Transcript ESRI 35%

地理情報システム(GIS)と
ウェブマップサービス
人事院長期在外研究員帰朝報告
数値予報課コロキウム
数値予報課プログラム班 豊田英司
おしながき
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•
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•
出張の概要
調査1: 地理情報システム(GIS)
調査2: ウェブマップサービス
卒業研究: 気象データ・GIS連携実験
終わりに: 展望
出張の概要
• 人事院長期在外研究員制度により
2年間米国に派遣
– 16年6月~17年6月
– 修士号を含めた何らかの学位をとることが条件
• ウィスコンシン大学
リモートセンシングセンターに滞在
– 学科:環境学研究科環境モニタリング専攻
(わかりやすくいうと、GIS・リモセン学科)
UW/SSEC/ERSC
• SSEC: 気象衛星研究所
– 測器開発・観測研究・
データ保存
– 可視化ソフト McIDAS
• ERSC: 一応下部組織
– 地理・土木・農学のジョイ
ント
– 衛星だけど見たいのは大
気じゃなくて地面
MODIS
アンテナ
GOES
アンテナ
調査その1
地理情報システム (GIS) って何?
GISって何?
• 典型的な定義
– 地球上の位置を含んだ情報を取得・処理・保存・
表示する情報システム
• ちょっと広すぎ
– 気象などもまるごと含まれてしまう
• 要するに
– 地図描きソフト
– 地理情報データベース
– それらに共通するデータモデル・文化習慣など
なぜ GIS が問題か?
• 多様なユーザ
• 巨大な市場
多様なGISユーザ
• 官 (Public)
– 防災
– 国土計画・資源管理
– 防衛
• 公共 (Regulated)
– 水道・電気・運輸
– 教育
• 民 (Private)
– マーケティング
– 工業
– 農業
Source: http://www.directionsmag.com/article.php?article_id=403,
research by Daratech
巨大な市場
1.8
1.6
1.4
1.2
1
Worldwide GIS
Core Industry
Revenue $billion
0.8
0.6
0.4
0.2
0
2000
2001
2002
2003
Source: presentation slides of IES 400
http://ies-emp.ersc.wisc.edu/ies400/class.html; partly by Daratech
$1B ってどのくらい?
• 年商10億ドル=1000億円
=エンジニア5000人
• Google と同じオーダー
• 気象データ通信・可視化より1桁大きい
応用分野を問わない技術
→ 早晩飲み込まれるのは必定
気象界から見た GIS の特徴
• 水平2次元限定
• 測地系をちゃんと決める
– 座標を地球に結びつける方式
• データモデル
– 万物をラスタとベクタで表現
• 万物はレイヤ
– 重ね合わせで組み合わせる
GISのデータモデル
• ラスタ
– 格子データまたは画像
• ベクタ
– 点データ
– 線データ
– 面データ(ポリゴン)
各データモデルの基礎演算
• ラスタ:算術
– 格子の要素毎算術(四則演算、SQRT、MAX等)
– 差分、積算
• ベクタ
– 集合演算
• 和集合、差集合、積集合(共通部分)
– バッファ
• 与えられた図形からの距離が指定値以下の多角形
データの種類は
何でもよい
ソフトウェアにはどんなものがあるか
• 地図作成ソフト: GIS 専用が多い
• データベース: 汎用DBMSの拡張
どちらにも商用・オープンソースがある
商用GISは寡占市場
• 2001 年の米国市場シェア
– ESRI
– Intergraph
– GE Network Solutions
– Autodesk
– Leica Geosystems / ERDAS
35%
13%
7%
7%
6%
Source: presentation slides of IES 400
ESRI (ArcGIS)
• 業界トップシェア (4割)
• Windows で動く地図描きソフトが中心
– シングルユーザライセンス \409,500- から
• 他にもサーバ製品など(数百万円)
• COM / .net 対応
– MS Office と同様に Visual Basic でマクロが書
ける
Mapserver
• オープンソース
– ミネソタ大学がNASA資金で開発
• CGIが主用途
– Web サーバと組み合わせて各種サーバを構築
• 直接サポートファイル形式が多い
– NetCDF も
• Mapscript モジュール
– Java, Python, Perl, Ruby から呼べる
典型的ファイル形式
• ラスタ
– GeoTIFF
– 各種衛星センサー固有形式
– PNG, JPEG, GIF など一般的画像形式
• ベクタ
– Shapefile (ESRI)
– GML (Open Geospatial Consortium)
– G-XML [(財)データベース振興センター]
– (ファイルではなく) データベースに格納
データベースに地理情報
• 主にベクタデータ
• Oracle, DB2, MySQL, PostgreSQL 等
– 昔はSQL方言もあった
– 今は OGC 規格が普及しつつある
• 表(テーブル)の列(カラム)が持つ型として
SQL の整数・実数・文字列などに加え
点・線・多角形などが追加される
データベースに地理情報(イメージ)
CITY
PREF
POP
AREA
清瀬市
東京都
73,524
10.19
新座市
埼玉県
153,305
22.80
朝霞市
埼玉県
124,298
18.38
和光市
埼玉県
76,676
11.04
データベースに地理情報(イメージ)
POLY
CITY
PREF
POP
AREA
清瀬市
東京都
73,524
10.19
新座市
埼玉県
153,305
22.80
朝霞市
埼玉県
124,298
18.38
和光市
埼玉県
76,676
11.04
データベースに地理情報(イメージ)
SELECT * FROM table
WHERE CITY = "和光市";
検
索
POLY
CITY
PREF
POP
AREA
和光市
埼玉県
76,676
11.04
GISで何を作る?
• 市販エンジンは道具に過ぎない
• デスクトップGIS
– 普通の GUI プログラム
– 類例: 多画面平面図、GrADS
• Web GIS
– CGI 等による動的(操作で絵が変わる)Web
– 類例:他画面平面図、気象庁HP
Web GIS いろいろ
米国では土地登記簿など個人
情報を公開している地方もある
Web GIS のトレードオフ
Web GIS
(対比)デスクトップGIS
長所 ・ソフトウェア導入不要 ・要ソフトウェア導入
・誰でも見られる
・インストールされた機
械でしか見られない
短所 ・あらかじめ決まった ・データ追加は自由
データしか組み合わせ
られない
調査その2
ウェブサービスへの流れ
あるいは Web 2.0 ブーム
ネットワークデータサービス
既存のプログラムを拡張することで
• データのありかと利用者が分離可能
• データ更新 or ソフトウェア管理を容易に
• 組織間データ共有が容易に
ウェブサービス = プログラム間通信
• 狭義: XML-RPC/SOAP を使う通信
– 2000年ころから流行
– 複雑化しすぎて2004年頃自沈
• 広義: Webマシン-マシン通信なら何でもアリ
– 通信プロトコルを共通化
– Apache 等を活用し実装が速く作れる
– 気象・地理情報でもたくさん作られてきた
分類のために: 可視化の4階層モデル
画面
合成・表示
図形表現
図化(レンダリング)
データ
解読
ファイル
最下層:ファイル共有
Thick
Client
例
画面
NFS,
SMB (Windowsファイル共有)
合成・表示
図形表現
図化(レンダリング)
データ
解読
ファイル実体
ネットワーク通信
ファイル
最上層:Xウィンドウ
Thin
Client
画面
ネットワーク通信
画面
合成・表示
図形表現
図化(レンダリング)
データ
解読
ファイル
今時は Windows でも可能
(リモートデスクトップ)
第2層:ウェブデータサービス
類例多数
Thick
Client
気象界: Pandora, ADDE
OPeNDAP/DODS
GIS界: ESRI ArcSDE
OGC WFS/WCS
画面
合成・表示
図形表現
図化(レンダリング)
データ
ネットワーク通信
解読
ファイル
データ
真打登場:ウェブマップサービス
Thin
Client
画面
合成・表示
図形表現
ネットワーク通信
図形表現
図化(レンダリング)
データ
解読
ファイル
OGC による WMS 規格が
急速に普及
Google Maps API
WMS 規格
• Open Geospatial Consortium が策定
– ISO 19128 になった
• すごい簡単
– 要するに CGI のパラメタ命名規則
http://host.domain/server.cgi?service=WMS
&version=1.1.1&request=getMap
&srs=EPSG:4326&bbox=110,20,160,50
&format=image/png
&layers=base,grid,warning
“SRS=EPSG:4326” とは
• EPSGコード:座標系番号
• 世界中のあらゆる測地系・地図投影法・座標
系を1つの番号で表現
• EPSG (欧州石油探査グループ)とりまとめ
– 現在はOGP(国際石油ガス生産者協会)と改称
• 誰からでも随時追加要求受付
– 年2回程度リリース
WMS の長所
○ 対応ソフト多数
– サーバ:商用(ArcIMS等)・フリー(Mapserver等)
– 描画ソフト
• ArcGIS, MapInfo, uDig, Mapserver, …
• 気象用でも Unidata IDV
– ブラウザからだって呼べる
○ 多くの組織からリアルタイムに集めた多様な
データを重ねられる
○ ひとつのデータから多様な図法図郭の地図
WMS の短所
× 水平地図だけ
× 要求集中時のサーバ負荷
– 図郭が違うと別途画像生成が必要
Google 参入
• Google Maps API 公
開 (2005.6.29)
• 任意ページに地図挿入
– 無料・要登録
– JavaScript で利用者
データを書き加え可能
• Web 地図作成市場の
ローエンドを制覇
Google Maps の高速化技法
• 全世界をタイル分割
– 任意の位置を既存タイ
ルの組み合わせで描画
– 高速応答、低負荷
• 透明GIFの重ね合わせ
– アイコン等に使用
• スクロールはブラウザ
内で行う
– 通信発生せず
– Ajax: Asynchronous
JavaScript XML
(卒業)研究
気象データ-GIS連携実験
目的
有望だが我々のよく知らない技術を試用する
• 米国学術気象ネット Unidata IDD
– 通信ソフトウェア LDM
• 汎用 RDB (MySQL)
– リアルタイムデータを扱って使い物になるか?
• GIS
– 気象データを描いて使い物になるか?
データソース(入口)
• Unidata IDD ネットワーク
– LDM: TCP/IP上で電文交換を模倣するソフト
– 米国の大学等がリアルタイムデータを交換
• GTS電文 METAR, SYNOP, SHIP, …
• 衛星画像、レーダー
• NCEP/UK/EC予報値
• 気象庁ホームページ
– NHKラジオ「気象通報」原稿のページ
データベース(置場)
• MySQL を採用
○ オープンソースでトップシェア(通説)
○ PostgreSQL より速い(噂)
○ カナダ気象局が NuSDaS・CDA みたいなのの内
部で使っている
• ドイツは Oracle (お金持ち?)
× トランザクション処理が甘い
• 硬派なDB設計者には毛嫌いされている
GIS (データの出口)
• Google Map
• Mapserver
– 古典的 Web GIS 作成
– OGC WMS サーバ
→ブラウザで見る
→ブラウザで見る
→ GIS ソフトで見る
みんな試してみる
ESRI ArcSDE サーバ? 300万円はちょっと….
uDig
Web
ブラウザ
Unidata
IDV
ArcGIS
WMS
仕様
Google
Map
受信
気象庁HP
MySQL
データベース
Mapserver
製品
• 基本的に Web サイト
– DB 検索画面
– 個別データを閲覧する画面
多角形(ポリゴン)警報
• 2004年から順次開始
• 4 種類
–
–
–
–
竜巻
雷雨
フラッシュフラッド
特定海洋
• テキスト電文の末尾に
経緯度情報が
For more information, see presentation at
http://www.prh.noaa.gov/regsci/gis/shapefiles/
もうちょっと気象特有の例を
• ぼくらは多角形なんかあまり使わない
• 気象独自の図形表現で GIS で使えないもの
はないか、確認してみたい
• 地上天気図がいちばん特殊だろう
GISの図形表現能力
• だいたいのことはできるかのように見える
– 何でもラスタ・ベクタに分解して表現できる
• できないこと
– 前線を白黒で描く
• 寒冷前線の三角どっち向き?
– 鉛直断面図
– 各地点に数字をプロット(Google Mapのみ)
• これは Google Map がパチモンだから
• ちょっと手間:ラスタ→等値線
– 別データ形式への変換となる
– 特にリモセン方面では前世紀の遺物と思われている
じゃあ格子データはどう見るの?
ふつー
グレースケール
じゃないの?
2006-09-13 00Z+6h
MSM fcst
実時間GPVデータベース
GPV でか過ぎ
• 着信する GRIB 報をそのまま DB に投入
– 瞬時にDBサーバが固まる
– 2GB/イニシャル = 5万レコード/半日
高速化テクニック
• データベース構造を工夫
– 世上よくあるSQLチューニング
– 追加のみ、更新不要構造
• GRIB 群はファイルに書かせ
て DB にはインデックスだけ
を構築
• 小さな表は
DB 管理外のテキストに
Mapserver で可視化のご利益
• データの地図投影法に限らず、好きな図法で
表示させられる
実時間GPVデータベース
ECM 2006-09-13 00Z+12h
T@1000hPa Lat-Lon
GFS 2006-09-13 00Z+12h
T@1000hPa Polar Stereo
RUC 2006-09-13 00Z+12h
T@1000hPa Lambert Conic
データベース実験まとめ
• GIS 地図描きソフトはかなり使える
– ハサミは使いよう
• DBMS もデータや使い方を選べば使える
– 今回やらなかったけど分散環境では有用
• 足りないこともいろいろある
GIS に足りない可視化機能
• 鉛直断面図(前述)
• 多次元データセット内の移動
– 前後の時刻に移る
– GPVの上下の層に移る
なんらかの作りこみが必要
– Web ページでの検索
– デスクトップ GIS の拡張
VB Editor
Visual Basic IDE
pops up to edit
macros
Download Dialog
Select date to
download data
Select Dialog
Select type of
warning to
convert & display
Select Done
Layer Added
Zoom in to IN/KY
Add Landsat Frames
LANDSAT
軌道を重ねる
地球観測衛星画像による
竜巻痕の解析
• 人口希薄地の被害評
価
• 将来衛星周回頻度が
上がれば災害対応計
画に有用
• ポリゴン警報データで
画像解析の初動を支援
PCA-enhanced ASTER satellite image
of tornado track of Aug 18,2005
http://www.ersc.wisc.edu/tornadoes.php
Unidata IDV
• UCAR Unidata & UW SSEC が開発
– McIDAS, Vis5D の後継
• 初めから気象用
– 3D OK
– 時系列アニメ
• GIS データにも
対応
× 要 Java
おわりに
黒船が来るよ
関わりの出そうなところ
• 防災
– 図情報に重要施設・急傾斜地を重ねて表示
– ポリゴン警報(日本では無意味?)
• データ提供
– レーダー・震度のような高解像度情報
– 気候・統計のような非リアルタイム情報
• 庁内の各種データ可視化
– ソフトウェア開発効率化・高速化の技術
• 国際通信
– WMO情報システム
WMO 情報システム
http://www.wmo.ch/web/www/
WISweb/WhatIsWIS.html
各種団体相関図
ECMWF
UKMO
Unidata
NCAR
UCAR
大学
ウィスコンシン
大学 大学
EPSG
NGS
NOAA
NWS
OGC 開放型地理情報協議会
Google
MapInfo
ESRI
ICG-WIS WMO
気象庁
TC211 地理情報委
ISO 国際標準化機構
ご清聴ありがとうございます
GIS よろしく
NuSDaS もよろしく
機会があれば在外研究員に応募しよう