旅館・ホテル業界における受動喫煙防止対策について

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旅館・ホテル業界における受動喫煙防止対策について
大阪府旅館ホテル生活衛生同業組合
理事長 岡本 厚
1.旅館・ホテル業界の現状
ホテル・旅館業の特性
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資本集約型の装置産業的性格を持ち、多額の設備投資が必要。
投下資本の回収には長期期間を要する。
収入は客室数によって制約を受け、一方で、価格が硬直的で弾力性に欠ける。
施設の維持、接客など人件費等の固定費負担が大きい。
需要に季節性があり、結果として収入に波がある。
※出典:(財)全国生活衛生営業指導センターHP 業界の動向
最近の旅館・ホテル業界の状況
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長引く不況による、個人のレジャー消費意欲の減退、個人消費の節約志向、
加えて昨年の東北大震災・原発事故の影響が加わり旅行回数及び宿泊数が減少。
旅館・ホテル業界には、大手チェーンもあれば、小規模な事業者もあり区々。
大手チェーンはともかくほとんどの事業者は、設備投資を行う余裕がない状況。
観光事業者の取り組み
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平成19年1月「観光立国推進基本法」が施行。
第6条で「観光事業者は、その事業活動を行うに際しては、住民の福祉に配慮するとともに、
主体的に取り組むものとすること」と規定。
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各事業者とも、多様なお客様にニーズにお応えして、ご満足頂けるよう様々な努力をしてい
る。
平成23年度観光白書より
平成20年のリーマンショックに端を発した世界的な景気低迷、
平成21年度の新型インフルエンザ流行の影響等で落ち込み
平成23年度観光白書より
2.旅館・ホテル業界のお客様サービス
• (前提)お客様にやすらぎや癒しの時間と空間を提供。
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「おもてなし」の気持ちで「衣食住」の全てに関係したサービスを提供している唯一の業界
お客様が旅館・ホテルに求めるサービスは、お客様の数だけある。(これをやれば十分というのはない)
お客様のご要望全てにお応えすべく、様々な努力をしている
(例)高齢者や車椅子の方に配慮した設備の設置は約80%の施設で対応。
お客様のご要望は相反するものもあり、全てに対応しきれないため、事業者区々に判断している状況。
※投資にも限界があるなか、選択せざるを得ない場合も多い。
• 受動喫煙防止対策に対する取り組み
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非喫煙者、喫煙者どちらにも配慮。(どちらも大切なお客様)
非喫煙者、喫煙者それぞれが心地よい空間を自由に選択できる環境を提供することが望ましい。
お客様は、施設内の禁煙・分煙表示を見て、自身の判断で施設内の禁煙・喫煙場所を選択している。
(=代替性が大きい)
宿泊施設には、①誰でも入れるロビー・フロント・通路等のパブリックスペース
②貸切宴会場・客室等のプライベートスペース
があるが、利用形態に応じた受動喫煙防止対策を行っている。
宿泊施設内にもレストラン・喫茶・バー等の宿泊以外のお客様が飲食の場として利用する場所が存在。
利用者のニーズにより、分煙(時間分煙等含む)することも必要。
受動喫煙防止対策としては、脱衣場、朝食会場、ロビー・エレベータホールを禁煙にする等、パブリックス
ペースへの取組みは既に実施。
3.規制による経済損失について
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神奈川県受動喫煙防止条例の影響
神奈川県における経済損失は、2010~2012年の3年間で約237億円との試算もある。
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外食店や宿泊施設が継続的に大きな影響を受ける可能性がある。
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神奈川県における損害額の検証、大阪府における経済損失の試算についても、検討が必要。
検討の結果民間業者の、損失利益に対する、府から補償が出来るのか。
週刊ホテルレストラン2011.3.18号掲載記事
富士経済調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティング試算
4.望ましい受動喫煙防止の取り組み
(条例により規制)
•神奈川県条例:民間施設に対しても規制内容は禁煙、分煙の義務(例外があるものの罰則有り)
•兵庫県条例 :民間施設に対しても規制内容は禁煙、分煙の義務(例外があるものの罰則有り)
(自主的なガイドラインによる取り組み)
•東京都では、神奈川県・兵庫県のように罰則を伴う条例による行政の一律規制でなく、
民間事業者の裁量により自主的に取り組むガイドラインによる対策を実施している。
(大阪の地域特性を考慮する必要)
•大阪府として実効性の高い対策は、大阪の風土・文化(ぼちぼち、まあまあ) 、歴史(商業の町)
等を考慮すべき。
(大阪での望ましい取り組み)
•大阪の施設管理者が主体的・自主的に各々の方法で取り組む対策が望ましい。
東京都の店頭表示ステッカー
出典:東京都福祉保健局のHP
5-1.旅館・ホテルとしての考え
(前提)お客様を第一と考え、お客様(非喫煙者、喫煙者双方)の理解と協力をいただける受動喫煙
防止対策であるべきです。
(方法)国が観光立国を提唱する中、 観光産業の観点からすれば府県ごとに喫煙のルールが異な
るというのは、今後増えるであろう海外からのお客様の混乱を招くだけです。
海外においても国法で決めているのではないでしょうか。そもそも法整備は国がやるべきもので
あり、府において法制化する必要はないと考えます。よって、健康増進法に基づいたガイドライ
ンに止めるべきです。
(範囲)健康増進法では「受動喫煙とは室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を
吸わされることをいう」と定義されています。
よって、屋外については、受動喫煙の防止ではなく、マナー(配慮)の観点から検討するべき。
(対象)健康増進法では各施設管理者に対して、受動喫煙防止措置の努力義務を課しています。
よって、管理者という切り口で①大阪府②大阪府以外の自治体③民間施設に分類し
各々に対策・方法を検討すべきであり、特に官と民とは同列に扱うべきではありません。
※大阪府と施設管理者との関係により対策・方法が分かれる。
(対策)分煙を基本とするべきです。
※お客様満足の結果が利潤。いろいろなお客様にできるだけ満足いただくためには、事業者
区々
の状況に対応できる選択肢のある受動喫煙防止対策であるべき。
5-2.旅館・ホテルとしての考え
(民間事業者であること)対策を検討する上で、民間事業者への経済面への影響も考慮すべき。
※民間事業者は利潤追求を目指すものです。一方、公益を満たすためには私益が制限さ
れる場合があります。公益性の判断基準に私益の制限(単なる利潤追求でない)という観
点も加え検討すべきです。
※過度な規制は経営の自由度を狭め、営業権や生活権に関わる深刻な問題。経済影響等
十分かつ慎重な検証を経たうえで規制を考えるべきです。
(部会における整理について)
・子どもの利用について
「子どもの利用がある・ない」ではなく「子どもの利用が多い・少ない」で区分するべき。
※子どもの利用がない(=可能性がない)施設は限定される。実質「全て」であるなら、その
ものが不要。
※多い・少ないの判断基準を明確にする必要がある。
・要件の整理について
宿泊施設においては、フロント・ロビー等のパブリックスペースと客室、貸切宴会場、喫茶・
飲食店等の施設があり、単に宿泊施設として、ひと括りに分類するのは如何なものかと考
えます。
※そもそも、パブリックスペース以外は対象から除外すべき。