脂肪酸の取り込みは蛋白質によって媒介される-CD36/FATによる輸送

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Transcript 脂肪酸の取り込みは蛋白質によって媒介される-CD36/FATによる輸送

脂肪酸の取り込みは蛋白質によって媒介される
CD36/FATによる輸送促進とアシルCoA合成酵素による代謝の相乗作用
2015/1/19
M1 丁野綾水
背景と目的
・脂肪酸の細胞内への取り込みについて、様々なメカニズムの関与が示唆されている
⇒ 受動拡散、蛋白質による輸送の媒介、細胞内で起こる脂肪酸のアシル化
T.Hajri, et al. Annu.Rev.Nutr.22 (2002)
P.N.Black, et al. Microbiol.Mol.Biol.Rev. 67(2003)
・CD36は細胞膜表面に局在し、脂肪酸の取り込みを促進する
N.A. Abumrad, et al. J.Biol.Chem.268 (1993)
・FATP4はアシルCoA合成酵素活性があり、小胞体に局在する
⇒アシルCoA合成酵素やFABP(脂肪酸結合蛋白質)による、脂肪酸の代謝的補
A.M.Hall, et al. J.Biol.Chem.280 (2005)
足が脂肪酸の取り込みに関与するのではないか
CD36やアシルCoA合成酵素の脂肪酸取り込みへの関与を検証し、
これらの蛋白質の量的関係や、共発現による影響を調べることで、
細胞内への脂肪酸取り込みのメカニズムを解明することを目的とした。
過剰発現させた蛋白質の定量
アデノウイルスを用いて、MDCK細胞にFATP4を過剰発現させた。
WB法により、リコンビナントFATP4FLAGの希釈系列を元にして、FATP4の定量を行った。
過剰発現させた蛋白質の定量
アデノウイルスを用いて、MDCK細胞にCD36またはFATP4を過剰発現させた。
WB法により、リコンビナントFATP4FLAGの希釈系列を元にして、各蛋白質の定量を行った。
アデノウイルスの濃度と比例して、発現した蛋白質量は増加した
CD36,FATP4を過剰発現させた細胞における脂肪酸取り込み
CD36 or FATP4を過剰発現させたMDCK細胞を200μM [3H]オレイン酸+100μM BSAで3hイ
ンキュベート。液体シンチレーションカウンターでオレイン酸の取り込みを定量。
CD36またはFATP4の過剰発現によって、オレイン酸の取り込みは増加した
CD36,FATP4を過剰発現させた細胞における脂肪酸取り込み
WT-MDCK細胞 or CD36-MDCK細胞を50-800μM [3H]オレイン酸+100μM BSAで3hイン
キュベート。液体シンチレーションカウンターでオレイン酸の取り込みを定量。
CD36またはFATP4の過剰発現によって、オレイン酸の取り込み量は増加した
Cav-1のノックダウンがオレイン酸の取り込みに与える影響
RNAiによってCD36をノックダウンして、Cav-1 mRNA発現量をRT-PCRで確認した。
WT-MDCK細胞とCav-1 KD-MDCK細胞において、CD36を過剰発現させて、オレイン酸の取
り込みを定量した。
CD36の過剰発現によるオレイン酸取り込みの促進は、Cav-1のノックダウンに
よる影響を受けなかった
CD36,FATP4を過剰発現させた細胞における脂肪酸取り込み
CD36 or FATP4を過剰発現させた細胞において、オレイン酸の取り込みを定量した。また、
各蛋白質の発現量をWBによって定量した。
109fmol
6472fmol
*
CD36はFATP4よりも効率よくオレイン酸の取り込みを促進した
CD36,FATP4を過剰発現させた細胞における脂肪酸取り込み
CD36とFATP4が同程度の発現量となるように過剰発現させた細胞を用いて、オレイン酸の取
り込みを定量した。
*
CD36はFATP4よりも効率よくオレイン酸の取り込みを促進した
CD36とFATP4を共発現させた細胞における脂肪酸取り込み
122%↑
25%↑
52%↑
(A)WT-MDCK細胞とFATP4-MDCK細胞
にCD36を過剰発現させて、オレイン酸
の取り込みを定量した。
(B)CD36とFATP4の発現量を確認した。
CD36はFATP4と相乗的に
作用して、脂肪酸取り込み
を促進する
CD36とACSL1,FATP4とACSL1を共発現させた細胞における
脂肪酸取り込み
WT-MDCK細胞とACSL1-MDCK細胞にCD36あるいはFATP4を過剰発現させて、オレイン酸の
取り込みを定量した。
60%↑
20%↑
21%↑
37%↑
43%↑
21%↑
CD36はFATP4あるいはACSL1と相乗的に作用して、脂肪酸取り込みを促進する
CD36,FATP4,ACSL1の局在
各蛋白質を過剰発現させたMDCK細胞を用いて、蛍光免疫染色により局在を調べた。
CD36は細胞膜、FATP4は小胞体、ACSL1はミトコンドリアに局在していた
総括
CD36は直接的に細胞膜を介した脂肪酸の取り込みを促進する
アシルCoA合成酵素は代謝によって脂肪酸を細胞内に捕捉することで、間接的に
脂肪酸の取り込みを促進する
総括
CD36とアシルCoA合成酵素は、相乗的に作用して脂肪酸の取り込みを促進する
長鎖塩基の取り込みに関して…
・酵母のアシルCoA合成酵素変異株では、脂肪酸だけでなく長鎖塩基の取り込みも低下した。
また、脂肪酸と長鎖塩基の取り込みは互いに競合することが示された。
・動物細胞を用いた解析でも、アシルCoA合成酵素阻害剤により、長鎖塩基の取り込みが阻
害された。
⇒脂肪酸と長鎖塩基を取り込む共通のトランスポーターが存在し、アシルCoA合成酵素が直
接あるいは間接的に関与するのではないか