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潮流によって形成される海底境界層の
不安定とその混合効果
○坂本圭、秋友和典
(京都大学大学院・理学研究科)
1 はじめに(1) 潮流海底境界層
Fang and Ichiye 1983
潮流によって形成される海底境界層(潮流海底境界層)の流速構造
定常エクマン層と相似
鉛直スケール
σ:潮流振動数(反時計回りの潮流楕円を正とする)
f:コリオリ・パラメータ、ν:粘性係数
流速の鉛直プロファイル(1時間毎)
ν=50cm2/s
U
V
海底
潮流周期12時間
慣性周期8時間
潮流周期12時間
慣性周期12.5時間
定常エクマン層
慣性周期12.5時間
1 はじめに(2) 定常エクマン層不安定
変曲点不安定(タイプI)
Uの変曲点から直接u’へ擾乱
エネルギー
エクマン層
U
V
流速鉛直構造
Kaylor and Faller 1972
コリオリ型不安定(タイプII)
V(内部流方向)のシアーからv’へエ
ネルギーが供給され、その後コリオリ
力によってu’へ
内部定常流
(y方向)
海底
エクマン螺旋
擾乱
(u’,v’,w’)
安定性はレイノルズ数に依存
~100
: 安定
100~150 : コリオリ型不安定
150~
: 変曲点不安定が卓越
1 はじめに(3) ストークス層不安定
Akhavan et al. 1990
コリオリ力が0 → 潮流海底境界層はストークス層
ストークス層の流速鉛直プロファイル(1時間毎)
振動周期12時間
振幅40cm/s
海底
流速プロファイルに様々な変曲点
→振動流振幅がある値を超えれば、ストークス層も変曲点不安定
1 はじめに(4) 目的
潮流海底境界層も、他の粘性境界層と同様に、潮流流速が大きくなれば
不安定となると考えられる。
しかし、その不安定性に関する研究はほとんどない。
そこで本研究では、鉛直2次元数値実験によって、潮流海底境界層の不
安定を再現しその力学と混合効果について調べる。
潮流の向きは時々刻々変化するため、不安定は本来3次元的な構造を持
つと考えられるが、今回はある鉛直平面で発達するロールに注目する。
1.密度一様実験
相似な流速構造を持つ定常エクマン層の不安定との違いを明らかにする
(3章)。
2.成層実験
海洋陸棚上においてどの程度の混合効果を持つかを見積もる(4章)。
2 モデル領域
鉛直2次元、 14km×500mの矩形海。
2 支配方程式系
運動方程式
連続の式
移流拡散方程式
鉛直2次元、非圧縮、非静水圧、ブシネスク近似、リジッド・リッド条件。
数値計算には渦度と流線関数を用いる。
•渦粘性・拡散係数 ν =50cm2/s,κ=5cm2/s
•重力加速度 g=980cm/s2
•標準密度 ρ0=1.027g/cm3
2 境界条件、初期条件
海面:リジッド・リッド、no-flux
海底:粘着条件、no-flux
潮流として左右境界で時間振動流
U0(t)=-Utidecos( 2π×t / Ttide )
振動周期Ttide =12時間
初期条件:密度一様(3章)または線形成層(4章)、静止状態
積分期間:40日間
実験の制御パラメータは、
1:慣性周期Ti (=2π/f)
2:振動流振幅Utide
コリオリ力によって、内部の流れは潮流楕円を描く。
(軸:Utide、 Utide×(Ttide / Ti) )
3 実験結果
基本流Uの鉛直プロファイル(1時間毎)
海底
慣性周期Ti =8時間
Utide =30cm/s
擾乱に伴う流線関数
海底
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
(等値線間隔:200cm2/s)
Ti =20時間
Utide =50cm/s
3 鉛直2次元擾乱運動エネルギー方程式
基本流Uのシアーからu’へ
→変曲点不安定
コリオリ力によってv’からu’へ
→コリオリ型不安定
粘性による消失
再分配
左右境界での流出入
変曲点不安定
変曲点不安定
コリオリ型不安定
(ストークス層
型)
擾乱成長期
12時間平均値
海底
Ti =8時間
Utide =30cm/s
Ti =12.5時間
Utide =20cm/s
Ti =20時間
Utide =50cm/s
3 全ケーススタディ
様々な慣性周期Ti、潮流振幅Utideにおける不安定のタイプ
慣性周期が潮流周期の
0.9倍以下:
変曲点不安定
1.0-1.1倍:
コリオリ型不安定
1.2倍以上:
ストークス層不安定
(Ttide=12時間)
×安定 □エクマン層変曲点不安定 △コリオリ型不安定
◇変曲点不安定とコリオリ型が同程度 ※ストークス層不安定
3 Ti < Ttide エクマン層変曲点不安定
慣性周期 < 潮流周期 (点線:レイノルズ数)
×安定
□変曲点不安定
△コリオリ型不安定
定常
エクマン層
◇変曲点不安定とコリ
オリ型が同程度
(Ttide=12時間)
慣性周期が短く、潮流が反転する前にエクマン層が発達
→定常エクマン層の不安定に帰着
ただし、潮流が一方向を向いている間に不安定は成長しなければならない
→成長率の小さいコリオリ型不安定は現れない
3 Ti ~ Ttide エクマン層コリオリ型不安定
慣性周期:潮流周期の1.0-1.1倍 (点線:レイノルズ数)
定常
エクマン層
×安定
□変曲点不安定
△コリオリ型不安定
◇変曲点不安定とコリ
オリ型が同程度
※ストークス層不安定
(Ttide=12時間)
広い範囲のUtideでコリオリ型不安定が支配的
擾乱エネルギー各項のスケール
鉛直スケール:H=
変曲点不安定: U/H
コリオリ型不安定: f
粘性による消失:ν/H2
Ti~Ttide → Hの増大
1.粘性の寄与の低下
2.コリオリ型の寄与が変曲点不安定よ
り相対的に上昇
(U:流速スケール, f:コリオリ・パラメータ, ν:粘性係数)
3 Ti > Ttide ストークス層不安定
慣性周期 > 潮流周期
×安定
△コリオリ型不安定
※ストークス層不安定
Ti→∞ (f=0)
ストークス層
(Ttide=12時間)
不安定となる潮流振幅:完全なストークス層と同じ
擾乱の流れ場などもほぼ同じ
→ストークス層の不安定に帰着できる
4 極と中緯度海域における混合効果
線形成層実験 (潮流周期:12時間、Utide=50cm/s)
ケースA:慣性周期Ti=12.5時間(74°S)、成層なし
ケースB:Ti=12.5h(74°S)、浮力振動数N=0.001s-1
ケースC:Ti=18.8h(41°S)、N=0.001s-1
ケースD:Ti=18.8h(41°S)、N=0.01s-1
A,B
C,D
実験結果 ケースA,B:変曲点とコリオリ型不安定が同程度
ケースC,D:ストークス層不安定
4 極と中緯度海域における混合効果
トレーサー濃度鉛直分布(52日目水平平均)
初期濃度 海底~25m:1.0、25m以上:0.0
(講演要旨より鉛直分解能を上げた実験結果)
海面
A:Ti=12.5h(74°S)、N=0
B:Ti=12.5h(74°S)、N=0.001s-1
海底から約130mまでよく混合
見かけの拡散係数:168cm2/s
C:Ti=18.8h(41°S)、N=0.001s-1
D:Ti=18.8h(41°S)、N=0.01s-1
海底
トレーサー濃度
ケースCとD:擾乱流速は10-4cm/s程度
トレーサーの変化はモデルに与えた拡散(拡散係数5cm2/s)によるもの
5 まとめと課題
潮流海底境界層の不安定力学
慣性周期が潮流周期の0.9倍以下: エクマン層変曲点不安定
1.0から1.1倍:
コリオリ型不安定
1.2倍以上
: ストークス層不安定
半日周潮の混合効果
慣性周期12.5時間(74°S):
海底から約130mまで一様化、混合効果は168cm2/s
→ 極域陸棚上で形成される高密度水に影響
18.8時間(41°S):不安定は非常に弱く混合効果はほとんどない
課題:
1.成層によって不安定が抑制される効果
2.3次元実験
擾乱はそもそも3次元構造を持つはずである。
潮流楕円に関する制限を外す。