否定側第一反駁

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Transcript 否定側第一反駁

ディベート中級講座
~ディベート甲子園で勝つために~
中学生版
Ⅰ 立論編
・肯定側立論は、(
・否定側立論は、(
・肯定側のプラン・・・
立論の構成
プラン
)と( メリット
デメリット )を述べる。
)を述べる。
論題を肯定するための具体的な政策のこと
⇒肯定側のプランは、論題を肯定していなければならない。
つまり、論題外のプランは認められない。
※但し、デメリットの発生を防止するためのプラン(スパイクプラン)は
「論題の範囲内」であれば認められる。
・否定側がプランを述べない理由
ディベートにおいての否定側の役割は
「論題を否定すること」(厳密には「論題の肯定を妨げること」)。
本来、否定側は「論題を肯定しないプラン」を提示する義務があるが、
ディベート甲子園のルールでは、否定側のプランは「現状を維持する」
というものに限定されている。
※否定側立論で肯定側立論への反駁を行うことは、 認められるという解釈が多数派。
ディベート甲子園ルール第2条1項
「否定側立論は,現状維持の立場をとるものとし,主に肯定側のプランからどのようなデメリットが発生
するかを論証するものとします。」
逆に、「定義や論題充当性についての反駁は、否定側立論でしなければならない」と考えるジャッジも
少数ではあるが存在する(二立形式の英語ディベートに慣れている人等)
Ⅰ 立論編
論題充当性・論題外性
・メリット・・・ 論題を肯定する(= 論題内 の)プランにより発生する良いこと
・デメリット・・・ 肯定側のプランにより発生する悪いこと
論題充当性・論題外性の議論
論
題
充
当
性
論題の範囲外
論題の範囲内
論題内
論題外性
・メリットは、 論題内 のプランによって
発生していなければならない。
・
論題外 のプランにより発生するメリットは
論題を肯定する理由にならないため
メリットとしては評価されない。
デメリットの発生を妨げるためのプラン
(スパイクプラン)は、 論題の範囲内 ならOK。
(cf. P「報道の質をチェックする国家機関を設立」)
・ 論題の範囲外 のプランは、
たとえそのプランにより発生するメリットを
論題外 述べていなかったとしても、無効となる。
(cf. P「インターネットの利用を禁止する(※)」)
・論題を肯定するプランがない場合や、 論題を
否定するプランを提示した場合、肯定側の敗北。
(実際はプランを無効とするケースが多い)
(cf. P「再犯の場合は実名報道できる」)
Ⅰ 立論編
メリット・デメリット
・メリットの三要素・・・・・( 内因性
)( 解決性 )( 重要性 )
・デメリットの三要素・・・( 固有性 )( 発生過程 )( 深刻性 )
プランを導入しなければ、メリットは発生しないこと
内因性・・・・・(プランがないことにより、現状に問題があること)
解決性・・・・・ プランを導入すれば、メリットが発生(問題が解決)すること
重要性・・・・・ メリットは重要である(些細な問題ではない)こと
固有性・・・・・ プランを導入しなければ、デメリットは発生しないこと
発生過程・・・ プランを導入すれば、デメリットが発生すること
深刻性・・・・・ デメリットは深刻である(些細な問題ではない)こと
Ⅰ 立論編
メリット・デメリットの評価
×
発生の確からしさ
発生した時の重大さ
=
(デ)メリットの大きさ
・メリット/デメリットの大きさは、
「内因性/固有性」及び「解決性/発生過程」で立証する
【発生の確からしさ】
と
「重要性/深刻性」で立証する
【発生した時の重大さ】 の積で考える。
掛け算ということは、内因性・解決性・重要性のどれか一つが完全に潰れたら
メリットはなくなってしまうということ。
Ⅰ 立論編
この立論がイマイチ立たない理由を挙げなさい
追加プラン1 実名報道した場合、罰金100万円を課します。
追加プラン2 報道の質をチェックする国家機関を設立します。
メリット「国民の利益」
実名報道で国民は不利益を被っています。
資料 工学院大学非常勤講師 井上知樹 2013 はじめ
実名報道は、被疑者に過ぎないのに犯人だと周囲の社会関係の中に印象付け、あるいは犯人だと
しても、罪を償って社会に戻っても、犯罪者だったと周囲の社会関係の中で知れ渡っているために社
会復帰を妨げ、また、被害者であるにも拘らず被害を受ける状況を自ら作出した責任を問責し、加え
て、被疑者・被害者の家族までも、一族郎党末代まで呪うかの如く、周囲の社会関係の中で晒し者
にして攻撃の的にする、といった弊害をもたらしている。
おわり
これは国民の人権を侵害しています。
資料 工学院大学非常勤講師 井上知樹 2013 はじめ
実名報道は、個人の尊厳性という憲法原理から見ると、被疑者・被害者の人間性を一方的強制的に
歪曲し、主体性・自由を剥奪し、尊厳性を毀損するものであることが明らかとなろう。(中略)我々は社
会の中で生きているが、存在論的に不可避的に個人たらざるを得ない。それゆえに、個人として尊
重されることは、何度も拳拳服膺(けんけんふくよう)されねばならない。
おわり
プランを導入すれば、実名報道はなくなり、国民の人権が守られます。
また、報道の質をチェックする国家機関が設立されることにより、犯罪報道の質も上昇します。
これは国民にとって大きな利益です。よって、プランを導入すべきです。
Ⅱ 質疑編
質疑の目的
質疑のルール
・主導権は質疑者にある
・質疑で反駁しても、反駁したことにはならない
・質疑に対する応答は、立論の補足として評価の対象となる
質疑の目的
目的① 立論の不明瞭な点を明らかにし、ジャッジに正確に理解させること
目的② 立論の弱点を明らかにし、ジャッジにアピールし、反駁に繋げること
目的に合わせた質疑のスタイル
①立論の頭から順に内容を確認していく。
②立論の穴を指摘し、その穴が致命的な穴であることをしつこく確認する。
注意すべき点
・問いに対する答えが得られるまでは打ち切らない。(コミ点対策)
・問いに対し答えたあともダラダラ喋り続ける応答は打ち切る。(時間の節約)
・できるだけ短く回答できる質問(YES / NO 等)をする。
・回答に自分たちが納得できても、ジャッジも納得しているとは限らない。
Ⅱ 質疑編
さっきのイマイチな立論に質疑してみよう
P1 罰金100万円
P2 報道の質チェック機関
M 国民の利益
E 井上2013
社会復帰妨げる
一族郎党晒し者にされる
E 井上2013
個人の尊厳
P導入→実名報道なくなる
報道の質も上がる
N:まず内容を確認します。プランは2点ですよね。
1点目が罰金100万円、2点目が報道の質を
チェックする機関を設立する、でいいですか?
A:はい。
N:で、メリットが「国民の利益」ですね。
A:はい。
N:具体的にどういう利益があるんですか?
A:それは、立論でも申し上げたように、今実名報
道によって国民が不利益を受けているので・・・
N:なるほど、つまり、国民が今受けている不利
益がなくなるのが利益だ、と。そういうことですね。
A:それだけじゃないです。報道の質も上がるの
で、それによる利益もあります。
N:その報道の質なんですけど、これはプラン2で
言ってるチェック機関ができるからですよね。
A:そうですね。
N:つまり、この報道の質が上がるというのは、プ
ラン2によって発生してるメリットですよね。
A:そうですけど?
N:つまりプラン2を設けずに、実名報道だけを禁
止しても、犯罪報道の質は上がらないんですよ
ね。
A:そうなりますね。
N:わかりました。では一旦内容を整理したいん
ですが、まず現状の問題点として、資料を2枚あ
げてますよね。1枚目が井上さんの資料で、実
名報道で社会復帰が妨げられたり、晒し者にさ
れたりしている。2枚目も井上さんで、このような
現状は個人の尊厳を損なうから問題だ、と。で、
プランを導入すれば、今後こういうことは起きな
くなるし、さらに報道の質も上がるからいいこと
づくめ、そういう流れでよろしいですか?
A:そうですね、合ってます。
N:ではまた個別にお聞きしますが、立論で
使ってる資料の井上さんってどういう方です
か?
A:工学院大学の非常勤講師です。
N:非常勤講師ですか。教授とかじゃないんで
すよね。
A:そうですけど、大学で教えてる先生です。
N:何の先生ですか?
A:憲法学の先生です。
N:なるほど、ではジャーナリズムの専門家では
ないんですよね?
A:そこまではわかりませんが、こういう本を書
いてるくらいですから、お詳しいんだと思いま
す。
N:それは肯定側の推測ですよね。
A:まぁそうですね。
N:わかりました。この資料の中で、いろんな人
が実名報道で被害を受けてるって話でしたけ
ど、実際に実害を被った人って何人くらいいる
んですか?
A:人数はわかりませんが、たくさんいると思い
ます。
N:たくさんいるというのはどうしてわかるんで
すか?
A:それはまぁ実際に社会的に問題になってま
すし…
N:でも人数はわからないんですよね?本当に、
法律を変えなきゃいけないくらいの問題なんで
すか?
A:変えないと解決しません。
Ⅲ 第一反駁編
第一反駁のルール
反駁の2大禁止事項
・ 新しい議論(ニュー・アーギュメント) と 遅すぎる反論(レイト・リスポンス)の禁止
ニュー・アーギュメント (ディベート甲子園ルール 細則D 4-4)
立論で提出されず,反駁で新たに提出された主張・根拠(新しい議論)は,判定の対象から除外します。ただし,相
手の持ち出した主張・根拠に反論する必要から生じた主張・根拠はこの場合にあたりません。
・判定基準は ジャッジによって千差万別。明文化できるほど明確な基準を持つジャッジは少数。
→「ある主張がニュー・アーギュメントに当たるかどうか」も議論の対象になるということ。
・一般的には、「立論で述べていないメリット/デメリットを反駁で出すのはアウト」
・問題になるのはターンアラウンドを仕掛けるとき。
「実名報道に罰金刑を設けることで、罰金を恐れて報道機関が実名報道を行わなくなるので、
報道被害を防止できる」
というメリットに対し、
「罰金刑という明確な処置が設けられることで、罰金を払えば堂々と実名報道できると解釈され、
却って実名報道する報道機関が増え、報道被害は却って増加する」
というターンはセーフだが、
「実名報道を禁止することで、犯人の名前を知るニーズが今より高まり、インターネット上での実名
情報の流布が増加する。ネット上は規制が難しいので報道被害が今より深刻化する。」
というターンはアウトの可能性アリ。(=ニュー・アーギュメントかどうかの議論の対象となりえる)
・判定基準の一例「それは立論の段階で言えるだろ・・・後出しするのは卑怯」と感じたらニュー。
レイト・リスポンスは流石に常識だと思うので省略。(ディベート甲子園ルール 細則D 4-5)
相手チームの主張・根拠に対する反論のうち,第1反駁で行えたにもかかわらず第2反駁で初めて提出されたもの
(遅すぎる反論)は,判定の対象から除外します。
Ⅲ 第一反駁編
否定側第一反駁の基本
否定側第一反駁の仕事・・・① 定義・プラン への攻撃 ② メリット への攻撃
①定義への攻撃・・・国会議員は「公務員」に含まれるのか、等
プランへの反駁・・・有効なのは 実行可能性 と 実効性 についての反駁のみ
→どちらも、解決性に対する反駁という形で代替可能
②メリットへの攻撃・・・内因性、解決性、重要性のどれか一つでも0にすればメリットは0。
だが、再反駁によって守られることを想定し、三要素全てに対して
大量の攻撃を仕掛けておく(=スプレッド)のが主流。
反駁の四拍子・・・ 引用 → 主張
→ 根拠
→ 結論
・・・・・・基本中の基本!
相手の議論を引用する。
「肯定側はメリット(
)の(現状分析/解決性/重要性)で…と言いました。」
自分たちの主張を述べる。
「しかし、それは a 関係ありません b 間違いです c 重要/深刻ではありません
d メリットよりもデメリットの方が大きいです e メリットではなくデメリットです」
根拠を示す。
「なぜかというと、~だからです。(~という資料によると…だからです。)」
結論(もう一度主張をくり返す)。
「ですから~なのです。」
これをひな形として反駁を書く。また、これさえ頭にあれば、その場でも十分反駁可能である。(NADE公式HPより)
Ⅲ 第一反駁編
否定側第一反駁(応用編)
反駁の三拍子(応用編)・・・ ダウト → 反証 → ターン
相手の議論にダウトをかける。
「肯定側はプランにより○○が減ると述べましたが、~~の部分が立証できていないので、減るとは限りません。」
根拠をつけて反証する。(できれば優位性も示したい)
「○○は減りません。証拠です。~~。(こちらの証拠の方が~~という理由で肯定側の資料より信憑性があります。)
ターン・アラウンドをしかける。
「むしろ、○○は増えます。証拠です。~~。よって○○が減るというメリットはなく、むしろ逆のデメリットが生じます。」
まず「反証」のブリーフを書く。その後、「ターン」のブリーフを追記できないか考えて資料を探す。
ダウトはブリーフ化できないことも多いので、相手の立論を聞いてからその場でくっつける。
~ターンを追加する理由~
よほど実力差がない限り、個別の論点に対するジャッジの判定が一方的になることはない。
ターンがない場合・・・「減るかもしれないし、減らないかもしれない。メリットは削られたけどゼロではない」
ターンがある場合・・・「減るかも知れないし、増えるかも知れない。完全にひっくり返したとまでは言えないが、
メリットはほとんどない」
※あくまで、このように考えるジャッジもいる、という話です。
肯定側と否定側、どっちの言い分が正しいのか、自分自身の中で決着をつけて判定を出すジャッジも多いです。
つまり、ターンをかけたほうが、メリットを0(以下)にできる可能性が上がるということ。
~補足 ダウトだけの反駁が弱い理由~
ダウトというのは要するに立論の立証不足を指摘すること。
よほど素人のジャッジでない限り、指摘されるまでもなく把握しているので無意味。
指摘されないと気づかないようなジャッジには効果があるが、結局は「そうかもしれないなぁ」という疑念で終わる。
Ⅲ 第一反駁編
この第一反駁がイマイチ効かない理由を挙げなさい
P1 罰金100万円
P2 報道の質チェック機関
M 国民の利益
E 井上2013
社会復帰妨げる
一族郎党晒し者にされる
E 井上2013
個人の尊厳
P導入→実名報道なくなる
報道の質も上がる
はじめます。
(ア)
プラン2に反駁します。
日本全国の報道機関の報道をチェックするとなると、膨大な手間とコ
ストがかかります。
今の日本の財政はひっ迫しているので、そんな機関を設置する余裕
はないです。P2は無効です。
(イ)
メリットについて反駁します。
国民の利益ということでしたが、具体的にどういう利益があるのかが
わかりませんでした。
(ウ)
立論で使っている井上さんの資料に反駁します。
井上さんは大学の非常勤講師で、しかも専攻は憲法学です。ジャーナ
リズムについての専門家ではないので、井上さんがそう言っているか
らという理由で、現状の報道被害が問題であるということに立証には
なりません。
Ⅲ 第一反駁編
肯定側第一反駁
肯定側第一反駁の仕事・・・ ①肯定側立論の守備 と
②否定側立論への攻撃
・①と②の優先順位を意識すること。
肯定側第一反駁は時間的な制約が厳しいので、結果的にいくつかの議論を落とす可能性は高い。
メリットが完全に潰れたら、否定側のデメリットがターンアラウンドされない限り、肯定側は勝てない。
デメリットを完全に潰すことができたとしても、メリットが無ければ肯定側は勝てない。
よって、最優先すべきはメリットの守り(再反駁)。
※色々な考え方があります。重要なのは、反駁の順番にも理由があることを意識することです。
何も考えずに上から順に反駁するのではなく、「今日の試合はここが最大の争点だから、ここだけは
絶対にドロップしないように最初に反駁する」等、考えて反駁しましょう。
注意すべき点
・否定側第一反駁のスプレッドに惑わされず、本質を見抜いて、複数の論点にまとめて
反駁するのが効果的。
・4分の否定側立論+3分の否定側第一反駁に対し4分で反駁するのだから、よほどの
実力差がない限り、全ての議論に反駁するのは不可能。
押さえるべきポイントを明確にし、基本の4拍子+応用の3拍子を確実に。
・ドロップを恐れるあまり、ダウトのみ等の薄い反駁ばかりかけるのは愚の骨頂。
・議論の取捨選択を強く意識する。最終的にどこを残し、何と何を比較して勝つ
のかを考え、反駁するポイントを特定する。
・自分たちのメリットにも攻撃することになる反駁は厳禁。(否定側の場合は可)
cf: M「報道被害防止」のとき、D「知る権利が損なわれる」に対し「メディアで報道しなくなることで、
ネット上で今以上に情報が流布し、実名を知りやすくなるため、知る権利は守られる」と反駁する
→プラン後は報道被害もネット上で発生することになる。
Ⅲ 第一反駁編
反駁ブリーフの作り方・使い方
・反駁の四拍子を守った原稿を作る。
【引用】にあたる部分は空白にしておき、試合中に書き込む。
・攻撃ブリーフは必ず資料をつける。
※資料付きの守備ブリーフが出来た場合、その資料は立論に組み込めないかを見直す。
・実際に読んでみて、かかった時間を書いておく。
・長いブリーフは、Long ver. と Short ver. を作る。
・(紙に出力して使う場合) 目次を必ず作成し、ブリーフ一つ一つに番号を振る。
試合中はフローシートにブリーフの番号を書いていく。
・(Microsoft Word を使う場合) 「見出し」機能を活用する。
大見出し「○○に対する反駁」 小見出しは反駁の要約
試合中は反駁用の白紙のWordを起動し、ブリーフからコピペして4分の原稿を作る。
(特に否定側第一反駁は時間の余裕があるので完璧な原稿が作れるはず)
Ⅳ 第二反駁編
否定側第二反駁
・否定側第二反駁の仕事・・・ 否定側立論の守備(再反駁)と 総括
~補足 「再々反駁」の必要性~
メリットに対し、否定側第一反駁で攻撃をし、肯定側第一反駁が守備をした。
この肯定側第一反駁に対して再々反駁をする必要はあるのか?
→メリットを潰す「反証」の武器は否定側第一反駁で全て出されているべきであり
「再々反駁」という形で新たな根拠を出しても、ニューアーギュメントと取られかねない。
本来であれば、お互いに武器を出し尽くした後なので、「総括」という形で、該当箇所の
議論をどう判断すべきかを説明することしか出来ないはず。
総括ですべきこと・・・
①個別の論点がどう判断されるべきか(論点整理)
②残った部分について、どちらを大きく評価すべきか(価値比較)
否定側第二反駁は、再反駁を最優先する。再反駁が終わったら総括に移る。
否定側第二反駁の総括の手法
・最初に肯定側第一反駁のドロップを指摘し、それにより確定した部分を確認する。
・論点を整理し、メリットが発生していないことを確認し、勝利を宣言する。
・価値比較は、再反駁を犠牲にしてまで行う必要はない。(やってもどうせ肯定側が時間を
かけてやり直してしまう)
但し、個別論点についての比較はきちんと行う(対立する資料のどちらが正しいか、等)
Ⅳ 第二反駁編
肯定側第二反駁
・肯定側第二反駁の仕事・・・ 総括のみ
①個別の論点がどう判断されるべきか(論点整理)
②残った部分について、どちらを大きく評価すべきか(価値比較)
肯定側第二反駁の総括の手法
総括ですべきこと・・・
・否定側第二反駁が総括をしていない場合、論点整理を行い、残っている議論を特定する。
・否定側第二反駁が総括をしている場合、否定側の論点整理に極力乗っかりつつ、
否定側の総括の誤りを指摘する等の方法でメリットを残す。
・論点整理が終わったら、肯定側に投票できる理由を探す。できれば複数挙げる。
・どう比較すれば(何を比較基準にすれば)メリットの方が大きく見えるかを考える。
「○○と△△を◇◇という基準で比較すれば、当然○○の方が重要です」という形を作る。
・比較基準は立論(重要性やフィロソフィ等)に仕込んでおくことが望ましい。
(ニュー・アーギュメントを避けるため)
cf. M「報道被害の防止」 D「表現の自由の侵害」 のとき、「表現の自由は公共の福祉に反しない限り認められる」
という判断基準を採用するなら、Mの方が重要と言える。しかし、この判断基準が第二反駁でいきなり出てきたら、
ニュー・アーギュメントと判断されかねない。それを避けるため、立論の段階で出しておく。
・立論に比較基準を仕込めなかった場合(あるいは仕込んだ基準が使える展開にならなかった場合)、
肯定側の判断基準を用いるのが妥当である理由を説明する。
※否定側が価値比較をしていない場合、そこまで気にしなくていい。肯定側の優っている部分で比較をすれば、
それが納得のいく比較方法であれば採用される。
Cf. M「報道被害の防止」 D「冤罪の増加」 のとき、「刑事事件の中で、冤罪が起きる確率は著しく低い。だからデメ
リットを受ける人間の数は非常に小さい。しかし、事件が起きれば報道はほぼ確実に行わるし、犯罪報道は毎日
といっていいほど流れている。メリットを受ける人間の数の方が圧倒的に多い。人数と確実性という面で、メリット
はデメリットを大きく上回っている。よってメリットの方が大きいのでプランを導入すべき。」
Ⅳ 第二反駁編
総括のコツ
・論点整理においては、客観視を心がける。
味方のスピーチは、読んだ原稿を目で見るのではなく、耳で聞いてフローを取る。
味方のスピーチが本当に伝わっているかどうか、ジャッジの反応を確認する。
客観的な視点で試合の流れを見、何が残っているかを判断する。
・客観視の習得は、ジャッジを経験するのが一番の近道。
・客観的に見て圧勝している場合
→ジャッジの誤解を避けるため、丁寧に論点整理する。
双方の立論の内容からおさらいする(ジャッジの講評コメントを参考にするとよい)
・客観的に見て勝敗が微妙な場合 cf.相手の(デ)メリットが残ったかもしれないとき
→(デ)メリットがないことを丁寧に論点整理しながら確認しつつ、「万が一この(デ)メリッ
トが発生したとしても、比較すればこちらのデ(メリット)の方が大きい」とまとめ。
・客観的に見て勝ち目が薄い場合
→少しでも優っている部分を探し、その部分で比較することの妥当性を主張する。
・それぞれのパターンで、「○○と××で比較する場合」等の原稿が事前に用意できる。
反駁だけでなく、総括もブリーフ化しておくと安心。