遺伝学第一回目(イントロダクション).

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遺伝学 (Genetics)
2007年度前期 金曜 第2時限
京都教育大学 平成19年4月13日
講義の目標
遺伝子が親から子へと連綿と受け継がれる仕
組みについて理解すること。
特に遺伝子の乗り物である染色体の振る舞い
を基盤として解説します。
評価
出席点:10%(不定期に提出物で出席確認します)
5回出席を取るうち3回出ていれば満点
期末試験:90%
期末試験の内容:
・試験期間中に行う予定です。
・最終回の講義日に模擬試験をします(持ち込み可)。
・講義中に行う小テストと類似の問題を出題します。
・本番の試験は持ち込み不可です。
・追試、レポートによる点数の補填はしません。
講義のアウトライン
1.はじめに:遺伝とは?遺伝子とは?遺伝学とは?
2.生物の階層性と細胞説
3.細胞の増えかた(体細胞分裂と減数分裂)
4.遺伝の法則:メンデルは何を見つけたのか?
数量的理解
5.様々な遺伝現象
(分離比など)
6.連鎖と組換え
7.遺伝子の所在
8.遺伝子の発現
9.突然変異
概念的理解
10.遺伝と環境
11.遺伝子の多様性
遺伝(heredity)とは?
• 親から子・孫に、また細胞を単位とみて、その次の
世代に、体の形や色などの形質の伝わる現象。遺
伝子の伝授とその働き(発現)により支配される。
【広辞苑】
• 親の形質が子やそれ以降の世代に現れる現象。遺
伝子の伝授の現象をさし、基本的には個体の世代
だけでなく、細胞を単位として考えた場合、細胞の
世代についてもあてはめられる。【岩波 生物学辞
典】
遺伝子(gene)とは?
• 遺伝形質を規定する因子。メンデルの法則における基本概
念として各遺伝形質(単位形質)に対応して想定され、のち
にヨハンセン(1909)がメンデル因子をさす語としてgeneを提
案した。遺伝子は複製し、細胞世代、個体世代を通じて親か
ら子に継代的に正確に受けつがれ、形質発現に対する遺伝
情報を伝達する。
なんのことか、よくわからん!
<DVDで具体例を紹介します>
遺伝子はどこにあるの?
細胞は遺伝子を持つ
ヒトゲノムマップ
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/
言葉の整理
遺伝子(gene)
遺伝形質を既定する因子
その化学的組成はDNA
ヌクレオチドの配列が遺伝情報を担う
ゲノム(genome)
遺伝子の総体
ある生物をその生物たらしめている遺伝子の総体
ある生物の全部の遺伝情報
細胞中のDNAのすべての塩基配列ともいえる
遺伝と遺伝の仕組み
親
遺伝物質
転写
遺伝子
DNA (RNA)
翻訳
RNA
mRNA
tRNA
rRNA
突然変異
組換え 複製
タンパク質
形質
構造タンパク質
酵素
生化学反応
環境要因
相関=遺伝
伝達=遺伝
子
遺伝物質
転写
RNA
翻訳
タンパク質
形質
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子=塩基配列情報
遺伝子の発現
核
細胞質
翻訳とコドン
翻訳
標準的な遺伝暗号表
64通りのコドンのうち61がアミノ酸に対応し、20のアミノ酸をカバーしている。
一つのアミノ酸に複数のコドンが対応している(縮退)。
AUGは開始コドンかつ、Metに対応。
UAA, UAG, UGAは終止(停止)コドン。
遺伝(heredity)とは?
• 形質(character):メンデル以来の遺伝学において、
表現型として現れる各種の遺伝的性質をさす。
例) リンゴの果皮の「赤い」vs「青い」
ヒトの血液型のA/B/AB/O型
• 表現型(phenotype):遺伝子型(genotype)と対を成
す概念で、遺伝子がどのような型で発現されるか、
そのかたちをさす。したがって、一定の環境条件下
で、表現型は生物の持つ遺伝子型に規定される。
遺伝学の諸分野
1.対象とする現象によるもの
形質遺伝学、突然変異遺伝学、発生遺伝学、
行動遺伝学、進化遺伝学
2.対象とするorganizationのレベルによるもの
集団遺伝学、個体遺伝学、細胞遺伝学、
オルガネラ遺伝学
3.方法論によるもの
統計遺伝学、生化学遺伝学、細胞遺伝学、
放射線遺伝学
4.対象とする材料によるもの
人類遺伝学、ショウジョウバエ遺伝学、微生物遺伝学、
植物遺伝学
遺伝学の歴史
1865 G. Mendel
2月8日と3月8日に行われた Brunn の自然科学学会
の月例会でエンドウの遺伝実験の結果とその解釈を
報告した。
1900 H. de Vries, C. Correns, E. Tschermak
それぞれ独立に Mendel の論文を再発見した。de
Vries と Correns は、Mendel の初期の研究に相当す
る交配実験を、数種の植物を用いて行い、独立に、同
じ解釈に達した。Mendel の論文を読み、直ちにその
重要性を認めた。 W. Bateson もロンドンの王立学会
における演説で Mendel の業績の重要性を力説した。
形質とメンデル因子の相関:形質遺伝学(phenogenetics)
遺伝学の歴史
1902 W.S. Sutton
遺伝子どうしの独立な組合わせが減数分裂時の染色
体対合によって生ずるという染色体説を提示。
1911 T.H. Morgan
ショウジョウバエの白眼色、黄体色および小翅の遺伝
子はX染色体に連関していると報告した。
1912 T.H. Morgan
キイロショウジョウバエの雄では交差が起こらないこと
を示した。また伴性致死を初めて発見した。
染色体部分が形質を規定:細胞遺伝学(cytogenetics)
遺伝学の歴史
1927 H.J. Muller
ショウジョウバエでX線による人為突然変異の誘発を
報告した。
1928 L.J. Stadler
トウモロコシにおける人為突然変異の誘発について
報告し、線量と変異頻度の関係が直線的であることを
示した。
突然変異による形質の変換:突然変異遺伝学(mutation
genetics)
遺伝学の歴史
1941 G.W. Beadle, E.L. Tatum
アカパンカビの生化学的遺伝学に関する古典的研究
を出版し、一遺伝子一酵素説を発表した。
1948 H.K. Mitchell, J. Lein
アカパンカビでトリプトファンシンセターゼが欠けてい
る突然変異株を発見。この発見は一遺伝子一酵素仮
説の最初の直接的証拠となった。
酵素は遺伝子によって作られる:生化学遺伝学(
biochemical genetics)
遺伝学の歴史
1944 O.T. Avery, C.M. MacLeod, M. McCarty
肺炎双球菌の形質転換の原理を記述した。タンパク
質ではなくDNAが遺伝する性質をもつ化学的物質で
あることを示唆した。
1952 A.D. Hershey, M. Chase
ファージのDNAだけが宿主内にはいり、多くのタンパ
ク質は細胞外に取り残されることを示した。
1953 J.D. Watson, F.H.C. Crick
プリンとピリミジン間の水素結合によって結び合わさ
れた2重らせん鎖から成るDNAの模型を提唱した。
遺伝学の歴史
1961 F. Jacob, J. Monod
"「タンパク質合成の遺伝的制御機構」(Genetic
reguratory mechanisms in the synthesis of proteins)"
を発表し、オペロン説を展開した。
1961 M.W. Nirenberg, J.H. Matthaei
鋳型RNAを加えるとアミノ酸からタンパク質が合成さ
れる、大腸菌の無細胞蛋白合成系を開発した。
1965 R.W. Holley ら
酵母から分離したアラニンtRNAの完全なヌクレオチド
配列を決定。
セントラルドグマの確立:分子遺伝学(molecular genetics)
覚えておくべき用語
形質:
表現型:
遺伝子型:
遺伝子:
発現:
セントラルドグマ:
課題
• 配布するアンケート・質問に回答してください。
• これは試験ではありません。皆さんのバック
グラウンドを知るためのものです。