Transcript 中性子干渉実験
中性子干渉実験 2008/3/10 A4SB2068 鈴木 善明 目次 実験の目的 短距離での相互作用 量子パラメトリック共振 実験 課題 今後の予定 まとめ 実験の目的 存在の可能性が示唆される新しい相互作用の探 索。 中性子ビームは波長が短いため、これを用いた干渉実 験は非常に感度がよく、観測できるかも。 うまくいけば、余剰次元なども見えてくる可能性 がある。 短距離での相互作用 様々な実験や理論が有効範囲が非常に短 い相互作用が存在する可能性を示唆 この相互作用が実際に存在すると? 重力ポテンシャルの理論値からのずれとして 観測される可能性がある! 探索する領域 縦軸がα(相互作用の強さ)、 横軸がλ(相互作用の有効距離) 今回、主に調べようとしている領域 出典 : arXiv:0802.2350 短距離力によるポテンシャル 前述のような短距離での相互作用があると、物質に ビームが入射するときに、有効距離と同じくらいのス ケールで滲み出すようなポテンシャルが発生する。 量子パラメトリック共振 ビームが入射する物質にギャップがある場合を考える。 量子パラメトリック共振 ギャップ部分の短距離力によるポテンシャルは・・・ 量子パラメトリック共振 このポテンシャルによって、ギャップ部分での波数が変 化する。波数は、 であるから、真空中(V=0)での波数を k0 とすると、 となる。 量子パラメトリック共振 短距離力のポテンシャルによって、ギャップ部での中性 子波は境界面に近づくほど細かくなる。 量子パラメトリック共振 共振条件 •観測される波は正方向に進む波のみ •正方向に進む波の位相が境界面でそろう •波が2L進んだとき、位相変化が2πの整数倍 位相変化というのは、波数をxで積分することで求まるから、 共振条件は、 量子パラメトリック共振 実際にk(x)を代入して計算すると、 ηは非常に小さいパラメータなので、 量子パラメトリック共振 だから、 この条件を満たすことで、共振が起こる。 量子パラメトリック共振 一方この系には、短距離力によるものではない、通常の井戸 型ポテンシャルも存在する。短距離力によるポテンシャルはこ の井戸型ポテンシャルに比べて非常に弱い。 それぞれのポテンシャルによる透過係数を ts : 井戸型ポテンシャル tw : 短距離力ポテンシャル T : 全体のポテンシャル と書くと、 量子パラメトリック共振 このような2つのポテンシャルが存在する場合、 と近似できる。 (短距離力によるポテンシャルが非常に弱 いので、|tw|2≒1) 指数関数の肩に乗っているので、積をとると位相は和に なるので、 量子パラメトリック共振 このように、短距離力による微小なポテンシャル は透過率には大きな影響を与えないが、位相を 変える効果がある。これによって共振が起こる中 性子波の波長がズレる。 このズレが観測できれば、短距離力の存在を 明らかにできるかも!? 参考文献 : arXiv:0709.3266 , Phys.Rev.C75,015501(2007) 実験の外観 ポテンシャルに条件を満たしたギャップがあると、位相が大 きくズレる。 実験では、実際にギャップ有りとギャップ無しではどのくら い位相がズレるかを観測する。 ギャップ有り カ ウ ン タ ー ギャップ無し エタロンによるビームスプリッター この実験ではビームの経路を2つに分ける必要 がある。これにはエタロンを用いる。 ミラー 実際の装置 実際の装置ではエタロンを2つ組み合わせ、1つ目のエ タロンでビームを分け、2つ目のエタロンで2つのビーム を1つに戻して干渉させる。 ビームはVCNを使用 課題 途中に挟むギャップはショートレンジの相互作用の有 効範囲と同じくらいのスケールでなければならないか ら、ギャップの境界面もナノスケールで平坦化する必 要がある。 十分なデータ量を得るためにはある程度の太さの ビームが必要である。そのため、ビームが当たるエタ ロンのミラー部分と、途中に入れるギャップの面積を 出来るだけ大きくしなければならない。 課題 2つに分けたビームが影響し合わないように、2つの 経路を十分に離す必要がある。そのためには、エタロ ンのギャップを広くとらなければならない。 今後の予定 ギャップを作るための平坦化は企業やナノテクセンターに 問い合わせ中。 来月には、理化学研究所でエタロンに用いるミラーを制作 する予定。 年内には装置を完成させ、来年から実際の実験に入りたい。 中性子の線源としては、J-PARCではVCNを利用できない ため、ILL(Institute Laue Langevin)のResearch Reactor の使用を予定している。 まとめ 中性子ビームを用いた実験は非常に高感度で、 今まで到達できなかったようなスケールでの効 果を測定できるかもしれない。 いくつか課題はあるが、成功すれば新しい物理 の発見につながる、とてもセンセーショナルな 実験である。 まとめ 修論までになんとか結果出します!! 理論、装置ともに色々と難しいことも多 いので、是非応援してやってください。 〜付録〜 中性子干渉実験 中性子ビームは物質波であるため、波長が短く、 これを用いた干渉実験は非常に感度がよい。 中性子干渉実験の代表的な例として、シリコン単 結晶の干渉計を用いて行われた、COW実験が挙 げられる。 この実験では中性子ビームの経路を2つに分け、 その干渉を見る。 中性子干渉実験 高 カ ウ ン タ ー 低 重力の強さが高さによって異なることを利用 し、干渉計を回転させて、干渉の回転依存 性を測定した。 中性子干渉実験 結果は、回転角に依存した 干渉が観測された。 これにより、重力の高さに よるわずかな差を見ること が出来る。 このように、中性子を用いた干渉実験は非常に小さな 効果まで測定できる、高感度な実験である。