エウロパ探査の魅力 (長沼毅 広島大)
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Transcript エウロパ探査の魅力 (長沼毅 広島大)
国際共同木星総合探査計画LAPLACE・WG会合
2008年1月28日(月) 13:45~14:30
東工大・石川台2号館115号室
エウロパ探査の魅力
広島大学 大学院 生物圏科学研究科
長沼 毅
[email protected]
固体天体表層:生物学的に何が問題か?
熱(中心母星の型、距離、tidal lock)
圧力(気圧、大気)
大気の酸化・還元状態
液体の水
塩分、pH、Eh
大陸の形成(マグマの酸化、炭酸塩)
分子、電子の授受(酸化還元)
熱水噴出孔、地下生物圏
放射線の遮蔽
大気の遮蔽効果
アポロ月ミッション
スペースシャトルSTS-81
国際宇宙ステーション内
国際線航空機高度(11 km)
海上
日本人平均
(うち宇宙線
法令で定める線量限度
440 mSv year-1
330 mSv year-1
180 mSv year-1
14 mSv year-1
0.3 mSv year-1
2.4 mSv year-1
0.4 mSv year-1 )
50 mSv year-1
遮蔽効果は物質の「量」で決まる:
大気(100 km)=地表で1気圧=水柱10 m
水柱10 m = 岩石 3~4 m
大気の遮蔽効果
アポロ月ミッション
スペースシャトルSTS-81
国際宇宙ステーション内
国際線航空機高度(11 km)
海上
日本人平均
(うち宇宙線
法令で定める線量限度
致死線量
(線量率?)
440 mSv year-1
330 mSv year-1
180 mSv year-1
14 mSv year-1
0.3 mSv year-1
2.4 mSv year-1
0.4 mSv year-1 )
50 mSv year-1
ヒト LD100
7~8 Gy
分子死
1,000 Gy (≒Sv)
放射線耐性菌 26,400 Gy
〔60 Gy hr-1なら死なない〕
大気の遮蔽効果
火星ミッション
アポロ月ミッション
スペースシャトルSTS-81
国際宇宙ステーション内
国際線航空機高度(11 km)
海上
日本人平均
(うち宇宙線
法令で定める線量限度
致死線量
(線量率?)
ヒト LD100
分子死
放射線耐性菌
1,000 mSv trip-1
440 mSv year-1
330 mSv year-1
180 mSv year-1
14 mSv year-1
0.3 mSv year-1
2.4 mSv year-1
0.4 mSv year-1 )
50 mSv year-1
7~8 Gy
1,000 Gy (≒Sv)
26,400 Gy
火星由来の隕石は意外と低温で地球にやって来た
ALH84001の惑星間飛行
約40~39億年前の隕石衝突で変成。
(このときは火星から飛び出なかった)
約1500万年前の隕石衝突で火星脱出。
約1万3000年前に地球の南極に落下。
1984年12月のANSMET(米)で発見(1.93 kg)。
http://www.nasda.go.jp/press/1999/03/img/radiat_990303a_f23_j.gif
10-3 cm-2 d-1 [104 MeV]-1
= 10-7 cm-2 d-1
108 cm2=1 ha で1日10ヒット
1 m2 だと 103日
(2.7年)で1ヒット
104 MeV =10 GeV
隕石内ハビタブルゾーンにおける
放射線・衝突の影響評価
高エネルギー
重粒子
(>10 GeV)
Hab.
Zone
隕石
「方舟」
謎の深海生物
チューブワーム
ゆうしゅ
有鬚動物門ハオリムシ綱
消化器官(口・胃腸・肛門)
がない
食べることをやめた動物
栄養供給は体内の
共生微生物に依存する
海底火山(熱水噴出孔)やメタン湧出に生息
チューブワームの体構造
イオウ酸化細菌
イオウ(硫化水素)の酸化から
化学エネルギーを得て、それで
CO2固定(独立栄養)を行う。
まるで、植物(葉緑体)が光エ
ネルギーを用いてCO2固定
(独立栄養)を行うみたい。
これは 暗黒の光合成 と言える
(専門的には化学合成と言う)
光合成 vs. 化学合成
Eating the Planet Earth
究極的に何を食べて生きるか
Herbivory
Carnivory
Ominivory
草食
肉食
雑食
Heliovory
太陽食(Heliocentricism)
Geovory
地球食(Geocentricism)
Planetovory 惑星食
(海と火山のある惑星)
チューブワームの夢
熱水中の微生物
周囲海水 104 ml-1
熱水 105 ml-1
μm
μm
熱水パイライト上の微生物
アーキアン
パーク計画
熱水噴出孔の
下を掘る
IODP 国際深海掘削計画
JOIDES Resolution号
統合国際深海掘削計画
IODP
地球深部探査船「ちきゅう」
JOIDES Resolution号
地下生物圏研究
バイオカッター
嫌気グローブボックス
地下生物圏のバイオマス(生物量)
生物量
〔総体重〕
陸上と海洋 地下生物圏
植物
1~2兆トン
0
動物
(人間)
<100億トン
(3億トン)
0
(0)
微生物
3000億トン 3~5兆トン
岐阜県・東濃鉱山で先駆けました
ここの蛇口から出る地下水は
約1万年前に降った雨水!
東濃地科学センター/東濃鉱山
東濃鉱山 地下125m
ウラン鉱床が露出している場所もある
東濃鉱山 地下ラボ
地下125 m
日経新聞2001年12月8日夕刊より
東濃鉱山 地下ラボ 地下125 m
(地球化学ラボ)
嫌気グローブボックス
水質モニタリング装置
地下水採取 試錐孔
東濃花崗岩の地下水微生物
瑞浪超深地層研究所
岐阜県瑞浪市
2004年10月14日
水成岩(堆積岩)と火成岩
有機物(栄養)を含んでいる
ここでは変成岩は
とりあげない。
花崗岩
(結晶質の火成岩)
有機物はない → 栄養はどこから摂るのだろう?
地下の
食物連鎖
地下は酸欠
多様な酸化剤を
使う嫌気呼吸の
連鎖と階層構造
地底の海: 惑星生命観
Heliocentricism
Geocentricism
地底の海(subsurface ocean)
南極氷床下湖(ボストーク湖)
77oS, 105oE
3538 m
3743 m
3603 mで
観察された
微生物
Karl et al. (1999) Science, 286, 2144-2147.
南極氷床下(パラレル)ワールド
宇宙空間へ
光合成
暗反応
酸素呼吸
光合成
明反応
有機物
有機物
地底 の海
岩石に取り
込まれる
地熱
生命とは何か?
細胞・個体レベル
「負のエントロピー」を食って、構造と情報の
秩序を保つシステム(Schroedinger, 1944)
惑星生物圏レベル
還元端 と 酸化端 の間で揺れ動く炭素化合物
(メタン)(二酸化炭素)
(有機物)
CH4 ⇔ CH2O ⇔ CO2
H2O
還元力
酸化力
H2
O
CH4
CH2O
メタン
生命/有機物
CO2
二酸化炭素
ゆく河の流れは絶えずして
ゆく河の流れは絶えずして、
しかももとの水にはあらず。
よどみに浮かぶうたかたは
かつ消え、かつ結びて、
久しくとどまりたるためしなし。
『方丈記』 鴨長明 (1212)
ゆく河の渦も絶えずして、
しかももとの水分子にはあらず。 (詠み人知らず、2004)
人体の代謝回転(turnover)
私をつくる原子・分子は数ヶ月で入れ替わる。
私は、物質的には、一年前の私とは違う。
つまり、私は一年前の約束を守る義務がない。
しかし、人々は、私に言う、
一年前の約束を守れと。
何故か?
それは人々が、私の ID を
物質にではなく、私という
「生命の渦」(パターン)に
置いているからだ。
H2O
還元力
酸化力
H2
O
CH4
CH2O
メタン
生命/有機物
CO2
二酸化炭素
地球生物圏
宇宙空間へ
水素 + 酸素
(H2) (O2)
光による分解
光合成
液体の水
メタン → 有機物 → 二酸化炭素
CH4 ← CH2O ← CO2
地熱に
よる分解
岩石に
取込まれる
酸素 + 水素
(O2) (H2)
生命
表面温度
大気組成
CO2
N2
O2
なし あり
–20 15℃
98% 0.03%
1.9% 79%
trace 21%
宇宙空間へ
光による分解
金星生物圏
水素 + 酸素
(H2) (O2)
水蒸気
メタン → 有機物 → 二酸化炭素
CH4 ← CH2O ← CO2
平均表面温度 480℃
地熱に
大気組成 CO2 98%
よる分解
N2 1.9%
O2 trace
岩石に
酸素 + 水素
質量
地球の82%
取込まれる
(O2) (H2)
表面重力 地球の91%
液体の水
宇宙空間へ
火星生物圏
水素 + 酸素
(H2) (O2)
光による
分解
メタン → 有機物 → 二酸化炭素
CH4 ← CH2O ← CO2
平均表面温度 -50℃
地熱に
(-140~+20℃)
よる分解
大気組成 CO2 95%
N2 2.7%
O2 0.13%
岩石に
酸素 + 水素
質量
地球の11%
取込まれる
(O2) (H2)
表面重力 地球の38%
液体の水
木星のガリレオ衛星の内部構造
Io
Ganymede
Europa
Callisto
木星第一衛星イオの火山活動
5ヵ月後
木星第二衛星・エウロパの海
木星第一衛星・
イオの火山活動
エウロパの
氷殻表面
エウロパの
氷殻下海
海があるところ、
地底だろうが
エウロパだろうが
海の男・女の心意気!
氷殻 5-50 km
海洋 50-100 km
宇宙空間へ
エウロパ生物圏
水素 + 酸素
(H2) (O2)
光による
分解
液体の水
メタン → 有機物 → 二酸化炭素
CH4 ← CH2O ← CO2
地熱に
よる分解
岩石の
取込量は
少ない?
平均表面温度 -110℃
質量
酸素 + 水素
(O2) (H2)
地球の0.008%
表面重力 地球の13%
エウロパ海の水深 50 km
=地球海の水深 6.5 km
エウロパであり得る反応
CO2 (aq) + 4H2 (aq) ⇔ CH4 (aq) + 2H2O (l)
〔サバチエ反応〕
2Fe(OH)3 (aq) + H2 (aq) ⇔ 2FeO (s) + 4H2O (l)
フィッシャー-トロプシュ反応
高温・高圧
H2 + CO
↓
-CH2- CO2 H2O
Fisher-Tropsch synthesis
(F-T synthesis)
石油化学業界では
よく知られた合成反応
好熱菌による水素酸化
2H2 + O2 2H2O
Aquifex pyrophilus
(普通の水素酸化菌の反応)
Pyrolobus fumarii
Hydrogenobacter thermophilus
4H2 + CO2 CH4 +2H2O
Methanopyrus kandleri
(サバチエ反応的な水素酸化)
Methanothermus fervidus
好熱菌による H2酸化
Thermophilic oxidation of H2 and CO
10
9
Growth pH
8
7
6
5
4
3
4H2+CO2
2H2+O2
CO+H2O
2
1
0
30
40
50
60
70
80
90
Growth temperature ( oC)
100
110
120
サバチエ反応
Fisher-Tropsch反応の一部
4H2 +CO2 CH4 + 2H2O
宇宙ステーションへも応用:
●CO2濃縮
●CO2還元
Paul Sabatier (1854-1941)
1912年ノーベル化学賞
●O2のリサイクル
生物圏を支える「水の分解」-地下では何が起きているか
光による水の分解(光合成明反応)!
CO2 + H
↓
有機物
H+O
↑
H2O
光合成暗反応
(CO2還元)
呼吸
(有機物酸化)
CH4 H2S NH3 Fe2+
還元力
地熱による
水の分解?
O + (有機物)
↓
CO2
?
H+O
↑
H2O
Fe3+ NO3- SO42- CO2
酸化力
放射線による
水の分解?
木星(エウロパ)探査:私のツボ
熱源:潮汐加熱
熱流量
海水組成:溶存塩類
40Kその他による水の分解:酸素源
イオのプラズマトーラス(IPT)
木星のバンアレン帯:放射線
土星のツボ
タイタン:エタン・メタン「非極性」海
エンケラドゥス:熱源