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初等中等教育向け「GIS研修プログラム」
オリエンテーション
初等中等教育における
GIS活用の意義と位置づけの紹介
(参考)用語解説
○地理空間情報
– 空間上の特定の地点や区域の位置を示す情報(「位置参照情報」)
• 要は、地図のこと。住宅地図、地形図、地質図、土地利用図、ハザードマップ、観光
マップ、空中写真、衛星画像等、地図に表現できる情報はすべて地理空間情報と言う。
– 上記に加え、台帳や統計といった位置参照情報に関連付けられた情報も含む
• 国勢調査などの統計情報、地名情報 等も地図に表現できることから、地理空間情
報に含まれる。
○GIS(Geographic Information System:地理情報システム)
– 地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)
を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可
能にする技術、システム
– 一般向けGISソフトには、Arc GIS(米・ESRI社)、地図太郎(東京カートグラフィッ
ク(株)社)、MANDARA(埼玉大学教育学部谷謙二研究室開発)などがある
• スマートフォンの地図サービス(ナビ、古地図、飲食店検索 等)、コンビニやスーパー
等の店舗管理、自治体の防災やまちづくり業務、施設管理等に活用
○GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)
– 人口衛星が発信する電波信号により、世界中のどこでも人・物の位置を測定で
きるシステム
• 経路案内(携帯ナビ)、カーナビ、SNSのチェックイン機能、子供や高齢者の見守り
サービス、地図作成、地震・火山予測、天気予報、農作物管理、貨物の積み卸し 等
に活用
2
①GISの特徴と教育
3
GISの基本機能 :「重ね合わせ」から考える
●GISを使うと、さまざまな地図情報、位置情報の重ね合わせができます。
点レイヤ
線レイヤ
重ねると
面レイヤ
トレーシングペーパーやOHPのフィルムのようなものを
イメージしてください
元の地図
出所)藤沢市 藤小研 教育メディア部 研修会資料
4
GISの基本機能 :「重ね合わせ」のイメージ
●新聞記事より
出所)藤沢市 藤小研 教育メディア部 研修会資料
5
GISの基本機能 :「重ね合わせ」のイメージ
●昔の川筋と液状化地点がぴったり重なることがわかる
元の新聞記事から
掲載された個別の地図を重ね合わせてみる
出所)藤沢市 藤小研 教育メディア部 研修会資料
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GISの基本機能 :「重ね合わせ」機能の授業への活用
●授業への発展: 自分たちの地域で起こった場合を考える
河川・道路、古地図、浸水想定区域、標高、自宅、
学校 等を重ね合わせ
→ 自分の家は本当に大丈夫・・?
一番近い避難所はどこ?
避難所まで何分かかる?
7
GISの基本機能 :「重ね合わせ」機能の授業への活用
●授業例: 地域の文化財調査を通じて歴史を身近に捉える
1.地域に残る文化財(史跡)を調べ、地域の地図
に結果を入力する
→ 「こんなところも歩いた」と
思い出しながら作業
2.昔の道や村境と史跡の位置を重ね合わせて、
発見したことを話し合う
→ どこに史跡が多いだろう?
昔の道や村境との関係は?
リアルに表示されるから興味津々! いろいろな発見が得られて議論も活発に
出所)藤沢市立本町小学校 的場 康弘 教諭
8
②初等中等教育における
GIS活用の意義
9
1.我が国におけるGISの動向
●震災を契機にGISの有効性が認識され、活用に向けた取組が進展
平成7年1月 阪神淡路大震災
情報通信技術の発展と情報化の推進
平成14年 教育GISフォーラム設立
平成19年5月 地理空間情報活用推進基本法 成立
平成20年4月 地理空間情報活用推進基本計画策定
平成20年3月 中学校学習指導要領告示
平成21年3月 高等学校学習指導要領告示
平成23年3月 東日本大震災
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2.政府による「地理空間情報高度活用社会」実現に向けた取組推進
●「地理空間情報活用推進基本法」 (平成19年5月)の制定
地理空間情報活用推進基本計画(平成24年3月閣議決定) において
-「地理空間情報高度活用社会」の実現-を目指すことを明記
国土の利用、整備及び保全の推進、
災害に強く持続可能な国土の形成
安全・安心で質の高い
暮らしの実現
変化する国土の状況が適時適切に把握
可能になるとともに位置や時間による切り
口での様々な解析が可能となる
身の回りの様々な情報が、場所と結びつ
けられ的確な行動や対応を可能とする
子ども、高齢者等の移動支援、オンデマンドバス
豪雨時の洪水シミュレーション
車がスピードを
出しやすい
水位計
水位計
歩道が狭い
水位計
避難所A
避難所A
避難所A
雨量計
雨量計
避難所B
避難所B
避難所B
平常時
豪雨1時間後
豪雨2時間後
新たなサービス・産業の創出
屋内外問わず、位置をキーとした様々な
情報の融合が可能となることにより、新た
なサービスや産業が生まれる
観光案内
IT農業
T(時刻)
雨量計
建物
道路
住居表示
地番
行政の効率化・高度化、
新しい公共の推進
行政事務で取り扱う、地域に関する多くの
情報が地理空間情報として効率的に共有
化され、活用される
地図の重複整備の解消
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3.初等中等教育におけるGIS活用推進の背景
○ GISやGPS(位置情報)は、生活に欠かすことのできないICTツールです。
• GISやGPSによる位置情報を活用したサービスが、日常生活に深く浸透してきています。
• 現在、政府全体で推進している「地理空間情報高度活用社会」の実現に向けて、初等中等教育の
段階から、積極的に地理空間情報やGISを活用する経験を有することの意義は大きいと考えます。
○教育における情報化が教科を超えて重視されています。
• 教育現場において、ICTは重要な手段の一つとして、効果的に、また正しく活用することを、教科を
超えて理解させることが重視されています。
○新学習指導要領に「地理情報システム(GIS)」が明記されています。
• 先に改訂された新学習指導要領では、中学・高校の地理において地理情報システム(GIS)に関す
る記述が増えています。
○学界からも教育現場におけるGISの活用の有効性が指摘されています。
• 学界からも、地理教育分野をはじめ、地理空間
情報やGISを活用した教育の重要性が今日的
課題として提言されています。
• 既に地理教育や総合的な学習の時間等におい
てGISを活用した授業が実践されており、教育
面での必要性が指摘されています。
・電子地図やGISの普及など科学技術の目覚しい進歩による成
果を教育に取り組むことがきわめて重要
(H19.9 日本学術会議)
・地理教育においても知識教授中心ではなく、地理的思考力や
地理情報システム(GIS)など地図・地理空間情報を利活用でき
るスキルの育成が重要(H23.8 日本学術会議)
・我が国の大学生・高校生は、情報を地図上で整理し、空間的に
位置付けて認識することが苦手、それが改善される方向にな
い(H17.2、 H20.3 日本地理学会)
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③新学習指導要領とGIS
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1.教育の情報化の推進
(1)教育における情報化が教科を超えて改善すべき事項として重視されている
●学習指導要領の「設計図」(中央教育
審議会答申)では、ICTの活用につい
て指摘
●学習指導要領解説では、ICT化の進
展及びGISの活用についてより踏み込
んだ記述に
7 教育内容に関する主な改善事項
(7)社会の変化への対応の観点から教科等を横断
して改善すべき事項
(中学校社会科)
「3内容の取扱い(2)ア」
「解説」中 p.64-65
【情報教育】
・学習のためにICTを効果的に活用することの重要
性を理解させるとともに、情報教育が目指している
情報活用能力をはぐくむことは、基礎的・基本的な
知識・技能の確実な定着とともに、発表、記録、要
約、報告といった知識・技能を活用して行う言語活
動の基盤となるものである。
・中学校段階では、各教科等において、小学校段階
の基礎の上に、コンピュータや情報通信ネットワー
クなどを主体的に活用するとともに、情報モラル等
に関する指導の充実を図る。
「地域に関する情報の収集、処理に当たっては、コ
ンピュータや情報通信ネットワークなどを積極的に
活用するなどの工夫をすること」については、高度
情報通信社会が急速に進展していく中で各学校に
もインターネットなどの整備が進んで⇒充実してき
ている。特にインターネットは各地の地理情報の収
集に有効であり、また、コンピュータは地理情報シ
ステム(GIS)などから得られる地理情報を地図化し
たり、グラフ化したりするなどの処理に有効⇒不可
欠のものである。したがって、地理学習においても
国土⇒地理的認識を深めたり地理的技能を高めた
りするとともに、情報や情報手段を適切に活用でき
る基礎的な資質や能力を培う観点から、コンピュー
タや情報通信ネットワークなどの活用を積極的に工
夫することが望まれる。
(青字は現行版の表記、赤字は改訂版の表記)
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1.教育の情報化の推進
(2) 教育現場におけるGIS活用環境の整備は進んでいる
●普通教室の校内LAN整備率は8割以上に達している
(%)
100
81.2
80
60
56.2
62.5
64.0
50.6
40
44.3
37.2
29.2
20
21.1
8.3
0
H
13
.
3
H
14
.
3
H
15
.
3
H
16
.
3
H
17
.
3
H
18
.
3
H
19
.
3
H
20
.
3
H
21
.
3
H
22
.
3
※ 「H22年3月31日現在」の数値は、H22年3月2日~H22年3月31日までのICT環境整備の状況に
ついて別途調査した結果を反映させたものである。
出所)○○
15
2.資料活用能力に関わる課題
(問)日本の大半が位置する地図中の緯度X
とYの範囲を示したものは?
正解
反応率 31.7%
10.5%
36.7%
16.4%
〔H15中学校教育課程実施状況調査より〕
⇒資料を活用して解を導く能力の育成が重要
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3.新学習指導要領における読図や作図の重視
(1) 中央教育審議会答申(H20.1.17)の記述
◎改善の基本方針(社会、地理歴史、公民)
「…コンピュータなども活用しながら、地図や統計など各種の資料から必
要な情報を集めて読み取ること、…を一層重視する方向で改善を図る。」
◎改善の具体的事項
(小学校)
「広い視野から地域社会や我が国の国土に対する理解を一層深め、…
基盤となる知識・技能を身に付けること。例えば、地図帳や地球儀の活
用を一層重視する。」
(中学校 地理的分野)
「内容の全体を通して、地図の読図や作図などの地理的技能を身に付け
させることを一層重視する。」
(高等学校 地理歴史科)
「地理歴史科については、…各科目で専門的な知識、概念や技能を習得、
定着させ、それらを活用できるよう改善を図る。その際、地図を活用した
学習を一層重視する。」
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3.新学習指導要領における読図や作図の重視
(2) 学習指導要領における防災の重視
●学習指導要領では防災の項目が増えている
小学校第5学年の目標に
「自然災害の防止」を付加
中学地理的分野の「防災」記述が、
現行1か所⇒2か所へ
高等学校地理Aに
中項目「自然環境と防災」を新設
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3.新学習指導要領における読図や作図の重視
(3) 学習指導要領上の記載の変化(「地理情報システム(GIS)」)
●学習指導要領内の「地理情報システム(GIS)」の記載箇所が増加
平成10, 11年度
改訂学習指導要領
平成20, 21年度
改訂学習指導要領
×
中学
地理的
分野
本文
×
解説
×
① 3.内容の取扱い (2)ア
高校
地理A
本文
×
① 3.内容の取扱い (1)イ
解説
×
② 2.内容 (2)ア
3.内容の取扱い (1)イ
高校
地理B
本文
×
① 3.内容の取扱い (1)イ
解説
① 2.内容 (3)ア
④ 2.内容 (1)ア
2.内容 (1)イ
2.内容 (3)ウ
3.内容の取扱い (1)イ
(注:表中の①、②、④は、記載箇所数を示している。)
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4.いま、学校現場に求められること
①教師のGISに対する理解の醸成
⇒
・学習指導要領の確認と理解
・都道府県教委等主催の説明会・研修会への参加
・各種学会・研究会への参加
・中等教育資料、各種教育系冊子等の確認 など
②GIS活用環境への対応
⇒
・既存のものの発掘・選別して焼き直し
・作成されたものを実践し、改善して共有
③実際の調査、人と関わる時間の確保
⇒
・年間計画に基づいた、バランスのとれた授業設計
・言語活動の充実を組込み、「生きる力」を育成
(①~③のGISの課題は日本地理教育学会編
『地理教育用語技能辞典』を基に記載)
20
④本日の研修内容
21
本日の研修内容
1. オリエンテーション
2. 講義
(○○先生)
(○○先生)
0:00~0:00
0:00~0:00
授業でのGIS活用実践例の紹介
3. 演習
(○○先生)
0:00~0:00
① 操作演習
• 点、線、面レイヤの作成
• 写真の貼り付け
② 学区地図づくり
4. 終わりに
(○○先生)
0:00~0:00
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本日の目標
●研修の目標
・学習活動においてGISを活用する意義や効果を理解する
・どの授業、どの場面でGISが使えるか、自分なりに考える
・自分オリジナルの学区地図を作成する
→演習の最後に各自印刷して持ち帰っていただきます
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