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述語論理と∀(全称)∃(存在)
3回の講義の概観:
1
命題論理
(真理値)
命題論理
(公理と推論規則)
3
2
述語論理
(モデルと解釈)
意味論 semantics
述語論理
(公理と推論規則)
syntax 構文論
1
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述語論理は命題論理よりも複雑
例題: 次の文は真か偽か?
「すべての自然数 x に対して x < y を満たすよう
な自然数 y が存在する」
(小野先生の例題)
1. 解釈(その一)
すべての x に対して「 x < y を満たすような y
が存在する」 :∀x ∃y (x < y)
2. 解釈(その二)
「すべての x に対して x < y を満たす」ような y
が存在する :∃y ∀x (x < y)
曖昧
2
復習
述語と対象変数
• 命題とは真理値(真偽)が確定している文のこと
真偽のいずれかの値 { t, f } をとる:命題変数
• 対象変数を含む文の真理値は確定しない
例: x ≦ 200
y は素数である
このような文を扱うために 命題関数 P を考える
P : D T, ここに T = { t, f }
例: 対象領域 D として自然数の集合を考える
P : D×D T, 2変数(引数)の述語
• 対象変数 individual variable, object variable
• 命題関数 propositional function
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述語 predicate
• 述語: 命題関数の具体的な表現 例: Le, Prime
Le (x, 200) : (x ≦ 200 ), 2変数(引数) 述語記号
Prime (y) : 「 y は素数である」
• 対象領域 D の要素を対象 object, individual という
対象領域 D の上を動く変数を対象変数、D の定数を
対象定数 object (individual) constant という
• 全称記号∀, と存在記号∃
∀x P(x): すべての x∈D に対して P(x) が真になる
∃y Q(y): ある y ∈D が存在して Q(y) が真になる
↑
正確な記法を次に述べる。∀と∃が多重になるときに注意
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述語論理の項
term
• 今までに登場したもの: 対象変数、対象定数
• さらに必要なもの: 対象領域の上の関数記号
関数記号の例: 自然数の上の +, ×
項 term の定義:
1. 個々の対象定数、対象変数は項である
2. f が n 変数(引数)の関数記号で, t1, t2, …, tn が
項であるならば f (t1, t2,…, tn) は項である
項の例: 200, x, y, (3+x), 6×(x+y).
+(3,x), ×(6, +(x, y)) とも書く
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論理式 formula, wff
述語記号: 述語を表す記号
1. P が n 変数(引数)の述語記号で t1, t2, …, tn が
項ならば 、P(t1, t2, …, tn) は論理式である
2. A, B が論理式ならば、 A∧B, A∨B, A⇒B, ¬Aは、い
復習:⇔は省略してよい
ずれも論理式である
3. A が論理式で x が対象変数ならば 、
(∀x A), (∃x A) は論理式である
注:「1」の形の論理式を原子(atomic)論理式 という
例: ∀x(∀y(∃q(∃r(x=q×y+r)))), = は述語記号
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∀, ∃ quantifier
限定記号, 量化記号, 限量子
「すべての x に対して R(x, y) を満たす y が存在
する」 という文は曖昧である
前出
1. ∀x ∃y (x < y)
すべての自然数 x に対して,x よりも大きな
自然数 y (例えば x+1 )が存在する (真)
2. ∃y ∀x (x < y)
ある自然数 y が存在して,y は如何なる
(すべての)自然数 x よりも大きい (偽)
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自由変数と束縛変数
free and bound variables
• ∀x ∃y (x < y) の変数 x, y は、変数と呼ばれてい
るが、代入の対象にならない
∀z ∃y (z < y) と書いても意味が変わらない
• 変数には2種類ある。自由変数と束縛変数
• ここで注意するべき事は、同じ変数が自由であり、
同時に束縛されることがある
例: ∃y (x = y+y )∧ ∃z ( y = z+z+1 )
x は偶数である
y は奇数である
• 自由変数と束縛変数を出現 occurrenceという単位
で区別しなければならない
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出現 occurrence
1. A が原子論理式であるとき、A に含まれる変数 x の出現
は、すべて自由な出現である
2. A が B∧C, B∨C, B⇒C, ¬B のいずれかであるとする。もし
x が B または C における自由な出現であるならば、その
x は A において自由である。もし x が B または C におけ
る束縛された出現であるならば、その x は A において束
縛されている
3. A が (∀z B) または (∃z B) であるとする。もし z が x である
ときは、Aにおける x の出現は束縛されている。
z が x と異なる場合には、もし x が B における自由な出
現であるならば、その x の出現は A において自由であ
る。もし x が B における束縛された出現であるならば、
その x の出現は A において束縛されている
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自由変数と束縛変数(例)
• 例: ∃y (x = y+y )∧ ∃z ( y = z+z+1 )
• 論理式が自由変数を一つも含まない時
閉論理式 closed formula という
• 論理式 A に含まれる自由変数 x に項 t を代入し
て得られる論理式を A[t/x] と表す
• 代入をめぐる珍現象: (小野先生の例題)
∃z(x=y×z) : x は y の倍数である
∃z(x=100×z) : x は 100 の倍数である
∃z(x=z×z) : x は平方数である
• これを避けるために自由変数と束縛変数の記号
の種類を分ける流儀の教科書もある
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代入の方法
• A は ∀zB または ∃zB の形の論理式とする
• A[t/x]は
z が x のとき A[t/x] は A 自身(束縛変数に代入不可)
z が x とは異なる変数のとき、
t に z が出現しなければ、
A[t/x] は ∀zA[t/x] または ∃zA[t/x]
t に z が出現する場合は、
A[t/x] は ∀w((A[w/z])[t/x])
または ∃w((A[w/z])[t/x] )
ただし w は A にも t にも現れない新しい対象変数
i.e. 項 t に変数 w が現れることがない
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論理式の意味
• 述語論理の論理式の意味を考えるには、対象領域
domain を定める必要がある
(解釈 interpretation, モデル model, 構造 structure)
• 空でない集合 D を定める
• 対象定数に D の要素(元)を対応づける
対象変数は D の上を動く
関数記号に D の上の関数を対応づける
述語記号に D の上の述語を対応づける ※
単なる記号 に 具体的な要素、関数、述語 を対応
※ ただし述語記号 = (等号)の解釈は通常の等号とする
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解釈 ⊨ 閉論理式
⊭⊨
• M ⊨ A 解釈 M において論理式 A が真
• M ⊭ A 解釈 M において論理式 A が偽
1. A が原子論理式のとき M ⊨ P(t1, t2, …, tn) とな
るのは、Pの解釈が項 t1, t2, …, tn の解釈にお
いて真になる場合である.
2. M ⊨ A∧B となるのは (M ⊨ A かつ M ⊨ B ),
3. M ⊨ A∨B となるのは(M ⊨ A または M ⊨ B),
4. M ⊨ A⇒B となるのは (M ⊨ A ならば M ⊨ B),
5. M ⊨ ¬A となるのは M ⊭ A の時である .
M: Lucida Calligraph
⊭⊨ : MSゴシック(UTF)
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(続) 解釈 ⊨ 閉論理式
⊭⊨
6. M ⊨ ∀x A となるのは、すべての D の要素 u に
対して M ⊨ A[u/x] となるとき,
7. M ⊨ ∃x A となるのは、D のある要素 u が存在
して M ⊨ A[u/x] となるときである.
論理式 B に対して、B に含まれる自由変数 が
x1, x2, …, xm であるとき、 ∀x1∀x2…∀xm Bを
B の閉包 universal closureという. BC と書く
8. M ⊨ B となるのは M ⊨ BC となるときである.
M: Lucida Calligraph
⊭⊨ : MSゴシック(UTF)
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恒真な(valid)論理式
• いかなる解釈(モデル)に対しても真になる論理式
を恒真な valid 論理式という
「述語論理におけるトートロジー」ということもある
• どのような解釈をしても真になるということは、個別
の対象要素、関数記号、述語記号の解釈に依存し
ないという意味である
すなわち論理式の形(構造)により、恒真であるか
否かが定まる
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恒真な論理式の例(その一)
A は x を自由変数として含まない
1. ∀x A ⇔ A, ∃x A ⇔ A
2. ∀x B ⇔ ∀y(B[y/x]), ∃x B ⇔ ∃y (B[y/x])
ここに y は B に含まれていない新しい変数
3. A ∧ ∀x B ⇔ ∀x (A∧B),
A ∨ ∃x B ⇔ ∃x (A∨B)
4. A ∨ ∀x B ⇔ ∀x (A∨B),
A ∧ ∃x B ⇔ ∃x (A∧B)
5. ∀x B ∧ ∀x C ⇔ ∀x (B∧C),
∃x B ∨ ∃x C ⇔ ∃x (B∨C)
6. (∀x B ∨ ∀x C) ⇒ ∀x (B∨C),
∃x(B ∧ C) ⇒ (∃x B∧∃x C)
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恒真な論理式の例(その二)
7. ∀x∀y B ⇔ ∀y∀x B , ∃x∃y B ⇔ ∃y∃x B
(関連の話題が前出)
8. ∃x∀y B ⇒ ∀y∃x B
9. ∀x B ⇒ ∃x B
10. ¬∀x B ⇔ ∃x¬B, ¬∃x B ⇔ ∀x¬B
11. (A ⇒∀x B) ⇔ ∀x(A ⇒ B),
(A ⇒∃x B) ⇔ ∃x(A ⇒ B)
12. (∀x B ⇒ A) ⇔ ∃x(B ⇒ A),
(∃x B ⇒ A) ⇔ ∀x(B ⇒ A)
13. ∃x(B ⇒ C) ⇔ (∀x B ⇒ ∃x C)
14. ∀x(B ⇒ C) ⇒ (∀x B ⇒ ∀x C)
15. ∀x(B ⇒ C) ⇒ (∃x B ⇒ ∃x C)
ド・モルガンの法則
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恒真な論理式の説明
• (∃x B ⇒ A) ⇔ ∀x(B ⇒ A)
• この論理式に含まれる自由変数が y1, …, ym の
とき、任意の解釈 M について次をいえばよい
M ⊨∀y1…∀ym{(∃x B ⇒ A) ⇔ ∀x(B ⇒ A)}
• 上は閉論理式であるから次をいう(解釈 4, 6)
すべての u1, …,um ∈ D に対して
M ⊨(∃x B ⇒ A)[u1/y1,…,um/ym]
⇔ M ⊨ ∀x(B ⇒ A) [u1/y1,…,um/ym]
• 以下では、既に項の代入が済んでいると仮定
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恒真な論理式の説明(2)
M ⊨ (∃x B ⇒ A) ⇔ M ⊨ ∀x(B ⇒ A)
• M ⊨(∃x B ⇒ A) であると仮定する. これは解釈
4と7から「(ある v∈D が存在して M ⊨ B[v/x])
ならば(M ⊨ A)である 」 ということになる
• 上は「(M ⊨ B[v/x] を満たすような v∈D は存在し
ない)または(M ⊨ A)である 」となる
• さらに「(すべての v∈D に対して M ⊭ B[v/x] )ま
たは(M ⊨ A)である 」となる
• 論理式 A は x を自由変数として含まない
「(すべての v∈D に対して (M ⊭ B[v/x] または
M ⊨ A[v/x])である 」
半分終り
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恒真な論理式の説明(3)
M ⊨ (∃x B ⇒ A) ⇔ M ⊨ ∀x(B ⇒ A)
• M ⊨∀x(B ⇒ A) であると仮定する. 解釈6と4から
「すべての v∈D に対して(M ⊨ B[v/x] ならば
M ⊨ A[v/x])である 」 になる
• 論理式 A は x を自由変数として含まない「すべて
の v∈D に対して(M ⊭ B[v/x] または M ⊨ A )」
• 「(すべての v∈D に対してM ⊭ B[v/x])または
(M ⊨ A)である )」,さらに「(M ⊨ B[v/x] を満たす
v∈D は存在しない) または(M ⊨ A)である 」
• 「(M ⊨ B[v/x] を満たすv∈D が存在する) ならば
(M ⊨ A)である 」
終
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充足可能な論理式
• ある解釈(モデル)に対して真になる論理式を充足
可能な satisfiable 論理式という
• 充足可能でない論理式を充足不可能 unsatisfiable
という
• 論理式 A が充足不可能であることは、¬A が恒真で
あることの必要十分条件である
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冠頭標準形 prenex normal form
• 全称記号∀と存在記号∃が、他の論理記号の外
側にあるとき、冠頭論理式という
QxQyQz…A, Qは∀あるいは∃記号
A は全称記号も存在記号も含まない論理式
• 論理式 A と同値な冠頭論理式が存在する
これを冠頭標準形という
• (小野先生の説明) 恒真な論理式の 3, 4, 10, 11,
12 を使って同値変形する。ただし A が自由変数
x を含むときは、まず 2. により x を新しい変数で
置き換えておく
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冠頭標準形への同値変形
¬∃yP(x,y)∧∀y{∃zQ(x,y,z)⇒R(x,y)}
¬∃yP(x,y)∧∀w{∃zQ(x,w,z)⇒R(x,w)}
∀y¬P(x,y)∧∀w{∃zQ(x,w,z)⇒R(x,w)}
∀y∀w{¬P(x,y)∧(∃zQ(x,w,z)⇒R(x,w))}
∀y∀w{¬P(x,y)∧∀z(Q(x,w,z)⇒R(x,w))}
∀y∀w∀z{¬P(x,y)∧(Q(x,w,z)⇒R(x,w))}
訂正: 廣瀬先生のp.24, ∃zは∀zです
さらに
∀y∀w∀z{¬P(x,y)∧(¬Q(x,w,z)∨R(x,w))}
∀y∀w∀z{(¬P(x,y)∧¬Q(x,w,z))
分配法則
∨( ¬P(x,y)∧R(x,w))}
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冠頭標準形
• (廣瀬先生の説明) 与えられた述語の中の別の変
数が同じ変数の記号で表されているとき、すべて異
なる変数に書き換える
例: ∀x P(x,y)∨∃y Q(y,z)は∀x P(x,y)∨∃w Q(w,z)
∃x P(x)∧∀x Q(x, y)は∃x P(x)∧∀z Q(z, y)
• ド・モルガンの法則を用いて否定記号¬を内側に移
動する(10)
• 全称記号∀と存在記号∃を外側に移動する
(3, 4, 11, 12)
• さらに、冠頭標準形と論理和標準形、冠頭標準形と
論理積標準形を組合せることができる
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