パワーポイント

Download Report

Transcript パワーポイント

2004.11.24 中間報告
潮流によって形成される海底境界層の
不安定とその混合効果
坂本圭
京都大学大学院理学研究科
地球物理学教室海洋物理学研究室
1 はじめに 潮流楕円
潮流によって形成される海底境界層
:回転系の下での時間振動流による粘性境界層
不安定について、これまでほとんど研究されず
内部流が三角関数で表せるとする(潮流楕円)。
反時計回りと時計回りの回転流の和で書ける(Davies 1985)。
1 潮流海底境界層
Fang and Ichiye 1983
流速Rの回転流の粘性境界層内の流速は以下となる
潮流によって形成される海底境界層(潮流海底境界層)の流速構造
定常エクマン層と相似
鉛直スケール Htide=
σ:潮流振動数(反時計回りの潮流楕円を正とする)
f:コリオリ・パラメータ、ν:粘性係数
流速の鉛直プロファイル(1時間毎)
ν=50cm2/s
U
V
海底
潮流周期12時間
慣性周期8時間
潮流周期12時間
慣性周期12.5時間
定常エクマン層
慣性周期12.5時間
1 定常エクマン層不安定
変曲点不安定(タイプI)
Uの変曲点から直接u’へ擾乱
エネルギー
エクマン層
U
V
流速鉛直構造
Kaylor and Faller 1972
コリオリ型不安定(タイプII)
V(内部流方向)のシアーからv’へエ
ネルギーが供給され、その後コリオリ
力によってu’へ
内部定常流
(y方向)
海底
エクマン螺旋
擾乱
(u’,v’,w’)
卓越するモードはレイノルズ数に依存
~100
: 安定
100~150 : コリオリ型不安定
150~
: 変曲点不安定が卓越
1 コリオリ型不安定のメカニズム
エクマン層
U
V
海底
1.擾乱上下運動
2.vに擾乱運動
3.コリオリ力
4.収束発散→さらに上下運動
Lilly 1966
1 大気境界層シアー不安定
Young et al. 2002
定常エクマン層不安定の研究:大気境界層の乱流構造を理解するため
Michigan湖から立ち昇った蒸気によって可視化された表層の縞模様。
(表層:湖面から約100m。風にシアーが存在する範囲。)
熱対流や内部波の寄与も考えられる。
1 ストークス層不安定
Akhavan et al. 1990
コリオリ力が0 → 潮流海底境界層はストークス層
ストークス層の流速鉛直プロファイル(1時間毎)
振動周期12時間
振幅40cm/s
海底
流速プロファイルに様々な変曲点
→振動流振幅がある値を超えれば、ストークス層も変曲点不安定
第一段階の不安定:擾乱は2次元構造
第二段階の不安定(乱流への遷移を引き起こす):3次元構造
1 回転系振動流の境界層安定性:水層実験
振動周期>慣性周期 流速小
左向きへ反転
Aelbrecht et al. 1999
流速大
流速最大
左向きへ反転
底のプレートを振動
変曲点不安定、コリオリ型不安定の出現(2次元構造)
1 水層実験2
Aelbrecht et al. 1999
振動周期≦慣性周期
反転時に乱流状態へ
(3次元構造)
流速減速
左向きへ反転
力学的検討なし
基本流の鉛直プロファイル不明
1 臨界緯度付近の潮流海底境界層
Pereira et al. 2002
海面(100m毎に目盛り)
M2潮流速振幅
マーク:観測
線:3次元モデル
ウェッデル海
実線:時計回り
破線:反時計回り
M2臨界緯度
S2
1 バレンツ海での成層観測
CTD
Furevik and Foldvik 1996
浮力振動数N(×10-3s-1)
(m)
海底
南
M2潮臨界緯度
北緯73°-76°で特に弱い成層(海底から150mまで0.002s-1以下)
M2潮の流速シアーが海底から高くまで伸びている
→潮流混合の強化が原因か?
Aelbrecht et al.(1990)の実験ではそのような強化はない
北
1 目的
Aelbrecht et al.(1999)の水層実験:潮流海底境界層も、他の粘性境界層と
同様に、潮流流速が大きくなれば不安定
しかし、その不安定力学の説明はない
そこで本研究では、鉛直2次元数値実験によって、潮流海底境界層の不
安定を再現しその力学と混合効果について調べる。
潮流の向きは時々刻々変化するため、不安定は本来3次元的な構造を持
つと考えられるが、今回はある鉛直平面で発達するロールに注目する。
線形成長段階では2次元構造擾乱か
乱流に遷移すると再現性はより低下
1.密度一様実験
相似な流速構造を持つ定常エクマン層の不安定との違いを明らかにする
(3章)。
2.成層実験
海洋陸棚上においてどの程度の混合効果を持つかを見積もる(4章)。
特に、Near-inertial flowでの不安定に注意
2 モデル領域
鉛直2次元、 14km×500mの矩形海。
2 支配方程式系
運動方程式
連続の式
移流拡散方程式
鉛直2次元、非圧縮、非静水圧、ブシネスク近似、リジッド・リッド条件。
数値計算には渦度と流線関数を用いる。
•渦粘性・拡散係数 ν =50cm2/s,κ=5cm2/s
•重力加速度 g=980cm/s2
•標準密度 ρ0=1.027g/cm3
2 境界条件、初期条件
海面:リジッド・リッド、no-flux
海底:粘着条件、no-flux
潮流として左右境界で時間振動流
U0(t)=-Utidecos( 2π×t / Ttide )
振動周期Ttide =12時間
初期条件:密度一様(3章)または線形成層(4章)、静止状態
積分期間:40日間
実験の制御パラメータは、
1:慣性周期Ti (=2π/f)
2:振動流振幅Utide
コリオリ力によって、内部の流れは潮流楕円を描く。
(軸:Utide、 Utide×(Ttide / Ti) )
3.1 不安定の分類 潮流楕円(代表3ケース)
慣性周期Ti =8時間
Utide =30cm/s
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
Ti =20時間
Utide =50cm/s
実線:理論値 ◇:実験による値 (ずれ:境界層内の流れに起因)
反時計回り成分
時計回り成分
37.5
7.5
19.6
0.4
40 cm/s
10 cm/s
3 基本流プロファイル
慣性周期Ti =8時間
Utide =30cm/s
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
Ti =20時間
Utide =50cm/s
基本流Uの鉛直プロファイル(1時間毎)
海底
実線:理論値 点線:実験による値
反時計回りHtide
時計回りHtide
37.5
7.5
19.6
0.4
40 m
10 m
3 成長段階の擾乱場
慣性周期Ti =8時間
Utide =30cm/s
擾乱に伴う流線関数
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
(等値線間隔:200cm2/s)
海底
擾乱に伴うv
(等値線間隔:0.1cm/s)
Ti =20時間
Utide =50cm/s
3 鉛直2次元擾乱運動エネルギー方程式
基本流Uのシアーからu’へ
→変曲点不安定
コリオリ力によってv’からu’へ
→コリオリ型不安定
粘性による消失
再分配
左右境界での流出入
変曲点不安定
変曲点不安定
コリオリ型不安定
(ストークス層
型)
擾乱成長期
12時間平均値
海底
Ti =8時間
Utide =30cm/s
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
Ti =20時間
Utide =50cm/s
3 変曲点不安定擾乱場
Ti=8h, Utide=30cm/s
定常エクマン層:
Ti=8h, Vtide=20cm/s
150m
海底
水平波長:160m
エクマン層の厚さの24倍
Htideの14倍
定常エクマン層での波長:85m
エクマン層の厚さの13倍
→定常エクマン層の変曲点不安定に
帰着
(Ttide=12時間)
3 ストークス層不安定擾乱場
Ti=20h, Utide=50cm/s
ストークス層(f=0):
Utide=50cm/s
300m
海底
水平波長:190m
ストークス層の厚さの23倍
Htideの15倍
ストークス層での波長:130m
ストークス層の厚さの16倍
→ストークス層の不安定に帰着
実線:ストークス層
(Ttide=12時間)
3.2 不安定タイプのパラメータ依存性
様々な慣性周期Ti、潮流振幅Utideにおける不安定のタイプ
慣性周期が潮流周期の
0.9倍以下:
変曲点不安定
1.0-1.1倍:
コリオリ型不安定
1.2倍以上:
ストークス層不安定
× ×
(Ttide=12時間)
×安定 □エクマン層変曲点不安定 △コリオリ型不安定
◇変曲点不安定とコリオリ型が同程度 ※ストークス層不安定
3 Ti < Ttide エクマン層変曲点不安定
慣性周期 < 潮流周期 (点線:レイノルズ数)
×安定
□変曲点不安定
△コリオリ型不安定
定常
エクマン層
◇変曲点不安定とコリ
オリ型が同程度
×
(Ttide=12時間)
慣性周期が短く、潮流が反転する前にエクマン層が発達
→定常エクマン層の不安定に帰着
ただし、潮流が一方向を向いている間に不安定は成長しなければならない
→成長率の小さいコリオリ型不安定は現れない
3 TKEの時間推移 Ti=4h, 10h
領域平均TKE(対数表示)
0時
12時
成長率
24時
成長率
低下
実線:Ti=4h, Utide=10cm/s, Re=182
点線:Ti=10h, Utide=30cm/s, Re=347
Ti=10hでは、最大成長率が大きくても成
長できる期間が短い。
成長率上昇
(Ttide=12時間)
3 Ti ~ Ttide エクマン層コリオリ型不安定
慣性周期:潮流周期の1.0-1.1倍 (点線:レイノルズ数)
定常
エクマン層
×安定
□変曲点不安定
△コリオリ型不安定
◇変曲点不安定とコリ
オリ型が同程度
※ストークス層不安定
(Ttide=12時間)
広い範囲のUtideでコリオリ型不安定が支配的
擾乱エネルギー各項のスケール
鉛直スケール:H=
変曲点不安定: U/H
コリオリ型不安定: f
粘性による消失:ν/H2
Ti~Ttide → Hの増大
1.粘性の寄与の低下
2.コリオリ型の寄与が変曲点不安定よ
り相対的に上昇
(U:流速スケール, f:コリオリ・パラメータ, ν:粘性係数)
3 Ti > Ttide ストークス層不安定
慣性周期 > 潮流周期
×安定
△コリオリ型不安定
※ストークス層不安定
Ti→∞ (f=0)
ストークス層
(Ttide=12時間)
不安定となる潮流振幅:完全なストークス層と同じ
擾乱の流れ場などもほぼ同じ
→ストークス層の不安定に帰着できる
4 線形成層実験
浮力振動数N=0.001s-1 (極域) or 0.01s-1 (中緯度)
ケースD:慣性周期Ti=16時間(49°S)、日周潮
ケースE:Ti=12.5h(74°S) 、半日周潮
ケースF:Ti=20h(37°S)、半日周潮
E
F
D
×
実験結果 ケースD:変曲点不安定
ケースE:変曲点とコリオリ型不安定
ケースF:ストークス層不安定
4 弱成層での擾乱運動エネルギー
(u’2+v’2+w’2)/2の鉛直分布(30日から40日目の水平・時間平均)
高さ
300m
海底
40
D1:Ti=16h
日周潮
subinertial
50
E1:Ti=12.5h
半日周潮
near-inertial
1.2×10-4
F1:Ti=20h
半日周潮
superinertial
4 弱成層における混合効果
トレーサー濃度鉛直分布(40日目水平平均)
初期濃度 海底~25m:1.0、25m以上:0.0
海面
E:Ti=12.5h、半日周潮
海底から約200mまでよく混合
D:Ti=16h、日周潮
海底から約150mまでよく混合
F:Ti=20h、半日周潮
海底
トレーサー濃度
ケースF:擾乱流速は非常に弱い
トレーサーの変化はモデルに与えた拡散(拡散係数5cm2/s)によるもの
4 拡散係数の見積もり
不安定による見かけの
拡散係数κの評価
(c:トレーサー濃度)
海面
30-35日、海底から150mまでの平均値
海底
5 まとめと課題
潮流海底境界層の不安定力学
慣性周期が潮流周期の0.9倍以下: エクマン層変曲点不安定
1.0から1.1倍:
コリオリ型不安定
1.2倍以上
: ストークス層不安定
混合効果 極域の弱い成層
極域半日周潮:海底から約200mまで一様化、混合効果は300cm2/s
→ 極域陸棚上で形成される高密度水に影響
中緯度半日周潮:不安定は非常に弱く混合効果はほとんどない
中緯度日周潮:
中緯度の強い成層
どのケースでも不安定による混合効果は弱い
3次元実験にこれから取り組む
擾乱はそもそも3次元構造を持つはずである
エクマン層:最も不安定なロールを再現する
コリオリ型:擾乱エネルギーは継続的に供給されるはず
ストークス層:間欠的な乱流状態は2次元擾乱が3次元擾乱へ遷移することで発生
潮流楕円に関する制限を外す
3 全ケーススタディ
様々な慣性周期Ti、潮流振幅Utideにおける不安定のタイプ
(Ttide=12時間)
×安定 □エクマン層変曲点不安定 △コリオリ型不安定
◇変曲点不安定とコリオリ型が同程度 ※ストークス層不安定
1 回転系振動流の境界層安定性:水層実験
振動周期>慣性周期 流速小
左向きへ反転
Aelbrecht et al. 1999
流速大
流速最大
左向きへ反転
1 水層実験2
Aelbrecht et al. 1999
振動周期≦慣性周期
流速減速
左向きへ反転
1 臨界緯度付近の潮流海底境界層
Pereira et al. 2002
海面(100m毎に目盛り)
M2潮流速振幅
マーク:観測
線:3次元モデル
ウェッデル海
実線:時計回り
破線:反時計回り
M2臨界緯度
S2
1 バレンツ海での成層観測
CTD
Furevik and Foldvik 1996
浮力振動数N(×10-3s-1)
(m)
海底
南
北
M2潮臨界緯度
3 成長段階の擾乱場
慣性周期Ti =8時間
Utide =30cm/s
擾乱に伴う流線関数
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
(等値線間隔:200cm2/s)
海底
擾乱に伴うv
(等値線間隔:0.1cm/s)
Ti =20時間
Utide =50cm/s
3 変曲点不安定擾乱場
Ti=8h, Utide=30cm/s
定常エクマン層:
Ti=8h, Vtide=20cm/s
150m
海底
水平波長:160m
エクマン層の厚さの24倍
Htideの14倍
定常エクマン層での波長:85m
エクマン層の厚さの13倍
→定常エクマン層の変曲点不安定に
帰着
(Ttide=12時間)
3 TKEの時間推移 Ti=4h, 10h
領域平均TKE(対数表示)
0時
12時
24時
成長率
実線:Ti=4h, Utide=10cm/s, Re=182
点線:Ti=10h, Utide=30cm/s, Re=347
Ti=10hでは、最大成長率が大きくても成
長できる期間が短い。
(Ttide=12時間)