第3章.リスクの配分・管理

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証券経済論講義計画
第1章.金融仲介
第2章.情報生産
第3章.リスクの配分・管理
第4章.流動性の付与
第5章.株価
第6章.金利
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第3章.リスクの配分・管理
• 資金の移転・提供(現在時点)→将来見返り
を得る:金融取引は異時点間の取引
– 将来のことは確実ではなく、不確実でリスクが存在する
• リスクとは?
– e.g. ①:ある株式に投資すると、1年後に10%値上りする
確率50%、5%値上りする確率50%
• 損をする可能性はないが、リスクはある。
– ②:ある株式に投資すると、1年後には必ず10%値下が
りする(必ず損をする)。
• 損はするが、リスクはない(運命ではあるが、リスクではない) 。
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○経済・金融とリスク
• リスクのある事業にどれだけ資金を提供するか
– 企業のリスク事業への挑戦意欲、資金の出し手のリ
スク許容度、金融仲介機構を通じるリスク分担
• リスクを資金提供者間でどう分担するか
– 株式会社制度、証券化における優先劣後構造
• 資金提供に伴うリスクをどう管理するか
– 分散投資、デリバティブ
• リスクを価格にどう反映させるか
– 株価、債券発行金利と格付け
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(1)株式会社制度と事業リスクの分担
• 株式会社制度:株式の発行を通じて幅広く事
業に必要な資本を集中
• 株式:
- 株式会社に対する所有権を細かく等分し、それ
を表示した有価証券(株券)
- 株主の権利:
- ①
- ②
- ③
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• 事業リスク
– 事業遂行の結果として得られる収益に関するリ
スク
– 株式会社制度=
– 株主と債権者・貸手(銀行や社債投資家)
– 株主と貸手は共に企業への事業資金提供者
– 株主と債権者との間での企業収入の分配ルール
• 企業の収入に対して、まず債権者が負債の元利返済
という形で優先的に受け取る権利がある。
• 負債の元利返済が完了した後に、企業の収入に残り
があれば、それは株主が受け取ることができる。
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– ∵ 企業の収入が少なければ(業績が悪ければ)、株主の
受取分は小さくなる。債権者の受取分は、企業の負債の
元利返済額で一定。
• しかし、企業の収入が負債の元利返済額に足りなけ
れば(企業の債務不履行・デフォルト)
– 債権者は企業の収入の全てを受け取り(全ての企業資産
の処分換金額を含め)、株主は当初の出資金を失うだけで、
新たに損失を分担する必要はない(
)。
• ・
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• 事業リスクはこうした形で株主・貸手間で分担
(基本的に株主が負担、貸手も一部負担)
– ハイリターン(しかしハイリスク)を望む資金提供者(株
主)とローリスク(しかしローリターン)を望む資金提供
者(貸手)の間でのリスク分担
• 貸手のリスク
– 貸手(銀行や社債投資家)は信用リスク(orデフォルト
リスク)に直面している
→借り手に関する情報生産の必要性
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(2)資産運用・投資における
リスク分散
• リスク分散
• 株式投資の収益率
=
・株式投資のリスク
:収益率が不確実で、ブレがあること
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• 投資のリスクの尺度
=
=
(変動性volatility)
・標準偏差:分布の(平均値からの)ばらつきを測る
統計的尺度、収益率と同じく%単位で表示
• 投資先を分散⇒リスクが小さくなる
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・証券1が収益率のばらつき(標準偏差)が小さい
⇒リスクが小さい
・証券2が収益率のばらつき(標準偏差)が大きい
⇒リスクが大きい
・投資のリターンは、証券1も2も同じ10%
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横軸は週次収益率
データの期間:1997年1月~2001年12月
野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』丸善 p.54
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もし、収益率の分布が正規分布なら
σ:標準偏差
野村證券投資情報部編『証券投資の基礎』p.55
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資産運用の議論では、資産の組合せをまた1つの投資対象と考える。
ボディ&マートン『現代ファイナンス論』ピアソン.p.356
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