前回の修正 各国の環境税について

Download Report

Transcript 前回の修正 各国の環境税について

熊野雄太

前回の内容
◦ 4人での旅行を仮定して各交通手段の料金、時間、CO2排
出量を計算
◦ そのデータから、CO2に税金をかけて自動車と電車の料金
が同額になるように環境税の導入を検討
◦ しかし、料金が1人分、CO2排出が4人分で計算してしまって
いた。
旅客部門のグラフ
料金(円)
50000
40000
30000
CO2(kg)
車
20000
90
電車
10000
80
0
70
河口湖
岡崎
大阪
岡山
山口
60
50
車
40
時間(分)
電車
30
1600
20
1400
1200
10
1000
0
河口湖
岡崎
大阪
岡山
山口
800
車
600
電車
400
200
0
河口湖
岡崎
大阪
岡山
山口



x:環境税の値段 円 kg
𝐶𝑖 :輸送手段のコスト 𝑖 = 𝑟, 𝑠, 𝑡
𝐸𝑗 :CO2排出量(j = 𝑟, 𝑠, 𝑡)
• railway
• shipping
• truck
鉄道とトラックの料金が同額になるとすると、
𝐶𝑟 +𝐸𝑟 𝑥=𝐶𝑡 +𝐸𝑡 𝑥
𝐶𝑟 − 𝐶𝑡
𝑥=
𝐸𝑡 − 𝐸𝑟
値段xを求める式
𝐶𝑟 − 𝐶𝑡
𝑥=
𝐸𝑡 − 𝐸𝑟
CO2排出 1kgあたりの税金額
環境税(円/kg)
河口湖
441.7778
岡崎
461.4918
大阪
451.3871
岡山
409.9299
山口
326.3751

単純に環境税だけで自動車と電車を同料金にしようと
するとかなり高い税率が必要。

フィンランドではCO2排出1トンあたり2066円(付加
税としての金額で、基本税は別)

モーダルシフトを推進するには環境税だけでは厳しい

環境問題解決のために定められた税

環境によくない活動に対して税金をかけることでその
活動を抑制する

ヨーロッパでは導入が進んでいる
◦ フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オラン
ダ、ドイツ、イタリア、イギリス、スイスなど

炭素税→温暖化対策税のひとつ
◦ 化石燃料の使用(エネルギー消費)に対してかけられる税
◦ 税率や課税の形態は国によって異なる
◦ 既存のエネルギー税との調整が必要

温暖化対策税導入の際の手法
1. 既存の税制とは別に新たな税制を導入(フィンランドなど)
2. 既存のエネルギー税に温暖化対策の視点を組み込む(イタリ
ア)
3. 既存の税制に税率を上乗せする(ドイツ)

課税標準
1. 炭素含有量に比例
2. 炭素+エネルギー要素
3. エネルギー要素

納税義務者
◦ 基本的には燃料供給者が多い
◦ 供給者により価格が消費者に転嫁されることもある

対象範囲と減・免税措置
◦ 低税率で広く一般
◦ ターゲットを絞って高税率
◦ 産業部門(特にエネルギー集約部門)には免除、軽減措置が
取られている

税収の使途
◦ 一般財源になるものが多い
◦ 環境対策費に充てることもある
◦ 課税対象部門に還元する(税制中立)
各国による温暖化対策税の
導入の方法の違い
フィンランドの例・・・1990年に世界で初めて炭素税導入
 税の形態 炭素税

課税標準
◦ 炭素含有量に依存

対象
◦ 交通用(ガソリン、軽油、天然ガスなど)
◦ 熱利用(軽油、重油、天然ガス、電力消費)

課税段階
◦ 炭素税は卸売
◦ 天然ガスは輸入
◦ 電力は電力網運営者

エネルギー製品への課税
◦ 付加価値税
◦ エネルギー税
◦ 環境税
 炭素税
 電力消費税
 石油汚染税
◦ 備蓄税
日本の消費税
石油系燃料
炭素含有量に依存
電力量に依存
すべての石油製品
石油備蓄のコスト負担
基本税・・・予算案から決定
付加税・・・環境面の基準から決定
特定目的税・・・使途が決
まってる
一般に、「基本税+付加税」という形になっている
ともに一般財源になる

導入の経緯
◦ 90年 炭素税導入。炭素含有量に依存。
7FMK/t-CO2
◦ 94年 炭素含有量:エネルギー=3:1に変更
◦ 97年 炭素含有量のみに。電力消費税が新設。70FMK/t-CO2
◦ 98年1月 税率引き上げ。
82FMK/t-CO2
◦ 98年9月 税率引き上げ。
102FMK/t-CO2
1FMK=17.8円
(2001年5月30日)

免除、軽減措置
◦ 産業
 97年の電力消費税に伴い、産業部門は50%の軽減
◦ 環境
 風力発電、廃棄物発電への助成金
◦ 用途
 緊急時用の燃料
 石油精製過程での燃料

既存のエネルギー税の調整
◦ 90年 炭素税導入前は交通用・熱利用にエネルギー税。炭
素税導入後、熱利用は全廃、交通用は減税。
◦ 93~94年 熱利用に再導入。交通用も引き上げ。
◦ 97年 炭素税、電力消費税の増設を相殺するために交通用
は減税。熱利用は重油が廃止、軽油が増設された。
◦ 98年9月 炭素税、電力消費税の引き上げに伴い、交通用
のエネルギー税は減税

2007年8月の時点では、炭素税は
18.05ユーロ/t-CO2(約107FMK/t-CO2)
イタリアの例・・・既存のエネルギー税に炭素税の観点
を導入
 税の形態 エネルギー税の改正

課税標準
◦ エネルギー税に炭素含有量に依存する部分を導入(99年)
◦ 炭素含有量や燃料の使途によって、既存の税率を見直し、
段階的に税率を引き上げ

対象
◦ 交通用(ガソリン、軽油、天然ガスなど)
◦ 熱利用(軽油、重油、天然ガス、電力消費)
100LIT=5.5円
(2001年5月30日)
エネルギー税の中に炭素税の要素が組み込まれてい
る
ドイツの例・・・既存のエネルギー税に税率を上乗せ
 税の形態 環境税制改革(石油税の改正、電力税の
新設)

課税標準
◦ 炭素含有量には依存しない

対象
◦ 交通用(ガソリン、軽油、天然ガスなど)
◦ 熱利用(軽油、重油、天然ガス、電力消費)

課税段階
◦ 石油税
 供給業者
◦ 電力税
 納税義務は最終消費者が買い取るときに発生。
 納税者は電力供給企業
1DEM=54.2円(2001年5月30日)
免除、軽減措置の種類

部門によって税率を変える
◦ 産業(特にその国の主要産業やエネルギー集約産業)は低
税率であることが多い
◦ 産業部門は政府と協定を結ぶことで税率を下げられる
 イギリス
 80%減税。協定を結んだ企業間での排出権取引も認められている
 スイス
 対象者・・・大企業、炭素税が総生産額の1%を超えるエネルギー集
約型企業
 協定内容・・・CO2削減量、行動計画案、行動結果のモニタリング、
報告書

エネルギーの用途による減税
◦ 発電用、エネルギー転換用など

環境配慮に対する減税
◦ コージェネレーション、再生可能エネルギーによる発電、公共
交通用の電力消費
◦ 環境配慮型プロジェクトの燃料使用
税収の使途
 一般財源や課税部門への還元(ビジネス部門が多
い)
◦
◦
◦
◦
◦
◦
所得税の軽減
社会保険料の軽減
中小企業への補助金
省エネ投資補助
労働コストの削減
低所得者の税率引き下げ
今回わかったこと
 環境税は単純にCO2排出量に税率をかけるだけで
はない

課税対象(部門、用途)によって税率が異なるのが一
般的

環境による増税をほかの部分で相殺するような税体
系にしないと産業が縮小してしまう

税収の使途まで考えた税制の設計が必要