昨年度(2012年度)講義用のpptスライド

Download Report

Transcript 昨年度(2012年度)講義用のpptスライド

2012.8.8 平成24年度三重大学教員免許状更新講習(選択)
性(sexuality)を学ぶとは何をすることか-小学校を中心に-
担当講師:三重大学教育学部
佐藤
年明
0.オリエンテーション-6時間で何を学ぶか-
①この講習での学びを通じて、性は自然なもの、人間にとって良きものであ
るという認識を共有できればうれしい。
②性教育に関する情報はできるだけ多く提供する。
③しかし伝達中心の講義的授業ではなく、交流中心の演習的授業にしたい。
④各受講者やその職場の現実やそこで考えておられることを積極的に出し
合って交流したい。
⑤しかし、右派勢力の性教育バッシングもある中なので、この講習で得た
情報の扱いについては、お互いに慎重でありたい。
1
今日一日のスケジュール
9:00~
1.各受講者の勤務校での性教育の現状と課題(→いきなり発信の場!)
2.小学校での性交を含む生命誕生の学習の試み
---------------------10分休憩
--------------------3.小学校学習指導要領の性に関する記述の変遷と問題点
~11:50
---------------------昼休み
--------------------13:00(昼休みから任意に開始)~13:30 (自由参観・自由討議)
4.小学校理科・保健教科書における性に関する学習内容
5.性教育の教材・教具
13:30 ~
6.小学校性教育の課題(1)生命誕生をどこから、いつから?
---------------------10分休憩
--------------------7.小学校性教育の課題(2)男女共習と男女別学習
8.小学校性教育の課題(3)教師と子どものprivacyの取り扱い
9.総括討論と全体のまとめ
~15:50
---------------------10分休憩
--------------------16:00~16:40 履修認定試験
16:40~
受講者評価
2
※試験問題
1.あなたの勤務校における子どもたちの性的発達や
性教育における最大の課題は何であると考えます
か?
2.本日の講義での学習を通じて、1の課題の解決に
貢献する情報や思考方法その他有益なものを得ら
れましたか?具体的に総括して下さい。
→性や性教育、教育全般に関する各受講生の価値観の是非を問
わない。
事実認識が確かで論理的な意見を評価する。
※最後に上記の視点から学習を総括するのだという
ことを念頭に置いて、学習に取り組んで下さい。
3
1.各受講者の勤務校での性教育の
現状と課題
4
2.小学校での性交を含む生命誕生の学習の試み
①三重大学教育学部附属小学校での佐藤の「生命誕生」実践の全容
●第1次実践:2006年度3月2日3・4限 三重大学教育学部附属小学校(以下同じ)
4年B組(杉村伸一教諭) 「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●第2次実践:2007年度12月11日3・4限
4年C組(山中伸一教諭) 「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●第3次実践:2008年度1月22日3・4限 28日5限 29日6限 3月5日5限
3年A組(藪中俊典教諭)「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全5時)
●第4次実践:2008年度1月22日2限 28日3限 2月13日2限 3月3日2限 6日2限
5年C組(杉村伸一教諭)「赤ちゃんのいのちの始まりから誕生まで」(全5時)
●第5・6・7次実践:2009年度2月19日4限 24日3・4限 6年A組(藪中俊典教諭)
2月19日3限 23日3・4限 6年B組(元水伸美教諭)
2月19日2限 24日5・6限 6年C組(杉村伸一教諭)
「すくすく育つ赤ちゃん」(全3時) *第1時は佐藤、第2・3時は赤木和重准教授
●第8・9・10次実践:2010年度12月9日4限 3月?日 3年A組(松本篤史教諭)
12月9日2限 3月?日 3年B組(平岡祐一教諭)
12月9日3限 3月?日 3年C組(杉村伸一教諭)
「おなかの中の赤ちゃんの成長」(全2時)
●2011年度11月10日(木)1・2限 赤ちゃんクイズと赤ちゃんの時のエピソード
11月24日(木)2限
佐藤の教具利用による胎児の成長の授業
5年C組 杉村伸一教諭による授業
5
②第4次実践(2008年度5年C組 杉村伸一学級)の内容構成・到達
目標・指導の留意点と実践の反省
→資料①WG研究2009.3
③第4次実践第2時の授業VTR視聴
*授業記録→資料②
*性交を教える教材:NHKスペシャル驚異の小宇宙 人体 1.生命誕生
*生殖のメカニズムを教える必要性/メカニズムだけの教育の限界
④実験(飛び込み)授業の限界
*第4次→第5次におけるNさんの感想の変化
•
→資料③WG研究2010.3
6
3.小学校学習指導要領の性に関する記述の変遷と問題点
※資料④参照
1989年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
A 生物と環境
(3)人と動物を比較したり資料を活用したりして、人の発生や成長などを調べることができるようにする。
ア 人は、男女によって体のつくりなどに特徴があること。
イ 人は、母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
アについては、男女の外部形態の違いのほか、母体内での受精に触れること。その際、精子や卵子の生成過
程は取り上げないこと。
1998年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
A 生物とその環境
(2)魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして、卵の変化の様
子を調べ、動物の発生や成長についての考えを持つようにする。
(ア→魚)
イ 人は、母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
児童がア又はイのいずれかを選択して調べるようにするものとする。また、受精に至る過程は取り上げない
ものとする。
※小学校学習指導要領解説 理科編 (1999.5)
人が母体内で成長して生まれることについては、資料を基にして調べ、受精した卵が母体内で少しずつ成長
して体ができていくことをとらえるようにする。また、人は母体内でへその緒を通して母親から養分をも
らって成長することをとらえるようにする。なお、ここでは卵と精子が母体内でどのように出会って結合し、
生命が誕生するかという受精に至る過程は扱わないこととする。
(→佐藤註:理由の説明がなく、解説になっていない!)
7
※1998年版(2003年一部改正)小学校学習指導要領 第1章総則 第2 内容等の取扱いに関する共通的事項
内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての児童に対して指導するものとする内容の範囲や程度
等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。ただ
し、…目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。
2008年版小学校学習指導要領 理科 第5学年
B 生命・地球
(2)動物の誕生
魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりして,卵の変化の様子や
水中の小さな生物を調べ,動物の発生や成長についての考えをもつことがで
きるようにする。
(ア ・イ→魚)
ウ 人は,母体内で成長して生まれること。
(内容の取扱い)
受精に至る過程は取り扱わないものとする。
※小学校学習指導要領解説 理科編 (2008.8)
人が母体内で成長して生まれることについては、資料を基にして調べ、受精
した卵が母体内で少しずつ成長して体ができていくことや、母体内でへその
緒を通して養分をもらって成長することをとらえるようにする。
…なお、ここでは、卵と精子が受精に至る過程については取り扱わないものと
する。
※総則での位置づけ方は、変化なし。
(→佐藤註:魚との「選択」でなくなったこと以外、大きな変化なし。)
8
4.小学校理科・保健教科書における
性に関する学習内容(自由参観・自由討議)
理科(5年)
*1992(H04)年版
*1996(H08)年版
*2000(H12)年版
*2002(H14)年版
*2005(H17)年版
*2011(H23)年版
東書
東書
東書
東書
東書
東書
大日
大日
大日
大日
大日
大日
学研
教出
教出
教出
教出
教出
教出
学図
学図
学図
学図
学図
学図
啓林
啓林
啓林
啓林
啓林
啓林
信教
信教
信教
信教
信教
信教
保健(5・6年→2002年度・2005年度版は3・4年+5・6年)
*1992(H04)年版
東書
大日
学研
光文
文教
医教
*1996(H08)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2000(H12)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2002(H14)年版
東書
大日
学研
光文
文教
光村
*2005(H17)年版
東書
大日
学研
光文
文教
*2011(H23)年版
東書
大日
学研
光文
文教
9
5.性教育の教材・教具
(自由参観・自由討議)
*昼休み中に5と6の資料を展示する。
*昼休み中~13:30まで、展示資料を自由に閲覧しな
がら意見交流する。
*佐藤への質問も随時受け付けます。
10
6.小学校性教育の課題(1)
生命誕生をどこから、いつから?
*野村正博氏の実践 資料⑤『性交を語る』(教育史料出版会
1995年)
「いのち、おとうさん」の授業(1988年山形市出羽小学校2年)のVTRを
一部視聴します。
・性を人間の自然な営みであり、隠すことこそ不自然と
とらえる。
・低学年から生殖としての性交だけでなく、生殖と関わ
らない性交も教える。
*低学年の課題、中~高学年(思春期の入り口)の課題、
中学校、高校の課題
*思春期以前に学んでおけば、後はラクか?
→資料⑥の実践2の事例をどう見るか?
11
7.小学校性教育の課題(2)
男女共習と男女別学習
*佐藤年明
「思春期の性教育における男女別学習と男女合同学習の意味
-日本とスウェーデンの実践事例にもとづいて-」(2006)
=資料⑥
*「男女共同参画社会」というようなイデオロギーだけでは
方法上の問題は解決できない。
*皆さんは性教育で男女いっしょの学習を行ないますか?
それとも男女別学習? Case by case ?
12
8.小学校性教育の課題(3)
教師と子どものprivacyの取り扱い
*佐藤年明「性教育における教授内容とprivacyの関係」(1997)
=資料⑦
*教師は子どもたちの前でsexualな存在でありすぎるべきでは
ない。(スウェーデンのある性教育研究者)
*聞きたくない他者のprivacy吐露を拒否する権利もあるはず。
*教室での性の学習の話題が家庭に持ち込まれた時、結果とし
て親の性のprivacyを侵害する恐れもある。
→『イーダとペールとミニムン』に登場する両親のように
自らの性行動をオープンに語れる親を理想とすべきか?
13
9.総括討論と全体のまとめ
※性(sexuality)を学ぶとは何をすることなのだろうか?
また、何をしないことなのだろうか?
14