ダウンロード

Download Report

Transcript ダウンロード

環境社会学 9
被害構造論と受益圏・受苦圏
WORK 原発事故と水俣病
• 汚染や身体被害は,物質の性質が違うので
あまり似ていない.
– 生物濃縮は有機水銀は強く,放射性物質は弱い
– 131I:甲状腺蓄積,半減期8日,遅発性の発癌
– 137Cs:半減期30年,ヒト体内排泄半減期70日
• 原因論,解決論の社会的な側面が似ている.
• なぜなら,問題を生み出し,また解決を阻む,
社会構造が変わっていないからである.
2
原発事故の原因論
• 経済優先の政策
– (原発)コストを優先させ安全対策が不十分.
– (水俣病)コストを優先させ排水対策が不十分.
• 既存科学の正統性に固執
– (原発)津波での電源喪失の危機を無視.
– (水俣病)無機水銀は生態系でメチル化されない
という科学の常識にとらわれていた.
3
原発事故の解決論
• 被害補償の困難さ
– (原発)被曝と発癌の因果関係が曖昧.
– (水俣病)症状の診断基準が曖昧.
• 差別,放置
– 曖昧であるがゆえの差別と放置
• 廃炉は水俣の汚染除去よりも格段に困難!
• 「風評被害」は「風評」だけかどうかが曖昧.
4
被害構造論
被
害
の
重
層
的
レ
ベ
ル
①生命・健康
→
病気・死亡
②人格・精神
→
労働能力の低
下・喪失
③家庭生活
→
家庭関係の悪
化・破綻
④地域社会
→
地域社会の荒
廃・廃村
被害の度合い
5
受益圏・受苦圏論
環境問題の被害者・加害者を,より広い
社会集団に置き換えて,被害・加害間
の不平等な構造を明確にする.
6
受益圏
• 環境問題の原因事業から直接・間接に利益
を受ける集団や地域.
• 多くの場合,人口,経済力,政治力,文化・生
活水準が受苦圏より優越.
• 受益の集約的代弁者:受益圏の利害を代表
する集団や組織.事業の実施主体のほか,
自治体や地元の有力者など,事業を誘致・認
可する主体も.受益圏の中心.
7
受苦圏
• 環境問題によって苦痛を受ける集団や地域.
苦痛には,狭義の被害(物理的,医学的,経
済的)のほか,風評や人間関係の悪化(地域
や家族内の対立)にともなう精神的な苦しみ
や不安も含める.
• 受益圏には集約的代弁者がいるが,受苦圏
にはいない.そのために,苦しみの存在を表
出することができない.
8
9
1
分離型
受益圏
例:水俣病,田子の浦ヘドロ公害,
四日市喘息など工場排水型,
大気汚染型公害.
イタイイタイ病など鉱毒型公害.
集約的代弁者
受苦圏
新幹線など一部交通型公害.
産業廃棄物の不法投棄.
発展途上国への公害輸出.
発展途上国への政府開発援助.
10
2
格差型
受益圏
例:原子力,火力,水力など発電所
建設にともなう環境問題
一般ゴミ処理場建設
一般道路など多くの交通型公害.
集約的代弁者
受苦圏
11
3
自己回帰型
受益圏
例:漁業・森林・エネルギーなど
資源枯渇型環境問題
道路の渋滞
都市や観光地のゴミ散乱.
集約的代弁者
受苦圏
12
4
広域型
受益圏
集約的代弁者
例:地球温暖化,オゾン層破壊
生物多様性の減少
など,地球環境問題.
受苦圏
13
これらは分類ではない!
理念型(Idealtypus)である
• 境界的・混合的な事例はたくさんある.
• 理念型は,極端な場合を単純化したものであ
り,現象を見ていくときの尺度や基準となるも
の.
• 重要なことは,受益圏と受苦圏の関係がどう
なっているか,それが問題の拡大や解決にど
のように関わっているかを考えること.
14
「分離型」~「格差型」
の環境問題はなくならない
汚染物,有害物の排出
受益圏
外部
受益圏は拡大するが,まだ外部はある.外部がなくなると
「地球環境問題」化する.なぜなら,受益圏と外部には,経済
的・政治的格差が存在するため,受益圏の外部に捨てる限
りは,「問題」として認識されにくい.
15
分離型問題としての豊島事件
• 香川県豊島問題ホームページ
http://www.pref.kagawa.jp/haitai/teshima/index
.htm
• 廃棄物対策豊島住民会議
http://www.teshima.ne.jp/
• 豊島は私たちの問題ネットワーク
http://www4.ocn.ne.jp/~t-das/index.html
16
豊島事件の受益圏
• 産業廃棄物処理業者
– 弱小企業.野積みにすることで低価格で受注に成功.
• 京阪神の排出企業(自動車解体業)21社
– 不法投棄を知りながら,低コストの産廃業者に責任を押し付ける.
• 自動車メーカー
– 廃棄方法を考えずに大量生産.
• 自動車ユーザー
– 解体・処理費用をほとんど負担せずに,自動車を乗り換える.
• 香川県
– 産廃投棄を黙認.責任を逃れるために住民の訴えを黙殺.
– 紛争解決費用を先送りして間接的な利益を得ていた.
– 産廃投棄は島民の利益になるとした利害の集約的代弁者.
17
受益圏の主体間関係
シュレッダーダスト
自動車メーカー
ユーザ
国(産業行政)
解体業
産廃業
汚染物質
県(環境行政)
18
豊島事件の受苦圏
• 1600人の豊島住民:僻地の小漁村.島内に
産業基盤はなく,また有権者数も少ない.観
光地でもないため,島民以外からの声も出
にくい.
• 京阪神地区から近く,海上輸送で一度に大
量の産廃を移動できる.産廃の輸送コストが
安く,しかも問題になりにくい.
19
WORK 考えてみよう!
• 豊島事件の結果,自動車リサイクル法がつく
られた.自動車リサイクル法により,受益圏と
受苦圏はどのように変化したか?
• 自動車のリサイクルに関する現状に問題点
はないか?
自分の考えをコメントシートに
20
社会的ジレンマ
• 社会のそれぞれの人が自分にとって望ましい
行為を選択すると,社会のすべての人にとっ
て望ましくない結果が生じる.
21
環境問題における
社会的ジレンマの構造
他人の環境配慮行動
自分の
環境配
慮行動
22
配慮する
配慮しない
配慮する
(協力)
手間はかかるが
環境は良い
(相互協力)
手間がかかり
環境は悪い
(自分だけ損)
配慮しない
(非協力)
手間がかからず
環境は良い
(フリーライド)
手間はかからないが環
境は悪い
(相互非協力)
社会的ジレンマ
• 社会のそれぞれの人が自分にとって望ましい
行為を選択すると,社会のすべての人にとっ
て望ましくない結果が生じる.
• しかし,すべての人にとって,望ましかったり,
または望ましくなかったりする,同等な選択の
機会が開けているような事象が現実に存在
するだろうか?
23
受益圏・受苦圏論からの再整理
• 自己回帰型ジレンマ
• 格差自損型ジレンマ
• 加害型ジレンマ
24
主体の状況からの再整理
• 素朴な社会
• 市場メカニズムに巻き込まれた生産者
• 「構造化された選択肢」に取り囲まれた生産
者と消費者
25
社会的ジレンマの7類型(舩橋, 1998による)参考書B. 46頁による
原型
市場のなかの
生産者
自己回帰型
格差自損型
加害型
共有地型
商業捕鯨型
地盤沈下型
工場排水型
自動車排気
ガス公害型
清掃工場建
設問題型
高速道路公
害型
放射性廃棄
物問題型
環境負荷の高 道路渋滞型
い「構造化され
た選択肢」に取 観光地散乱
り込まれた生産 ゴミ型
者+消費者