Transcript 敵意性と心臓血管活動の関連

日本心理学会第68回大会ワークショップ (2004.9.13)
社会精神生理学への招待
―ストレス・感情と社会的要因との関係―
敵意性と
心臓血管活動の関連
井澤修平
早稲田大学大学院人間科学研究科
日本学術振興会特別研究員
敵意性とは？
• 敵意性とは．．．
– 情動（怒り・侮蔑）
– 認知（猜疑心・不信）
– 行動（攻撃行動）
3つの側面を含む心理特性．
• 欧米では敵意性と冠動
脈疾患（CHD）の関連
について数多くの疫学
調査が行われている．
生存率（％）
100
敵意性低群
95
90
85
敵意性高群
1960 1965 1970 1975 1980
Barefoot et al., 1983, Psychosom Med.
なぜ敵意性と心臓血管活動？
敵意性
？
CHD
• 精神生理的反応性モデル
– 敵意性の高い人はストレッサーに対して高い心臓血管反
応性を示すためにCHDになりやすい
– 欧米ではこの仮説にそって多くの研究が行われている．
本発表でご紹介する研究内容
• 敵意性と怒り喚起時の心臓血管反
応性 【研究1】
実験室
• 敵意性と評価場面における心臓血
管反応性 【研究2】
実験室
• 日常場面における怒り感情と心臓
血管活動 【研究3】
フィールド
敵意性と心臓血管活動の関連について検討する
【研究1】
目的：敵意性と怒り喚起時の心臓血管活動の関連について
検討する．
• 被験者：男性17名
• 尺度：Buss-Perry攻撃性
質問紙（BAQ）
• 手続き
安静状態測定
1357
1751
4142
被験者
中性暗算
挑発+暗算
回復期
挑発＋安静
中性暗算
挑発＋安静
挑発＋暗算
回復期
ディブリーフィング
もっと速くやって
実験者
間違っています．
成績が悪いとや
ください
り直しの可能性
があります．
BAQ低群 （N=10）
BAQ高群 (N=7)
DBP (mmHg)
20
15
10
5
0
暗算
挑発＋
暗算
挑発＋
安静
回復期
※ 安静期の値を共変量とした共分散分析
• 各群でDBP反応に違いがみられた．
– BAQ高群は挑発の要素が強くなるにしたがい，高いDBP
反応性を示した．
【研究2】
目的：敵意性と評価場面における心臓血管活動の関連に
ついて検討する．
安静状態測定
被験者：女性30名
尺度：シニシズム尺度
感情評定
課題の教示
課題：スピーチ
被験者は，イラク戦争問題に
ついて自分の意見をスピーチ
するように伝えられた．被験者
の前にはカメラが置かれ，撮影
され，後にスピーチの内容が評
価されると告げられた．
スピーチ準備期
スピーチ期
感情評定
感情評定
回復期
シニシズム低群
（N = 16）
*
DBP (mmHg)
20
15
10
5
*
*
0.2
TPR（mmHg.s/ml）
25
シニシズム高群
（N = 14）
0.1
0.0
-0.1
-0.2
0
準備期
スピーチ期 回復期
準備期
スピーチ期
回復期
※ 安静期の値を共変量とした共分散分析
• スピーチ期，回復期のDBP・TPRで群間差がみられた．
【研究3】
目的：日常場面における怒り感情と心臓血管活動の
関連について検討する．
平均8～10時間
血携
圧帯
計型
装自
着動
→
血
圧
測
定
→
実
験
終
了
 被験者：男性31名
 30分おき血圧測定が自動的に行われる
 行動日誌（姿勢，喫煙，会話の有無，怒り感情）
日中の怒り感情と平均血圧の相関
（ BMI・姿勢・喫煙を制御）
SBP
DBP
HR
怒り感情（%）
-.078
.217
.373
非会話時の
怒り感情（%）
.000
.167
.281
会話時の
怒り感情（%）
.323
.546 ＊＊＊ .547
†
＊＊＊
会話時の怒り気分とDBP・HRの相関が有意であった．
会話・非会話時のDBP・HR
会話時
110
90
r = .547
100
r = .546
HR (bpm)
DBP (mmHg)
100
非会話時
80
r = .167
90
80
r = .281
70
70
60
60
50
0
10
20
30
40
50
0
10
怒り感情（%）
※ BMI・姿勢・喫煙を調整した値
20
30
怒り感情（%）
40
50
この3つの研究成果からいえること ①
• 敵意性や怒り感情は高い心臓血管反応，とく
に血管活動と関連していた．
• 高いDBP反応性は将来の動脈硬化発症と関
連する（Kamarck et al., 1999）．
敵意性
心臓血管系
？
活動
CHD
この3つの研究成果からいえること ②
• これらの関連は対人的な状況において，より強い関
連を示した．
• 挑発を伴う暗算課題
• 評価的なスピーチ
• 会話をする時
• 普通の暗算課題
• 1人でいる時
• 特性×状況の重要性
– これらの関連を検討する際には対人的な要素を含んだス
トレッサーを用いる必要性
– 伝統的な課題を用いるとむしろ逆の結果がえられることも
あり，注意が必要．