1 - 環日本海域環境研究センター 生体機能計測研究部門

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Transcript 1 - 環日本海域環境研究センター 生体機能計測研究部門

磁界曝露下における抗がん剤
フルオロウラシルの作用
環日本海域環境研究センター
生体計測制御研究部門
森 一也
研究背景と目的
抗がん剤は血流にのって全身を巡り、正常細胞とがん細胞
の両方に作用
副作用の発生
交流磁界を曝露することにより、抗がん剤の作用が高まると
いう報告がある
抗がん剤の投入量を少なくでき、副作用の軽減を図ることが
可能になると考えられる
濃度依存性の抗がん剤9種類で作用の増強の確認
増殖している細胞のみに効く時間依存性の強い抗がん剤
を用い磁界曝露下における作用変化の比較と検証を行う
実験で使用する抗がん剤 フルオロウラシル(5-FU)
作用機構 DNA結合型
分子量
130.08
分子式 𝐶4 𝐻3 𝐹𝑁2 𝑂2
構造式
特徴
・DNA複製を阻害
・タンパク質の合成を阻害
・化学療法で頻繁に用いられ,副作用が弱い
・時間依存性が強い
時間依存性の抗がん剤の作用機構
時間依存性とは
細胞膜
複製中の細胞
細胞
DNA
DNA
複製中の細胞
細胞
DNA
DNA
複製中の細胞にの
み作用する
複製中ではない細胞には作
用せず,細胞内でとどまる
複製中の細胞にのみ作用するため副作用が弱く,時間が経過
するにつれて細胞の複製が進み,抗がん剤の作用が高まる
抗がん剤フルオロウラシルの作用へ
の曝露影響評価
実験で使用した磁界発生装置と恒温装置
36.1±0.3℃ で水を循環
循環装置
水
の
循
環
磁界の
発生
コイル
鉄心
実験領域
コイル
周波数 60 Hz
磁束密度 50 mT
磁界曝露層 Exposure
磁界非曝露層 Control
抗がん剤作用への影響評価手法
ヒト細胞
・ヒト細胞よりも早いサイクルで増殖
大腸菌
・DNAに対してアタックする抗がん剤の作用を受ける
×2/day
培養した菌液に抗がん剤を添加した後,磁
界曝露と磁界非曝露二つの等量にわける
恒温層で一定時間培養,片方にのみ磁界を
併用曝露(3h)
×2/30min
培養した菌液
抗がん剤添加
磁界非曝露
(Control)
磁界曝露
(Exposure)
それぞれの生菌数をカウント
生菌数が多い
少ない
= 抗がん剤作用:弱い
=
磁界曝露(3h)
: 強い
生菌数の計測
抗がん剤5-Fuの濃度依存性の検証
1.4
Relative ratio of colony
forming unit
1.2
1
200 µg/µl
150 µg/µl 300 µg/µl
600 µg/µl
No Drug
300 µg/µl
No Drug
200 µg/µl
600 µg/µl
150 µg/µl
0.8
0.6
0.4
0.2
0
磁界非曝露
0
3
Reaction time (h)
抗がん剤 5-FU の濃度依存性
全ての濃度において3hで相対比
において抗がん剤を入れてない
ものに比べ相対比で0.2程度下
がっている
濃度による依存性は
認められない
抗がん剤 5-FU 作用 への
磁界曝露(50mT,周波数60Hz)影響評価
3.E+05
1.4
control
No Drug +MF
Relative ratio of colony
forming unit
No Drug
5-FU 300 g/µl+MF
5-FU 300 μg/µl only
*
{
viable bacteria count (cfu/µl)
1.2
exposure
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
3.E+04
0
1
2
Reaction Time (h)
3
0
1
2
3
Reaction Tine (h)
5-FU 300mg/ml 投与時の磁界曝露影響評価
2h(n=8)においてexposureはcontrolより相対比で0.1程度減少し,T検定の
値は P=0.03(<0.05) となり、有意差は確認された
磁界影響による作用増強への見解
今までの研究による考察
磁界を曝露することにより,濃度依存性の抗がん剤において細胞内取り込み量
が増えたという結果を得ている
時間依存性の強い抗がん剤では細胞内に取り込まれる抗がん剤の量には依
存しないため,抗がん剤の作用に影響はないと推定していた
時間依存性の強い抗がん剤において磁界曝露により細
胞増殖阻害作用がわずかに高まるという結果を得た
磁界曝露による影響が取り込み量以外にも影響が
あることが示唆された
まとめと今後の方針
時間依存性の強い抗がん剤について磁界曝露による抗がん作用への影
響検討
わずかではあるが,交流磁界(50mT,60 Hz)を曝露することにより時間依存
性の強い抗がん剤において作用増強を確認
細胞内取り込み量以外への磁界による影響を示唆
①時間依存性の抗がん剤を用いて実験を重ね,どの過程に磁界
による影響が現れるか検討
②ヒト培養細胞での実験
ご清聴ありがとうございました
ヒト細胞での実験準備
磁界発生装置
実験部
実験部
ヒト細胞
大腸菌
アクリル容器の損傷
底面と側面の繋ぎ目から水漏れが発生
新しいアクリル容器の製作
アクリル製の補強を施した
今後の方針
1.植物アルカロイドでの磁界曝露実験
2.ヒト細胞実験装置の完成と調整
植物アルカロイドとは?
●強い毒性のある植物成分を応用した抗がん剤である
・トポイソメラーゼ阻害剤
トポイソメラーゼとは細胞分裂の過程でDNAの切断と再結合を助け、
二重らせん構造をときほぐすはたらきを持つ酵素であり、トポイソメ
ラーゼによりDNAを切断した際、切り口に入り込みDNAを再結合をで
きなくさせる
・微小管阻害剤
DNAが複製時、微小管は染色体が二つに分かれるのを助ける働き
をし、その働きを阻害することによってDNAの複製を妨げる
使用する抗がん剤
分子量
水溶性
種類
エクザール
914
水にやや溶けやすい 微小管阻害剤
フィルデシン
852
水に溶けやすい
微小管阻害剤
オンコビン
923
極めて溶けやすい
微小管阻害剤
今回は微小抗がん剤の中から、水溶性が高いものを、また分子
量は過去の研究よりも比較的大きい(例:5-FU 130.08)ものを選
び、スクリーニングする。
恒温装置の仕組み
実験部の温度を
37℃にしたい。
アクリル製の容器
実
験
部
調整方法
・実験環境は周波数60Hz,磁束密度50mTとする。
・冷却装置の設定温度37℃一定とし、高温装置の設
定温度を調整することにより実験部37℃を実現する
CO2インキュベータ
・37℃、CO2濃度5%の環境を保つ。
現状、コイルの熱で温度が一定に保たれない。
装置の外見
装置の内装
37℃,CO2濃度5%の環境造り
なぜ、37℃5%なのか?
体内と同じ状況を作り出すため
●CO2の必要性
培養液中でヒト細胞を培養⇒培養液が酸性に傾く
・解決策
培養液中に水酸化ナトリウムを混ぜ、インキューベータに薄い
炭酸ガスを存在させると炭酸ナトリウムが生成され、緩衝作用
が生じ、pHの変動をおさえられる。
●5%とは?
大気中760mHgの5% ⇒ 38mHg (CO2分圧)
動脈血CO2濃度に等しい
1
1336
2671
4006
5341
6676
8011
9346
10681
12016
13351
14686
16021
17356
18691
20026
21361
22696
24031
25366
26701
28036
29371
30706
32041
33376
34711
36046
37381
38716
40051
41386
42721
44056
45391
46726
実験部温度[℃]
温度調整
⇒
冷却水の設定温度37℃ に設定
40
39
38
37
36
22℃
30℃
35
35℃
34
33
32
31
30
CO2インキュベータ設定温度による実験部の温度特性
アクリル製の容器に水漏れが生じ、実験中断となった。
調整結果の考察
・CO2インキュベータの温度を3段階にあげたが、温度は37℃一定とはならなかった。
水漏れが原因の一つと考えられる。
アクリル製の容器を再度作りなおす
⇒内側から補強をし、水漏れが起きないようにする。
●CO2インキュベータの設定温度を37℃にして行う。
or
●温度を扱いやすくするため、磁束密度を下げ、コイルの発
生熱を低くし実験を再度行う。
T検定
T検定とは?
あるデータ間の一致性を検証する方法
である。
T検定の値 =0.05
の 場合。
二つのデータは5%一致するということになる。
これより、磁界をかけているもの(exposure)と磁
界をかけないもの(control)の有意差を確認する。
尚、当実験では有意差が確認されると磁界をか
けることにより効果が高まったと認識できる。
培養した菌液
コロニーアッセイ法
・培養した大腸菌を磁界曝露す
るものと、しないもので等量
にわける。
通常
磁界暴露
抗がん剤
・抗がん剤を投与し、片方に磁
界を曝露する。
・一定時間経過後、LB寒天培地
に培養液を一定量投与す
る。
・コロニーが発生。
・コロニーの数をカウントする。
培養した
菌液
コロニー
の発生
磁界
一つの大腸菌が一つのコロニーを生成する。
コロニー数=大腸菌生菌数
コロニー
生菌数が多い
少ない
= 抗がん剤作用:弱い
=
:強い
作用効果の濃度依存度
500000
生菌数[cfu/ml]
300μg/µl
350000
600μg/µl
300000
250000
200000
150000
100000
50000
0
0
0μg/µl
400000
150μg/µl
400000
生菌数[cfu/ml]
450000
0μg/µl
450000
2
4
時間[h]
6
i
図1 controlにおける濃度依存
150μg/µl
350000
300μg/µl
300000
600μg/µl
250000
200000
150000
100000
50000
0
0
2
4
時間[h]
6
図2 exposureにおける濃度依存
6hでの生菌数において濃度との関係はみられなかった。
しかし、抗がん剤を投与したことによる生菌数の減少がみられた。
大腸菌での実験について
大腸菌
ヒト細胞
×2/day
増殖サイクル
×224/day
・ヒト細胞よりも早いサイクルで増殖する。
・抗がん剤の作用を受ける。
大腸菌の種類
・ W3110
野生株の大腸菌
・ JE5595
DNA修復機能の1つrecAが欠如している
DNA修復機能の代表的な
ものの一つである。
体内での抗がん作用の影響比較
磁界なし
磁界あり
抗がん剤を投与
体内
効果は変わ
らない
作 用
がん細胞
作 用
体内
がん細胞
正常細胞
効果が軽減
されている
正常細胞
効果が高
まる!
磁界暴露
作 用
がん細胞
作
用
正常細胞
少量の抗がん剤
を注入する
濃度依存性と時間依存性
濃度依存性
時間依存性
濃度を高くするほど細胞膜を
透過して細胞内に入る抗がん
剤の量が増加し,細胞増殖阻
害作用が高まる
DNAの複製回数に応じて抗がん剤の
作用効果が変化するため添加する抗
がん剤濃度を高くし,細胞内に入る抗
がん剤の量が増加しても複製回数に
変化はないので,細胞増殖阻害作用
に影響はない
濃度を高
くする
濃度を高
くする
抗がん剤作用が
抗がん剤
高まる
抗がん剤作用に
抗がん剤
変化はない
DNA
取り込み量の増加
細胞膜を通過し細胞内に入
り作用する
細胞膜
取り込み量の増加
細胞膜を通過し細胞内に入
り作用する
細胞膜
濃度依存性と時間依存性
濃度依存性
抗がん剤の
濃度を高く
する
細胞膜
細胞
細胞
DNA
DNA
細胞
DNA
抗がん剤の効
果が高まる
細胞
DNA
抗がん剤の濃度を高くすると,抗がん剤の効果が
高まり,副作用も強くなる