最近の企業・事業所を調査客体とする統計結果の精度

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Transcript 最近の企業・事業所を調査客体とする統計結果の精度

最近の企業・事業所を調査客体
とする統計結果の精度
経済統計学会
2008年9月7日
国士舘大学
山田茂
1
1 はじめに
• 企業・事業所を調査客体とする政府統計調査
結果の最近の精度の状況を分析。
1) 全般的な状況
• 結果の精度低下
←政府統計調査への非協力の増大など
2
非協力増大の原因 1
・回答能力の低下←間接部門の縮小
・出先事業所従業員の非正規化の拡大
出先事業所は本社より「不詳」が多い
「常用雇用者0人の支所」
2001年:3.8万 06年:4.5万
「派遣・下請従業者のみの事業所」
2001年:6千 04年:7千 06年:6千
3
非協力増大の原因 2
・高い廃業率(5年前比28%)・新設率(同22%)
・情報提供に伴う具体的な不利益・被害の認識
・「かたり調査」
・統計調査結果への関心・結果の利用意向が
(中小・零細企業では)小さい
・実地調査組織の力量低下・民間委託など
・自治体にとっての利用可能性
4
実施機関の対応
2004年前後~
調査自体の改廃
実施方法の変更等:
名簿整備・プレプリント・オンライン提出等
・回収率・「不詳」・「外見上住居」の公表など
5
調査自体の改廃
・中止「中小商業・サービス業設備投資動向調査」 「企業動向
調査(本社企業編)」「産業労働事情調査 」(~03年)
「雇用管理調査」( ~ 04年)
「下請中小企業短期動向調査」 ( ~ 05年)
「交通関連企業設備投資動向調査」・「同景気動向調査」
( ~ 06年)
・統合「法人企業景気予測調査」 (04年~)
・対象数削減「賃金事情等総合調査」 (04年~)
・周期延長「設備投資調査」半年→1年(02年)
6
2)考察の方法
• 回収率・「不詳」率
・「潜在的脱落層」 :住居と区別しにくい
→把握できなかった事業所の属性を示唆
• 他の統計との比較
・調査協力・結果利用に関する調査
7
事業所・企業統計の把握状況
←
↑
集
計
把
握
し
た 事
A 脱落しにくい事業所
90%
(事業内容など判明)
個別項目に「不詳」あり
業
所
B 脱落しやすい
10%
(住居と誤認も)
(事業内容など判
明)
→
C
脱落
した
事業所
+?%
表
↓
実
数
だ
け
D 非協力の事業所 +3%
(事業内容など不詳)
8
2 事業所を調査客体とする統計
1)全数調査:
*「事業所・企業統計」:訪問方式
・「事業内容等が不詳である事業所」: 非協力
2001年14万、04年19万、06年18万(3%)
・「事業所の開設時期不詳」 01年61301→06年42241
(支所は本所の4倍)
• 「本社の所在地不詳の支所」01年94→06年4435
• 「会社の開設時期」01年8746→06年6113
• 「会社の登記年月」 01年41478→06年51494
9
18%
16%
事業内容が不詳の事業所 06年
14%
12%
全国=3.1% 大阪府=6.7%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
10
記入不備のための名寄せ不能
86
84
82
%
支所からみた
名寄せ可能率
本所からみた名寄せ可能率
100
%
95
80
78
76
90
2001年
85
2006年
74
80
72
75
70
11
潜在的脱落層
• 「外見上一般の住居と区別しにくい事業所」
2001年:68万 06年:57万(10%)
•
•
•
•
2006年:対民営総数10%
「運輸」「建設」「不動産」「学習支援」
従業者141万人(1事業所 平均約3人)
大都市は低率が多い
東京区部7%、大阪市5%、名古屋7%
12
60%
一般の住居と区別しにくい事業所 06年
50%
40%
30%
20%
10%
0%
13
・非農林業・非官公事業所
• 「従業者」(複数事業所でカウントも)
事業所・企業統計<労調「就業者」
男性
3110万人<<3423万人
女性
2309万人<2471万人
• 建設・製造が少なく、卸・小売・飲食が多い。
14
2)標本調査
• 「賃金構造基本調査」(調査方式:訪問回収
2004年~ 回収率の変動:↓ 最新:71%)
• 「民間給与実態調査」(訪問回収↓89%)
• 「雇用動向調査」(訪問回収↓77%)
• 「毎勤特別調査」(面接聴き取り↓90%)
• 「パートタイム労働者総合実態調査」
(郵送送付/訪問回収↓73%)
• 「労働経済動向調査」(郵送→50%台)
15
88%
雇用動向調査 5人以上事業所
訪問自計
毎月勤労統計調査特別調査
98%
86%
96%
84%
82%
94%
80%
92%
78%
90%
1997年
1999年
2001年
2003年
2005年
2007年
76%
1997年 1999年 2001年 2003年 2005年
1~4人の事業所 面接聴き取り
16
%
100
事業所対象
回収率
90
80
70
60
50
40
毎勤特別
訪問聞取
民間給与実
態 訪問
雇用動向
訪問
パートタイム 賃金構造基
本 訪問
訪問
労働経済動
向〒
17
3 企業を調査客体とする統計
1) 「事業所・企業統計」:全数調査→母集団リスト
把握した会社企業総数
(事業所から得た情報→名寄せ)
• 「事業所・企業統計」(2006年、152万社)
<「国税庁による把握」(259万、会社以外も)
• 帝国データバンクの把握 2006年9月 175万社
18
85% 国税庁=100%
事業所・企業統計による会社総数
80%
75%
70%
65%
60%
55%
19
「事業所・企業統計」と「国税庁」 06年
100%
90%
対国税庁
80%
70%
60%
50%
40%
資本金
20
2)標本調査の状況
• 調査方法・内容・主管官庁による調査か
・回収率(2004年~)の推移
地域差・業種差・企業規模に注目
21
*全業種対象調査
• 経営状況全般に関する調査
提出方法:郵送・オンライン
• 全体の回収率:大きな変化なし
• 回収率:大企業>小企業
• 同じ企業規模では
短観>法人企業・景気予測>設備投資
22
75
2008年2月
2007年5月
2006年8月
2005年11月
2005年2月
2004年5月
2003年11月
2003年2月
2002年5月
2001年8月
2000年11月
2000年2月
1999年5月
1998年8月
1997年11月
1997年2月
1996年5月
1995年8月
1994年11月
90 %
景気予測調査/法人企業景気予測調査
85
80
04年統合前後も共通:資本金1000万円以上 郵送
23
「法人企業景気予測調査」
大都市圏・非製造・中小企業が低い:継続
• 2008年5月の回収率
全国・製造業・資本金10億円~:90%
東京都・非製造・資本金1千万~1億:41%
24
資本金10億円以上の回収率
100%
2007年/2008年
90%
80%
70%
60%
50%
短観
法人企業統計(
年次別
四半期)
景気予測
設備投資
25
100%
07/08年最新調査 資本金別回収率
90%
80%
70%
60%
50%
40%
短観
法人企業統計(
~1000万円
年次別
1000万円~1億円
四半期)
景気予測
1~10億円
設備投資
10億円~
26
80
%
法人企業景気予測調査 08年5月
70
60
50
40
30
20
10
0
→資本金 1000万~1億円:回収率
27
雇用・賃金に関する調査
• 「就労条件総合調査」(訪問↓79%)
• 「賃金事情総合調査」
(1000人、5億円以上対象、郵送↓71%)
• 「賃金引上げ等の実態調査」
(30人/100人以上 郵送↓57%)
その他
• 「情報処理実態調査」
(郵送→45%、外郭団体へ返送)
28
特定属性・業種対象調査
*主管省庁実施
(調査方法 回収率の変動と最新の水準)
• 「海外事業活動基本調査」(郵送↑74%)
• 「外資系企業動向調査」(郵送↑64%)
29
特定業種:
• 「建設工事施工統計調査」(郵送↓61%)
• 「建設業構造基本調査」(郵送↓59%)
• 「通信産業基本調査」
(うち電気通信事業者:郵送↑60%)
30
70%
賃金引上げ等に関する調査
72%
70%
65%
「建設工事施工統計調査」許可企業
郵送
68%
66%
60%
64%
62%
60%
55%
58%
1997年 1999年 2001年 2003年 2005年 2007年
30人以上の企業(一部100人)
98年~サービス業へ拡大 郵送
31
中小企業対象
・中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」
(聞き取り → ほぼ90%以上)
• 中小企業庁:「中小企業実態基本調査」
(郵送↑53%、従業者50人以下で上昇)
• 同『中小企業白書』
2001年版~08年版に引用のアドホック調査
(民間委託、郵送→3割~5割)
高い回収率:融資関連のテーマ
32
政府系金融機関による調査
• 日本政策投資銀行「設備投資計画調査」
(資本金10億円~ 郵送↓54%)
• 国民生活金融公庫
「全国小企業月次動向調査」
(従業者~10/20人の取引先 ↓78%)
33
4 小括
• 回収率:主管省庁実施分以外は漸減
属性別(大>小、主管>その他)も継続
• 聞き取り>訪問>郵送
• 返送先:実施官庁>民間委託機関
34
なぜ協力しないか
• 利用頻度⇔回収率の水準(経団連調査)
• 負担と感じる理由(統計局調査)
=回答作業自体+「役に立たない」
• 協力確保策:オンライン化・報告書送呈など
企業規模で効果に差 大企業には効果
35
経団連調査 04年 124社回答
資本金1億円以
上の回収率
100%
90%
80%
設備投資調査
70%
法人企業
景気予測
50
60
短観
60%
50%
20
30
40
70
設備投資項目の利用頻度指数 平均=38
36
統計局調査 06年1月 上場企業
250 社
負担を感じる理由
200
150
100
50
0
記入に時間
調査事項が細かい
調査事項が多い
業務に役立たない
238社回答 「強く」+「やや」そう思う
37
結果利用の制約
• 回収率が低い区分の企業も
短観のように全部回収なら
景況判断:08年6月短観:「良い」-「悪い」
「製造業・資本金2000万円~1億」:-10%
「同10億~」:+5%
38
「無回答」が回答したら・・
小企業
中企業
大企業
良い
悪い
良い
良い
悪い
無回答
無回答
悪い
無回答
39
分析の制約←情報が未公表
• 調査方法の細部
例 郵送調査での督促実施
返送先:官庁自身・委託先
予備標本の利用
• 回収率 未公表 毎勤全国 個人企業経済
企業属性別の公表は少ない
• 集計表での「不詳」の扱い:除外か否か
以上
40