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微粒子合成化学・講義 http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/kogi/ E-mail: [email protected] 村松淳司 別府・海地獄 2 そのシリカコロイドの 電子顕微鏡写真 3 すがわら旅館の湯も青色に! 4 鳴子温泉「すがわら」のコロイド 5 水 乳脂肪 タンパク質 牛乳はO/Wエマルション 水 界面活性剤 油 界面活性剤 油 水 O/Wエマルション W/Oエマルション ビール ビールの泡 移流集積によって下から上に運ばれ、二次元の結晶構 造を形成するコロイド。下の方のコロイドは動いているた めブレている。 永山国昭(東京大学教養学部) 2011/3/9 触媒学会 北見講演会 9 2011/3/9 触媒学会 北見講演会 10 コロイドとは何か 理化学辞典にみるコロイド 物質がふつうの光学顕微鏡では認められないが、 原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散 しているとき、コロイド状態にある、という。 コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態 にあるときのみを、コロイド状態、と定義で きる では、巨大分子が溶けているのと、何が違う のだろうか? 粒子径による粒子の分類 100μm 1m 10cm 1cm 光 学 顕 微 鏡 パチンコ玉 微 粒 子 10μm 1mm 100μm 10μm 1μm 電 子 顕 微 鏡 ソフトボール 硬貨 100nm 小麦粉 花粉 タバコの煙 1Å 100nm サ ブ ミ ク ロ ン 粒 子 ウィルス 10nm 10nm 1nm 1μm セロハン孔径 1nm ナ ノ 粒 子 超 微 粒 子 ク ラ ス タ ー コ ロ イ ド 分 散 系 分散と凝集 シリカコロイドの凝集・沈殿 左側が、温泉水。右側は、温泉水に、KCl(塩化カリウム)を 混ぜて、1 mol/l KCl溶液としたもの 2~3時間で完全に凝集体となって沈殿 右側の底にこずんでいるのが、そのシリカコロイド凝集体 2011/3/9 触媒学会 北見講演会 14 コーヒー牛乳に塩を入れる 乳脂肪が浮上している 1 mol/L KCl溶液 コーヒー牛乳だけ なぜ、乳脂肪は浮上したか? 乳脂肪は水よりも軽い 牛乳は乳脂肪が分散したもの 塩を入れることで「凝集」して浮上し た 分散と凝集 分散とは何か 溶媒中にコロイドが凝集せずにただよって いる 凝集とは何か コロイドがより集まってくる 物質は本来凝集するもの 分子間力→van der Waals力 分散と凝集 (平衡論的考察) 凝集 凝集 van der Waals力による相互作用 分散 静電的反発力 分散 粒子表面の電位による反発 分散と凝集 (速度論的考察) 分散するためには 平衡的に分散条件にあること 速度論的に分散条件にあること ブラウン運動(熱運動) 分散 速度論:ブラウン運動 分散の平衡論的な解釈は、静電的反発力であ るが、水の中を漂い、空気の中に分散する、 コロイド粒子の動き、つまり速度論的解釈は、 ブラウン運動 Brownian motion である。 x 分散 速度論:ブラウン運動 粒子がブラウン運動を起こして(不規 則な運動)いるとすると、ブラウン運 動は粒子の熱運動であるので、粒子1 個について、kTのエネルギーを持って いる。これが運動エネルギーに変換さ れているとすると kT = 1/2 mv2 となる。 分散 速度論:ブラウン運動 Einsteinの統計的計算によると、粒子1個がブラウン 運動によって、t時間にx方向へ移動する平均距離xは、 x= sDt Dは、粒子の拡散定数。Einsteinは、さらに、拡散定 数に関する式 kT D= f を提出した。ここで、fは摩擦係数と呼ばれるもので、 粒子が媒質の分子に比べて非常に大きいとき、Stoks の法則がなりたつ。 分散 速度論:ブラウン運動 f = 6pha ここで、ηは物質の粘度、aは粒子半径である。 結局、 x= RTt 3phaN A となる。Rは気体定数、NAはアボガドロ数。 分散 速度論:ブラウン運動 たとえば、20℃、蒸留水中において、粒子の 1秒後の変位xを計算すると、つぎのように なる。 粒子半径 1秒後の変位(μm) 1 nm 20.7 10 nm 6.56 100 nm 2.07 1μm 0.656 分散 である。 分散するか凝集するか 平衡論 静電的反発力 コロイドの界面電位による 速度論 コロイド同士の衝突←熱運動と衝突確率 静電的反発力とは 力の源は、粒子の表面電位 表面電位が絡んでいる現象 電気泳動 電気浸透 沈降電位 電気泳動 電気泳動というのは、電気を帯びた分子(イ オン)が、電圧によって動く現象のこと - + プラスの電気を帯びた分子はマイナス電極へ、 マイナスの電気を帯びた分子はプラスの電極 へ、引きつけられる コロイドも同じ。電圧のかかっている場所 (電場)の中で、コロイド全体としての電荷 の反対符号の電極の方向へ動く 表面電荷 31 32 分散と凝集 DLVO理論へ Derjaguin,Landau,Verway,Overbeek B.V.Derjaguin and L.Landau;Acta Physicochim.,URSS, 14, 633 (1941). E.J.W.Verwey and J.Th G Overbeek; Theory of the Stability of Lyophobic Colloids, 193 (1948). 33 34 分散と凝集 分散とは何か 溶媒中にコロイドが凝集せずにただよって いる 凝集とは何か コロイドがより集まってくる 物質は本来凝集するもの 分子間力→van der Waals力 35 分散と凝集 (平衡論的考察) 凝集 van der Waals力による相互作用 分散 静電的反発力 凝集 分散 粒子表面の電位による反発 36 分散と凝集 考え方 van der Waals力による相互作用 静電的反発力 Vtotal = VH + Vel VH : van der Waals力による相互作用エネルギ ー Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー 37 分散と凝集 考え方 Vtotal = VH + Vel VH : van der Waals力による相互作用エネルギ ー Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー Vtotalが正→粒子は分散 Vtotalが負→粒子は凝集 38 静電的反発力 39 静電的反発力 粒子表面は電荷を帯びている 証拠:電気泳動など これが静電的反発力の源ではない か ここからスタートする 40 表面電荷 41 粒子表面の電荷 イオンの周りの電子雲と同じ 離れるほど電位は小さくなる では、なぜ電荷を帯びるのか 42 粒子が電荷を帯びる理由 酸化物の場合 -Si-O-H → -Si-O– + H+ プロトンが解離して負電荷 空気の場合 何らかのイオンが吸着 43 44 45 46 電位は遠ざかると下がる Helmholtz理論 Gouy-Chapman理論 Stern理論 47 Helmholtz理論 48 Gouy-Chapman理論 拡散二重層 49 直線で下がる Stern理論 Stern面 拡散二重層 Slip面 50 現実的にはどう考えるか 実測できるのはζ電位 ζ電位=Stern電位と置ける それなら、ζ電位=Stern電位を表面電位 と見なして考えよう Stern理論ではなく、Gouy-Chapmanの 拡散二重層理論を実社会では適用 51 52 表面電荷 拡散層だけを考える53 1.拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う æ - z + ey ö (1) n + = n0+ expç ÷ è kT ø æ z - ey ö n - = n0- expç ÷ è kT ø n: 拡散層中のイオンの個数濃度 n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度 z: イオンの価数 k: ボルツマン定数 T: 温度 y: 問題にしている点における電位 +,-: 陽イオン、陰イオンを表す 54 表面の電位: y0 は電位決定イオンのバルク活量c によって、 RT c y0 = ln (2) zF c0 R: 気体定数 c0: c at y0 = 0 55 拡散層内における電位は、Poisson の式 ¶ 2y ¶ 2y ¶ 2y r Dy = div (grad y ) = + + 2 =2 2 ¶x ¶y ¶z e re 0 を基礎にして求められる。 er: 溶液の比誘電率 e0: 真空の誘電率 r: 電荷密度 (3) 56 r: 電荷密度 は、対称型電解質( z + = z - = z, n0 + = n0 - = n )に対して、 r = ze( n + -n- ) ì æ zey ö æ zey = nze íexpç ÷ - expç è kT ø è kT î æ zey ö = -2nze sinhç ÷ è kT ø öü ÷ý øþ (4) 57 従って、 平板電気二重層に対する、Poisson-Boltzmann 式は、 (3),(4)式から x 方向だけを考えて d 2y 2nze zey = sinh (5) 2 dx e re 0 kT (5)式を積分して、 zey æ zey 0 ö tanh = tanh ç (6) ÷ exp( -kx ) 4kT è 4kT ø 58 zey kT << 1 なら、(5)式は、 d 2y 2 = k y 2 dx 2 2 2 nz e 2 ただし、k = e re 0 kT (7) (8) 25℃水溶液では特に k = 3.3 ´ 109 z c (9) (7)式を解くと、 y = y 0 exp( -kx ) (10) このκは、Debye-Huckelパラメータと呼ばれる。 59