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日本と東アジア経済専題研究(一) 日本與東亞經濟專題(一) 1 今日学ぶこと 第5章 人口減少時代の財政 1. 変わる政府の役割 3. 高齢社会の重圧 2 1. 変わる政府の役割 ●財政の機能(Musgrave,1961) (1) 資源配分機能 ⇒国防、公衆衛生、社会資本整備、法秩序の維持、基 礎教育、医療などの公共財の供給。 (2) 所得の再配分機能 ⇒最低所得の維持のための社会保障や税の再配分。 (3) 景気調整機能(経済安定化機能) ⇒不況期に減税や公共投資を拡大し、好況期に過熱 を防ぐため、増税と社会保障給付を減少させる。 3 1. 変わる政府の役割 ●教科書の構成 (1) 資源配分機能⇒Ⅱ.4.公共財の理論 (2) 所得の再配分機能⇒Ⅰ.3.高齢社会の重圧 (3) 景気調整機能(経済安定化機能) ⇒186頁の財政支出の需要創出効果 ⇒187頁の国債の中立命題 (4) 少子化と財政の持続可能性 ⇒Ⅰ.2. 財政改革の構図 (5) 税制改革⇒Ⅰ.4. (6) 財政投融資制度⇒Ⅰ.5. 4 1. 変わる政府の役割 ●二つの考え方 教科書181ページ (1) 政府は、人々にとって必要だが民間では利 益を生み出せないために生産できない道路 や国防などの純粋公共財の供給に限定す べきであるという考え方。 (2) 政府がなるべく市場に介入せず、市場の価 格メカニズムに任せれば、需要と供給は均 衡し、ヒト、モノ、カネの有限な資源が最も効 率的に配分されるという考え方。 5 1. 変わる政府の役割 ●大きな政府から小さな政府への転換 背景 先進国の財政難 (1) 1970年代末期、イギリスのサッチャー政権 が労働組合主義、福祉国家路線から市場 経済主義に転換。 (2) その後、アメリカのレーガン政権や日本の 中曽根政権も小さな政府路線を歩む。 6 政府の規模の測り方 (1) 国と地方の合計規模(教科書182ページ 表5-1) 一般政府総支出、政府最終消費支出または一般政府 総固定資本形成のGDPに対する割合が大きい (小さい)ほど政府規模が大きい(小さい)。 一般政府総支出 =政府最終消費(教育、福祉サービス) +一般政府総固定資本形成(道路、港湾など) +その他 7 政府の規模の測り方 ●教科書182ページ 表5-1 (1) 日本の①一般政府総支出、②政府最終消 費支出、③一般政府総固定資本形成の GDP比は、96年と05年を比べるとそれぞれ どうなっていますか? (2) (1)の規模は、それぞれ他の国と比べて大き いですか。小さいですか? (3) ②が③に比べて拡大してきている背景は何 ですか? 8 政府の規模の測り方 (2) 国の規模(教科書185ページ 表5-3) 一般歳出のGDPに対する割合が大きい(小さ い)ほど政府規模が大きい(小さい)。 歳出=一般歳出+地方交付税交付金+国債 費 ⇒70年代の石油危機や90年代後半以降、政府 規模が拡大した理由は、低成長にも関わらず 不況対策や高齢化対策で財政支出が増えた ためである。 9 1. 変わる政府の役割 ●財政赤字の規模 教科書185ページ 表5-3 (1) 毎年の財政赤字の規模 国債依存度=新規国債発行額/一般歳入 (2) 国債発行残高の規模 国債発行残高のGDP比 (3) 国債費のGDP比 (4) 基礎的財政収支(primary balance) =租税収入 ー(一般歳出+地方交付税交付金) 10 1. 変わる政府の役割 ●財政支出の需要創出効果 (1) 乗数効果 以前授業で学んだように、政府支出の規模以 上に国民所得が拡大する乗数効果があり ます。 国民所得の拡大分=乗数×政府支出 乗数=1/(1-消費性向) 11 1. 変わる政府の役割 ●財政支出の需要創出効果 問題 (1) 政府支出が100兆円、消費性向が0.8なら ば、国民所得はいくら拡大しますか? (2) (1)のうち、消費による波及的効果で生み出 された支出(派生需要)はいくらですか? ⇒ヒント 186ページ 12 1. 変わる政府の役割 ●国債の中立命題(Ricardoの中立命題) 公債を財源にしようと、増税を財源にしようと 家計の生涯の予算制約に対する効果は同じ である。 ⇒公債を発行して減税を行っても、将来の増 税を予想して人々が消費を減らし、貯蓄を増 やす。 ⇒この効果は、増税が家計の消費、貯蓄行動 に与える効果と同じである。 13 3. 高齢社会の重圧 ●表5-5 (1) 政府消費、政府固定資本形成のGDP比の 推移とその背景は何ですか? ●表5-6 (2) 06年の社会保障費の内訳は国民所得比で どうなっていますか? (3) 社会保障費の構成は、将来どのように変化 すると予想されていますか? 14 3. 高齢社会の重圧 ●公的年金制度 (1) 一般的に高齢時において所得稼得能力が 低下するリスクがある。 (2) 公的年金制度とは、将来の発生する所得 稼得能力の低下に備えて、年金加入者が年 金保険料を出し合い、その年金を将来加入 者に給付する制度である。 (3) 日本の公的年金制度には、国民年金、厚 生年金、共済年金がある。 15 3. 高齢社会の重圧 ●国民年金 日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべて の人が強制加入し、老齢・障害・死亡の保険事故に 該当したときに「基礎年金」を支給する公的年金制 度。 ●厚生年金 主として日本の民間企業の労働者が加入する公的年 金制度 ●共済年金 国家公務員、地方公務員、それに私立学校の教職員 の加入する公的年金制度 16 3. 高齢社会の重圧 ●日本の公的年金制度 (1) 公的年金には、積立方式と賦課方式がある。 日本の公的年金制度は、賦課方式である。 (2) 積立方式とは、現役時に保険料を積み立て ておいて、その分をその運用益とともに高 齢時の年金に充当する方式である。 (3) 賦課方式とは、各時点で年金収支が均衡 するように現役世代の保険料で引退世代 への年金給付額を調達する方式である。 17 3. 高齢社会の重圧 ●積立方式の利点 (1) 加入者が支払う保険料の分だけ民間貯蓄 が減少するが、同じ額だけ政府貯蓄が増え るため、一国全体の貯蓄は変化しない。 (2) 世代間格差を生み出さない。 18 3. 高齢社会の重圧 ●生涯の予算制約式 若年消費+若年貯蓄+若年年金保険料 =若年所得 老年消費=老年資産収入+年金給付 ●積立方式の年金給付額 年金保険料=年金給付額/(1+利子率) 19 3. 高齢社会の重圧 ●賦課方式の問題点 (1) 現役世代から徴収した保険料が老人世代 に給付されるので、民間貯蓄が減少し、一 国の資本蓄積を阻害する。 (2) 少子化が進むと、世代間の格差が生じる。 (3) 賦課方式の年金と公債の経済効果は同じ。 赤字を将来世代に負担させる制度。 20 2期間生きるモデル(世代重複モデル) 21 2期間生きるモデル(世代重複モデル) 22 2期間生きるモデル(世代重複モデル) 23 3. 高齢社会の重圧 ●国民負担率 (1) 国民負担率とは、1年間に納めた税金と年 金や医療保険などの保険料を合計した額 が、国民所得のうちどれくらいの割合になっ たのかを示したものである。 (2) 年金給付に対して、国は2004年以降、基礎 年金の半分を負担しています。 24 財政の持続可能性 25 財政の持続可能性 26 財政の持続可能性 27 財政の持続可能性 ●基礎的財政収支(Primary Balance) (1) 租税Tー政府支出Gを基礎的財政収支とい う。 (2) T>Gならプライマリー黒字、T<Gならプライ マリー赤字という。 28 財政の持続可能性 ●財政の持続可能条件 ⇒(2.6)式が満たされなければ、国債発行額が 無限に大きくなり、財政は破綻する。 ⇒少子化で経済成長率gYが低下する将来は、 τ>g(プライマリー黒字)でなければならない。 29 財政の持続可能性 (1) 少子高齢化によって、経済成長率が金利よりも低 くなると予想されるとき、 (2) 公債残高と国民所得の割合を将来にわたって一 定にする(2.6)式の条件が成立するためには、 (3) プライマリー黒字が維持される必要がある。 (4) 小泉政権が2011年までにプライマリーバランスを ゼロ、すなわち、T=Gを目標に掲げたのはこのた めでしょう。 ⇒年金の国庫負担を検討するためには、(2.6)式の財 政の持続可能条件を考慮する必要がある。 30