2013年度講義用のpptスライド

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2013.7.27 平成25年度三重大学教員免許状更新講習(選択)
性(sexuality)を学ぶとは何をすることか-小学校を中心に-
担当講師:三重大学教育学部
佐藤
年明
0.オリエンテーション-6時間で何を学ぶか-
①この講習での学びを通じて、性は自然なもの、人間にとって良きものであ
るという認識を共有できればうれしい。
②性教育に関する情報はできるだけ多く提供する。
③しかし伝達中心の講義的授業ではなく、交流中心の演習的授業にしたい。
④各受講者やその職場の現実やそこで考えておられることを積極的に出し
合って交流したい。
⑤しかし、右派勢力の性教育バッシングもある中なので、この講習で得た
情報の扱いについては、お互いに慎重でありたい。
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今日一日のスケジュール
9:00~
1.各受講者の勤務校での性教育の現状と課題(→いきなり発信の場!)
2.小学校での性交を含む生命誕生の学習の試み
---------------------10分休憩
--------------------3.小学校学習指導要領の性に関する記述の変遷と問題点
~11:50
---------------------昼休み
--------------------13:00(昼休みから任意に開始)~13:30 (自由参観・自由討議)
4.小学校理科・保健教科書における性に関する学習内容
5.性教育の教材・教具
13:30 ~
6.小学校性教育の課題(1)生命誕生をどこから、いつから?
---------------------10分休憩
--------------------7.小学校性教育の課題(2)男女共習と男女別学習
8.小学校性教育の課題(3)教師と子どものprivacyの取り扱い
9.総括討論と全体のまとめ
~15:50
---------------------10分休憩
--------------------16:00~16:40 履修認定試験
16:40~
受講者評価
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※試験問題
1.あなたの勤務校における子どもたちの性的発達や
性教育における最大の課題は何であると考えます
か?
2.本日の講義での学習を通じて、1の課題の解決に
貢献する情報や思考方法その他有益なものを得ら
れましたか?具体的に総括して下さい。
→性や性教育、教育全般に関する各受講生の価値観の是非を問
わない。
事実認識が確かで論理的な意見を評価する。
※最後に上記の視点から学習を総括するのだという
ことを念頭に置いて、学習に取り組んで下さい。
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1.各受講者の勤務校での性教育の現状と課題
(小)胎児の心音を聞かせる。おなかの中の成長。生まれた時の父母の気持ち。どこまで教えたらいいか。
(高)保健の授業程度。体育で男女が着替えるとき分けていてもいっしょになる。オープン?妊娠しないようにどうするかという性教育。
(保)生まれる前から一人一人が大事な子どもだと伝えたい。着替えの時に目隠し(外部の目もあるので)、着替えるときプライベートゾーンを隠すことも教えているが、裸で走り回る
子も。
(特支・小)知的な面で性教育はしていないが、性器いじり、裸で走り回るなどにどう対処したらいいか。
(特支・)21名中、女子が2名しかいない。知的発達の差が大きい。
(中)養護教諭として性的なことの相談を受ける。教科書に小さい字で「妊娠すると月経が止まる」と書いてあるが、見落とす生徒もいる。→養護教諭中心に性教育計画(保健・道徳)
(特支・小)とりたてて実施していないが、日頃の生活の中で感情を爆発させて女の子と傷つけることもあるが、どう声かけしたらよいか。高等部の男女生徒が肩を組んで帰っていく姿
にどう対処するか。
(特支・小)非常勤なので学校全体のことがわからない。高等部では社会へ出る前に、男女交際について話しておく必要は感じたが、どのようにわかるように話せるのかが悩み。価値観
の押しつけではいけない。→自分の交際や結婚の体験談を聞かせる。一般的には何歳くらいでどのようなことを学習したらよいか。
(小)おなかの中、生まれた時、名前の由来、親子の交流。20年前高学年で男女の体の違いを扱ったが、性交の扱いに悩む。我が子の学校では1年生から熱心に性教育。家庭で「おかあ
さん、おとうさんとセックスしたの?」と質問。保護者の対応が子どもに影響する。高学年授業では3冊の絵本を教室に置いた。どこまでどのように、どの時期に?海外では?
場面緘黙の原因「男の子みたい」
(小)各学年で命の学習(生活、理科、保健)しかしとりたてての性教育はしていない。養護教諭として4年保健でTT。水泳の着替えで低学年男児はすっぽんぽんで廊下を走ったり。高学
年になると女子の体に興味。特支の女児の身体発達がはやいが、自分では受け入れられず、担任が対処。好きな男の子にくっついていく行動についてどう指導するか。
(小)中学生の会話の中に性に関することが登場。間違った情報に対しては指導した。現在35人の小学校。子どもたちが幼く、どういうことまで興味があるのかわからない。我が子を
見ていると性について習ったことを笑い話にしているのが気になる。「おかあさん、セックスって何?」と聞く。精子と卵子がどうやったらくっつくかに関心。
(小)低学年で身近な生き物の交尾「結婚してるね」→自分の誕生を振り返る。高学年でいのちのもとがどうやってであうかに興味。快楽の性についても、エイズ教育との関連で。
(小)性教育は教科書の範囲でという学校の意思統一。宗教団体所属の親からの突き上げがかつてあった。
4年保健で精子・卵子も出てくる。どうやって出会うか?動物については知っている。外国籍の児童は特に女子が早熟(精神的には幼いのに、身体が成熟)
(幼)3歳児は入園当初、男の子女の子に興味があるが、まだ認識できていない。カブトムシの交尾を見て「いじめられとる」→幼稚園でも話せることは?
(中)男女交際がさかん。つきあったと思ったら別れた。保健室に置いてある性の本に男子は興味、女子は挑発。女子同士で胸や性器をさわってくる。性教育の必要を感じるが、不得手
だという気持ちと葛藤する。「何をすることか?」にひっかかった。
伊勢市でも性教育バッシングがあり、それまであった学校保健実践交流会の参加が激減。防犯・安全教育にシフトしてしまった。
計画的に発達段階に応じて位置づけたいが、教員の合意づくりが難しい。市立病院産婦人科医師に協力してもらっている。
(元・保)きょうだいが生まれるとき、園児はいい経験をしているが、母親たちがあまりそれを意識していないのではないか。保育園でも伝えないが、普段の生活が目一杯である。幼だ
けでなく小中につながっていく、子どもの優しさ。自分と相手を大切にすること。
(中)津市内中学校では、3学年で産婦人科医師による講座。妊娠、性病、とちらかといえば、性はいいもの、というより、消極的。
体育の着替えで、男女とも予め制服の下に体操着を着てきて、同じ教室で平気で脱ぐ。異性の前で福を脱ぐ行為に平気。中3で動物の受精と簡単に発生について教える。合体の部分は飛
ばしてしまう。→も資質も押されたら、どう答えるのか?言葉に詰まると思う。しかし、動物行動学的にストレートに教えてしまうと、きっとあとで問題になる。しかし、「教科書に
載ってないから答えられない」と答えるのも。生徒もなんとなく雰囲気を察してか、聞いてこないが。
(中)生徒間の性交強要という事件をきっかけに中3・高1での性教育講座。津市内産婦人科医師により。男女合同で。養護教諭と学年団の石ギャップもある。
スカートをはきたくないという生徒。女子との方が神話的な生徒。教員の理解が追いついていない。
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2.小学校での性交を含む生命誕生の学習の試み
①三重大学教育学部附属小学校での佐藤の「生命誕生」実践の全容
●第1次実践:2006年度3月2日3・4限 三重大学教育学部附属小学校(以下同じ)
4年B組(杉村伸一教諭) 「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●第2次実践:2007年度12月11日3・4限
4年C組(山中伸一教諭) 「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●第3次実践:2008年度1月22日3・4限 28日5限 29日6限 3月5日5限
3年A組(藪中俊典教諭)「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全5時)
●第4次実践:2008年度1月22日2限 28日3限 2月13日2限 3月3日2限 6日2限
5年C組(杉村伸一教諭)「赤ちゃんのいのちの始まりから誕生まで」(全5時)
●第5・6・7次実践:2009年度2月19日4限 24日3・4限 6年A組(藪中俊典教諭)
2月19日3限 23日3・4限 6年B組(元水伸美教諭)
2月19日2限 24日5・6限 6年C組(杉村伸一教諭)
「すくすく育つ赤ちゃん」(全3時) *第1時は佐藤、第2・3時は赤木和重准教授
●第8・9・10次実践:2010年度12月9日4限 3月?日 3年A組(松本篤史教諭)
12月9日2限 3月?日 3年B組(平岡祐一教諭)
12月9日3限 3月?日 3年C組(杉村伸一教諭)
「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●2011年度11月10日(木)1・2限 赤ちゃんクイズと赤ちゃんの時のエピソード
11月24日(木)2限
佐藤の教具利用による胎児の成長の授業
5年C組 杉村伸一教諭による授業
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②第4次実践(2008年度5年C組 杉村伸一学級)の内容構成・到達
目標・指導の留意点と実践の反省
→資料①WG研究2009.3
③第4次実践第2時の授業VTR視聴
*授業記録→資料②
*性交を教える教材:NHKスペシャル驚異の小宇宙 人体 1.生命誕生
*生殖のメカニズムを教える必要性/メカニズムだけの教育の限界
④実験(飛び込み)授業の限界
*第4次→第5次におけるNさんの感想の変化
•
→資料③WG研究2010.3
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3.小学校学習指導要領の性に関する記述の変遷と問題点
※資料④参照
1989年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
A 生物と環境
(3)人と動物を比較したり資料を活用したりして、人の発生や成長などを調べることができるようにする。
ア 人は、男女によって体のつくりなどに特徴があること。
イ 人は、母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
アについては、男女の外部形態の違いのほか、母体内での受精に触れること。その際、精子や卵子の生成過
程は取り上げないこと。
1998年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
A 生物とその環境
(2)魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして、卵の変化の様
子を調べ、動物の発生や成長についての考えを持つようにする。
(ア→魚)
イ 人は、母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
児童がア又はイのいずれかを選択して調べるようにするものとする。また、受精に至る過程は取り上げない
ものとする。
※小学校学習指導要領解説 理科編 (1999.5)
人が母体内で成長して生まれることについては、資料を基にして調べ、受精した卵が母体内で少しずつ成長
して体ができていくことをとらえるようにする。また、人は母体内でへその緒を通して母親から養分をも
らって成長することをとらえるようにする。なお、ここでは卵と精子が母体内でどのように出会って結合し、
生命が誕生するかという受精に至る過程は扱わないこととする。
(→佐藤註:理由の説明がなく、解説になっていない!)
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※1998年版(2003年一部改正)小学校学習指導要領 第1章総則 第2 内容等の取扱いに関する共通的事項
内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての児童に対して指導するものとする内容の範囲や程度
等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。ただ
し、…目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。
2008年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
B 生命・地球
(2)動物の誕生
魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして,卵の変化の様子や
水中の小さな生物を調べ,動物の発生や成長についての考えをもつことがで
きるようにする。
(ア ・イ→魚)
ウ 人は,母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
受精に至る過程は取り扱わないものとする。
※小学校学習指導要領解説 理科編 (2008.8)
人が母体内で成長して生まれることについては、資料を基にして調べ、受精
した卵が母体内で少しずつ成長して体ができていくことや、母体内でへその
緒を通して養分をもらって成長することをとらえるようにする。
…なお、ここでは、卵と精子が受精に至る過程については取り扱わないものと
する。
※総則での位置づけ方は、変化なし。
(→佐藤註:魚との「選択」でなくなったこと以外、大きな変化なし。)
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4.小学校理科・保健教科書における
性に関する学習内容(自由参観・自由討議)
理科(5年)
*1992(H04)年版
*1996(H08)年版
*2000(H12)年版
*2002(H14)年版
*2005(H17)年版
*2011(H23)年版
東書
東書
東書
東書
東書
東書
大日
大日
大日
大日
大日
大日
学研
教出
教出
教出
教出
教出
教出
学図
学図
学図
学図
学図
学図
啓林
啓林
啓林
啓林
啓林
啓林
信教
信教
信教
信教
信教
信教
保健(5・6年→2002年度・2005年度版は3・4年+5・6年)
*1992(H04)年版
東書
大日
学研
光文
文教
医教
*1996(H08)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2000(H12)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2002(H14)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2005(H17)年版
東書
大日
学研
光文
文教
*2011(H23)年版
東書
大日
学研
光文
文教
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5.性教育の教材・教具
(自由参観・自由討議)
*昼休み中に4と5の資料を展示する。
*昼休み中~13:30まで、展示資料を自由に閲覧しな
がら意見交流する。
*佐藤への質問も随時受け付けます。
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6.小学校性教育の課題(1)
生命誕生をどこから、いつから?
*野村正博氏の実践 資料⑤『性交を語る』(教育史料出版会
1995年)
「いのち、おとうさん」の授業(1988年山形市出羽小学校2年)のVTRを
一部視聴します。
・性を人間の自然な営みであり、隠すことこそ不自然と
とらえる。
・低学年から生殖としての性交だけでなく、生殖と関わ
らない性交も教える。
*低学年の課題、中~高学年(思春期の入り口)の課題、
中学校、高校の課題
*思春期以前に学んでおけば、後はラクか?
→資料⑥の実践2の事例をどう見るか?
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7.小学校性教育の課題(2)
男女共習と男女別学習
*佐藤年明
「思春期の性教育における男女別学習と男女合同学習の意味
-日本とスウェーデンの実践事例にもとづいて-」(2006)
=資料⑥
*「男女共同参画社会」というようなイデオロギーだけでは
方法上の問題は解決できない。
*皆さんは性教育で男女いっしょの学習を行ないますか?
それとも男女別学習? Case by case ?
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8.小学校性教育の課題(3)
教師と子どものprivacyの取り扱い
*佐藤年明「性教育における教授内容とprivacyの関係」(1997)
=資料⑦
*教師は子どもたちの前でsexualな存在でありすぎるべきでは
ない。(スウェーデンのある性教育研究者)
*聞きたくない他者のprivacy吐露を拒否する権利もあるはず。
*教室での性の学習の話題が家庭に持ち込まれた時、結果とし
て親の性のprivacyを侵害する恐れもある。
→『イーダとペールとミニムン』に登場する両親のように
自らの性行動をオープンに語れる親を理想とすべきか?
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9.総括討論と全体のまとめ
※性(sexuality)を学ぶとは何をすることなのだろうか?
また、何をしないことなのだろうか?
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