Transcript M&A戦略

M&A戦略
はじめに・・・
 ここ数年ニュースなどでM&Aという言葉
をよく耳にすることが多くなってきました。
しかし、一口にM&Aといっても様々なタ
イプや手法があるようです。
 そこで、なぜ企業がM&Aを行い、また、
どのような手法があり、具体的にどのよう
に変化するのかを調べてみました。
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
M&Aとは?
M&Aの手法
敵対的買収と防衛策
ソフトバンクの例
おわりに
参考文献
1. M&Aとは?
 一言でいえば、「当事者企業が互いの価
値向上のために、相手企業の組織、(お
よび支配権)の一部または全部を、自社
に取り入れること」です。
 規制緩和、ビジネスのIT化、グローバル
経済の進展などに伴う競争の激化により、
日本のM&A件数は急増しています。
従来と現在のM&Aのイメージの変化
従来
現在

“救済合併”、“対等合
併”という後ろ向きの印象。

長期的な成長戦略に基
づく未来志向の手法。

“乗っ取り”、“買占め”と
いう反社会的な印象。

より高い企業価値。
マイナス
イメージ
プラスイ
メージ
なぜ企業は合併するのか?
1.
2.
3.
4.
5.
同一市場での競争力の強化
仕入・販売コストの削減
財務・金融収益の拡大
生産・販売・財務コストの削減
株主価値の向上
「時間を買う」というメリット
2. M&Aの手法
① 企業統合型の手法
② 株主交代型の手法
③ 企業分離型の手法
合併
企業統合型
経営統合
株式交換
株式交換
株主交代型
新株引き受け
既発行株取得
事業譲渡
企業分離型
会社分割(分社型)
会社分割(分割型)
株式の取得方法
合併や経営統合を行わずにM&Aを実
施するには、対象となる企業の株式を取
得する必要があります。
主要な方法は以下の3つです。
1. 市場内買付
2. 市場外買い付け
3. 新株引き受け
市場内買付
市場内買付のメリットは、手続きが容易なことで
す。しかし、次のようなデメリットもあります。
1. 株数確保の問題
市場にある株しか買えないため、必要な数の
株式を確保しにくい。
2. 買収価格の不確定
市場の価格変化のため、計画を立てにくい。
3. 事前の察知の問題
株式取得による価格高騰で察知されやすい。
市場外買い付け(公開買付・相対取引)

公開買付(TOB)とは、新聞紙上に広告を掲載し、対
象企業の買収条件を公表し、それに応じた株主から株
式を取得する方法で、敵対的買収の代表的手法です。

相対取引とは、買収者が対象企業の株主と個別に交渉
し、株式を取得する方法です。
両者の適性の違い
公開買付は、多数の零細株主との全体交渉で、相対取
引は少数の筆頭株主との個別交渉という感じです。
株主の構成比率で使い分ける
新株引受(第三者割当増資)
新株引受とは、買収の対象となる企業が新たに
発行した新株を引き受けることで、新株を引き
受ける企業が、買収先企業の支配権を手にす
るためには、既存株主を超える相当の株式を取
得しなければなりません。
メリットとデメリット
友好的な買収が実施でき、買収後のリスクを抑
えることができますが、大きな所有比率を持つ
既存株主のために経営に支障をきたす可能性
があります。
3. 敵対的買収と防衛策

敵対的買収とは?

防衛策
1.
2.
3.
4.
5.
6.
毒薬条項(ポイズンピル)
非公開化(ゴーイングプライベート)
安定株主工作とホワイトナイト
配当政策の変更
焦土作戦
その他
敵対的買収とは?
 被買収企業の合意を得ることなく、株式を買い
集めて経営権を獲得することです。
敵対的買収の意義
敵対的買収が成立すると、より効率的な経営に
改善し、株主還元も適切になることが多く、また、
その脅威があるだけで経営者はより努力するよ
うになります。
企業の株主価値の向上
防衛策①
毒薬条項(ポイズンピル)
 ポイズンピルとは,敵対的買収者が現れ、一定
比率、典型的には20%の株式を買い占めたと
きに買収者以外の株主に大量の株式を発行し
手持ち株比率を低下させる一連の仕組みです。
 買収者は発動条件の手前まで株式を取得し、
買収提案の良さを説明し、取締役会は現経営
陣と比較して毒薬条項を消去するか否かを選
択します。株主の権利に関するプランという意
味で「ライツプラン」とも呼ばれます。
防衛策②
非公開化(ゴーイングプライベート)
 その名の通り、上場廃止し、非公開にすること
です。
 非公開化の意義
短期の業績を追求する株式市場からの圧力を
排除し、経営の自由度、機動性を高める。
2.
株主総会の開催費、IR費用などの削減。
1.
最近の例) 吉本興業の公開買い付け
防衛策③
安定株主工作とホワイトナイト
 安定株主工作とは、取引関係が密接な企業や
金融機関に株式を取得してもらい、それを売ら
ない、もしくは売らざるを得ない状況でも相談す
るように頼むことで、これを相互にはめ込むと株
式持ち合いとなります。
 ホワイトナイトは、敵対的買収者より有利な条件
で買収、もしくは合併してくれる企業のことを言
います。
防衛策④、⑤
配当政策の変更、焦土作戦
配当政策の変更
大幅増配
焦土作戦
買収者のほしい重要財産
を安値で売却
株価高騰
TOB価格を上回る
買収者の買収意欲がなくな
る
株主は株式を売らない
買収回避!
買収回避!
防衛策⑥
その他
 黄金株
重要決議に対する絶対的な拒否権を持つ株式。
機関投資家は、株式平等の原則から発効には
否定的。
 パックマンディフェンス
逆買収のこと。莫大な資金が必要なため、他の
防衛策が取られることが多い。ゲームのパックマ
ンが名前の由来です。
etc…
4. ソフトバンクの例
2006年にソフトバンクはボーダフォ
ンを買収しました。このときの買収方
法や、買収前後での財務諸表の変
化をみていきたいと思います。
概要


英Vodafone Groupとソフトバンクは3月17日、同社日
本法人であるボーダフォンのソフトバンクへの買収に合
意したと発表した。97.68%の株式を譲渡する。買収金
額は約1兆7500億円(http://corp.itmedia.co.jp/より)
ボーダフォン自身の資産や買収後の将来性を担保にし
て資金を調達するLOB(Leveraged Buy-out)を使い、
TOBを実施した。
「時間を買う」、という
意味合いが大きい
2003年度 財務諸表
100
90
80
70
60
50
40
30
総資本
1,421,206
流動資産
887,946
62.5%
20
10
0
固定資産
531,209
37.5%
資本金等
542,865
38.1%
流動負債
555,742
39.1%
固定負債
531,209
37.6%
純資産
332,240
23,3%
有利子負債
575,541
37.6%
売上高
517,398
利益剰余金
△210625
-14.8%
粗利
133,369
25.8%
営業利益 △
54,893 -10.6%
2007年度
100
流動資産
1,582,744
34.7%
流動負債
1,240,704
27.2%
90
有利子負債
2,884,233
62.4%
80
70
60
固定資産
2,973,337
65.3%
固定負債
2,469,472
54.2%
売上高
2,776,168
50
40
30
粗利
1,308,805
47.1%
20
純資産
848,725
18.6%
10
0
資本金等
940,469
20.6%
利益剰余金
△91,744 2.0%
営業利益
324,287
11.7%
11.70%
2003年
2007年
100
100
90
90
80
80
70
70
60
60
50
50
40
30
20
10
0
固定資産
531,209
37.5%
資本金等
542,865
38.1%
流動負債
555,742
39.1%
固定負債
531,209
37.6%
純資産
332,240
23,3%
流動負債
1,240,704
27.2%
有利子負債
2,884,233
62.4%
固定資産
2,973,337
65.3%
固定負債
2,469,472
54.2%
売上高
2,776,168
40
総資本
1,421,206
流動資産
887,946
62.5%
流動資産
1,582,744
34.7%
30
有利子負債
575,541
37.6%
売上高
517,398
粗利
1,308,805
47.1%
20
純資産
848,725
18.6%
10
0
利益剰余金
△210625
-14.8%
粗利
133,369
25.8%
営業利益 △
54,893 -10.6%
資本金等
940,469
20.6%
利益剰余金
△91,744 2.0%
営業利益
324,287
11.7%
11.70%
ドコモとの売上高推移の比較
右;ドコモ
左;ソフトバンク
6000000
5000000
百万円
4000000
3000000
2000000
1000000
0
2003
2004
2005
2006
2007
売上高
517,393
837,017
1,108,665
2,544,219
2,776,168
売上高
5,048,065
4,844,610
4,765,872
4,788,093
4,711,827
ソフトバンクは右肩上がりになっている。
2つの財務諸表からわかること
 ソフトバンクはこの5年間で、資産規模で3倍、
売上規模で5倍の会社になっています。
 自身より大きな会社を買収できたのはLOBを
使ったからで、レバレッジをかけた成長戦略でし
た。
ちなみにソフトバンクのLOBは日本企業の中
で過去最大のものだったそうです。
キャッシュフロー計算書について
営業CF
投資CF
財務CF
①
+
+
+
②
+
+
ー
③
+
ー
+
④
+
ー
ー
⑤
ー
+
+
⑥
ー
+
ー
⑦
ー
ー
+
⑧
ー
ー
ー
CF表の+、-の組み合わせは以上の8パターンが考え
られ会社の状況が推測できます。
調子のよい会社の例(+、-、+)
事業戦略が明確で、本業で稼いだ営業CFと、調達した
財務CFを投資に充てている会社です。
 調子の悪い会社の例(-、+、+)
本業で稼げず、借入金や資産売却でその穴を埋めてい
る会社です。

ソフトバンクのCF表
営業CF
投資CF
財務CF

2003
-83,829
81,878
360,390
2003,2004年
2004
-45,989
-242,944
277,770
2005
2006
57,806
311,201
27,852 -2,097,937
30,078
1,718,384
調子の悪い形
 2007年には調子の良い会社の形に
ボーダフォン買収に伴うお金の動き
2007
158,257
-322,461
284,727
ソフトバンクについてのまとめ
今までのことを踏まえると、
時間を買うために有効
にM&Aを行った
ということが考えられます。
終りに…

今回M&Aについて調べて、TOBの仕組みを
よく理解することができました。
 敵対的な買収が、株主にとっての価値を高める
ことがあると知り、M&Aについてのイメージが
変わりました。
 株主の価値が注目されているので、これからも
M&Aの件数は多くなっていくだろうと思いまし
た。
参考文献

「図解 M&Aのすべて 」
坂本恒夫・文堂弘之 [編]

財務三表一体分析法
國貞克則

http://www.softbank.co.jp/ja/index.html

http://www.nttdocomo.co.jp/
etc…