「chiba_c_08」をダウンロード

Download Report

Transcript 「chiba_c_08」をダウンロード

自己株式
I. 自己株式の意義
1. 広義の自己株式
会社が自社の発行した株式を再度取得する場合の
取得された自社の株式
⇒広義の自己株式は取得原因や取得方法を問わない
2. 狭義の自己株式
株主との合意によって取得された自社の株式
2
*取締役会非設置会社では株主総会決議
**取締役会非設置会社では取締役の決定
自己株式取得許容事由一覧
取得許容根拠
行為根拠
手続規制
財源規制
株
式
内
容
取得請求権付株式
会155④
166
なし
効力不発生
取得条項付株式
会155①
107Ⅱ③イ
なし
効力不発生
全部取得条項付種類株式
会155⑤
171
総会決議
あり
買
取
請
求
株式の変動にかかる買取請求
規27⑤
116
なし
賠償責任のみ
組織再編等にかかる買取請求
規27⑤
469,785,797,806
なし
なし
単元未満株式買取請求
会155⑦
192Ⅰ
なし
なし
会155③
156以下
別掲
あり
譲渡制限株式の先買い
会155②
138①ハ②ハ
取締役会*
あり
相続人等に対する売渡請求
会155⑥
176
なし
あり
所在不明株式の競売に代わる取得
会155⑧
197Ⅲ
取締役会**
あり
端数株式の競売に代わる取得
会155⑨
234Ⅳ
取締役会**
あり
無償取得
規27①
なし
なし
N/A(出捐なし)
他社の配当、残余財産分配として取得
規27②
他社の組織再編等の対価として取得
規27③イ~ハ
他社発行の取得条項付株式、全部取得
条項付種類株式の対価として取得
規27③ニホ
N/A
N/A(出捐なし)
他社の新株予約権の対価として取得
規27④
N/A
(勝手に交付さ
れる)
他社との事業全部の譲受け、合併、吸
収分割による承継
会155⑩~⑫
規27⑥⑦
権利の実行に必要不可欠
規27⑧
なし
なし
N/A(出捐なし?) 3
合意による取得
株
主
管
理
そ
の
他
II. 手続規制
基本は、①授権(取得株式数上限、対価総額の上限、期
間〔1年以内〕) → ②個別の取得決定(取得株式数、1
株あたりの対価、対価の総額、申込期日)
取得態様
ミニ公開買付け
特 相対
定
か の 市場価格
ら 株 相続人等
取主
子会社
得
市場取引
条文
授権
156- 株主総会
158 特別決議
160
161
決定
取締役会
通知公告
全株主
売主追加請求
N/A
あり****
株主総会
特別決議*
取締役会
特定の株主
なし
なし
162
163
取締役会**
代表取締役**
なし
なし
165
取締役会***
代表取締役***
なし
なし
* 譲渡株主は議決権行使ができない(会160Ⅳ)
**取締役会非設置会社においては株主総会普通決議で授権し取締役が決定
***定款の定めが必要。定款の定めのない取締役会設置会社(および取締役会非設置会社)
においては株主総会普通決議で授権し、(代表)取締役が決定
****売主追加請求権は定款で排除可能(164Ⅰ)。ただし定款変更で排除規定を定める場合
には、対象となる株式の総株主の同意が必要(同Ⅱ)
4
 売主追加請求手続
i. 株主への通知(会160Ⅱ、規28)
株主が売主追加の議案提案権を有することの通知
通知時期は招集通知発送とリンク(会299参照)
① 招集通知が2週間以前(公開会社):2週間前
② 招集通知が1週間前~13日前:招集通知発送時
③ 招集通知が当日~6日前:1週間前まで
④ 招集手続の省略(会300)の場合:1週間前まで
ii. 株主からの売主追加請求(会160Ⅲ、規29)
←株主提案権(会304)の特則と同時に株主平等原則の具体化
a. 上記①の場合:5日前まで
b. 上記②~④の場合:3日前まで
※a.b.いずれも定款で締切延長可
5
III. 財源規制
 自己株式取得は出資の払戻しの性質を有するの
で債権者を害してはならないから、財源は分配可
能額に限定
 現会社法は(狭義の)自己株式取得を剰余金の配
当の一種と考えて配当規制を課す(461Ⅰ②③)
※ただし株主保護の必要性が高い場合には財源規制は課
されない
6
自己株式取得と財源規制
行為根拠
財源規制
根拠規定
規制(しない)理由
株
式
内
容
取得請求権付株式
166
効力不発生
166Ⅰ但
コントロールできない
取得条項付株式
107Ⅱ③イ
効力不発生
170Ⅴ
コントロールできない
全部取得条項付種類株式
171
あり
461Ⅰ④
取得しなければよい
買
取
請
求
株式の変動にかかる買取請求
116
賠償のみ
464
株主保護と財源規制の調整
組織再編等にかかる買取請求
469,785,797,806
なし
―
株主保護
単元未満株式買取請求
192Ⅰ
なし
―
株主保護
156以下
あり
461Ⅰ②③
取得しなければよい
譲渡制限株式の先買い
138①ハ②ハ
あり
461Ⅰ①
第三者に取得させればよい
相続人等に対する売渡請求
176
あり
461Ⅰ⑤
取得しなければよい
所在不明株式の競売に代わる取得
197Ⅲ
あり
461Ⅰ⑥
競売すればよい
端数株式の競売に代わる取得
234Ⅳ
あり
461Ⅰ⑦
競売すればよい
合意による取得
株
主
管
理
※ここに掲載されていない取得については会社から出捐がない(よく
考えると損失を観念できる可能性のあるものもあるが)、または他
者(他社)から交付される場合が多いので財源規制になじまない
7
株式買取請求手続一覧(参考)
株式の内容
の変更
株式併合
事業譲渡
吸収型組織再編
新設型組織再編
116,117
182の4,182の5
469,470
785,786,797,798
806,807
対象者
変更対象株主
端数を
生じる株主
(端数部分)
全株主
簡易手続会社、
特別支配会社以
外の株主
全株主
反対株主要件
①議決権行使可能株主は反対の意思を予め通知し、決議に反対した者
条文
②議決権行使のできない株主は全員
③総会決議・・
通
知
・・省略時はすべての株主
期日
当該行為の効力発生日の20日前まで
内容
当該行為をする旨
方法
通知または公告
総会決議後2週間以内
当該行為をする旨と相手方の商号・住所
①公開会社か、総会決議を経た場合には通知または公告
②上記①以外の場合は通知
買取請求期間
効力発生日の20日前から効力発生日の前日
通知・公告の日から20日以内
価格決定
申立期間
効力発生日後30日以内に協議が
調わなければその後30日以内
設立後30日以内に協議が
調わなければその後30日以内
代金支払時期
効力発生日後60日以内
買取効力発生
効力発生日
設立後60日以内
IV. 金庫株の地位
権利
有無
条文
理由
剰余金配当請求権
なし
453
配当の繰延べ防止
残余財産分配請求権
なし
504Ⅲ
分配の循環防止
新株引受権
なし
202Ⅱ
自己株式増加防止
なし
186Ⅱ
同上
あり?
182
争い有り
株式併合
あり?
184Ⅰ
自己株式比率上昇防止
組織再編等における対価の交付
(抱合せ株式)
なし
749Ⅰ③,
753Ⅰ⑦
自己株式増加防止
議決権
共
益 議決権を根拠とする監督是正権
権
それ以外の監督是正権
なし
308Ⅱ
議決権歪曲防止
自 株式無償割当
益
権 株式分割
なし
意味がない
なし
意味がない
9
V. 自己株式の会計処理
1. 自己株式取得
① 支払った取得対価が資産の部から減少
② 取得した自己株式は資産の部に計上せず、資本の控除
項目(マイナス)として表示(計算規76Ⅱ柱書き、⑤)
スタート時点
自己株式を100,000で取得
資産
1,500,000 負債
600,000
資産
現金
1,000,000 借入金
600,000
現金
900,000 借入金
600,000
500,000 純資産
900,000
その他
500,000 純資産
800,000
資本金
350,000
資本金
350,000
資本準備金
350,000
資本準備金
350,000
その他
資本剰余金
50,000
その他
資本剰余金
50,000
その他
利益剰余金
150,000
その他
利益剰余金
150,000
その他
1,400,000 負債
自己株式
600,000
△100,000
10
2. 自己株式と剰余金の配当
① 剰余金の計算においては自己株式は仮に資産計上す
る(実際には計算規則で[その他資本剰余金+その他
利益剰余金]で計算)
② 分配可能額計算時に自己株式の帳簿価格を控除
自己株式取得と分配可能額
資産
1,400,000 負債
600,000
現金
900,000 借入金
600,000
その他
500,000 純資産
800,000
資本金
350,000
資本準備金
350,000
その他
資本剰余金
50,000
その他
利益剰余金
150,000
自己株式
△100,000
剰余金(会446、計算規149)
←分配可能額計算時に剰余金
から控除(会461Ⅱ③)
11
3. 自己株式の処分
① 受領した処分対価が資産の部に計上
② 処分した自己株式が資本の控除項目から削除され、処
分差益・差損はその他資本剰余金となる(計規14Ⅱ①)
※消却時はその他資本剰余金から自己株式の帳簿価格を引く(同24Ⅲ)
自己株式取得中
資産
自己株式を170,000で売却
1,400,000 負債
600,000
資産
1,570,000 負債
600,000
1,070,000 借入金
600,000
500,000 純資産
970,000
現金
900,000 借入金
600,000
現金
その他
500,000 純資産
800,000
その他
資本金
350,000
資本金
350,000
資本準備金
350,000
資本準備金
350,000
その他
資本剰余金
50,000
その他
資本剰余金
120,000
(+70,000)
その他
利益剰余金
150,000
その他
利益剰余金
150,000
自己株式
△100,000
12
VI. 違法な自己株式の取得の効果
1. 基本的な考え方
A) 通説

自己株式取得の手続的瑕疵、内容的な瑕疵はいずれ
も自己株式取得無効と考える。ただし、譲渡株主が善
意(・無重過失)の場合には取得は有効になる
※市場取引による取得の場合には株式の売買自体が無効になるこ
とはあり得ない(市場では問屋である証券会社名義で売買されて
いるから)
B) 立案担当者の提案
① 手続的な瑕疵については民93類推で処理し、善意・無
過失の譲渡株主からの取得は原則有効
② 財源規制違反については会461以下は、取得を有効とし
たうえで譲渡株主に特別な弁済義務を負わせた規定
13
2. 個人的な見解
・・・瑕疵の種類によって扱いを変えるべきではないか
a.
b.
c.
純粋な手続的瑕疵については、適法な機関決定を欠く
取引(462条4項1号2号参照)と同じに考える
株主平等原則違反については一律無効
財源規制違反も一律無効
瑕疵の種類
効果
理由付け
①合意取得における総会・取締役会決議の無効・取消
会462と同じ
取得自体に瑕疵はなく、単なる手続違反
②強制取得における総会決議の無効・取消
原則無効
株主権の違法な侵害
③売主追加請求権の無視
一律無効
株主平等原則違反
④161条の取得価格違反
一律無効
株主平等違反(160条の規制の潜脱)
⑤取得数超過
会462と同じ
授権がなかっただけ(①と同じ)
⑥財源規制違反
一律無効
債権者保護
14
VII. 違法な取得と会社の損害
損害についての学説
a. 取得価格と売却価格の差額が損害(差額損害説)
b. [取得価格と時価の差額]と[売却価格と時価の差
額]の合計が損害(時価差額説)
c. 取得価格全額が損害(取得価格説)
〔例〕時価2億のときに2億3千万円で取得し、時価が2
億5千万円に上昇した時点で2億4千万円で売却
a. 2億3千万-2億4千万=-1000万(損害なし)
b. (2億3千万-2億)+(2億5千万-2億4千万)=4000万
c. 2億3千万
※自己株式の売却損は(新株有利発行とは異なり)会社の
損害
15