M - 国立大学法人鹿児島大学工学部機械工学科
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Transcript M - 国立大学法人鹿児島大学工学部機械工学科
1
放射線と環境
鹿児島大学工学部機械工学科 中村祐三
放射線・放射性同位元素(RI)の利用
(理学・工学・農学・医学・他)
安全管理・リスクマネージメント
原子炉および周辺技術
イオン加速器および周辺技術
電子線利用技術
X線利用技術
トレーサー利用技術
使用者・取扱者
被爆者(患者)
事業所(大学・企業・他)
社会・環境
2
研究
メリット
デメリット
アセスメント
モニタリング
教育
基盤技術
応用技術
周辺技術
安全管理
緊急事態管理
法的規制
情報
公開
個人・社会・環境への
即時的・持続的影響
3
JCO臨界事故(1999年9月30日)
(茨城県東海村再
転換工場)
10
東海村舟石川
3人の職員が、注濃
縮(18.8%)の硝酸
ウラニル約16kgを
バケツで沈殿槽に
入れたところ、臨界
事故発生。
1
0.1
2人死亡
1999.10.1 3:23
1999.10.1 0:29
1999.9.30 21:35
1999.9.30 18:41
1999.9.30 15:47
0.01
1999.9.30 12:53
ガンマ線空間線量率(μSv/h)
JCO
被爆量 17Sv
10 Sv
8SV
4
自然放射線
年間 2.4 mSv
(時間平均 0.27 mSv/h)
暮らしの中の放射線
胸部CT(1回)
宇宙線
国内の自然放射線(/年)、2.4 mSv/y
(0.36 mSv/y)
一般公衆の線量限度(/年、医療被曝を除く)
大地γ線
(0.41 mSv/y)
胃のX線集団検診(1回)
体内全部
(1.63 mSv/y)
原子力緊急事態となるケース(1時間)
K-40
(0.18 mSv/y)
国内の自然放射線の差(県別)
ラドンなど
東京・NY飛行機往復
(1.5 mSv/y)
胸のX線集団検診(/1回)、軽水炉周りの線量目標値(/年)
異常が発生し原子力事業者が通報しなければならないレベル(1時間)
0.001
0.01
0.1
1
線量
(mSv)
10
5
熱中性子による235Uの核分裂
(天然ウランは、238Uが大部分であり、235Uの同位体存在比は0.7%)
熱中性子
235U
複合核
236U
核分裂生成物
(F.P.)
速中性子
γ線
速中性子
核分裂生成物
(F.P.)
ニュートリノ
6
原子炉(熱中性子炉)の基本的概念
第二世代の核分裂に利用できる中性子数
臨界係数=
第一世代の核分裂に利用できる中性子数
制御棒
制御棒
吸収
熱中性子
吸収
235U
速中性子
核分裂
減速材
減速材
漏洩
エネルギー放出:~200 MeV ( 3 × 10-11 J)
7
核燃料サイクル
精錬
ウラン鉱石
235U (0.7%)
転換工場
濃縮工場
UF6
軽水炉(3.4%)
UF6
増殖炉(20%)
再転換工場
再処理工場
回収ウラン
高レベル
放射性廃棄物
回収
プルトニウム
UO2
使用済燃料
原子炉
成型加工工場
低レベル
放射性廃棄物
燃料集合体
8
地球温暖化とCO2
9
地球温暖化と原子力発電
10
原子の構造
原子核
核子 質量数 A = Z + N
Z個の陽子(p)
N個の中性子(n)
Z個の軌道電子
同位体(存在比)
36
18
38
18
40
アルゴン Ar
原子番号Z = 18
18
Ar (0.33%)
Ar (0.063%)
Ar (99.6%)
11
原子質量単位(u もしくはamu)
12Cの原子量を12.000000としたとき、 12C原子一個あたりの質量を
12uとする。
1 u = 1.661 x 10-27 kg ;質量
= 931.5 MeV = 1.492 x 10-10 J = 3.55 x 10-11 cal ;エネルギー
(E = mc2、m;静止質量、c;光速より)
陽子の質量 = 1.0072765 u
中性子の質量 = 1.0086649 u
電子の質量 = 0.0005486 u
12
質量欠損と原子核の結合エネルギー
原子
Z個の電子(質量me)
Z個の陽子(質量Mp)
N個の中性子(質量Mn)
予想される原子の質量
M’ = Z(Mp + me) + NMn
実際の質量 M は予想される質量
M’’よりも小さい(質量欠損)。
↓
結合エネルギー = DMc2 = (M’ – M)c2
13
核子一個あたりの結合エネルギー
Eb/A (MeV)
10
8
6
4
2
0
0
50
100
150
200
A
(ただし、4Heのデータは抜けている)
250
多くの同位体について、核
子あたりの結合エネルギー
Eb/A を調べると、質量数A
の増加と共に増加して、A~
60近傍(鉄、ニッケル)で約
8.8MeVの最大値をとり、そ
の後徐々に減少している。
このことは、A~60程度の元
素がもっともエネルギー的に
安定な元素であることを示し
ており、実際に、地球の中心
部が鉄やニッケルでできて
いるように、天然に多く存在
している。
14
天然の、あるいは人工的に作られた不安定な原子核
過剰なエネルギーを粒子あるいは電磁波(放射線)
として放出して、壊変する(放射壊変)
放射能;核種が不安定で放射線を放出して改変する性質をいう
放射性核種、放射性同位体;放射能を示す核種
(放射性同位元素、ラジオアイソトープ、あるいはRIともいう)
安定核種、安定同位体;放射能を示さない安定な核種
例)天然カリウムK(原子番号19)
39K
40K
存在度
存在度
0.0117%
41K
93.2581% 安定
放射性(β壊変あるいはEC壊変)
存在度
6.7302%
安定
15
主な放射性核種と壊変、放射線 1
(1)238Uや232Thのように質量数が大きすぎ、不安定である核種。
主に、4Heの原子核(α粒子)が放出されることが多い(α壊変)。
α壊変(α崩壊)
A
Z
X
Y He
A 4
Z2
4
2
2
238
92
234
U
90Th
T 4.5109 y
226
88
Ra
222
T 1600y
86 Rn
(α粒子、α線)
α壊変は、質量数A ≥ 140 (大部分は原子番号Z ≥ 92)の核種で起こる。
Z ≥ 90では、核分裂が起こることもある。
16
主な放射性核種と壊変、放射線 2
(2)安定核種に比べて中性子数(N)が過剰または不足のため
に不安定な核種。
原子核の質量数は変わらず、中性子が陽子を放出(b-壊変)、陽子が陽
電子を放出(b+壊変)、または陽子が電子を捕獲(EC壊変、あるいは電
子捕獲)して変換し、安定核種に近づく。
β崩壊:中性子が富む核種で起こる。
A
Z
X Y b
A
Z1
n pe
β+崩壊: Q>1.02MeVの中性子欠損核種で起こる。
A
Z
X Y b
A
Z1
pne
n;中性子、p;陽子、e-;電子(b-)、e+;陽電子(b+)、
;ニュートリノ、;反ニュートリノ
b壊変に伴って放出される電子をb-線、陽電子をb+線という。これらは総
称して、b線と呼ばれる。
17
主な放射性核種と壊変、放射線 2(続き)
EC壊変(電子捕獲)
A
Z
X e Y
0
1
A
Z1
pe n
中性子欠損核種で起こる。EC壊変は、軌道電子を核
内にとりこむ過程であり、K殻電子で最も起こりやす
い。EC壊変に引き続いて、電子殻ではK殻電子の捕
獲によって生じた空孔を埋めるために、外側からのX
線が落込み、その際の軌道電子のエネルギー準位の
差に相当するエネルギーの特性X線が放出される。さ
らには、特性X線が外側の殻の軌道電子を叩き出す
過程もある(オージェー電子)。
18
主な放射性核種と壊変、放射線 3
(3)核異性体のように、励起状態にある原子核は過剰のエネ
ルギーを電磁波として放出し、より安定な状態に転移すること
が多い。これをg壊変といい、放出された電磁波をg線という。
壊変
核異性体転移(IT)
60mCo
Am
Z
X X g
A
Z
→ 60Co + g
内部転換(IC)
原子核の励起エネルギーが軌道電子に渡され、電子が放出され
る(内部転換電子)。低い励起エネルギー(≤ 0.2 MeV)で起こる。
内部転換が起こると、軌道電子殻に空位が生じるから、特性X線
やオージェ電子の放出も起こる。
19
壊変図式1
親核種
↓
210
84
0+
壊変の種類
確率(エネルギー)
0+
206
82
Po
エネルギー準位またはQ値)
↓
138.4 d
100% (5.305 MeV)
5.408 MeV
Pb
(安定)
↑
↑
スピン パリティ ↑
娘核種
典型的なα壊変の壊変図式(下線は↑で
差した数値、記号の説明である).
20
壊変図式2
1+
32
15
P
14.26 d
b+ 89.8%
EC 10.1%
b- (1.711) 100%
0+
32
16
S
2+
0+
22
11
Na
2.602 y
1.275
b+ 0.05%
22
10
Ne
b壊変、g壊変の壊変図式.
21
放射性核種の壊変と放射能
時刻 t における放射性核種の数N
N = Noelt
No;初期の放射性核種の数
壊変定数(崩壊定数)lと半減期Tとの関係
l
0.693
T
放射能の強さ (単位 Bq(ベクレル) = 1 壊変/秒)
dN
0.693N
A
lN
dt
T (1 Ci = 3.7 x 1010 Bq)
22
壊変定数(半減期)の測定
0.693N o 0.693t
log A log lN log(lN o ) lt log
T
T
log A
放射能強
度の対数
l
0.693
T
時間 t
23
X線の生成
24
中性子の生成
核分裂反応
235U
+ n → X + Y + 2~3 n
核融合反応
D + T → 4He + n + 17.62 MeV
D + D → 3He + n + 3.27 MeV
D:重水素(デュートリウム) 2H
T:三重水素(トリチウム) 3H
25
荷電粒子と物質を構成する原子との相互作用
電離・励起
荷電粒子
電子的な相互作用
核的な相互作用
原子核
運動エネルギーE
電子雲
はじき出し
空気中におけるアルファ粒子の飛程
R = 0.32 E 3/2
R [ cm]、E [MeV]
26
電子(β線)と物質を構成する原子との相互作用
電離・励起
軌道電子との相互作用
入射電子
原子核の電場との相互作用
制動放射
電磁波
β線
物質中での強度
I I oemx
m:吸収係数
最大飛程
Rb, max r = 0.542 Emax - 0.133 g/cm2
( 0.8 MeV < Emax < 3 MeV)
ρ;密度
27
γ線(X線)と物質を構成する原子との相互作用
散乱γ線
叩き出された電子
入射γ線
入射γ線
電離
反跳電子
電離
K
K
L
L
M
M
光電効果
コンプトン散乱
電子
-
入射γ線
K
L
M
電子対生成
陽電子 電離
28
γ線(X線)の物質中の透過と吸収係数
物質中におけるγ線の強度
I I oemx
吸収係数
m
光電
効果
mphoto
m
吸収係数
電子対生成
mpair
m = mphoto
(光電効果)
+ mCompt
(コンプトン効果)
+ mpair
(電子対生成)
m Compt
コンプトン散乱
1
E= 1.02 MeV
γ線のエネルギー
log(E/mec2)
29
放射線と物質との相互作用、および放射線計測1
線、b線、g線(X線)が物質中に入射すると、物質を構成
する原子と相互作用して、原子を電離あるいは励起する。
これらの電離・励起作用の結果、物理的・化学的・生物学
的効果が生じる。
また、電離・励起作用を利用して、放射線の計測が可能で
ある。
(1) 気体電離
放射線による物質の電離作用で、正に帯電するイオンと電子の対が
形成される。空気のイオン対形成に要するエネルギーは35 eV程度
であるから、4 MeVの線によって~105個のイオン・電子対が形成
される。この電荷の量は非常に小さいが、これを増幅することによっ
て、放射線を計測することが可能である。
30
放射線と物質との相互作用、および放射線計測2
(2) 半導体との相互作用
シリコンSiやゲルマニウムGeのような半導体物質では、放射線との相互作
用によりエネルギーを受け取った電子が原子の束縛を離れて、伝導電子帯
にあげられ、また価電子帯には正の電荷を持つ正孔が生じる。これらの電
子・正孔対は、電圧のかかった半導体中を運動し、電流として検出できる。
(3) 蛍光
放射線との相互作用により、原子は電子的に励起された状態になる。イオ
ン性結晶や絶縁体では、原子の励起状態から安定である基底状態に遷
移するときに、蛍光を発する。よって、その蛍光量を測定すれば、放射線
の量を見積もることができる。
31
放射線と物質との相互作用、および放射線計測3
(4) 化学反応
放射線による原子の電離・励起は、化学反応をもたらす。例えば、写真
乳剤の臭化銀AgClは、放射線の飛跡にそった電離作用により、Ag+イ
オンが還元され、銀として析出し黒化の写真現象が生じる。
(5) 熱的効果
放射線が物質中に入射して損失したエネルギーの一部は、物質の熱
振動に使われ、温度があがる。このため、放射線照射によって付与さ
れた熱量を測定することで、放射線の量を見積もることができる。
32
放射線と物質との相互作用、および放射線計測4
(6) 中性子
中性子は電気的に中性であるため、荷電粒子やg線のように、電離・励
起作用がない。このため、中性子の量の測定には、中性子と原子核と
の核反応で生じる荷電粒子を利用する。
例えば、熱中性子では、10B(n, )7Liや6Li(n, )3Hの核反応で生じるa粒
子を利用して測定する。
速中性子では水素化合物をつかって中性子と水素の衝突で生じる反跳
陽子を用いて、間接的に測定する。
33
電離箱
34
比例計数管領域
35
GM計数管
放射線
電子
紫外線
陽イオン
のさや
陽極
1回の電離によって増幅される信号パルスの大きさは108倍!
36
放射線と半導体の相互作用
37
pn接合型半導体検出器の原理
38
半導体検出器の特質
(1)気体の電離を利用した電離箱、比例計数管、GM計数管では、気体の
イオン対の形成に要するエネルギーが~35 eVであったのに対し、半導体
の電子・正孔対の形成エネルギーはGeで3.0 eV、Siで3.5eVと小さい。
(2)また、g線のように電離能が小さい放射線では、密度の低い気体の電離
を利用した検出器では、測定効率が小さいのに対し、固体の密度は大きく、
従って阻止能も大きいので、感度よく測定できる。
(3)気体の電離を利用した測定器では、陽イオンの速度が遅いために、不
感時間があったり、あるいは、分析に対して時間的な制約があったのに対
し、固体内での電子・正孔の速度は早いので、分解能が著しく高い。
(4)半導体の温度が高くなると、伝導電子・正孔対の数が増え、計測に対す
る雑音が多くなる。従って、半導体検出器は、低温(通常液体窒素温度、77
K)で用いられる。
39
シンチレーションカウンター
放射線との相互作用により、あるいは光や電場によって、原子
や分子が励起され、より安定な状態に戻るときに、そのエネル
ギー差に相当する光を放出する。これを蛍光、あるいはルミ
ネッセンスという。光子の数を測定することにより、放射線の計
測を行うことができる。
無機物である絶縁体のルミネッセンスは、一般に固体中に含まれる不純物
の役割が大きい。例えば、アルカリハライド化合物中に含まれるタリウムイ
オンTl+が、励起されて基底状態に戻るときに、蛍光を発する。
アントラセンのような有機物の場合には、分子内の励起エネルギー準位から
基底状態に戻る際に、ルミネッセンスが現れる。
40
各種シンチレータ(蛍光体)の性質
シンチレータ
最高放
出波長
[nm]
減衰時間
[ns]
物理的
収率*
[%]
ZnS(Ag)
440
300
28(),
14(g)
NaI(Tl)
410
250
11.3
CsI(Tl)
550
750
11.9
LiI(Eu)
470
1300
2.8
BGO
505
0.3
2.1
CdWO4
520
1000
2.0
ナフタリン
C10H8
345
60
0.25
アントラセン
C6H4(CH)2C6H4
440
30
0.25
p,p’-ターフェニール
435
4
*物理的収率=光子エネルギー/粒子エネルギー
b線に対する蛍
光の相対強度
2.0
41
シンチレーションカウンターの原理
一つのダイノードで増倍する電子の数を5個とすると、10段のダイノード
がある場合、510 ≈ 107個の電子が形成される。
42
計測値の統計的な処理
Mを期待される壊変した核種の個数としたとき、m個の核種が壊変する確率
ポアソン分布
M M
e
m!
ポアソ ン分布
m
正規分布
(測定個数あるいは回数が多い時)
(m M )2
1
P(m)
exp
2
2
2
標準偏差
M
M= 5
0.2
P(m)
P(m)
0.25
正規分布
M = 10
0.15
0.1
0.05
0
0
5
10
m
15
20
43
計数率
計数率
m
R
t
計数率の標準偏差
R
R
t
t
誤差の伝播
mA: 放射性物質とバックグラウンドの計数値
A:
放射性物質とバックグラウンドの標準偏差
mB: バックグラウンドの計数値
B: バックグラウンドの標準偏差
正味の計数値
mn = mA m B
2
2
標準偏差
n A B mA mB
実効の計数値
mn n (mA mB ) mA mB
44
多数回測定時の計数
n 回の測定を繰り返し、i 番目の計数を mi とすると、平均値は
1
1n
mA (m1 m2 m3 ) mi
n
n i 1
であり、誤差の伝播の関係から、平均の標準偏差は以下になる。
mA
1 n 2 1 n
A
i
mi
n i 1
n i 1
n
45
線量に用いる単位1
吸収線量
電離放射線により1kgの物質中に1Jのエネルギーが付与されたとき、
1Gy(グレイ)とする。
自由空気の空気カーマ(照射線量 )
電離によって1 kgの空気中に作られる家電粒子の運動エネル
ギーの合計。単位はGyを用いる。
1 Gy =2.97 x 10-2 C/kg
線量(線量当量)
放射線の種類、エネルギーにより物質(生体)に及ぼす影響が異なる。この
ため、各放射線に対する線質係数(X、γ線;1、エネルギー不明の中性子;10、
エネルギー不明のアルファ粒子;20等)を掛けて、等価な線量とみなす。
46
線量に用いる単位2
実効線量(実効線量当量)
発癌、遺伝的欠陥等が発生する頻度は放射線の線量を関数とする確率
で表される。実効線量当量は、この確率的影響を容認できるレベルに制
限するために導入された線量であり、Sv(シーベルト)の単位で表される。
等価線量(組織線量当量)
放射線照射の量によって障害の重傷度が変わり、しきい値がありうる
ような非確率的影響(皮膚の赤斑、白内障など)を防止するために導入
された線量である。単位は、Sv(シーベルト)である。
47
第5条(実効線量限度)
規則第1条第11号に規定する放射線業務従事者の各組織の一定
期間内における線量限度は、次のとおりとする。
(1)
平成13年4月1日以後5年ごとに区分した各期間につき100
ミリシーベルト
(2)
4月1日を始期とする1年間につき50ミリシーベルト
(3)
女子(妊娠不能と診断された者、妊娠の意思のない旨を使用
者、販売業者、賃貸業者又は廃棄業者に書面で申し出た者及
び次号に規定する者を除く。)については、前2号に規定する
ほか、4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする
各三月間につき5ミリシーベルト
(4)
妊娠中である女子については、第1号及び第2号に規定する
ほか、本人の申し出等により使用者、販売業者、賃貸業者又
は廃棄業者が妊娠の事実を知ったときから出産までの間につ
き、人体内部に摂取した放射性同位元素からの放射線に被ば
くすること(以下「内部被ばく」という。)について1ミリシーベルト
48
第6条(等価線量限度)
規則第1条第11号に規定する放射線業務従事者の各組織の一
定期間内における線量限度は、次のとおりとする。
(1)
眼の水晶体については、4月1日を始期とする1年間につ
き150ミリシーベルト
(2)
皮膚については、4月1日を始期とする1年間につき500ミ
リシーベルト
(3)
妊娠中である女子の腹部表面については、前条第4号に
規定する期間につき2ミリシーベルト
49
放射線の生体に与える影響1
放射線障害の過程
1) 物理的過程:放射線が生体に照射されると、細胞内分子に電離あ
るいは励起の形でエネルギーが吸収される。
2) 化学変化:電離あるいは励起された分子が生体構成物質の化学
変化を引き起こす。
3) 初期障害:細胞構成物質の重要な分子(DNA、RNA、蛋白質等)
の化学変化が起こる。
4) 拡大過程:初期障害が細胞内の物質代謝によって拡大され、検出
可能な生化学的障害となる。
5) 最終効果:初期障害が拡大されると最終的に細胞死が起こる。さ
らに個体の死にも導く。
50
放射線の生体に与える影響2
直接作用と間接作用
1 直接作用
放射線が重要分子(DNAなど)に命中して、これらの分子を直接電離
(励起)するために障害が生じる。
2 間接作用
放射線が水分子に作用して、反応性の高いラジカル(遊離基;H*、
OH*など)や分子(H2O2)が形成され、これらが重要分子と反応して
障害が生じる。
51
放射線の生体に与える影響3
放射線障害の感受性
細胞の増殖能力が大きいほど感受性が高く、分化の進んだ細胞
ほど感受性が低い。
胎児、小児:高感受性
成体
高感受性:生殖腺、骨髄、胸腺リンパ組織、ひ臓
中程度の感受性:皮膚、腸上皮、眼
低感受性:筋肉、結合組織、中枢神経、脂肪組織
52
放射線の生体に与える影響4
放射線被爆による障害
急性障害
低照射量レベル;細胞再生系の減少
血球数の変化(0.20 Sv以上)
骨髄死
腸障害(腸死 10 Sv以上)
高照射量レベル;
中枢神経障害による死(100 Sv)
慢性放射線障害、晩発性障害
悪性新生物(癌、白血病)誘導、免疫力低下
放射線白内障、 遺伝性異常の誘発、寿命の短縮等
53
JCO臨界事故(1999年9月30日)
(茨城県東海村再
転換工場)
10
東海村舟石川
3人の職員が、注濃
縮(18.8%)の硝酸
ウラニル約16kgを
バケツで沈殿槽に
入れたところ、臨界
事故発生。
1
0.1
2人死亡
1999.10.1 3:23
1999.10.1 0:29
1999.9.30 21:35
1999.9.30 18:41
1999.9.30 15:47
0.01
1999.9.30 12:53
ガンマ線空間線量率(μSv/h)
JCO
被爆量 17Sv
10 Sv
8Sv