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都心5区における中小企業向け
省エネ支援政策の改善に向けて
明治大学政治経済学部
大森正之ゼミナール13期
一門由希子 江島咲希 広田美紀 吉田哲大
1
目次
はじめに テーマの設定の背景・私たちの提案と結論
第1章 研究対象
第2章 中小企業の投資による省エネの必要性
第3章 省エネ支援政策の特徴と都心5区の省エネ
支援政策の異同
第4章 省エネ支援政策の問題点
第5章 都心5区の省エネ支援政策の改善の提案
~中小企業に省エネ機器の導入を促進させるために~
おわりに
【参考文献・参考資料】
【参考ホームページ】
【調査協力企業・自治体】
2
はじめに① ~テーマ設定の背景~
電気料金値上げ
・地球温暖化
・化石燃料の
枯渇に対する
不安
・原発事故による
化石燃料の調達量
の増加による費用の
高騰
・固定価格買取制度
における賦課金
更なる
省エネが
必要
・環境税導入
現在の省エネ
今後普及させるべき省エネ
運用による省エネ
投資による省エネ
・消灯の徹底
・温度設定の適正管理
・省エネ機器の導入
(LED照明や日射調整フィルム)
コストはかからないが
削減できるエネルギー使用量に
限界がある
コストはかかるが
大幅なエネルギー使用量の削
減が見込める
投資による省エネを促進させるためには
より良い省エネ支援政策が重要
3
はじめに②
都心5区:千代田区 中央区 港区 新宿区 渋谷区
国や都と比較し、企業の二酸化炭素排出量、エネルギー使用量の割合が
高いため、企業数の9割を占める中小企業の省エネを推進したほうがよい
環境政策
森林
保全
廃棄物
処理
生物
多様性の
保全
省エネ
支援
中小企業の更なる省エネが必要であると
考えるため
都心5区の省エネ支援政策を研究対象とする
4
はじめに③
省
エ
ネ
支
点 援
政
問策
題の
①省エネは中小企業の経費削減に繋がるという面が訴求力不足である
②情報支援に改善の余地がある
中小企業は情報支援を求めているが、都心5区は経済支援が中心であるため
③補助金制度の制度設計に改善の余地がある
1. 申請数、申請額を主要な指標として見直ししていること
2.補助金制度の施策効果の検証が十分に行われていないこと
3.補助金制度の実施期間が明確に限定されていないこと
私たちの提案
Ⅰ:省エネ支援政策に
おける広報活動の改善
Ⅱ:自治体と省エネ機器
メーカーの連携による
事業所・家庭向け
省エネモニタリング制度
Ⅲ:実施期間を限定した
補助金制度への転換
5
第1章:研究の対象
都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に選定した理由
・昼間人口や中小企業数が類似しているため、省エネ支援政策の比較が容易である
・都心5区へ省エネ支援政策の改善を提案することで、他の自治体への波及効果がある
特に千代田区は環境モデル都市であり、省エネ支援政策の改善を提案することで、他の区に影響を与える
千代田区
人口
(人)
世帯
面積(m2)
昼間人口
(人)
昼夜間人口比
率(%)※
大企業数
中小企業数
緑被率(%)
中央区
港区
新宿区
渋谷区
48,260
116,930
205,559
318,186
196,910
26,796
11.64
853,382
70,122
10.18
647,733
110,113
20.34
909,000
197,173
18.23
770,094
120,055
15.11
542,803
1739
493
432
253
255
358
34,312
21
(2010年)
265
43,643
9
(2005年)
365
44,437
21
(2006年)
245
33,972
17
(2005年)
172
32,025
21
(2003年)
6
※昼夜間人口比率 とは、常住人口100人当たりの昼間人口の割合である
参考:各区HPおよび2009年度東京都統計年鑑、2010年度国勢調査より作成
第1章:中小企業を選定した理由
企業の二酸化炭素排出量、エネルギー使用量は、家庭より多いため、
企業の省エネを推進したほうが社会の省エネ化が進む
大企業は、資金面に余裕があり省エネ機器や、
自家発電機器を導入できるため省エネが進んでいる
中小企業の省エネを推進させることが必要
7
第1章:LED照明、日射調整フィルム、
エネルギー計測システムに選定した理由
LED照明
日射調整
フィルム
①既存の設置場所と設備が利用でき、
様々な建物に導入できる
• オフィスビルやマンションなどに導入しやすい
• 特に都心5区の中小企業は、オフィスビルに点在する
ため、限られたスペースでの省エネ機器の導入が重要
②低環境負荷性・経済性に優れている
エネルギー
計測システム
• エネルギー使用量の削減により、二酸化炭素排出量削
減に繋がる
• 大幅に電気代の削減ができ、中小企業の費用削減に
繋がる
8
第2章:中小企業の投資による省エネの必要性
しかし
運用による省エネでは
・エネルギー使用量と電気
代の削減には限界がある
・飲食店などのサービス提供
に影響を及ぼす
中小企業の省エネは、
運用による省エネが
主流である
大幅にエネルギー
使用量と電気代が
削減できる
投資による省エネを
更に普及させること
が必要
40形蛍光灯(36W×2本)からLED
照明の40形蛍光灯(22W×2本)
に変更すると、消費電力45%削減
でき、419kgの二酸化炭素を削減
できる
中小企業庁によると
運用5割 投資2割
9
第3章:現行の国、都、区の中小企業向け省エネ支援政策
国
•補助金
•税制優遇
•低利融資
(経済産業省・環境省・
国土交通省)
省エネ機器の開発に対する助
成や、省エネ機器のリースを
活用する際の初期費用を助成
している
東京都
• 税制優遇
(東京都環境局)
• 二酸化炭素排出総量の削減
義務化と排出量取引制度の実
施
→多くの企業が省エネに取り
組む
区の環境部局の補助金制度を中心に
産業部局の低利融資制度と併せて、
省エネ機器の導入にかかる費用の支援を行なっている
都心5区
• 補助金(環境部局)
千代田区 中央区
港区
• 低利融資(産業部局)
千代田区 中央区
港区 新宿区
• 運用による省エネの
周知活動(環境部局)
渋谷区
※渋谷区は経済支援に重点
を置かず、区民に対するイベ
ントなどを通して運用による
省エネの周知の徹底を図っ
ている
10
第3章:中小企業向け省エネ支援政策の諸類型
経済支援を行っている
①環境・産業
部局連携型
港区
②環境部局
集中型
経済支援を行っていない
③周知活動
集中型
千代田区・中央区
渋谷区
(新宿区※)
区の二酸化炭素排出量を減らすために中小企業向けの省エネ支援政策を実施している
環境部局と産業部局
が連携して広報活動
を行う
環境部局が集中的
に広報活動を行う
産業部局が保有している
中小企業のデータベースを
利用
↓
※新宿区は2012年時点で
中小企業向けの省エネに
関する補助金制度を実施
していないが、環境部局を
中心に電力見える化の支
援や、モニタリング制度の
導入を検討している
中小企業に向けて効率の
よい省エネ支援政策の広
報活動を実施している
理由
環境部局が
運用による省エネ
の周知活動に取り
組んでいる
事業所は、既に導入され
ている国や都の経済支援
を利用したほうが良いと
考えているので事業所の
事業活動よりも区民の生
活をエコにする目的に重
点を置いている
11
第3章:都心5区の中小企業向け
省エネ機器導入における補助金制度の比較
千代田区
中央区※2
港区
新宿区
渋谷区
助成率30%
(上限 30万
円)
助成率20%
(上限20万
円)
―
―
―
日射調
整フィル
ム
助成率50%
※1
(上限30万
円)
助成率
20%
(上限20万円)
助成率50%
(上限75万
円)※3
―
―
エネル
ギー計測
システム
助成率20%
(上限50万
円)
―
―
―
―
LED照明
補助金制度を実施しているのは、千代田区、中央区、港区
※1 フィルム設置面積に4500円を乗じた金額と比較し、小さい額を補助
※2 中央区が展開している「中央エコアクト」という環境事業に参加している事業所に
助成率の上乗せを行っている
※3 フィルム設置面積に7500円を乗じた金額と比較し、小さい額を補助
12
第3章:都心5区の中小企業向け省エネ機器の
導入費用に対する低利融資制度の比較
千代田区
中央区
港区
名称
千代田区商工
融資
あっせん制度
応援資金
融資
環境対策
融資
(新エネルギー
機器等)
利子率
返済期間
資金使途
0.4%
7年以内
地球温暖化環境対策
特別資金
0.5%
9年以内
省エネルギー機器を導入・
入替するもの。
2,000万円
0.1%
7年以内
助成金を除いた費用
2,000万円以内
新宿区
環境保全
資金
0.7%
5年以内
―
―
―
事業環境の保全・改善に
必要な運転及び設備資金
貸付限度額
1,000万円
※
500万円
以下
渋谷区
―
―
※:貸付限度額は事業所の代表者が区民の場合1,500万円、それ以外は1,000万円である。
しかし代表者が千代田区外在住の場合でも、
事業所が区内町会加入企業であれば、区民と同額利用が可能である。
省エネ機器の導入にかかる費用に対する低利融資制度を実
施しているのは、千代田区、中央区、港区、新宿区
13
第3章:補助金と低利融資の関係(例:千代田区)
低利融資による金利補てん
千代田区の「千代田区商工融資あっせん制度」の地球温暖化環境対策特別資金
によって資金を借り入れた場合と、
三井住友銀行で環境意識の高い中小企業向けの融資制度(SMBC-ECOローン)で
借り入れた場合の比較
千代田区の金利⇒0.4%
三井住友銀行金利⇒2.1%
借入金額(万円)
100
300
500
1,000
1,500
合計返済額(万円)
合計返済額の差額
千代田区(A) 三 井 住 友 (万円) 低利融資による
(A-B)
金利ほてん
銀行(B)
102
111
▲9
306
333
▲27
510
555
▲45
1,020
1,110
▲90
1,530
1,664
▲134
※返済年数は5年とする
参考:独自に作成
14
第3章:補助金と低利融資による金利補てんの関係(例:千代田区)
千代田区のLED照明導入
補助金
助成率30%
上限額30万円
補
助
金
補助金の場合は、対象となる省エ
ネ機器が限定されているが、低利
融資の場合は、限定されていない
低利融資による
金利補てん
100万円で
上限額に
達する
LED照明導入補助金
30万
300万円以上は
低利融資による金
利補てんが上回る
低利融資の
貸付限度額
導入費用
100万
300万
導入費用が300万円以上は、低利融資に
よる金利補てんが補助金額を上回る
導入費用が高ければ高いほど低利融資
を利用したほうがよい
1,500万
自治体は、中小企業の業種、改修規模に
応じて補助金か低利融資の選択をするこ
とが望ましい
15
第3章:中小企業における補助金制度の利用実態
補助金制度の申請件数
LED照明
日射調整
フィルム
エネルギー
計測システム
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
千代田区
1件
6件
15件
116件※1
中央区
5件
22件
54件
24件※2
千代田区
―
31件
16件
12件※1
中央区
―
―
3件
1件※2
港区
―
―
16件
5件※3
千代田区
―
―
※1 1件
10月末
1件※1
※2 6月末
※3 9月末
※1 10月末 ※2 6月末 ※3 9月末のデータ
LED照明は
普及が
進んでいる
他の2つは
制度開始間もないため
普及しているか
判断できない
更に省エネ機器を
普及させるために、
省エネ支援政策の
改善が必要
16
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点
①省エネは中小企業の経費削減に繋がるという面が
訴求力不足である
②情報支援に改善の余地がある
中小企業は情報支援を求めているが、都心5区は経
済支援が中心であるため
③補助金制度の制度設計に改善の余地がある
• 1. 申請数、申請額を主要な指標として見直ししていること
• 2.補助金制度の施策効果の検証が十分に行われていないこと
• 3.補助金制度の実施期間が明確に限定されていないこと
17
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点①
中小企業にとって省エネは、
電気代の削減という経費削減に直接繋がる
しかし、都心5区の省エネ支援政策は
二酸化炭素の削減という地球温暖化対策
の意味合いが強い
問題
中小企業の経費削減という面が後退してしまう
省エネ支援政策は
中小企業の経費削減に繋がる
ことを強調することが必要
18
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点②
経済支援に加え・・・
情報支援を求めている
中小企業が求める情報とは
・省エネ機器導入による
電気代の削減額のデータ
・省エネの取り組み方
中
汲小
み企
取業
りの
きニ
れー
てズ
いを
な十
い分
に
補助金制度などの経済支援が
主体であり
情報支援に改善の余地がある
・広報媒体が限定的
(区のHP・広報紙のみ)
・平日の昼に省エネセミナーを
開催しているため参加率が低い
中小企業に投資による省エネを促進させるためには
省エネ効果(エネルギー使用量や電気代の削減額)の
測定と広報活動の改善が必要
19
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点③
都心5区の補助金制度における制度設計の問題点
1 :補助金制度における見直しの際、
申請数、申請額を主要な指標としていること
2:補助金制度における施策効果の検証が
十分に行われていないこと
3:補助金制度の実施期間が明確に限定されて
いないこと
20
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点③
補助金制度の制度設計の問題点1
現状
問題
千代田区・中央区・港区は
補助金制度の見直しの際、
その他では・・・
・国や都の動向
・技術革新
・メーカーへの
ヒアリング調査
指標として申請数、申請額を重視している
申請数、申請額が主要な指標では
補助金制度の施策効果を十分に検証できない
補助金制度の見直しの際、
対象となっている省エネ機器の市場価格の変動を
指標として重視することが望ましい
21
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点③
補助金制度の制度設計の問題点2
中小企業の省エネ機器導入を促し、
補助金制度の妥当性を十分に検証するため、
省エネ効果(エネルギー使用量の推移、電気代の削減額)
を測定し、公表すること
が必要である
問題
補助金制度の施策効果の検証が
十分に行われていないこと
施策効果の検証方法
補助金受給企業の
①省エネ効果
(エネルギー使用量の推移、電気代の削減額)
②補助金制度の利用後の意見など
以上2点を調査すること
22
第4章:中小企業向け省エネ支援政策の問題点③
補助金制度の制度設計の問題点3
問題
千代田区・中央区・港区では
助成期間が明確に定められていない
OECDの汚染者負担原則によると
補助金の使用は本来制限されているが、
以下の場合の助成は例外的に認められている
・喫緊な環境政策を推進する場合に初期だけ、もしくは期間が
明確に定められた助成
・助成なしでは厳しい困難が生ずる特定の地域に関する助成
・公害防止の技術開発に対する助成
・国際貿易および投資に著しい歪みを生じさせない助成
引用:OECD(1972)
制度設計を見直し制度の実施期間を限定する必要がある
23
第5章:都心5区の省エネ支援政策の改善の提案
~中小企業に省エネ機器の導入を促進させるために~
中小企業向け省エネ支援政策の問題点まとめ
①省エネは中小企業の経
費削減に繋がるという面が
訴求力不足である
②情報支援に改善の余地
がある
中小企業は情報支援を求め
ているが、都心5区は経済支
援が中心であるため
③補助金制度の制度設計
に改善の余地がある
• 1. 申請数、申請額を主要な指標
として見直ししていること
• 2.補助金制度の施策効果の検証
が十分に行われていないこと
• 3.補助金制度の実施期間が明確
に限定されていないこと
私たちの提案
Ⅰ:省エネ支援政策の広報活動の改善
Ⅱ:自治体と省エネ機器メーカーの連携による事業所・家庭に対する省エネモニタリング制度
Ⅲ:実施期間を限定した補助金制度への転換
24
第5章:省エネ支援政策の広報活動の改善Ⅰ
中小企業は経済支援に加え省エネによる電気代の削減など
の情報支援を求めている
そのため、都心5区で必要な情報支援は・・・
ⅰ:中小企業が頻繁に利用する多様な
媒体を用いた広報
ⅱ:中小企業の立場を考慮した
丁寧な広報
メールマガジンの配信
(関東経済産業局が中小企業向けに
省エネ方法などの情報
を配信している)
インターネットを
利用した動画配信
(大阪府豊中市はインターネットで本会議のライブ中
継および録画配信を行なっている)
省エネ機器メーカーを活用した広報
(省エネ機器メーカーが中小企業に省エネ機器を販
売する際、自治体の省エネ支援政策を広報する)
業種別セミナーの実施
(港区はⅰオフィス・テナント向け、ⅱ飲食・店舗向
け、ⅲビル管理者向けのように、業種別に省エネ
セミナーを実施している)
自治体による
省エネ効果の公表
(モニタリング制度による情報)
25
第5章:自治体と省エネ機器メーカーの連携による
事業所・家庭に対する省エネモニタリング制度Ⅱ
東京都小平市・八王子市は太陽光発電システム
機器、燃料電池の導入の際、市から補助金を受給
した市民をモニターとし、1年間省エネ報告書を提
出させたり、機器導入前後1年間の月々の電気・ガ
ス使用料を報告させている
中央区、港区では、補助金受給企業に対する
省エネ効果の測定は行っていない
千代田区では補助金受給企業に対し、エネルギー
使用量の変化の提出を依頼してるが、提出率は低い
省エネ機器メーカー
安価で機器
を提供
自治体
調査費用
データ
自治体が指定した専門機関
(省エネセンターやクールネット東京など)
データ
補助金
省エネ効果測定
提案
モニタリング対象者
(事業所・家庭)
①自治体が複数のモニタリング対象の省エネ機器メーカー、モニタリング対象者(事業所・家庭)を
公募する
②モニタリング対象者は自治体の補助金を利用し、さらに通常よりも安価で提供される省エネ機器を
導入する
③自治体が指定した専門機関は自治体とメーカーから調査費用をもらい、モニタリング対象者の省エネ
効果を測定し、その結果を自治体に提出する
26
④測定結果を自治体が公表する
第5章:自治体と省エネ機器メーカーの連携による
事業所・家庭に対する省エネモニタリング制度Ⅱ
現行の補助金制度における
省エネ機器導入の費用負担
省エネモニタリング制度における
省エネ機器導入の費用負担
(例 千代田区)
自治体負担分
事業者・家庭
負担分
3
7
省
エ
ネ
機
器
導
入
費
用
メーカー負担分
1
3
通常よりも1割安く省エネ機器を提供する
自治体負担分
事業者・家庭
負担分
6
自己負担額が低減する
事業所・家庭
メリット
メーカー
自治体との連携により、自社
商品の省エネ効果を客観的
に証明でき、販売促進に繋
がる
自治体
メーカー
指定された専門機関に対し、
省エネ効果測定にかかる調査費用も負担する
自治体
モニタリング結果を基に、補助
金制度の妥当性を検証でき、
省エネ効果の広報活動にも活
用できる
事業者・家庭
モニタリングに協力することで、
省エネ機器導入の際、自己負
担額が低減する
27
第5章:実施期間を限定した補助金制度への転換Ⅲ
ⅰ:補助金制度の対象を設定し、助成率、上限額を漸減的にする
制度の対象者・補助金額の上限・助成率を予め設定することで、
補助金制度の受給対象者に合った制度を設計できる
実施期間
助成対象
短期
(1~2年)
病院、学校
公共性が高く、一度に大
規模改修が可能
制度設計
助成率、上限額を
高めに設定する
(例:助成率40%
上限額100万円)
中期1
(3~4年)
中期2
(5~6年)
事業所(事務所、店舗)
家庭
経済的な理由から、
一度に大規模な改修を行う
ことが困難である企業
助成率→維持
上限額→引き下げる
(例: 助成率40%
上限額 30万円)
助成率→引き下げる
上限額→引き下げる
(例: 助成率 20%
上限額 10万円)
上限額、助成率を漸減的にする
28
第5章実施期間を限定した補助金制度への転換Ⅲ
ⅰ:補助金制度の対象を設定し、助成率、上限額を漸減的にする
千代田区のLED照明の補助金制度
2009~2011年度
2012 ~(2015年度※)
※制度の見直しは3年ごとであるため、2015年ま
で続くと思われる
助成対象
助成額
・マンション、商店街等の共用部
・延床面積5,000㎡以下の
学校、病院、ホテル等の共用部
(2010年度~)
設置費用の20%
上限100万円
・マンション、商店街等の共用部
・住宅を除く区内の建物の専用部及
び共用部
(事務所、店舗、学校、病院、ホテ
ル等)
設置費用の30%
上限30万円
千代田区のLED照明の補助金制度は、2009~2011年度は、公共性が高く、
一度に大規模改修が可能な病院や学校などを主に助成対象としている
2012年度からは、経済的な理由から、一度に大規模な改修を行うことが困難である
企業向けに助成対象を拡大している
補助金制度の受給対象者に合った制度を設計するために
制度の対象者・補助金額の上限・助成率を予め設定することが重要である
29
第5章:実施期間を限定した補助金制度への転換Ⅲ
ⅱ省エネ機器の市場価格低減により、補助金制度を打ち切る
省エネ機器の普及による量産効果により、省エネ機器の市場価格は低減する
現在の制度では、導入費用の2~3割を補助しているので、市場価格の低減に伴い、助成率を引き下
げ、市場価格が制度開始時の7~8割になった時点で補助金を打ち切る
現行の補助金制度
市
場
価
格
過剰な補助金の
給付に繋がる
市場価格低減に連動した補助金制度
市
場
価
格
補
助
金
補
助
金
助成率も
低減する
補助金
自己投資額
制度開始時
N年後
制度開始時
制自
度己
開投
始資
時額
かは
ら
変
化
し
な
い
N年後
私たちが提案する制度に変更した場合
早期に、省エネ機器を導入することで省エネによるメリット(電気代の削減な
ど)を早く受けられる そのため、省エネ機器の導入が促進されることで中小
企業の買い控えを防ぎ、省エネ機器の普及に繋がる
30
おわりに①
都心5区の省エネ支援政策の改善の提案
Ⅰ:省エネ支援政策の広報活動の改善
Ⅱ:自治体と省エネ機器メーカーの連携による
事業所・家庭に対する省エネモニタリング制度
Ⅲ:実施期間を限定した補助金制度への転換
中小企業の省エネ機器導入の促進につながる
31
新宿区は
他の区に先駆けて
長野県、群馬県などと協定
を結び森林整備や環境学
習に取り組んでいる
千代田区は
岐阜県高山市などと連携
し、市内の森林整備を行
い、森林のCO2吸収により
地球温暖化対策に寄与し
ている
渋谷区では、緑化
推進事業として記
念樹の植樹に力を
入れている
中央区では、
都心5区の中で最も
規制が厳しい条件の
「緑化計画書」の届け
出の義務を実施して
いる
おわりに②
残された課題
森林保全
省エネ対策
環境政策
港区、千代田区は
大規模事業所に廃棄物処理
管理者による「再利用計画
書」の提出
千代田区は廃棄物処理に関
して優れた取り組みを行って
いる事業所の表彰を行って
いる
廃棄物処理
• 緑化
生物多様性
保全
港区は
環境教育の一環として
区内の生物保護や調
査に取り組んでいる
32
補論①
家庭向け補助金制度との関係
都心5区において、
事業所と家庭の省エネ支援政策の予算は同じ枠組みである
主体別二酸化炭素排出量
(2009)
①工業プロセ
ス(4%)
①4% ②8%
②エネルギー
転換(8%)
⑥16%
民生部門のエネルギー消費構成
6,000
5,000
4,000
58.7%
③産業(39%)
業務部門
3,000
⑤22%
④運輸(23%)
2,000
③39%
④23%
41.3%
⑤業務その他
(22%)
1,000
家庭部門
0
65
参考:独立行政法人
国立環境研究所HP)より作成
⑥運輸(家
庭)(16%)
70
75
80
家庭部門
85
90
95
00
05 08
業務部門
二酸化炭素排出量、エネルギー消費において事業所より家庭のほうが少ない
参考:エネルギー白書
(2010)より作成
経済支援を行っている区は、補助金制度は、初めは事業所への支援を強化すべきであり、
長期的に家庭向けの省エネを支援するほうがよい
渋谷区は、事業資金などの中小企業向けの低利融資制度を行っているため、
省エネ機器導入のために低利融資制度を拡大できるのではないかと推察する
33
補論② 補助金を優先的に与えるべき企業とは(1)
主に補助金を受給している企業(例:千代田区でLEDに補助金を出す場合)
所有形態
延床面積
平均1件辺りの助成額
平均自己投資額
LED導入本数
(1本辺り7000円
で計算)
自社ビル、テナント
1000m2
138,343円
461,145円
65本
⇒テナントビル1~2階に相当
参考:HP/千代田区より作成
私たちが考える補助金を優先的に与えるべき企業とは
①公共性が高い企業(病院、私立の学校など)
税金を区民に還元するには、
病院、私立の学校などの公共性が高い企業に
補助金や省エネに関する周知活動を行なう方がよい
34
補論② 補助金を優先的に与えるべき企業とは(2)
②年間売上高が低い企業
中小企業の売上高経常利益率(※)の分布
補助金を
与えるべき企業
参考:中小企業白書(2012)より引用
※財務活動なども含めた通常の企業活動における利益率
幅広い中小企業に省エネ機器を導入させるためには、
中小企業の売上高に応じて、補助金を優先的に与える必要がある
中小企業白書(2012)によると中小企業の売上高経常利益率は平均で2.4%である
35
そのため、売上高経常利益率が-5~-20%の企業に、補助金を優先的に与えるのがよい
参考資料①
日本の省エネ対策の変遷
産業部門を中心に
省エネが推進された
1979年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」を制定
1990年代の地球温暖化防止行動計画、京都議定書により、
地球温暖化対策として省エネが推進され始める
2005
2008
2012
• 京都議定書発効
業務・家庭部門の省エネが
求められる
• 省エネ法改正(2010年施行)
• 省エネ法改正に向け国会で審議中
電力需要ピーク時の系統
電力の使用を低減する
取組を評価される
36
参考資料②
都心5区の経済支援以外の事業所向け省エネ支援政策
• みなと環境にやさしい事業者会議
港区
• 事業者と区民が連携し、エコバザーや打ち水などのイベントを実施する
• 港区民間建築物低炭素化促進制度
• 事務所用途の区内民間建築物について、都の基準より高いレベルの環境配慮
を誘導し、二酸化炭素排出量削減を図る
産環
携業境
型部部
局局
連・
• 地球温暖化対策条例
千代田区
温暖化配慮行動に係る計画書、報告書を事業所に提出させ、優れた取り組み
を表彰する
• 千代田エコシステム(CES)
区民、事業所が環境配慮に取り組む 特に事業所は節電目標を設定する
中央区
• 中央エコアクト
新宿区
• 新宿区エコ事業者連絡会
渋谷区
参加した事業所(区内に所在)は二酸化炭素の削減や省エネ診断を受診し、区
は二酸化炭素削減の成果をあげた事業所を認証する
環
集
境
中
部
型
局
区と事業者が協力し、地球環境の保全について取り組む連絡会で、 環境保
全に関する調査研究および環境関連の知識・情報等の普及を図る
• 事業所の事業活動よりも区民の生活をエコにする目的に重点を置
いているさらに、経済支援よりも運用による省エネの徹底に力を入
れている
【区民への省エネ支援政策の例】
ワットチェッカー(※1)の貸出
※1 コンセントと電化製品のプラグの間に接続して、消費電力を測定する計測器
周
中知
型活
動
37
集
参考文献
•
•
天野明弘(2003)『環境経済研究―環境と経済の統合に向けてー』有斐閣
上野裕也(1982)「産業政策と補助金制度」朝倉孝弘先生還暦記念論文集『経済発展と金
融』創文社
•
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OECD(1972)「RECOMMENDATION OF THE COUNCIL ON GUIDING PRINCIPLES
CONCERNING INTERNATIONAL ECONOMIC ASPECTS OF ENVIRONMENTAL
POLICIES」
関東経済産業局(2010)『広域関東圏における中小企業の省エネルギー推進に関する調査
報告書』
通商産業政策史編纂委員会【編】橘川武朗(2011)『通商産業政策史10 資源エネルギー政
策1980-2000』財団法人経済産業調査会
東京都環境局(2011)『H23夏の節電アンケート』
株式会社 矢野経済研究所(2009)
「環境・省エネ関連窓材市場に関する調査結果2009」
株式会社 矢野経済研究所(2011)
「ウィンドウフィルム市場に関する調査結果2011」
•
•
•
•
中小企業庁(2009,2011)『中小企業白書』
宮本憲一(2007)『環境経済学』岩波書店
李 秀瀧(2004)『環境補助金の理論と実際 : 日韓の制度分析を中心に』名古屋大学出版会
李 秀瀧(2000) 「環境補助金と汚染者負担原則」『名古屋学院大学論集, 社会科学篇』
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参考HP
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一般財団法人 省エネルギーセンター http://www.eccj.or.jp/index.html
一般財団法人 日本エネルギー研究所 http://eneken.ieej.or.jp/
E-stat(政府の統計窓口) http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
大阪府豊中市 http://www.city.toyonaka.osaka.jp/top/ index.html
環境省 http://www.env.go.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
経済産業省関東経済産業局 http://www.kanto.meti.go.jp/
経済産業省資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
中小企業庁 http://www.chusho.meti.go.jp/
東京都環境局 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
東京都渋谷区 http://www.city.shibuya.tokyo.jp/
東京商工会議所 http://www.tokyo-cci.or.jp/
東京都新宿区 http://www.city.shinjuku.lg.jp/
東京都中央区 http://www.city.chuo.lg.jp/
東京都千代田区 http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/
東京都港区 http://www.city.minato.tokyo.jp/
東京都の統計 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/
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独立行政法人国立環境研究所 http://www.nies.go.jp/
調査協力企業・自治体
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株式会社ジェイトップライン(面談日 2012年6月7日)
東京都千代田区(面談日 2012年7月12日)
東京都中央区(面談日 2012年7月27日)
東京都港区(面談日 2012年7月31日)
東京都新宿区(面談日 2012年7月31日)
東京都渋谷区(面談日 2012年7月30日)
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ご清聴ありがとうございました
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