教養の化学 - Biglobe
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教養の化学
第13週:2013年12月23日
担当
杉本昭子
復習:物質量、濃度計算
物質量(モル)
1. 物質は、原子や分子、イオン等の粒子で構成されている。物質
の変化や性質はこの構成粒子の数に基づいて説明される。
2. 一定数の粒子の集団を単位として扱うこととし、炭素原子12Cの
12g中の炭素原子の数が用いられた。12g÷1.993 X 10-23g=6.02
X 1023となり、6.02 X 1023個(アボガドロ定数)の粒子の集団を
1モルといい、モルを単位とした量を物質量という。
3. モル質量は、粒子1molを含む物質の質量でg/molで表す。一般に
原子、分子、イオンのモル質量は、それぞれ原子量、分子量、
式量にg/molを付けたものになる。
4. モル体積は、粒子1molあたりの体積をいう。気体の場合はアボガド
ロの法則に従い、分子の種類に関係なく、標準状態で22.4Lとなる。
復習:物質量、濃度計算
濃度
1. 溶解:液体に別の物質が溶ける現象をさす。
2. 溶解して均一な混合物になった液体を溶液という。このとき水の
ように物質を溶かすために使った液体を溶媒、溶媒にとけてい
る物質を溶質という。
3. 溶液の濃度は、3種類ある。
• 質量パーセント濃度
溶液100g中に含まれる溶質の質量(g)の割合を表す。
• 体積パーセント濃度
溶液100mLの中に含まれる溶質の体積 (ml)の割合を表す。
• モル濃度
溶液1L中に含まれる溶質の物質量 (mol) を表す。
演習の解答と解説
1. 窒素分子7.00 gは標準状態で体積は何リットル
になるか。(10点)
註: 原子量は、N=14,C=12,O=16 とする。
アボガドロ数は6.02X1023とする。
N2
分子量:28
モル質量:28g/mol
7g
X 22.4 = 5.6
28 g/mol
mol
5.6 l
演習の解答と解説
2. 二酸化炭素、33gの物質量は何モルか。
この分子1個の質量は何gか。(5点、5点)
註: 原子量は、N=14,C=12,O=16 とする。
アボガドロ数は6.02X1023とする。
CO2
分子量:12+16x2=44 モル質量:44g/mol
33 g
44 g/mol
= 0.75
44 g/mol
6.02X1023/mol
0.75 mol
= 7.3X10-23 7.3X10-23g
演習の解答と解説
化合物の重量(g)が与えられた時モル(mol)に換算できるし、逆もま
た同じ
g
換算のためには先ずモル質量を計算する
モル質量は原子量が基準になっている
g = mol x g/mol
mol = g g/mol
mol g/mol
モル体積は気体の種類に関係なく、22.4l
従って化合物の体積(l)が与えられた時モルに換算できるし、逆も
同じ
l
l = mol x g/mol=mol x 22.4l
mol 22.4l
演習の解答と解説
分子の質量
1mol中にはアボガドロ数個の分子が含まれているから、分子1個の
質量は、
分子の質量 =
モル質量
アボガドロ定数
質問に答えて
教科書p72の練習問題4.2
分子の形
分子の形の基本は、分子を形成する共有結合がどの様な軌道を
作っているかで決まる。特にこの問題のような、低分子の場合は
軌道=分子の形になる。
第9週で説明してあるので、復習して下さい!
C, N, O原子は分子を形成する時、種々の混成軌道を形成する。
混成軌道は、主に2s軌道と2p軌道の間で作られる。
sp3は、2s+2px, 2py, 2pzの計4個の軌道で混成し、4つの軌道、
sp2は、2s+ 2px, 2py の3個の軌道で混成し、3つの軌道、
spは、2s+2pxの2個の軌道で混成し、2つの新しい軌道をそれぞれ
作る。
質問に答えて
教科書p72の練習問題4.2
分子の形
混成軌道同士は、最もエネルギー的に安定な配置(お互いが最も
空間的に離れた位置)をとる。その結果、各軌道に特有の形が形成
される。
sp3の4つの軌道は、正四面体
sp2の3つの軌道は正三角形
spの2つの軌道は、180°の直線形
sp3
sp2
sp
分子の形
有機物質の形は、炭素の軌道の形を基盤にしてつくられる。
sp3混成軌道
オクタン
直鎖化合物
正四面体
アダマンタン
環状化合物
分子の形
有機物質の形は、炭素の軌道の形を基盤にしてつくられる。
sp2混成軌道
120°
正三角形
エチレン
分子の形
有機物質の形は、炭素の軌道の形を基盤にしてつくられる。
sp混成軌道
180°
アセチレン
直線形
分子の形
SP3混成軌道は正四面体(Tetrahedral)構造である。
CH4分子は正四面体
NH3分子は?
分子の形
孤立電子対
NH3分子は三角錐構造
H原子は3つのSP3軌
道と結合
孤立電子対は、分子全体の形
には含まれない
分子の形
孤立電子対
孤立電子対
H2O分子のO原子は
SP3軌道
2個のH原子と結合
分子の形
孤立電子対
2個のH原子と結合
孤立電子対
H2O分子はV字(折れ線
型)
分子の形
二酸化炭素:CO2
C: sp混成軌道
O: sp2混成軌道
分子の形
分子の形
教科書p72の練習問題4.2
(a)CH4
(b)H2O
(c)CO2
(d)NH3
正四面体
折れ線型
直線型
三角錐型
化学量論(3)
濃度計算、化学反応式における
物質量
第13週講義
濃度計算
溶液の濃度:もう一度定義を確認!
濃度とは溶液中の溶質の割合を表したもの。
従って必ず溶液の量(重さか体積)が規定されている!
濃度計算
溶液中の溶質の割合を表したもの。
1. 質量パーセント濃度
溶液100g中に含まれる溶質の質量(g)の割合を表す。液体
や固体物質の濃度として一般によく用いられる。単にパーセ
ントというと質量パーセントを意味する。
質量パーセント濃度[%]=
溶質の質量(g)
溶媒の質量(g)+溶質の質量(g)
X 100
濃度計算
2. 体積パーセント濃度
溶液100mLの中に含まれる溶質の体積 (ml)の割合を表す。
空気の組成の表示など、主に気体の濃度を表すのに用いる。
体積パーセント濃度[%]=
ある気体の体積(L)
混合気体の全体積(L)
X 100
濃度計算
3. モル濃度
溶液1L中に含まれる溶質の物質量 (mol) を表す。試薬びん
から溶液を取り出したとき、モル濃度が分かっていれば、その
体積を量ることで溶質の物質量が簡単にわかるので、化学実
験ではモル濃度を使うことが多い。
溶質の物質量(mol)
モル濃度[%]=
溶液の体積(L)
X 100
濃度計算
実際に計算問題を解いて
みましょう!
濃度計算
g
mol g/mol
教科書 p84~86
濃度計算問題は、主に希釈、溶液のモル数を問う。
希釈
希釈前後で、溶質の質量は変わらない。
溶液
溶媒
溶質
0.200 mol/L の水溶液50.0 mLを調製するには何gのグルコース
が必要か グルコース(C6H12O6:分子量180)
はじめに確認 有効数字3桁
グルコースのモル質量:180 g/mol
0.200 mol/L の水溶液50.0 mL中のグルコースのモル数
0.200 mol/L X 0.05L =0.01mol
モル数から質量を求める
0.01 mol X 180 g/mol =1.80g
A. 1.80g
濃度計算
g
mol g/mol
18.0 mol/L の濃硫酸を希釈して、6.00 mol/Lの硫酸水溶液を1.50
L 作るには濃硫酸は何 mL必要か
はじめに確認 有効数字3桁
6.00 mol/L の硫酸水溶液1.50L中の硫酸のモル数
6.00 mol/L X 1.50 L =9.00 mol
9.00 molの硫酸が含まれるために必要な18.0mol/L の硫酸水溶液のmL数
X=9.00mol ÷18.0 mol/L=0.50 L=500 mL
別解
A. 500 mL
18.0 mol/Lを6.00 mol/L に希釈するということは、18.0/6.00=3
つまり、元の溶液を3倍希釈すること。
すなわち、元の溶液は1.5Lの1/3、つまり 0.5L(500 mL)!
A. 500 mL
濃度計算
p84 問8(2)
2.50 mol/LのNaOH水溶液50.0 mLを希釈したとき, 0.500 mol/L
NaOH水溶液が何mL調製できるか。
有効数字3桁
1) NaOHのモル質量を計算する。
NaOH 式量 40
モル質量:40g/mol
2) 2.50モルの溶液、50.0 mL中に含まれるNaOHの質量を求める。
2.50 (mol/L) x 40 (g/mol) x 0.05(L)=5 g
3) 0.500 mol/L 1L中に含まれるNaOHの質量を求める。
0.500 mol/L x 40 g/mol=20 g/L
4) NaOH 5g から作れる 0.500 mol/L 溶液の体積を求める。
X(mL)=1000 mL X 5/20=250 mL
250mL
濃度計算
2.50 mol/LのNaOH水溶液50.0 mLを希釈したとき, 0.500 mol/L
NaOH水溶液が何mL調製できるか。
もっと簡単に!
希釈前後のNaOH量は変わらない。
2.50 (mol)
1000 (mL)
X 50.0 (mL)
=
0.500 (mol)
1000 (mL)
希釈後
希釈前
x(mL)=125/0.5
X x (mL)
= 250 mL
250mL
濃度計算
P86 問5-8
g
mol g/mol
12.0mol/Lの濃塩酸を希釈して0.100 mol/Lの希塩酸300 mLを作
るとき、濃塩酸は何mL必要か
はじめに確認 有効数字3桁
0.100 mol/Lの希塩酸 300 mL中の塩酸のモル数
0.100 mol/L X 0.3 L=0.03 mol
12.0 mol/L濃塩酸水が何mL(x)あれば、0.03mol/Lの塩酸になるか
12.0 mol/L X x(L)=0.03mol
x=0.03mol ÷12.0mol/L=0.0025(L)=2.50mL
A. 2.50 mL
さらに濃度計算
質量パーセント濃度とモル濃度
g
mol g/mol
質量パーセント濃度で17%の硝酸ナトリウム水溶液(NaNO3
式量85)がある。この水溶液(密度1.1g/cm3)の濃度をモル濃度
に換算すると何mol/Lか。
はじめに確認 有効数字2桁
硝酸ナトリウムの物質量=85(g/mol)
モル濃度のため、1000mlを重さに換算する。
W=1.1(g/cm3) X 1000 (ml) =1100(g)
密度=
1100gの溶液中に含まれる硝酸ナトリウムの質量(Y)を求める。
Y=1100(g)X0.17=187(g)
質量からモル数を計算する
187(g)÷85(g/mol)=2.2(mol)
A. 2.2mol/L
W(重量)
V(体積)
さらに濃度計算
質量パーセント濃度とモル濃度
g
mol g/mol
尿素(分子量60)3.0gを水100gに溶かした水溶液の質量パーセ
ント濃度を求めよ。また、この水溶液の密度が1.0g/cm3のとき、
この水溶液のモル濃度はいくらか。
はじめに確認 有効数字2桁
尿素の物質量=60(g/mol)
質量パーセントを計算する。
%=3,0g/(100g+3.0g) x 100=2.91
A.
2.9%
密度1.0g/cm3の溶液の1L中の尿素の質重を計算。
(3.0g/103g)x1000g=29.13g
質量からモル数を計算する
29.1(g)÷60(g/mol)=0.485(mol)
A. 0.49mol/L
濃度計算
g
mol g/mol
溶液のモル数
例題4-1
グルコース(C6H12O6:分子量180)18.0gを水に溶かし
250 mLにした場合のモル濃度を求めよ。
はじめに確認 有効数字3桁 モル質量: 180g/mol
18.0gのグルコースのモル数を求める
18.0g÷180g/mol=0.100mol
250mL中に0.1molのグルコースが溶けている溶液のモル濃度(x)を求める
0.1mol/0.25L=Xmol/1L
X=0.4mol
A. 0.400 mol
濃度計算
g
mol g/mol
例題4-(2)
0.500 mol/Lのグルコース(C6H12O6:分子量180)水溶液300
mL中に含まれるグルコースの物質量は何molか
はじめに確認 有効数字3桁
0.500mol/L X 0.300 L=0.150 mol
練習問題5.7-1
A. 0.150 mol
塩化ナトリウムNaCl(式量:58.5) 1.17gを水に溶かして150 mL
にした場合のモル濃度は?
はじめに確認 有効数字3桁 モル質量: 58.5g/mol
1.17gのNaClのモル数を求める。
1.17g÷58.5g/mol=0.02mol
150 mL中のNaClのモル数が0.02モル。この溶液のモル濃度を求める。
X mol
0.02mol
X=0.133mol
A. 0.133mol
=
1000mL
150mL
濃度計算
g
mol g/mol
0.100mol/Lのシュウ酸水溶液25.0 mL中に含まれるシュウ酸
の物質量は?
はじめに確認 有効数字3桁
0.100 mol
1L
X 0.025L
=0.0025mol = 2.50x10-3mol
A. 2.50x10-3mol
計算のコツ
○○/××というように、単位を略さずに記載し、単位も数字
と同じように取り扱う。計算で残った単位が目的の量を表して
いるかどうかを必ず確認する。
化学反応式の意味:反応のタイプ
化学反応とは、1つ、ないしはそれ以上の出発物質
の構成や性質を変えるものである。
化学反応とは、 その結果1つないしはそれ以上の
新しい物質が生成するものである。
化学反応において、最初の物質を反応物(反応す
る物質:reactants)という。
化学反応において、新しくできる物質を生成物
(products)という。
化学反応式の意味:反応のタイプ
化学反応により生じる変化は下のような等式として
書く。
A + B → C + D
ここでAとBは反応物を表し、CとDは生成物を表す。
化学反応は4つのタイプに分類される:
1)
2)
3)
4)
合成:synthesis (combination)
分解:decomposition
単純置換:single replacement
二重置換:double replacement
化学反応式の意味:反応のタイプ
合成反応:synthesis reactionでは、2つかそれ以上
の反応物が一体化して1つの新しい生成物が生ま
れる。
A+B→C
A+B+C→D
2 H2 + O2 → 2 H2O
2 CO + O2 →2 CO2
NH3 + HCl → NH4Cl
化学反応式の意味:反応のタイプ
分解反応:decomposition reactionでは、 出発の1
つの反応物が解体して、2つかそれ以上の新しい生
成物になる。
A→B+C
A→B+C+D
HgS → Hg + S
2 H2O2 → 2 H2O + O2
CaCO3 → CaO + CO2
(NH4)2CrO4 → N2 + 4 H2O + Cr2O3
化学反応式の意味:反応のタイプ
単純置換反応: single replacement reaction では、
出発の元素や化合物が作用しあって、新しい元素
や化合物が生成する。
A + BC → AB + C
A + BC → AC + B
Zn + 2 HCl → ZnCl2 + H2
F2 + 2 HCl → H2 + 2 HF
Cu + 2 AgNO3 → Cu(NO3)2 + 2 Ag
化学反応式の意味:反応のタイプ
二重置換反応: double replacement reaction では、
2つの出発化合物が作用しあって2つの新しい化合
物になる。
AB + CD → AD + CB
Na2S + FeCl2 → 2 NaCl + FeS
2 KI + H2SO4 → K2SO4 + 2 HI
NH4OH + AgNO3 → AgOH + NH4NO3
化学反応式の意味:反応のタイプ
燃焼:Combustion とは、5番目のタイプの反応である。
燃焼:Combustion (burning)は、際立った熱や光 が発生
する。
燃焼:Combustion は、反応物としての酸素ガス(O2)と物
質との反応を含んでいる。
砂糖、アルコール、炭化水素類の燃焼: combustion は、
二酸化炭素:carbon dioxide (CO2) と水:water (H2O)が
生成する。
化学反応式の意味:反応のタイプ
砂糖の燃焼: combustion
C12H22O11 + 12 O2 → 12 CO2 + 11 H2O
消毒用アルコールの燃焼: combustion
C3H7OH + 5 O2 → 3 CO2 + 4 H2O
プロパンの燃焼: combustion
C3H8 + 5 O2 → 3 CO2 + 8 H2O
化学反応式の意味
今みてきたように、化学反応式とは・・・
化学反応では、物質を構成する原子の結合が変化し、
新しい物質が生成する。このような化学変化を化学式
を用いて表した式を、化学反応式(反応式)という。
1.
2.
3.
化学反応式は、万国共通で表記されている。
反応物、生成物、反応の量的関係が明らかにされ
ている。
反応の進行を矢印で示すが、矢印の上に簡単な反
応条件(温度、溶媒、触媒など)を記入することで、
より多くの情報を提供することができる。
化学反応式の意味:化学式の平衡
化学や物理反応において、反応中に決して原子は作
り出されたり壊されたりはしない。
化学や物理反応式は平衡が成立している。
すなわち、化学や物理反応において、化学反応式の
生成物側の全ての元素は、化学反応式の反応物側
に存在する全ての元素と同数存在している。
化学反応式の意味:化学式の平衡
この反応で...
H2 + O2 → H2O
水素原子は式の両側に2 個存在している。
酸素原子は化学反応式の反応物側に2個あるが、
生成物側には1個の酸素原子しかない。
この式は平衡がとれていない!
化学反応式の意味:化学式の平衡
反応式のバランスをとるために、係数: coefficientと
呼ばれる数字を用いる。
係数 は分子式や組成式の前に置く。
2 H 2O
3 H2
6 CO2
係数は分子式 や組成式全体に係る。
2 H2O は、4 H’s と2 O’sを意味する。
3 H2 は6 H’s を意味する。
6 CO2 は6 C’s と12 O’s を意味する。
化学反応式の意味:化学式の平衡
Ex.1) 反応式の平衡:
2 2 + ___O
1 2 → ___H
2 2O
___H
Ex.2) 反応のタイプは.
合成
______________________
Ex.3) H2Oの結合の種類は
共有結合
______________________.
R P
H
H
O
O
H
H
H
H
O
H
H
O
演習
1. 標準状態で2.80 Lを占めるO2の物質量は何molか。
2. 15.8mol/Lの濃硝酸20.0mLを希釈したとき、0.800 mol/Lの希硝
酸が何 mL調製できるか。