ●年間講義計画 ⇒http://www.geocities.jp/naonorikoyama/tku99b/tk u99b.htm ⇒講義資料は上記のweb siteから各自ダウンロードし て下さい。 ●講義方法 ⇒毎回の講義の前半は私が講義する。後半は参加者 が報告する。 ●教科書 2 講義計画 ●教科書 (1)加藤(2007)『人口経済学』日本経済新聞出版社、 第Ⅱ-Ⅶ章。 (2) 小塩(2005)『社会保障の経済学第3版』日本評論 社、第5、8、9、10章。 (3) 清家(1992)『高齢者の労働経済学』日本経済新聞 社、第1-6章。 (4) 吉川(2004)『構造改革と日本経済』岩波書店、 第3-4章。 3 Ⅱ. 人口変動と経済社会の変化 ●教科書 ⇒加藤(2007)『人口経済学』日本経済新聞出版 社、第Ⅱ章。 ●人口経済学 ⇒人口減少が経済に与える影響 ⇒人口構造の少子高齢化が経済に与える影響 4 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 (1) 近代以前の人口 28 ページ ⇒人類が定住し、農業を 始めた紀元前8,000 年の世界人口は約 500万人。 ⇒農業生活の安定ととも に人口が増加し、西 暦元年の世界人口は 2-3億人程度に達した と言われている。 ⇒その後は人口増加の速 度は弱まり、17世紀中 ごろの総人口は約5億 人程度に過ぎないとい われている。 ⇒この1,600年間の年平 均の人口成長率は約 0.032%。 ⇒計算できますか? 5 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 (1) 近代以前の人口 28 ページ ⇒17世紀以降、人口増加 率が高まり、1,800年 になると世界人口は 10億人にまで急増し た。 ⇒西ヨーロッパにおける 産業革命による社会 全体の生産能力と生 産性の向上が人口増 加を可能にした。 ⇒人口増加は当初死亡 率の減少によってもた らされたといわれてい る。 ⇒人口転換理論 6 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 (2) 人口転換理論 30頁 ⇒18世紀に生じた生産能 力の拡大を背景に栄 養状態の改善、医学 の発達、公衆衛生の 整備などが死亡数を 減少させた。 ⇒18世紀以降の先進国 のこうした人口の動き を人口転換という。 出生率、死亡率 出生率 ① ② ③ 死亡率 ④ ⑤ 時間 18世紀 7 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●人口転換理論 *自然増加率=出生 率ー死亡率 ①第一段階:多産多死の 時代。 ⇒18世紀以前は出生率も 死亡率もともに高い 段階である。 ⇒したがって、自然増加 率は低い。 出生率、死亡率 出生率 ① ② ③ 死亡率 ④ ⑤ 時間 18世紀 8 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●人口転換理論 ②第二段階:多産中死の 時代。 ⇒18世紀を過ぎると出生 率は変わらないが、 死亡率が低下し始め る。 ⇒18世紀に人口転換を向 かえ、自然増加率が 高まり、人口が増加し 始めた。 出生率、死亡率 出生率 ① ② ③ 死亡率 ④ ⑤ 時間 18世紀 9 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●人口転換理論 ③第三段階:中産少死の 時代。 ⇒第三段階以降は死亡 率は安定しているが、 出生率が低下し始め る。 ⇒第三段階の初めに自然 増加率がペークを迎 え、それ以降低下し 始める。 出生率、死亡率 出生率 ① ② ③ 死亡率 ④ ⑤ 時間 18世紀 10 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●人口転換理論 ④第四段階:少産少死の 時代。 ⇒日本では1950年代以 降第四段階を迎えた といわれている。 ⇒この段階では出生率、 死亡率ともに低く、自 然増加率も低い。 出生率、死亡率 出生率 ① ② ③ 死亡率 ④ ⑤ 時間 18世紀 11 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 (3) 20世紀と将来の世界 ⇒教科書に「次第に人口 人口 31頁 増加の速度が高まり、 ⇒20世紀に入った頃の人 1950年には25億人に 口は16-18億人と推計 達し」たと書かれている。 されている。 ⇒これは教科書の図表 ⇒19世紀の入った頃の人 Ⅱ-1の人口転換理論 口は10億人であるから、 の図と整合的ではない 100年間の年平均の自 ので第四段階で出生率 然増加率は0.47%から の増加があったと考え 0.59%である。 られる。 12 13 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●第二の人口転換 ⑤第五段階:少子化の時 代 ⇒第四段階で少産少死を 迎えた先進国の多くは は、 ⇒合計特殊出生率が、人 口置き換え水準を下回 る少子化を経験してい る。 ⇒第五段階では自然増加 率はマイナスとなり人 口が減少していく。 *合計特殊出生率:一人 の女性が一生に産む 子供の平均数のこと。 *人口置き換え水準:現 在の人口を維持するの に必要な合計特殊出生 率の水準を人口置き換 え水準という。 14 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●第二の人口転換 ⇒日本は1970年代の半ば以 降第二の人口転換を迎え た。 ●第二の人口転換の要因 (1) 効果的な避妊法の普及 (2) 結婚や家庭に対する個人 や夫婦の価値観の変化に よる晩婚・晩産化の進展 などがもたらしたと考えられて いる。 ⇒この講義の目的の一つは、 人口転換の要因を経済学 的に考察していくことにある。 ⇒また、少子化と同時にもたら された高齢化が経済にもた らす影響を考察する。 ⇒さらに、少子高齢化社会に おける労働問題、所得再分 配(社会保障)の問題も考察 する。 ⇒最後に、少子高齢化の下で の成長戦略について考察 する。 15 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 (3) 20世紀と将来の世界 ⇒ローマクラブの『成長の 人口 32頁 限界』が発表され、人 ●人口増加は経済成長 口増加が経済成長に を阻害するのか? 足かせになるという議 ⇒戦後の経済発展ととも 論が高まった。 に途上国では人口爆発 ⇒世界人口は第二の人 が生じた。 口転換以降増加速度 ⇒1975年には世界人口 が落ちた。 は41億人に達した。 ⇒1970年代の初めに、 16 Ⅱ.1. 歴史的に見た世界人口の推移 ●世界人口の推移 ⇒1950年は25億人。 ⇒1975年は41億人。 ⇒1990年は53億人 ⇒2000年は61億人。 ⇒2007年は67億人。 ●年平均人口成長率 ⇒1950-75年 1.99% ⇒1975-90年 1.73% ⇒1990-2000年 1.42% ⇒2000-2007年 1.35% ●将来人口 ⇒2050年の世界人口は 92億人に達すると推計 されている。 ⇒このうち先進地域は12 億人、発展途上地域は 79億人と推計されてい る。 ⇒世界人口の約85%が 発展途上地域に集中 することになる。 17 Ⅱ.2. 人口変動と経済発展 33頁 (1) 人口増加と経済発展 の関係 ⇒ライベンシュタイン (Leibenstein)は、国ご とに経済発展の段階が 異なり、 ⇒発展途上国ほど出生率 が高く、人口増加率が 高いことを指摘した。 ⇒Beckerは戦後の所得 増加と出生率の負の関 係をどのように経済学 的に説明するのかを研 究した。 ⇒子供を持つ効用と子育 ての費用の関係から商 品需要のように子供の 需要行動を分析する。 18 Ⅱ.2. 人口変動と経済発展 33頁 (2) 経済成長率が高い国 ほど出生率が低い 35 頁 ●人口と経済成長に関す る研究 ①Boserup ⇒農業発展と人口増加の 関係をモデル化 ②Barro and Sala-iMartin ⇒先進国と途上国の経済 成長率の違いとその要 因を実証的に分析。 ③Mankiw ⇒人的資本の蓄積が経 済成長のエンジンと なって持続的に成長し ていくメカニズムを分析。 19 Ⅱ.2. 人口変動と経済発展 33頁 ●経済成長と人口に関す るデータ ⇒The Penn World Table http://pwt.econ.upenn.e du/ ⇒IMF World Economic Outlook Database http://www.imf.org/exter nal/pubs/ft/weo/2010/ 01/weodata/index.asp x ● The Penn World Tableの使い方 20