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哲学カフェ
第2回
ことばとはなにか
西洋思想の批判から見える世界
――生命言語説の展開――
ご出席ありがとうございます
人間存在研究所
大江 矩夫
1
はじめに
百家争鳴の時代、グローバル資本主義の危機、地
球環境破壊の危機、資源エネルギーの危機、そして、
様々な人間論、言語論、社会論、資本主義論等があ
るが、それらすべてには論理性はあっても科学的検証
性がない。哲学や政治経済学、心理学、人間に関する
学問、人文科学の領域、例えば、哲学では唯物論、現
象学、論理学、言語学、構造主義等。経済学では古典
経済学、近代経済学、マルクス経済学、新古典派市場
万能経済学、社会契約論、スミス、マルクス、フッサー
ル、ソシュール、メルロ・ポンティ、レヴィ・ストロース、デ
リダ、ハンナ・アレント、ハーバーマス、・・・・いずれも、学
問の根源、知識の根源である言語については、生命
から独立した理性的営みとしか捉えていない。
人間の本質としての言語とは何でしょうか・・・・?
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―生命言語説とは―
「言葉をもつ生命」としての人間存在
とはどのようなものか
私たち人間の、日常の生活における言葉の
はたらきとは何でしょうか
言語論の革新は、ものの見方考え方と西洋
哲学・学問の基本を変革します
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① 生命の本質は何か
⇒生命は、地球という特殊な環境における
持続的生化学反応のシステム(系・体制・
細胞)である。その生化学反応のシステム
は、外界とのエネルギー代謝によって、タ
ンパク質と核酸(DNA RNA)の働きを中心
にした内的環境の「原初的恒常性」を維持
しながら、今日の多様な生存形態をとって
存続している。
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② 地球に誕生した生命の生存と適
応の力は何か
⇒原始地球に誕生した原始生命(細胞)は、
多様な環境に適応して多様な生存形態を
とるようになった。その生存(適応)力は、環
境の無限の変化と多様性の中で、外界か
ら自立した細胞システムの状態(原初的恒
常性)を永続させることである。
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③ 生命はどのような機能によって
維持存続しているか。
⇒生命にとって「代謝、適応、生殖(再生)」の三つ
の機能が、持続的生存の条件となる。代謝はエ
ネルギー供給をすることによって適応行動を支え、
生殖は個体維持の限界(老化)を超える多様な適
応を行う。
生命活動の本質は内的恒常性の維持である。
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④ 個体維持の限界と生殖(再生)・
進化の意味は何か。
⇒生命の老化と個体死の限界は、生殖(増
殖)と適応進化によって克服され、性(接合
や受精)によって自己変容と進化(多様化)
を行う。進化とは、外的環境に適合した生
存様式の多様化による種族維持のための
方策である。
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⑤ 生命は個体維持のために、環境
刺激の変化と危険にどのように反
応し適応するか
⇒動物は、無限の環境からの刺激を、種
固有の適応様式で知覚認識・選択判断し
て反応・行動する。進化した動物行動の刺
激反応性は、発達した神経系の知覚・統
合・反応様式によって統制されている。
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神経系の発達
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神経系の系統
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神経系の機能モデル
感覚器
(五感・五根)
眼耳鼻舌身
(五境:
色声香味触)
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欲求と行動(刺激反応性)
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欲求と行動(具体例)
内的欲求 ⇒ 外的刺激 ⇒ 知覚受容 ⇒ 情
動反応 ⇒生理反応(自律神経系)→ 捕食行動
⇒欲求充足(快的情動反応)
(例: 空腹 ⇒ ビフテキ ⇒ おいしそ~、ワクワク ⇒
唾液が出る ⇒食べる うま~い、満足!)
安全欲求 ⇒ 外的刺激 ⇒ 受容・情動反応
⇒ 欲求不満 ⇒生理反応(自律神経系)→ 適応
行動(意志的感情反応)
(例: 友達・安心喜び ⇒ 裏切り・ショック ⇒ 失意・怒り
⇒ どうする?⇒ 旅に出よう!ルンルン♪ )
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心の構造
人間は欲の塊(カタマリ)、感情の動物――それを
言葉でひねくり回し意味づけしながら生きていま
す。人間の行動の源となる「心のしくみと働き」に
ついて考えてみましょう。
人間の心の構造は、無意識的な動物的要素 ①
② に、言語的思考を伴う意識的な人間的要素
③を加えて構成されています。
①欲求・感情(情動): 内的動因(欲求刺激)に対
する感情反応が二次的動因となる。
②動物的知性: 欲求情動に支配され学習・洞察
を行う知覚的判断・直示的操作能力
③人間的知性: 言語的思考による情報の脳内
的操作(想像/創造)と直示性を越えた感情反応
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⑥ 高等動物の生存行動の動因となる
「欲求」にはどのようなものがあるか。
• ⇒基本的動因となる欲求は、哺乳類では個体と種族の維持
に分類される。
・個体維持
エネルギー代謝:呼吸、休息・睡眠、飲食・排泄(内的恒常性)
安全保持:苦痛回避、快楽追求、好奇心、防衛(個体安全性)
自己表出:模倣・学習、探索、遊び、承認、優越(発達享楽性)
・種族維持
異性関係:性愛(恋慕・性交),配偶関係
母子関係:育児(母性),保護,依存,自立(成長)
集団関係:安全・安心,援助,秩序,協同行動
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動物の基本的欲求と人間の二次的欲求
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⑦高等動物の行動を制御・推進する感情反応
にはどのようなものがあるか
⇒感情反応は、内的反応であると共に行動の原動力になる。感情は、肯定的感
情、否定的感情、意志的感情に分類できる。
肯定的感情:
[一般的感情] 快,満足,自由,安心,喜び,楽しみ,おかしさ等、
[社会的感情] 連帯,愛情,保護,優しさ,安全,解放等(利他的)
[優越的感情] 優越,自信,自尊,勝利,所有,支配等(利己的)
否定的感情:
[一般的感情] 不快,空虚,不安,悲哀,恐怖,当惑,失望、疲労等、
[社会的感情] 孤独,憎悪,怨恨,怒り,嫉妬,閉塞等(排他的)
[劣等的感情] 劣等,不信,自虐,敗北,拘束,恥辱,罪悪等(自虐的)
意志的感情:
好奇,希望,期待,願望、意欲,信念,義務,正義,挑戦、祈り、退行等、
(自己の意図や目的、欲求や希望を実現するか、実現したときの感情、充実
感・達成感、祈り、感謝、または否定的な意志。言語を持つ人間にもっとも
特徴的)
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⑧ 動物と人間の思考と行動の特色
は何か
⇒動物行動の実験や観察から、条件反射や学習、
洞察や欺き行動、しつけや訓練などについて、人
間と共通の思考と行動の特性が見られる。
しかし、人間は言語による社会的情報処理能力
(知性・理性)を活用することによって、諸対象の
記憶・創造・判断能力を高め、具体的直接的世
界を越えて空間的時間的適応能力を拡大する。
またそれによって、実在しない「虚偽の情報や世
界」に適応せざるを得ないことにもなった。
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⑨ 高等動物と人間の音声信号
の相違点は何か
⇒類人猿の音声信号は、行動の延長とし
て自己の意志を表現伝達する。
しかし人間の言語は、行動から独立して対
象を音声信号化し、対象の状態や自己の
意図を内的に再構成して他者に伝えること
ができる。人間は直接的世界だけでなく、
間接的観念的(内言的)世界をつくって自
己を合理化し制御し行動する。
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言語認識と伝達行動
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言語の学習と主観的認識
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⑩ 言語認識の成立と思考・再構成
の原理は何か(文法の原理)
⇒言語は、対象(名詞what)とその状態(動詞・形
容詞how)を、刺激(対象)反応性にもとづいて音
声信号化し、対象の情報と自己の判断を同胞へ
伝達するものである。
その言語化(認識・思考)の過程で、対象の状態
の認知と自己の判断(思考)が必要となり、何が
(what)、どのように(how)、なぜ(why)あり(be, な
りbecome,do)、対象間や時空の関係(助詞)、主
観的可能、願望、意図 推量(助動詞)等々の表
現が取り入れられ、複雑な文の構成が可能と
なった。
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⑪ 西洋的思考様式の特徴と言語
的合理主義の起源
⇒ギリシア的・西洋的思考(認識)様式では、世界(対象)を
言語(ロゴス)化した限りで、存在の絶対性(納得性)を認
める。つまり、西洋的合理主義では、言語化以前の、特
定しにくい曖昧な対象の存在を認めない。
西洋的認識にとって、対象は言語(合理)化されてはじ
めて存在性が生じるから、曖昧な言語表現は西洋人を納
得させない。西洋的合理主義では、対象に対する反応と
しての主観的感情(喜怒哀楽)を言語化し、そうすることに
よって、行動の動因としての感情を抑制し、「自然をそれ
自体として」ありのままに、科学的に観察(認識)できた。こ
れが西洋的科学的認識と自然支配の根源となった。
(感情を言語的に対象化することによって、感情のバイアスを排除する)
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⑫ 西洋的因果関係と仏教的縁起
主義はどのように異なるのか
⇒仏教における縁起の語は「因縁生起」の略で、「因」は
結果を生じさせる直接の原因、「縁」はそれを助ける外的
な条件のことである。
ある結果が生じる時には、直接の原因(近因)だけでは
なく、直接の原因を生じさせた原因やそれ以外の様々な
間接的な原因(遠因)も含めて、あらゆる存在が互いに関
係しあうことで、それら全ての関係性の結果として、ある
結果が生じるという考え方である
これは「此があ(生じ)れば彼があり、」「此がなけ(滅す)れ
ば彼がない。」というもので、西洋的因果関係のように合
理的な「有」の論理ではなく、無や空を含む論理である。
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【地球環境と生命存続】
生命は、地球環境の多様性と不安定性、
抱擁性と破壊性の中で持続的生存のシステ
ムと能力を獲得してきた。
地球環境は生命を誕生させたが、その生存
は多様な環境と生命の間のきわどいバラン
スによって維持されている。
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【心の構造と機能】
人間の心は、哺乳動物の心(欲求と感情)に、人
間の言語機能が作用して形成されたものである。
人間の思考は、動物の思考機能に言語が作用し
て、情報処理能力が飛躍的に拡大した。
心は、生存欲求に感情の反応様式が作用し、さら
に言語と思考の機能によって規制され複雑に作用
しているものである。
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心の構造と機能
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狐とブドウ(イソップ寓話)
防衛(適応)規制 アンナ・フロイト
欲求不満(人生苦)への適応・不適応
・ 抑圧、投影、同一化、反動形成、
退行、補償、身体化、行動化、
昇華、合理化(言い訳、強弁、
負け惜しみ、理由付け、言語化)⇒
・ 合理化と言語表現
人間は、言語的思考によって自らを
合理化し、意味づけ、自己了解をし
ながら生きている。(他者への依存
も合理化する)
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【人間の心と幸福】
動物は、食欲・性欲・安全・自己表出などの欲求
を充足させるとともに、感情反応としての快楽を
求め不快(欲求不満)を避ける。
人間の心は、単なる直接的刺激反応や欲求充
足だけでなく、言語的思考と行動統制によって複
雑な感情反応(コンプレックス)として現れる。
幸福感は、刹那的なもの(享楽)だけでなく、一定
の目的や願望をともなう意志的感情が強く働き、
絶対や永遠、崇高や悟り・諦観等の宗教的感情
を持つようになる。
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【意志的感情とは】
意志的感情とは、人間に特有の言語的意志的
行動に伴って生起する感情である。感情はすべ
て反応であるが、意志的感情もまた知性的・知
識的背景(知識・情報は反応を導く刺激である)
を持つ身体的生理的反応である。
ただその反応は「言語的目的性」に支えられた積
極的反応であり、快(肯定的感情)を求め、不快
や苦痛(否定的感情)に挑戦し克服することので
きる持続的反応だということができる。
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【動物的思考と言語的人間思考】
生命の刺激反応性と適応様式から、動物的
思考と人間的思考の比較を通じて、思考にお
ける言語の役割を解明する。
・ 動物的思考は対象(刺激)に直面するとき(直
示的)にのみ機能する。
・ しかし人間的思考は、言語(音声信号・刺激)
化された対象(情報・意味・主語述語)を、内的
自律的に処理・再構成・創造することによって
成立・機能する。
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⑪西洋的思考様式の特徴
⇒ギリシア的・西洋的思考(認識)様式では、世界(対象)
を言語(ロゴス)化した限りで、存在の絶対性(納得性)
を認める。つまり、西洋的合理主義では、言語化以前
の、特定しにくい曖昧な対象の存在を認めない。
西洋的認識にとって、対象は言語(合理)化されて
はじめて存在性が生じるから、曖昧な言語表現は西
洋人を納得させない。西洋的合理主義では、対象に
対する反応としての主観的感情(喜怒哀楽)を言語化
し、そうすることによって、行動の動因としての感情を
抑制し、「自然をそれ自体として」ありのままに、科学
的に観察(認識)できたのである。これが西洋的科学的
認識と自然支配の根源となった。
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⑫西洋的因果関係と仏教的縁起主義
⇒縁起の語は「因縁生起」の略で、「因」は結果を生
じさせる直接の原因、「縁」はそれを助ける外的
な条件のことである。
・ ある結果が生じる時には、直接の原因(近因)だ
けではなく、直接の原因を生じさせた原因やそれ
以外の様々な間接的な原因(遠因)も含めて、あ
らゆる存在が互いに関係しあうことで、それら全
ての関係性の結果として、ある結果が生じるとい
う考え方である(相互依存性)。
・ これは「此があ(生じ)れば彼があり、」「此がなけ
(滅す)れば彼がない。」というもので、西洋的因
果関係のように「有」の一面的論理ではなく、無
や空を含む相互依存的因果関係の論理(多面的
因果性)である。
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―生命言語説とは―
ご静聴ありがとうございました
おわり
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「哲学カフェ第2回」のレジュメ
「哲学カフェ第2回」のレジュメ
次回6月27日(土)
次回6月27日(土)
対話(質疑応答)形式で行います。
あらかじめ疑問・質問・意見をまとめてお
いてください。活発な議論ができることを楽
しみにしています。
以下余白はメモに活用下さい。
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