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日本と東アジア経済専題研究
アジア研究所
小山直則
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●今日学ぶこと
1. 小泉政権下の日本経済の課題
2. 経済政策
3. 経済政策の効果
(正の効果と負の効果)
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●小泉政権の三つの課
題
(1) 不況克服
(2) 金融危機の処理
(3) 財政再建
●政策手段
(1) 財政緊縮
(2) 金融超緩和
(3) ゼロ金利政策
(4) 量的緩和政策
(5) 金融再生プログラム
⇒これらの政策で三つの
課題を解決できたの
か?
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●政策手段
(1) 財政緊縮
(2) 金融超緩和
(3) ゼロ金利政策
(4) 量的緩和政策
(5) 金融再生プログラム
⇒これらの政策で三つの
課題を解決できたの
か?
●政策の効果
(1) 円安を促進して輸出
主導の景気回復を実
現。
(2) 金融再生プログラム
の結果、不良債権を
処理したが貸し渋りや
貸し剥がしが発生。
(3) 格差の発生
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●政策の効果
(1) 円安を促進して輸出
主導の景気回復を実
現。
⇒円安発生のメカニズム
⇒国際資本は実質金利
の低い国から高い国
に移動する。
⇒実質金利↓
=名目金利↓ーインフレ率
(日)実質金利ー(米)実質金利
=(日)名目金利ー(米)名目金
利
ー{(日)インフレ率ー(米)インフ
レ率}
⇒日本のゼロ金利政策と米国
とのインフレ率の格差に
よって、
⇒米国の実質金利が高く、
⇒円安、ドル高が発生した。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●政策の効果
(3) 格差の発生
(1) 円安を促進して輸出
主導の景気回復を実 ⇒輸出産業と内需産業の
現。
間に格差が発生した。
⇒円安により、輸出企業
⇒大企業と中小企業の間
は収益を拡大させた。
にも格差が発生した。
⇒しかし、輸入物価の上
昇によって交易損失
が発生し、
⇒日本の所得が海外に流
出した。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●政策の効果
(2) 金融再生プログラムの結
●銀行の貸借対照表
果、不良債権を処理した
が貸し渋りや貸し剥がし
が発生。
預金
⇒政府の金融再生プログラム
回収可能な債権
は、
⇒銀行に対して、①不良債権
比率の引き下げ、②自己
資本金
資本比率を8%以上に維
回収不能な債権
持、③収益性の向上、を
貸倒引当金
(不良債権)
求めるという内容であった。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●金融再生プログラム
⇒①不良債権比率の引き
下げ
⇒不良債権比率を引き下
げるためには、
不良債権の償却や貸倒
引当金の有税積増、
または、不良債権を割り
引いて市場に安く売
却する必要がある。
*不良債権の償却
⇒債権は資産として貸借
対照表に計上されてい
る。
⇒貸出先の倒産などで債
権が不良債権となった
場合、この資産を費用
化する手続きを償却と
言う。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●金融再生プログラム
⇒①不良債権比率の引き下
げ
⇒不良債権比率を引き下げる
ためには、
不良債権の償却や貸倒引当
金の有税積増、
または、不良債権を割り引い
て市場に安く売却する必
要がある。
*貸倒引当金の有税積増
⇒貸倒引当金とは、将来回収
不能と見込まれる債権を費
用として計上する手続きで
ある。
⇒会計上の利益=売上―費
用(その他の費用)―貸倒
引当金
⇒税務上の利益=売上―費
用(その他の費用)
⇒税務上、貸倒引当金は有税
積増となる。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●金融再生プログラム
⇒②自己資本比率を8%以上
に維持
⇒不良債権を減少させようと
すると、資産が減少する
から、自己資本や貸倒引
当金も同額減少させなけ
ればならない。
⇒自己資本比率を8%に維持
するためには、回収可能
な債権と預金を減少させ
る必要がある。
●銀行の貸借対照表
預金
回収可能な債権
資本金
回収不能な債権
(不良債権)
貸倒引当金
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●金融再生プログラム
⇒②自己資本比率を8%
以上に維持させようと
すると、
⇒企業は回収可能な債権
を減少させて資産を
減少させたり(貸しは
がし)、
⇒負債である預金を減少
させたりする。
⇒これは、貸し渋りにつな
がり、 ③収益性の向
上と矛盾する。
⇒会計上の利益=売上
―費用(その他の費
用)―貸倒引当金ー不
良債権の償却
⇒①不良債権比率の引き
下げは、企業利益を減
少させるので、 ③収益
性の向上と矛盾する。
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●政策の効果
(3) 格差の発生
⇒企業収益と勤労者所得
の格差が拡大した。
⇒小泉景気の時代は、企
業収益が拡大したが
雇用者報酬は減少し
ている。
⇒図Ⅱ. 2
⇒小泉政権時代の公共
投資額と国債発行額の
抑制。
⇒中央経済と地方経済の
格差が拡大した。
⇒図Ⅱ.3
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Ⅱ.1. 輸出に偏り過ぎた経済運営の咎め
●問題意識 財政緊縮、
金融超緩和のpolicy
mixの効果
⇒①輸出に有利だが、内
需に不利に働いた。
②国内において投資に有
利に働き、消費に不
利に働いた。
⇒格差拡大と国内需要停
滞のメカニズム(図
Ⅱ.4.)
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