Transcript 講義資料
国際経営 月曜日8-9限目 アジア研究所 小山直則 1 講義計画 ●年間講義計画 ⇒http://www.geocities.jp/naonorikoyama/tku99b/tk u99b.htm ⇒講義資料は上記のweb siteから各自ダウンロードし て下さい。 ●講義方法 ⇒毎回の講義の前半は私が講義する。後半は参加者 が報告する。 ●教科書 ⇒サローナー他著、石倉洋子訳(2002)『戦略経営論』 東洋経済新報社。 2 講義目的 ●個別企業の分析 ⇒各自が具体的な企業を選び、これを経営戦 略論の研究方法で分析すること。 ⇒そのためにまず経営戦略論の一部の理論を 学ぶ。 3 なぜ戦略が必要なのか? ●企業経営の課題 (1) どのような事業を選択すべきか? ⇒例. 喫茶店orファミリーレストランor居酒屋 (2) どのようにすれば利益を確保できるのか? ⇒利益↑=売上↑ー費用↓ (3) 外部環境の変化にいかにして適応していくべきな のか? ⇒例. 喫茶店を作ったが、隣にスタバができた。コー ヒー豆の価格高騰。消費構造の変化(店舗でコー ヒーを飲む消費者よりも持ち帰り客が増えてきた)。 4 なぜ戦略が必要なのか? ●企業経営のジレンマ (dilemma) ⇒(1) 経営戦略(例. 店舗 で座席を提供し、コー ヒーを販売する)は継 続的、安定的に実行 されることによって効 率性が上昇する。 ⇒(2) しかし、企業をめぐ る外部環境は日々変 化するため、経営戦 略を変化させる必要 がある。 ⇒(1)と(2)は互いに矛盾 するため、企業経営に はジレンマがある。 *同じ経営戦略を継続す ることによる効率性は、 学習効果によってもた らされる。 *座席を提供する店舗を つくったらこの固定費用 を回収する必要がある ため経営戦略の安定 性が必要となる。 5 なぜ戦略が必要なのか? ●企業経営のジレンマ (2) 経営戦略を変化させ (dilemma) るためには経営者の強 ⇒外部環境の変化に適応 力なリーダーシップが するため経営戦略が 必要であるから。 変わっていかなけれ (3) 一度作った生産設備 ばならないが、経営 の固定費用を回収する 戦略は変化させにく 必要があるから。 い。 (4) 頻繁に経営戦略を変 ⇒なぜ? 更していたのでは従業 (1) 継続的かつ安定的な 員が混乱する。 経営によって効率性 がもたらされるから (学習効果)。 6 なぜ戦略が必要なのか? ●企業成長とリスク分散 ⇒企業がリスクを分散さ せながら、成長してい くために戦略が必要 である。 ●リスク (1) 市場の飽和化 (2) 市場ニーズの変化 (3) 競合企業の登場 (4) 代替製品の登場 *市場の飽和化: 製品が 飽きられたり、同一製 品が大量に市場に供 給されたりして売上が 減少すること。 ●企業成長 ⇒企業規模を拡大(企業 成長)させると低コスト 化のメリットがあるが、 リスクもある。 7 なぜ戦略が必要なのか? ●企業成長 ⇒企業規模を拡大(企業 成長)させると低コスト 化のメリットがあるが、 リスクもある。 ●企業成長のメリット (1) 規模の経済性 ⇒市場シェア拡大と大量 生産によって生産単 価を低下させる。 ⇒市場が飽和すると大規 模な固定費が回収で きなくなる(リスク)。 (2) 範囲の経済性 ⇒喫茶店だけではなく夜 は居酒屋を経営して 複数事業によって生 産費用を低下させる。 ⇒複数事業によってリスク 分散できる。 8 なぜ戦略が必要なのか? ●経営戦略の必要性 ⇒①企業活動の継続性・ 安定性の確保および ②外部環境の変化への 適応 のために経営戦略が必 要である。 ●経営戦略の目的 ⇒リスクを分散させながら、 企業を成長させていく こと。 ●経営戦略論の内容 (1) 企業戦略(Corporate Strategy) (2) 競争戦略 (Competitive Strategy) (3) 機能別戦略 (Functional Strategy) 9 経営戦略論とは ●経営戦略論の内容 (1) 企業戦略(Corporate Strategy) ⇒企業がどのような製品 を生産し、どのような 市場で販売するかを 決定する戦略を企業 戦略という。 (2) 競争戦略 (Competitive Strategy) ⇒競合他社とどのようにし て競争していくかを決 定する戦略を競争戦 略という。 (3) 機能別戦略 (Functional Strategy) ⇒研究開発、製造、流通、 販売などの事業を行う ために必要な機能別 の戦略を機能別戦略 という。 10 企業戦略(Corporate Strategy)とは ⇒喫茶店事業を始めても、 ●事業構造の戦略 (Strategy for Business 必ず市場の飽和を迎え Structure) る。 ⇒企業戦略とは、喫茶店 ⇒また、まったく新しい喫 orファミリーレストランor 茶店事業を行う競争相 手が登場する。 居酒屋のいずれの事 業領域を選択するかと ⇒このようなリスクを考慮 いう事業構造の戦略で しながら事業領域の選 ある。 択と拡大(企業成長)を 目指すのが事業構造 の戦略である。 11 競争戦略(Competitive Strategy)とは ●競争戦略 ⇒競合企業が市場に参入 ⇒したがって、企業規模 の拡大(企業成長)は新 してきたり、低価格の製 規参入企業に対する参 品を供給してくるリスク 入障壁となる。 に対抗するための戦略 が競争戦略である。 ⇒なぜなら、新規参入企 業は既存企業よりも小 ●例. 参入障壁 規模であるから規模の ⇒企業規模を拡大させる 経済性による低コスト と生産単価が低下する 化が難しいからである。 ためより低価格で販売 できるようになる。 12 企業戦略の具体例 既存製 新製品 品 既存 市場浸 新製品 市場 透戦略 開発戦略 新市 新市場 多角化 場 開拓戦 戦略 略 ⇒喫茶店の開始し、売上 高と市場シェアを拡大さ せる(市場浸透戦略)。 ⇒持ち帰りサービスを開始 し、新規顧客を開拓す る(新市場開拓戦略)。 ⇒紅茶ラテ(新製品)を開 発する(新製品開発戦 略) ⇒夜に居酒屋事業を始め る(多角化戦略)。 13 企業戦略の具体例 既存製 新製品 品 ●問題 各自で具体例を 考えてみましょう。 既存 市場浸 新製品 市場 透戦略 開発戦略 新市 新市場 多角化 場 開拓戦 戦略 略 14 企業戦略の具体例 ●水平的統合 ⇒同一製品やサービスを ⇒水平的統合は企業規 模の拡大によって生産 提供している企業同士 単価を引き下げるため の合併を水平的統合と の企業戦略である(規 いう。 模の経済性)。 ⇒日本の鉄鋼業界では水 平的統合が進んでいる。 ⇒生産単価の低下によっ て市場シェアを拡大さ 例.最近、新日本製鉄と住 せるのが目的であれば、 友金属工業の合併が 市場浸透戦略のため 報道されている。 の統合であるといえる。 15 企業戦略の具体例 ●垂直的統合 ⇒川上産業と川下産業の 合併を垂直的統合とい う。 ⇒市場取引で部品や製品 を入手(外注)するので はなく、自社内で内製 するための統合を垂直 的統合という。 ⇒例. 自動車産業 川上産業(部品産業、デン ソー) 川下産業(組立産業、トヨ タ) ⇒トヨタとデンソーは合併 していないが、垂直統 合的企業である。 ⇒現代の企業は垂直的 統合を行うことが珍しく なってきている。 16 企業戦略の具体例 ●垂直的統合の例 ⇒マイクロソフト社 ①OS(Windows)の設計 開発部門 ②Windows上で動作する Application Softの設 計開発部門 ⇒Windowsという他社に まねできない中核的 能力(コア・コンピタン ス)を保有し、 ⇒それを維持するための 費用がそれから得ら れる収益よりも小さい とき垂直的統合のメ リットが存在する。 17 企業戦略の具体例 ●問題 垂直的統合による自社内生産よりも市 場取引(外注)の方を選択する方がメリットが 大きい理由を規模の経済性と範囲の経済性 の観点から述べてください。 18 企業戦略の具体例 ●多角化戦略 ⇒複数事業を行うような 戦略。 ⇒例. キャノン カメラ事業、事務用機器 事業 ●多角化戦略のメリット (1) 未利用資源の活用 ⇒昼間は喫茶店として店 舗を利用し、夜間は居 酒屋として用いる。 ⇒複数事業を行うことに よって範囲の経済性が もたらされるのは、未利 用資源を有効に活用し 生産単価を低下させる ことができるからである。 (2) シナジー効果 ⇒ 19 企業戦略の具体例 (1) 未利用資源の活用 ⇒範囲の経済性 (2) シナジー効果 ⇒範囲の経済性 ⇒複数事業間に働く相乗 効果のことをシナジー 効果という。 ⇒日本の私鉄は鉄道沿 線に百貨店や遊園地 事業を行っている。 ●シナジー効果が働く理 由は? ⇒鉄道を利用して百貨店 や遊園地に行く人が増 えると鉄道収入が拡大 するとともに、百貨店や 遊園地事業からの収入 も得られるからである。 20 企業戦略の具体例 ●問題 多角化戦略によって範囲の経済性が 働く理由を未利用資源とシナジー効果という 言葉を用いて説明してください。 21