Transcript 建築材料科学
4.建築材料の力学的性質(1)
外的応力に耐える建築材料の選択・設計
建築材料に要求される性質
弾性係数
比弾性係数(弾性係数/密度)
強度
比強度(強度/密度)
破壊靱性
疲労強度
変形・破壊メカニズム、材料構造依存性の理解は不可欠
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性変形と塑性変形
弾性変形
応力を取り除いたとき、変形が回復してもとの状態になる
塑性変形
応力を取り除いても、もとの状態に回復せず、永久変形が生じる
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性的性質
一対の原子のポテンシャルエネルギー
A
V
r
n
B
r
m
r:原子間距離
A:引力に対する比例定数
B:斥力に対する比例定数
2原子間に働く力
F
V
r
a
r
N
b
r
M
a=nA, b=mB, N=n+1, M=m+1
両原子間の平衡距離
r d0
V=min, F=0
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性的性質
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性的性質
両原子間距離を変更
d 0 d 0 d
元に戻そうとする力の発生
F' d
ひずみ
d / d 0
応力(単位面積あたりの力)
縦弾性係数(ヤング率)
E
F
r
r d0
4.建築材料の力学的性質(1)
各種材料の弾性的特徴
結晶性物質(金属・セラミック)
非晶性物質(ガラス)
変形に対して主結合が最初から抵抗する場合→線形弾性
非晶性物質(ゴムのような交錯した長い鎖状分子)
線形弾性(弾性変形内で応力とひずみが直線関係)
非線形弾性
結晶質と非晶質の混在している物質(高分子)
ガラス転移温度Tgを境に変化
Tg以上:粘弾性(粘性と弾性が共存)
軟化
分子鎖間のファンデルワールス結合の解除
弾性状態にある分子に取り囲まれた中を粘性的にすべる挙動
4.建築材料の力学的性質(1)
各種材料の弾性的特徴
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性論による応力-ひずみの表現
引張変形
E
引張応力
縦ひずみ
縦弾性係数
横ひずみ
ポアソン比
P /( D
E
dD / D
( dD / D ) /( dL / L )
G
せん断応力
せん断ひずみ
せん断弾性係数
/4)
dL / L
せん断変形
4
dH / H
G
4.建築材料の力学的性質(1)
弾性論による応力-ひずみの表現
4.建築材料の力学的性質(1)
一般化フックの法則
第1の添字:応力がかかる面、第2の添字:応力のかかる軸方向
xx
yy yy ( zz xx ) / E
zz zz ( xx yy ) / E
xx
(
xy xy / G ,
平面応力状態
yy
) / E
zz
yz
yz
yz zy ,
xy
yx
,
yz
zy ,
zx xz
zx xz
zx zx / G
/ G,
xy yx ,
zx 0
応力が2次元的
薄い平板が変形を受けるとき
平面ひずみ状態
yz
zz
zz
yz
zx
0
ひずみが2次元的
長い物体が長さ方向の変形を拘束されて垂直面内で一様な変形
を受けるとき
4.建築材料の力学的性質(1)
一般化フックの法則
4.建築材料の力学的性質(1)
平面応力状態
平面ひずみ状態
4.建築材料の力学的性質(1)
各種材料の塑性変形挙動の違い
結晶性物質
転移が塑性変形の原因
金属:室温以下でも転移は運動する
セラミック:室温では転移は生じにくい、高温では転移は運動する
イオン結合と共有結合→方向性強く結晶構造複雑→すべりが生じにくい
平均原子間距離が大→原子間切断に要するエネルギーが小→転移運
動よりも低応力での微小亀裂・空隙での応力集中による破壊
非晶性物質(高分子)
熱可塑性樹脂
高分子鎖のすべりとクレーズ(伸張配向した高分子鎖が内在する空隙)
の形成
熱硬化性樹脂
微小亀裂の形成
4.建築材料の力学的性質(1)
4.建築材料の力学的性質(1)
4.建築材料の力学的性質(1)
結晶材料の転移による塑性変形
単結晶の塑性変形=層状のすべり
結晶全体が同時にすべるのに必要なせん断応力
理論値:横弾性係数(G)の約数分の一
実測値:理論値の10-3~10-4
転移の運動→部分的なすべりの進行によって全体のすべりを促進
転移
刃状転移
らせん転移
混合転移
4.建築材料の力学的性質(1)
4.建築材料の力学的性質(1)
結晶材料の転移による塑性変形
4.建築材料の力学的性質(1)
結晶材料の転移による降伏・加工硬化
結晶材の降伏
転移の雪崩的運動:弾性変形領域→弾性限界→塑性変形領域
結晶材の加工硬化
塑性変形領域においてひずみの増加とともに応力が上昇する現
象
降伏後の変形→転移の増殖→転移の運動の障害→変形に対する
抵抗の増大→変形を続けるためにはより高い応力が必要
4.建築材料の力学的性質(1)
クリープ
応力がかかった状態で固体が時間とともに変形する現象
高温で発生しやすい(金属:融点の40~50%の絶対温度)
転移の再配列、結晶粒界のすべりが原因
遷移クリープ
定常クリープ
クリープ速度が時間の経過につれて減少
クリープ速度が一定
加速クリープ
クリープ速度が時間の経過につれて増大し、材料破断につながる
4.建築材料の力学的性質(1)
クリープ
4.建築材料の力学的性質(1)
クリープ
遷移クリープ
応力負荷直後の転移組織が定常クリープでの一定の組織構造をとる
までの過程
定常クリープ
転移の増殖と転移の消滅(熱エネルギーの助けによって起きる)のつ
り合い→一定の転移組織構造
結晶粒に応力が作用→方向性のある拡散(物質移動)→結晶粒の形
状変化→ひずみの定常的増加
空孔:引張応力の作用部分からそれに垂直な縮み方向へと移動
原子:空孔と逆方向に移動
加速クリープ
ボイドや亀裂の発生・成長
第二相粒子(強化目的)の微細組織(種類・大きさ・空間分布)の変化
4.建築材料の力学的性質(1)