原子気体のボース・アインシュタイン凝縮

Download Report

Transcript 原子気体のボース・アインシュタイン凝縮

原子気体の
ボース・アインシュタイン凝縮
東京大学大学院総合文化研究科
鳥井 寿夫
内容
•
•
•
BECとは
BECの作り方
BECを用いた面白い実験
– 独立な2つのBECの干渉(MIT、1997)
– BECによる原子波の増幅(Tokyo、MIT、1999)
– (光格子中のBECのMott転移)(Munich、2002)
1924年
光を粒と考え,この粒同士は同じ状態を取
り得るとすると,プランクの式が導ける
ぞ!!
n BE (  ) 
S. N. Bose
手紙
  ,  0
1
exp(
 
k BT
     n 
) 1
ボース・アインシュタイン分布
同じ法則が原子にも成立すると仮
定すると,低温でおかしな事が起
こるぞ!
「ボース・アインシュタイン凝縮」
A. Einstein
1
exp(

k BT
) 1
プランクの式
<ボース・アインシュタイン凝縮とは>
ひとことで言うなら・・・
ボーズ統計に従う粒子(ボゾン)の集団において,
最低エネルギー状態を占める粒子数が,ある温度以
下で突然マクロな数になる現象
理想気体の場合(アインシュタインの予言)
化学ポテンシャルμは、

粒子数:N
体積:V
状態密度:D (ε)
N V
 D ( ) n
BE
(  )d 
0
を満たすように決定される。しかし温度を下げると,μ=0としても
(μ>0は物理的に不可),右辺はNに満たなくなる。
→満たなかった部分は最低エネルギー状態を占める(ボース・アインシュタイン凝縮)

N  N 0 V
 D ( ) n
0
ボース凝縮相
BE
(  )d 
ボース・アインシュタイン凝縮が起こる条件は,
h
 ps  n  db  2 . 612 (  db 
3
 T  TC 
h
T >TC(ρps<2.612)
B
N


 : 転移温度

 2 . 612 V 
T <TC(ρps>2.612)

N V
 D (  )n
0
N0のT 依存性

BE
(  )d 
)
2/3
2
2  mk
2  mk B T
: 熱的ドブロイ波長
N  N 0 V
 D (  )n
0
BE
(  )d 
N0

T
 N 1  

 Tc




3/2



T~300K
原子は粒子のように振舞う
レーザー冷却
粒子の波動性が顕著になる
T~1mK
蒸発冷却、レーザー冷却
T~1K
波が重なり始める
(ボース統計性が顕著になる)
蒸発冷却
T~100nK
一つの巨大な波
(ボース・アインシュタイン凝縮)
ボース・アインシュタイン凝縮の仲間達
凝縮系物理
量子光学
0
電子対(クーパー対)の 液体ヘ リ ウ ム 原子
BEC(超伝導)
のBEC(超流動)
1
気 体 原 子 の BEC
(原子レーザー)
N0
光 子 の BEC
(レーザー)
N
ボース・アインシュタイン凝縮の歴史
1911
1923
1924
1925
1926
1927
1933
水銀で超伝導(Onnes)~4.2K
物質波の概念(de-Broglie)
ボース統計、ボース凝縮の理論(Bose, Einstein)
行列力学(Heizenberg)
波動力学(Schrödinger)
HeⅡの発見~2.17K
マイスナー効果
1938
超流動、ボース凝縮による説明3.13K(London)
1957
1960
BCS理論による超伝導の説明
レーザーの発明(Maiman)
1975
レーザー冷却のアイデア(Hänsch ,Shallow)
1980~ レーザーによる原子線の減速(Phillips他)~mK
1985 レーザーによる3次元冷却(Chu) ~240μK
1988 偏向冷却(Phillips, Cohen-Tannoudji)~3μK
1995
1997年ノーベル
物理学賞
2001年ノーベル
蒸発冷却、ボース凝縮実現
(Cornel, Wieman, Ketterle)~100nk 物理学賞
BECへの道のり
Tokyo(1998)
MIT(2001)
磁気光学トラップ(MIT、1987)
磁気トラップの原理
ルビジウム原子のゼーマンシフト
mF
10
87
2
1
0
Rb: S1/2
-1
Energy shift [GHz]
5 F=2
0
F=1
-2
-5
-1
0
1
-10
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
Magnetic field [T]
0.5
クローバーリーフコイル(MIT,1996)
蒸発冷却の原理
E
N
E cut
 rf
蒸発
r
E
E cut
熱化
E
N
r
E
E cut
吸収イメージング法
BECへの相転移
νfinal= 0.70MHz
1 mm
density [arb.]
0.68MHz
0.66MHz
0.64MHz
0.62MHz
-500
0
500
gravity
原子気体BECの特徴
磁気トラップから開放されたBECの時間発展
1mm
・すべての方向の運動量幅が一光子反跳
運動量以下
(Rb原子の一光子反跳運動量:6mm/s)
・原子集団が空間的に局在(10μm~100μm)
・空間密度が高い(~1014 atoms/cm3)
・単一の量子状態にすべての原子が存在
→非対角長距離秩序が存在
ˆ  (r ) 
ˆ (r )   * (r )  (r )

 (r ) :凝縮体の波動関数
(秩序パラメータ)
1ms
5.5ms
11ms
16.5ms
22ms
27.5ms 33ms
非対角長距離秩序の確認
T<<Tc
T<Tc
T>Tc
I. Bloch, T. W. Hansch, and T. Esslinger: Nature 403, 166 (2000).
独立な2つのBECは干渉するか?
<粒子数状態の場合>
ˆ  (x )
ˆ (x ) | N , N
n ( x )  N k , N  k | 

k
k
Nk
k
N-k
-k

 N k , N  k | aˆ k aˆ k | N k , N  k 

  N k , N  k | aˆ  k aˆ  k | N k , N  k 

  N k , N  k | aˆ k aˆ  k | N k , N  k  e
 2 ikx

2 ikx
  N k , N  k | aˆ  k aˆ k | N k , N  k  e
 N k  N k (一定 )
干渉縞現れない
<コヒーレント状態の場合>  k
?
n(x)

Nke
i k
,  k 
N k e
ˆ  (x )
ˆ (x ) |  , 
n ( x )   k ,   k | 
k
k

  k ,   k | aˆ k aˆ k |  k ,   k 

   k ,   k | aˆ  k aˆ  k |  k ,   k 

   k ,   k | aˆ k aˆ  k |  k ,   k  e
 2 ikx

2 ikx
   k ,   k | aˆ  k aˆ k |  k ,   k  e
 N k  N k  2 N k N k cos 2kx  ( k   k )
干渉縞現れる
i  k
アンダーソンの思考実験
P.W. Anderson, in The Lesson of Quantum,
(Elservier, Amsterdam, 1986) pp. 23-33.
• 離れた2つのバケツ内の超流動体をつなぐと、
ジョセフソン流は流れるか?
超流動体A
J 
?

m
超流動体B
  (r )
独立なBECの作り方
磁気トラップされたNa原子
非共鳴光強度
50 m
強く絞った非共鳴光(514nm)
(共鳴波長は589nm)
原子集団の非破壊イメージ
大
Andrews, Townsend, Miesner, Durfee, Kurn, Ketterle, Science 275, 589 (1997)
Andrews, Townsend, Miesner, Durfee, Kurn, Ketterle, Science 275, 589 (1997)
独立なBEC間の干渉
Andrews, Townsend, Miesner, Durfee, Kurn, Ketterle, Science 275, 589 (1997)
The Feynman Lectures on Physics vol. III
Chap.4 (Identical Particle)
a 1, 2 (b 1, 2 ) :ボソンa(b)が状態1,2に散乱される確率振幅
粒子a、bが同じ場所で観測される確率は、
( a 1  a 2  a 、b 1  b 2  b )
異種粒子: P  a
2
1
2
b2
2
2
 a 2 b1
同種粒子: P 2  a 1b 2  a 2b 1
2
2
 4a
 2a
2
b
2
b
2
2
• もし既にボース粒子がある状態に存在して
いるなら、次のボース粒子を同じ状態に得る
確率は、(既にボース粒子が存在していない
場合の)2倍になる
2光子干渉実験
b
1
光子a が検出器1で検出される確率振
幅:
光子a が検出器2で検出される確率振
ビームスプリッター 幅:
光子 bが検出器1で検出される確率振
幅:
光子b が検出器1で検出される確率振
幅:
a1 
1 2
a2 
1 2
b1 
1 2
b2   1 2
検出器1,2が同時に光子を検出する確率は、
a
2
P  a 1b 2  a 2b 1
つまり、 | 出力 
1
2
| 0 1 , 2 2
2
0
  | 21 , 0 2 
最初に検出された光子の検出結果によって、次に検出される光子の検出
結果が左右される!
2つの1原子状態間の干渉
| 1> k
e
ikx
| 1> -k
密度演算子の期待値
ˆ  (x )
ˆ ( x ) | 1 ,1 
n ( x )  1k , 1  k | 
k
k
-ikx
e
 2 ( 一定 )
原子が検出器1と検出器2で検出される確率
P (x 1, x 2 )  e
x1
x2
x
ikx
1
e
 ikx
2
e
ikx
2
e
 ikx
 2  1  cos 2k ( x 1  x 2 )
2
1
独立なBEC間の干渉
Andrews, Townsend, Miesner, Durfee, Kurn, Ketterle, Science 275, 589 (1997)
ボース凝縮体の超放射
S. Inouye, et. al., Science 285, 571 (1999)
Na BEC
非共鳴光
(ポンプ光)
35s
75s
100s
Rb原子BECの超放射(MIT, 2001)
ポンプ光
Rb BEC
The Feynman Lectures on Physics vol. III
Chap.4 (Identical Particle)
n個のボゾンが、ある状態に既に存在して
いるとき、n+1番目のボソンがその状態に
散乱される確率は
2
Pn  1 ( Bose )  (n  1) w  SP n ( Bose )
→もし既にn個のボース粒子がある状態に存在して
いるなら、n+1個目のボース粒子を同じ状態に
得る確率は、(既にボース粒子が存在していな
い場合の)n+1倍になる
超放射散乱の起源
1個の反跳原子
散乱光子
BEC
ポンプ光
2個の反跳原子
ポンプ光
ポンプ光
3倍の確率で散乱
ポンプ光
2倍の確率で散乱
ポンプ光
3個の散乱原子
ポンプ光
光子が散乱される確率は、それまでに散乱された原子数に比例する
レーザーの動作原理
共振器モードにN個の光子
| e> = | g>
+ | g > = | e>
a| N> = √N| N-1>
+
a | N> = √(N+ 1)| N+ 1>
| e>
| g>
We→ g = C | < g, N+ 1| a +  a| e, N> |
= C( N + 1 )
+
誘導放出
+
2
自然放出
LASER: Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
ボース凝縮体のブラッグ回折
M. Kozuma, et. al., PRL 82, 871 (1999)
ボース凝縮体のブラッグ回折
1 mm
g
ハーフビーム
スプリッター
全反射ミラー
3
t = 0 s3
t = 40 s3
2
2
2
1
1
1
0
0
0
-0.3
0.0
0.3
-0.3
0.0
0.3
t = 80 s
-0.3
horizontal position (mm)
0.0
0.3
ブラッグ回折を用いたBEC干渉計
Y. Torii, et. al., PRA 61, R041602 (2000)
原子波の増幅
M. Kozuma, et. al., Science 286, 2309 (1999)
ポンプ光のみ
変化なし
ブラッグ光のみ
6.5%の原子(種)が散乱
ポンプ光+
ブラッグ光
66%の原子が散乱
(種が10倍に増幅)
ポンプ光の照射時間と出力原子数の関係
M. Kozuma, et. al., Science 286, 2309 (1999)
ボース・アインシュタイン凝縮の仲間達
未開拓な領域
凝縮系物理
・量子コンピューター
・量子テレポーテーション
量子光学
0
電子対(クーパー対)の 液体ヘ リ ウ ム 原子
BEC(超伝導)
のBEC(超流動)
1
気 体 原 子 の BEC
(原子レーザー)
N0
光 子 の BEC
(レーザー)
N