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核戦略とミサイル防衛
Nuclear Strategy and
Missile Defense
安全保障論
(第4回)
担当:神保 謙
国際ワークショップ
「21世紀の核兵器とアジア」
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国際ワークショップについて
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2006年5月1~3日 Washington DC
米East-West Center主催(13カ国の専門家が参加)
2007年春に出版予定
現代のアジアにおける核問題
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核政策・保有をめぐる問題
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既存保有国: 米国・ロシア・中国
新規保有国: インド・パキスタン
保有・開発中: 北朝鮮・イラン
核拡散をめぐる問題
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技術拡散・闇マーケット
不正規使用・核テロリズム
国際ワークショップ
「21世紀の核兵器とアジア」
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核政策・核ドクトリン
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現代の核抑止の意義
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「安全保障圏」(Security Complex)と核抑止
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
戦略抑止・最小限抑止・実存抑止の類型
拡大抑止の信頼性
懲罰的抑止・拒否的抑止のバランス
米ロ/米中/インド・パキスタン/北朝鮮/イラン
核不拡散・拡散対抗
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不拡散
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国際レジーム・監視体制(NPT/IAEA)の有効性
拡散対抗


輸出管理・制裁規定
拡散安全保障イニシアティブ(PSI)
第4回授業の狙い

第2次大戦後の安全保障論の中核にあっ
た核戦略の歴史と理論を学ぶ

冷戦終結後・9.11後の核戦略の変化に
ついて理解を深める

新しい抑止体系の台頭とミサイル防衛の
位置づけを考える
「核革命」(Nuclear Revolution)

「戦争は他の手段を持ってする政治の延長」
―クラウゼビッツ
⇒第2次世界大戦までの戦略パラダイム

核兵器の登場と「火力」概念の革命的変化
– 広島型
: TNT火薬の1万5000倍
– 現代の核兵器 :広島型の100倍以上
– 水素爆弾
:60メガトン(第2次大戦で使用され
た全火薬量の20倍に匹敵)
⇒核戦争では国家を事実上消滅させることが可能
核兵器と安全保障パラダイム変化
核抑止理論の台頭
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–

相互抑止の究極の形態(参考:第3回資料
戦えない戦争?⇒ 「冷戦」
冷戦は「長い平和」(Long Peace)?
核兵器を持つもの(Haves)と持たざる者の(Have Nots)
との非対称関係
–
–

“More May be Better” ? (Kenneth Waltz)
5大国による核保有の限定化(NPT体制⇒次回講義参
照
限定戦争概念の復活
–
–
核エスカレーションを招く(冷戦)/招かない(限定戦争)
アジアにおける「熱戦」(朝鮮戦争・ベトナム戦争)
核兵器の役割(冷戦期)の3類型

懲罰的抑止のための核兵器
– 攻撃能力(とりわけ第2撃能力)を確保し、核戦争を
抑止する

拒否力・損害限定力のための核兵器
– 戦場での第1撃及び相手の核兵器を攻撃し、自国
を防衛することにより被害を最小限にする

限定的・段階的使用のための核兵器
– 限定戦争において使用し、核戦争のエスカレーショ
ンを管理する(escalation control)
核の3本柱
Nuclear Triad
大陸間弾道弾(ICBM)
戦略爆撃機 (Bomber)
潜水艦発射ミサイル(SLBM)
米ソの核弾頭数の比較(1945-2002)
Source: Source: National Defense University
2003年次の核弾頭数
Source: SIPRI 2003
冷戦期の米核戦略の変遷

大量報復戦略(John F. Dulles)

柔軟反応戦略 (Robert McNamara)

相互確証破壊戦略 (Robert McNamara)
核の限定使用に関する諸理論

相殺戦略 (Harold Brown)
Cf. 選択的反応戦略

大量報復戦略 (Massive Retaliation)
– ソ連大都市に対する即時かつ大量報復能力を持つこと
によって、あらゆる規模の侵略を抑止しようとする戦略
– 1954年にJ・F・ダレス国務長官が提唱
⇒ 60年代初めまでに「核の3本柱」の成立

柔軟反応戦略 (Flexible Response)
– 大量報復戦略はエスカレーション・コントロールが難し
いという致命的な欠点を改善
– 小規模な武力衝突・局地戦争から全面核戦争に至る
全ての段階に対応できる能力を保持
– 1961年にR・マクナマラ国防長官が提唱
対価値(Counter-Value)と対兵器(Counter-Force)

対価値(Counter-Value)
– 大都市・市民・財産などを標的に置く戦略照準ドクトリ
ン
– 大量報復戦略など、全面的・大規模な核攻撃

対兵器(Counter-Force)
– 軍事目標(核ミサイルサイロ、指揮・管制施設、爆撃
機基地、潜水艦基地など)に置く戦略照準ドクトリン
– 柔軟反応戦略など、軍事目標に応じた規模の限定的
な核攻撃。高い命中精度(CEP)、運用能力を要する。
半数必中界(circular error probability)

CEP
– 目標を中心とする半径の円内に、
投下した爆弾の半数の着弾が期待
できる命中精度を表す数字

主要なICBMとCEP
– Peace Keeper
• 射程:11,000km
• CEP: 90m
– Minuteman II
• 射程:12,500km
• CEP: 200m

相互確証破壊戦略
(Mutual Assured Destruction: MAD)
– 相手から第1撃を受けても、第2撃により相手に
耐え難い損害を与えることを確実に担保する戦
略
– ソ連の人口の1/3から1/4・産業施設の2/3を確実
に破壊できる

相殺戦略(Countervailing)
– 相手がいかなる性質の核攻撃をしても、それぞ
れの核攻撃に対応した報復能力を保持すること
により、相手の攻撃を抑止する戦略。
– カーター政権(ブラウン国防長官)が採用。基本
的には柔軟反応戦略の精緻化
相互確証破壊(MAD)とABM制限条約

ソ連は1968年より弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)の配備
を開始
– ABMによる防御体制の強化は、先制攻撃への誘因を生
む?⇒相互抑止の不安定化!
– 米ソの①戦略核兵器の量をほぼ「同等」(parity)にし、②A
BM配備を制限して、互いを脆弱にすれば・・・
⇒究極の相互抑止(恐怖の均衡:Balance of Terror)

これを制度として担保したのが「ABM制限条約」(1972年5月)
– 首都とICBM基地の計2ヵ所(のちに首都1ヶ所に限定)・100基のみ
配備可能
冷戦後の核戦略

冷戦構造が崩壊したにもかかわらず、なぜ米国
(ロシア・イギリス・フランス・中国)は核兵器を保
有しているのか?

北朝鮮・イランなどの国家に対して、従来の核抑
止は成立するのか?

テロリストのような非対称的アクターに核抑止は
意味があるのか?
現代の米核戦略

第1次核態勢見直し(1994年9月)
– 伝統的な核抑止の考え方を維持しつつ、より少ない
核兵器によるより安全な核戦略の構築を目指す

第2次核態勢見直し(2002年1月)
– 脅威ベース(Threat Based Approach)から能力ベース
(Capability Based Approach)へ
– 新しい3本柱(New Nuclear Triad)
• 攻撃システム(核と非核の両方)
• 防衛システム(能動的、受動的の両方)
• 出現しつつある脅威に対応するための防衛インフラストラク
チャー
ブッシュ大統領演説(2001年5月)
We need new concepts of deterrence that rely on both offensive and
defensive forces. Deterrence can no longer be based solely on the
threat of nuclear retaliation. Defenses can strengthen deterrence by
reducing the incentive for proliferation.
We need a new framework that allows us to build missile defenses to
counter the different threats of today's world. To do so, we must
move beyond the constraints of the 30 year old ABM Treaty. This
treaty does not recognize the present, or point us to the future. It
enshrines the past. No treaty that prevents us from addressing
today's threats, that prohibits us from pursuing promising
technology to defend ourselves, our friends and our allies is in our
interests or in the interests of world peace.
ミサイル防衛構想の歴史
SDI
(Strategic Defense Initiative:1984-1989)
 GPALS

(Global Protection Against Limited Strikes:1989-1993)
TMD/NMD
(Theater/National Missile Defense: 1993-2001)
 MD
(Missile Defense:2001-Current)

日本のミサイル防衛計画

システムの取得
– イージス艦の改修とSM-3ミサイルの取得、2)地対空
誘導弾ペトリオット・システムの改修とPAC-3ミサイル
の取得、3)自動警戒管制組織(BADGEシステム)へ
のBMD対処機能付加のためのシステム設計などに
着手(平成16/17年度)

日米共同技術研究
– 共同技術研究の対象となっているシステムは、①の
海上配備型システムを発展させ、より高い能力(長射
程ミサイルの迎撃・迎撃率の向上)を目指したシステ
ム(開発→配備については別途判断)。
非対称的アクターは抑止できるか?
1) 十分な報復力
(能力)
2) 報復意志の明示 (意思)
3) 相手側の理性
(相互理解)
ケース1: 北朝鮮
1)非合理性的な政治決断の可能性
2)暴発シナリオの可能性
ケース2: テロリスト
1)領土を持たず高い匿名性
2)殉教的な攻撃手段
懲罰的抑止(新しい核戦略)+
拒否的抑止(ミサイル防止+α)

ミサイル防衛に期待される効果
–
–
–
–

損害限定能力の強化
その結果としての拒否的抑止の強化
米軍前方展開兵力の防護
ミサイル防衛開発・配備における交渉力強化
ミサイル防衛の課題
– 技術的課題(当たるのか?)
– 費用対効果(ペイするのか?)
– 安全保障のジレンマを生む可能性
高
ソ連(冷戦期)
アル・カイダ
+ Nuclear
Deterrence
脅
威
の
マ
グ
ニ
チ
ュ
ー
ド
+Missile Defense
+ Preemption
北朝鮮?
中国?
イラク
Conventional Deterrence
Diplomacy
Passive Defense
Damage Limitation
Law Enforcement
低
対称
脅威の対称性
非対称