そこそこのリスク

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Transcript そこそこのリスク

リウマチ診断学の進歩
遺伝子多型でリウマチ診断は可能か?
JCR2009
品川
東京大学医科学研究所
山田 亮
関節リウマチ関連遺伝子と
その予後予測への利用の可能性
理化学研究所
遺伝子多型研究センター
関節リウマチ関連遺伝子研究チーム
山田 亮
高地 雄太 川井田 礼美 森 美賀子 小林 香子
川口 喬久 川上 弘人
山本 一彦
第49回
日本リウマチ学会総会・学術集会
パシフィコ横浜
平成17年4月18日
1985
1990
1995
2000
Sib-pairs
2005
2010
GWAS
LD-mapping
Replication
1985
1990
1995
2000
Sib-pairs
十万マーカー
2005
2010
GWAS
百万マーカー
LD-mapping
数百
人
Replication
数千人
1985
1990
1995
2000
2005
2010
関連遺伝子多型解析の現状
• スタディ規模
– サンプル数:増大
– マーカー数:増大→全ゲノムシークエンス
• 対象形質
– リウマチ発症感受性
– リウマチ亜型との関係
• aCCPAb
• HLA
• 関節破壊
– (治療反応性、薬物代謝)
日本人
における
RRを棒
グラフで
HLA、P
ADI4、S
LC22A
4、FCR
L3,CD
244
見つかっ
ているの
はこんな
遺伝子
のこんな
RRのも
の
検出座位のアレル頻度は
数%~数十%
European
PDCD1
MIF1
PTPN22
CTLA4
TNFRSF1
Susceptible allele
Japanese
SLC22A4/A5
PADI4
だれでもが持ちうる、ありふれた多型
そこそこのリスク
ありふれた疾患における
連鎖不平衡マッピングとい
う戦略の当然の帰結
アレル頻度
単一遺伝子病の責任変異
RR
診断に役立つために
•
•
•
•
感度
特異度
PPV
NPV
• 因子陽性←→陰性 のコントラストが効く
だれでもが持ちうる、ありふれた多型
→高くない特異度
そこそこのリスク
→高くない感度
リスク要因
ありふれた疾患における
連鎖不平衡マッピングとい
う戦略の当然の帰結
アレル頻度
単一遺伝子病の責任変異
決定的
高い特異度
RR
「関連遺伝子スタディ」の報告内容
•
•
•
•
p値
オッズ比・相対危険度
Genotypic attributable risk
Genotype-Specific Recurrence Risks
• Genotypic attributable risk
– あるリスクアレルがあったときに、そのアレルがなかった
ら、疾患有病者のどれくらいの割合が今より減るだろうか、
という値
– 公衆衛生学的
• Genotype-Specific Recurrence Risks
– 同胞に発病者がいるとする。罹患同胞も、本人も一切リス
クアレルに関する情報がないとしたときには、本人(罹患
同胞を持つ)のリスクは 「同胞再発危険度」によって与え
られる。今、あるリスクローカスについて、本人のジェノタ
イプがわかったとすると、そのわかった分だけ、発病リス
クの補正ができる。それを数値化したもの
– 家族カウンセリング的
「関連遺伝子スタディ」
• p値
– 関連があるかどうか
– サンプルサイズが大きくなればなるほど、小さな
寄与の座位が検出される
• オッズ比・相対危険度
– あくまでも危険因子、決定因子ではない
• Genotypic attributable risk
– 公衆衛生学的
• Genotype-Specific Recurrence Risks
– 家族カウンセリング的
研究成果の還元先
病因解明
予後予測・発病予測
治療・発病予防
今の関連遺伝子解析は
診断に用いることを
強く意識しているわけではない
↓
診断・予後改善のための遺伝因
子利用のためには、それを標的に
した遺伝子解析が必要
~
今後の課題
診断のための切れ味
遺伝子型情報だけが特別か
•
•
•
•
•
•
関節リウマチ確定診断
リウマトイド因子
• 予後予測
aCCP抗体
• 早期積極介入必要
性
骨関節破壊
• 積極介入反応性
炎症マーカー
HLADRB PADI4
前病状態と発病の経過(モデル)
未病期
未顕在期
発病期
加療期
前病状態
発病
発症者
有症状態
無症状・病的プロセス存在状態
健康状態
非発症者
時間
入手情報にもいろいろ
「今」の程度
「変化」の向きと速さ
「長期トレンド」
「累積」の程度
予測内容もいろいろ
短期的目標:疼痛除去
長期的目標:機能保全
入手情報にもいろいろ
「今」の程度
「変化」の向きと速さ
「長期トレンド」
「累積」の程度
予測内容もいろいろ
短期的目標:疼痛除去
長期的目標:機能保全
情報は
関数の値、傾き(微分)、
面積(積分)の形で得
られる。
予測は
情報に基づいて、関数
を見定めること
未病期
健康診断
未顕在期
発病期
加療期
早期発見
鑑別診断
確定診断
予後予測
治療選択
治療最適化
副作用回避
未病期
未顕
在期
発病期
加療期
未病期
• 対象は「全員」
• 目的は予防
– 台風被害を3月(台風発生前)に予測する
• 九州地方の崖は、東北地方の崖よりも台風被害に遭
いやすい
未病期
未顕
在期
発病期
加療期
未病期
• 病気の兆しもない時期
– 限られた情報源
– 遺伝子多型はその一つ
• 生涯不変
– 1回の測定で十分
• 課題
– 対象者を有効に絞り込めるか?
– 絞り込んだ上で、有効な対策があるか?
– 費用対効果は?
– その他、環境因子などと組み合わせて、確度を
上げられるか?
未病期
未顕
在期
発病期
未顕在期
• 対象は「高リスク者」
• 目的は、「超早期」診断、「超早期」加療
– プロセスとして発病するも、自覚症状発現前
– 熱帯低気圧の発生を監視
• 疾患の芽は確実にある
加療期
未病期
未顕在期
未顕
在期
発病期
予報円
• 症状自覚前の診断の是非
– 確かな疾病兆候指標
• バイオマーカー?画像診断情
報?
• その確度は?
– 超早期であるがゆえの予測ぶれ
– 適切な介入方法は?
• 超早期介入~効果増大が顕
著
• 介入方法は顕在期と同じか?
早期虫歯の治療
削る→再石灰化
加療期
未病期
未顕
在期
発病期
加療期
未顕在期
• 症状自覚前の診断
– 確かな疾病兆候指標
• バイオマーカー?画像診断情報?
– 適切な介入方法は?
• 超早期介入~効果増大が顕著
– その確度は?
• 加療効果 対 副作用リスク
• 費用対効果
– 遺伝子多型の役割
• 経時的に変化する臨床指標と組み合わせて確度を上
げられれば・・・
未病期
発病期
• 対象は有症者
• 目的は
– 確定診断・除外診断
– 早期予後予測
– 導入治療決定
未顕
在期
発病期
加療期
未病期
未顕
在期
発病期
• 未顕在期との違いは、
– 情報の確度が上がっていること
– 「判断留保」ができないこと
– 選択肢からの最適選択が望まれること
発病期
加療期
未病期
未顕
在期
発病期
未顕在期~発病期
• 発病期の診断
– 確かな疾病兆候指標
• バイオマーカー?画像診断情報?
– 適切な介入方法は?
• 早期介入~効果増大
– その確度は?
• 加療効果 対 副作用リスク
• 費用対効果
– 遺伝子多型の役割
• 経時的に変化する臨床指標が増えている
• それらと組み合わせて確度を上げられれば・・・
加療期
未病期
加療期
副作用期
• 対象は患者
• 目的は
– 治療奏功の予測・判断
– 副作用出現の予測・判断
– 継続・変更の判断
未顕
在期
発病期
加療期
未病期
加療期
副作用期
未顕
在期
発病期
加療期
• 治療反応性・副作用回避
– 遺伝子多型による予測の可能性
– 薬剤に対する反応性への遺伝子多型の影響は、
ありふれた疾患の罹患リスクより高い可能性が
ある。
遺伝子多型情報の特徴
• 生涯不変
– 予防期から、慢性期まで利用可能
– 1回の測定で十分
• 数多くの遺伝子の情報が、同じ書式で書かれ
ている
– まとめてたくさんの遺伝子の情報が入手可能
費用対効果
• 生涯不変
– 1度の測定で十分
– いつ必要になる情報かを頓着する必要がない
• 数多くの遺伝子が同じ形式で
– 測定方法は共通
– まとめて測定することで、費用対効果上、有利に
影響の現れ方
• 短期的予測より長期的予測に向いている(は
ず)
• 「ありふれている」から、単独での予測は難し
いか・・・
– 診断
– 治療反応性
• 予防・発病予測の段階
– 環境因子との組み合わせ
• 確定診断・予後予測・治療選択の段階
– 臨床情報との組み合わせ
Lab of Functional
Genomics
IMS @ U of Tokyo
Mark Lathrop
Yukinori Okada
CGM @ Kyoto Univ.
Fumihiko Matsuda
Chikashi Terao
Koichiro Ohmura
Tsuneyo Mimori
Meiko Takahashi
Collaboration
Hisako Imamura
National Hospital
Org. Sagamihara
Katsura Hirosawa
Shigeto Tohma
Toshihiro Matsui
Kota Shimada
Hiroshi Furukawa
Akiko Yoshizumi
Miki Kokubo
Shoko Matsubara
Lab for Autoimmune Diseases
@ CGM, RIKEN
Kazuhiko Yamamoto
Akari Suzuki
Yuta Kochi
Kenichi Shimane
Keiko Myozen
Kyoko Kobayashi
Kiyo Shimada
Miyako Yamanaka
Emi Kanno
Yusuke Nakamura
情報の改善と予測の改善
技術の進歩
• 観天望気
– 夕焼けは晴れ
– 月が暈(かさ)をかぶ
ると雨
ひまわり6号による1億3000
万画素の写真(H17.3.24)
一番強いHLADRB1多型の場合
RR→PPV、NPV
• このくらい強い
• 他の遺伝因子と比べてこれくらい強い
• 他の臨床因子と比べてこれくらい強い(たとえば初
期骨破壊、とか)
• では、遺伝情報を使うのか・・・
• RRか、PPV、NPVはどうなのか
• PPV、NPVはどういうときによいのか、そのよさで
選別するのは(選別して標的化の基準とするのか、
どうか)
•
じゃ、使えへん、ということ?
–
–
–
予後予測を標的にしたスタディはまだ。
その他の因子(臨床観測因子、バイオマーカーとか、画像データとか)との優劣判定も、まだ
遺伝因子に勝ち目はそもそもあるの?という問題
•
それで、どうする?
•
近視眼的にはそうかも
–
初期破壊→確かに破壊
•
–
破壊の根、破壊の芽→初期破壊→確かに破壊
•
•
•
•
この因果関係は正しかろう
はじめの“→”には効果的な介入方法(治療)があるが、後の“→”にはそれが薄い、
効果的な介入方法は、全例に施すには、問題(副作用その他)がある、
と、こうなると、破壊の根、破壊の芽を使って治療選択をすることの意義が高まる
観測事象としての安定性
–
–
ぶれる現象は、それが、予測されるべき事象と因果関係が強いとしても、ぶれのせいで、精度が落
ちる
遺伝情報は、予測されるべき事象との因果関係の点で劣るかもしれないが、観測精度は悪くないこ
とで挽回できる(か?!)
疾患における遺伝因子の位置
• 発病前・発病後を問わず影響している(可能
性のある)因子
•
•
•
•
•
同じ遺伝子情報に、ある環境因子の歴史が加わって、複数の形質の集合体が出
来上がっている。
今、ある興味形質があるときに、その形質が少々特殊だったり、遺伝子との関係
が希釈されてしまっているとする
代用形質があれば、それはよい
治療反応性についても、何かしらあればいいなー、と。
•
メタボリック症候群、腹囲、とか、上手な利用法には、道のりがありそうな感じです
が、対岸の出来事とせず、何か、ないのか・・・、という感覚でいるのは大事。
とにかく、形質保有者が多くできれば、それは確からしいことをいいやすくなる
•
※ 不確かも増える。そんなときに、遺伝子情報の強みは、「確定的であること」