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2010/5/21 基礎物理学コロキウム フェルミ研ドレル・ヤン実験のためのドリフトチェンバーの 構造と性能テスト 柴田研究室 09M50030 宮坂 翔 1.ドリフトチェンバーとは 4.テストチェンバーを使っての東工大での実験内容と結果 テストチェンバーの構造 George Charpak MWPCとドリフトチェンバーの開発 1968年にGeorge Charpak らが MWPC (多芯式比例 計数管)を開発した。その功績により、Charpakは1992 年にノーベル物理学賞を受賞した。 MWPCは wire の hit から位置情報を得る。一方、ドリフ トチェンバーは時間情報も測定し、そこから位置情報を 得る。 本チェンバーと比べて、ワイヤー長やセル構造、センスワイヤー面の構造は同じだが、幅が5分 の1である。 ガスは現在、P10ガス(アルゴン 90% : メタン 10% )を用いている 本チェンバーの性能評価を早くに行うという目的で造られた。本チェンバーはセンスワイヤーが 長いという特徴があるので、その長いワイヤーが信号に与える影響を評価した。更にガス増幅 率を決定した。 ドリフトチェンバーとは 1.7 m ドリフトチェンバーは、検出器内に飛来した荷電粒子 の軌跡を測定する装置である。 荷電粒子は検出器内の気体原子を電離する。 電離された電子は陽極( Sense wire )に向かって移 動(ドリフト)する。 電子は陽極の近くで電子雪崩を起こし、電子数を増 幅し、信号として取り出される。 荷電粒子が検出器を通過した時刻と電子が陽極に 到達した時刻の差を測定することにより、荷電粒子が 通過した位置を求めることができる。 テストチェンバー@東工大 ガス増幅率の測定 実際のドリフトチェンバーの写真 100 ns 30 mV セットアップ 241 線源: Am (γ線源。60 keV のγ線を出す。主として光電効果) オシロスコープのインピーダンスは 50 Ω 使用するガス:P10ガス(Ar 90 % 、CH4 10 % ) ドリフトチェンバーの概略図 フレームの大きさ:1.9 m (ワイヤー方向) ×3.4 m 有感面積: 1.7 m (ワイヤー方向) ×2.3 m センスワイヤー面は6面 U(+14 ゜)、U’ (+14 ゜)、X(0 ゜)、X’(0 ゜)、 V(-14 ゜)、V’ (-14 ゜) 検出するミューオンはマグネットにより水平方向に曲 げられるので、ワイヤーは鉛直方向に張られている。 目標とする位置分解能は水平方向 400μm、鉛直方 向は1mm 使用するガス:アルゴン-エタン(50%-50%) セル構造:2cm 四方の四角形構造 ワイヤーはフィードスルー方式 ワイヤーの種類 Sense wire :Au-W 、直径 30μm Other wires :Au-CuBe、直径 80μm ガス増幅率の計算に用いた raw signal の一例 評価方法 まず、チェンバーにより線源からの raw signal を 観測する。その signal の波形の面積を求めること により総電子数を求め、その値を初期電子数で割 ることによりガス増幅率を求める。 2.ドリフトチェンバーの構造 実際の実験に使用するドリフトチェンバーの構造 本チェンバー 総電子数 サンプリングされた各時間での電圧値と時間幅を掛け たものを全て積算することにより、波形の面積 Ssignal を求め、総電子数 N signal を決定した。 インピーダンスは 50 Ωなので、総電荷量 Qsignal は Qsignal Ssignal / 50 () HVを50 V ずつ変化させ、各HVの値に対して10 回ずつガス増幅率を計測し、グラフにした。 よって総電子数 N signal は N signal Qsignal / e センスワイヤーの6面構造の図 U U’ X’ X V V’ 1 ドリフトチェンバーのセル構造の図 ミューオン (ほぼ垂直) Guard Wire (直径80μm ) Sense Wire 初期電子数 まず、Particle Data Group より以下の値を得た。 アルゴンの仕事関数: WAr 26 eV/electron メタンの仕事関数:WCH 4 28 eV/electron 241 Am が放つγ線のエネルギーは60 keV で、光電 効果の後このエネルギーが幅 2 cm のセルの中に全 て落とされるので、初期電子数 N init は N init 60 keV /(0.9WAr 0.1WCH 4 ) 2300 ガス増幅率 ゆえにガス増幅率 M は (80μm) フィードスルーの写真 (80μm ) 2 cm 2 cm ガス増幅率は10 のオーダーになり シミュレーションの結果とほぼ一致した。 ワイヤーのヒット位置依存性の測定 ① の位置に線源を置いたときの信号 センスワイヤーに沿って線源 241Am を動かした時の信号の変化を見た。 Cathode Wire この半田の部分が ワイヤーに繋がっ ていて、ここから HVを印加したり、 信号を読み出した りする。 5 M N signal / N init (30μm) Field Wire ガス増幅率のHV依存性 ②の位置に線源を置いたときの信号 80 ns 80 ns 30 mV 20 mV センスワイヤーの反対の端 からの反射があるが、leading edge のタイミングのみを使う ので問題はない。 ③の位置に線源を置いたときの信号 ③ 80 ns ② ① 30 mV 3.フェルミ研ドレル・ヤン実験 (E906/ SeaQuest ) とは 読み出し側 ドレル・ヤン過程 E906実験で予想される統計精度 P (ビーム) P (標的) 5.まとめ フェルミ研で行われるE906実験は 120 GeV 陽子ビームを用いた、ドレル・ヤン過程 * q q )の実験 である。 ( FNAL ( フェルミ国立加速器研究所)で、120 GeV 陽子ビームを用いて行う実験 2010年6月にビームタイム開始 * q q )を用いて、 ドレル・ヤン過程( 陽子内のSeaクォーク分布のフレーバー非対称 度(u d 非対称度)を大きいx (Bjorken x ) まで 測定する。 d 目的は陽子内の Sea クォーク分布を求めることである。 u 新規に大型のドリフトチェンバーを設計・製作した。 ドリフトチェンバーとは荷電粒子飛跡検出器である。 私はテストチェンバーを使ってガス増幅率を測定した。各HVに対するガス増幅率を測定した。グラ 5 フにしてシミュレーション結果と比較したところ、10 のオーダーとなり、シミュレーションの結果とほ ぼ一致した。これによりドリフトチェンバーのガス増幅率は設計通りであることが確認できた。 E906実験のスペクトロメータ St.3 St.2 St.1 P.beam Target Mag1 Mag2 St.4 日本グループはミューオ ンの運動量と飛跡を測 定するために、新規に大 型のドリフトチェンバーを 製作した。 長いセンスワイヤーが信号に与える影響を評価した。1本のセンスワイヤーに沿って線源を動かし た時に信号が変化することを確認した。センスワイヤーの反対の端からの反射があるが、leading edge のタイミングのみを使うので問題はない。 今後はプレアンプとディスクリミネータを用いてデジタルパルスについて検出効率・位置分解能を 測定する。