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育種の長いお話し・お豆の話
北大 植物遺伝資源学研究室
阿部 純
1
品種改良(育種)に利用される遺伝的変異
遺伝資源
自然変異
人為的突然変異
在来種
放射線
古い育成品種
海外からの導入品種
ガンマ線
化学薬品
エチルメタンスルホネート
(EMS)
野生種
2
農業生物資源研究所 放射線育種場
(茨城県常陸大宮市)
ガンマ線照射台
ガンマ線照射台
放射線育種場データ
3
表現型、タンパク質、遺伝子
選抜
遺伝子
DNA
タンパク質
表現型
RNA
DNA塩基配列の変異
遺伝的変異
機能の変化
多様さ
4
育種とは:交雑・選抜・固定
品種A
品種B
交雑
表現型の分離(後代)
繰り返す
選抜
後代
固定
新しい品種
5
作物の種類で異なる育種の方法
自殖作物
イネ、コムギ、ダイズ、豆類
他殖作物
トウモロコシ、テンサイ、
タマネギなど多くの蔬菜類
主に自家受精する
主に他家受精する
交雑して選抜
自殖を重ねる
近親交配を重ねる
生長が損なわれる
遺伝的に固定させる
雑種強勢(ヘテロシス)
を利用する
F1作物
6
ダイズの地方品種(伝統野菜)
紅豆
黒千石
ヨナヨー
秘伝豆
岩手緑
水潜
小糸在来
丹波黒
おやし
7
育種とはだれのために
機械化栽培
大規模化
耐倒伏
性
難脱粒
性
安定・多収
耐寒性
耐暑性
耐虫性
収量性
育種目標
低農薬
低価格
安全・安心
耐病性
貯蔵性
加工特
性
機能性
食味
8
ダイズを機能性の高い、おいしいダイズに改良する
脂質
血中コレステロールの低下
ダイズの機能性
フラボノイド・イソフラボン
更年期障害の緩和、
骨粗鬆症予防、抗ガン作用
トコフェロール
動脈硬化予防、抗酸化作用
タンパク質
コレステロール抑制効果
サポニン
抗ウイルス・抗ガン作用、
抗酸化作用、肝機能障害予防
ルテイン
視覚機能改善、抗酸化作用
欠点
ダイズ油は劣化
しやすい
青臭み・えぐみ
がある
9
植物油の脂肪酸組成の違い
飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸
ダイズ油
キャノーラ油
オリーブ油
0%
20%
40%
60%
80%
100%
10
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
固まりやすい
飽和脂肪酸
植物油の性質
飽和脂肪酸が多い
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸が多い
液状のまま
酸化されやすい
油脂の着色・風味低下・不快臭
過酸化物は栄養障害を引き起こす
二重結合
11
リノール酸はリポキシゲナーゼによって酸化される
リノール酸
リポキシゲナーゼ
過酸化脂質
リノール酸9-ヒドロペルオキシド
N-ヘキサノール
青臭みの成分
リノール酸13-ヒドロペルオキシド
12-オキソ-シス-9-ドデセン酸
12
青臭みを取り除くために
リポ欠ダイズ品種
リポキシゲナーゼタンパク質は3個ある
Lx1
Lx2
Lx3
リポ欠
リポキシゲナーゼタンパク質を
持たない
貯蔵タンパク質
遺伝的変異
ダイズ種子のタンパク質電気泳動像
13
苦味や渋み成分(グループAサポニン)を取り除く
B01082
グループAサポニンの構造
ソヤサポゲノールAを
持たない系統
Rf
1.00
0.65
0.56
ソヤサポゲノールA
0
薄層クロマトグラフ解析の結果
14
きぬさやか
リポキシゲナーゼとグループAアセチルサポニンを
持たない品種
15
水素添加処理:ダイズ油の性質を変える
リノレン酸
ダイズ油
オレイン酸
リノール酸
キャノーラ油
オリーブ油
0%
20%
40%
60%
80%
100%
水素添加処理・熱処理
シス型
悪玉コレステロール
を増加させる
トランス型
16
リノール酸含量低下の試み
人為突然変異体を探す
Ol
FAD2-1A, FAD2-1B
Fan
Fanx
17
表現型、タンパク質、遺伝子
DNA塩基配列の変化
DNA
遺伝子
RNA
タンパク質
表現型
機能の消失
OL, Fan, Fanx
18
人為突然変異品種のリノール酸・リノレン酸含量
Fan
Ol
Fanx
オレイン酸
比較(親品種)
人為突然変異品種
25
リノール酸
53
52
リノレン酸
8
30
3
FAD2-1B
19
表現型、タンパク質、遺伝子
遺伝的変異
RNA鎖が二本鎖を作ると
分解されてしまう
DNA塩基配列の変異
DNA
遺伝子
RNA
遺伝子組み換え
X
タンパク質
表現型
選抜
20
遺伝子組み換え技術を用いた
高オレイン酸ダイズの開発:デュポン社
飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸
X
FAD2-1A, FAD2-1B
二つの酵素遺伝子に由来するRNAを分解するようなDNA断片を挿入する
オレイン酸
リノール酸
リノレン酸
普通品種
組み換え品種
21
遺伝資源の中からFAD2-1Bの変異体を探す
ゲノムシークエンス
データベース
FAD2-1B
シークエンス解析
遺伝資源
高オレイン酸含量系統
FAD2-1B変異体系統の選抜
FAD2-1A変異体 (ol) と交雑した後代から二重劣性型を選抜
オレイン酸
リノール酸 リノレン酸
遺伝資源の中から見いだされた
変異体の組み合わせ
遺伝子組み換え技術で作られた品種
22
まとめ
在来種と改良品種
お互いの良いところを利用して
遺伝子組み換えダイズ
世界の主要な油糧作物として重要な位置を占める
食文化に見合った品種の利用
23