Transcript Document
電磁気学Ⅱ
Electromagnetics Ⅱ
6/9講義分
電磁場の波動方程式
山田 博仁
自由空間でのMaxwell方程式
Maxwell方程式
B( x, t )
t
D( x, t )
rot H ( x, t ) ie ( x, t )
t
rot E( x, t )
div D( x, t ) e ( x, t )
div B( x, t ) 0
ファラデーの電磁誘導則
アンペール・マクスウェルの法則
電場に関するガウスの法則
変位電流
磁場に関するガウスの法則
自由空間でのMaxwell方程式 (自由空間では、真電荷 ρe および伝導電流 ie がゼロ)
B( x, t )
t
D( x, t )
rot H ( x, t )
t
rot E( x, t )
等方性、かつ線形、かつ非分散性の媒質中
div D( x, t ) 0
真空中
div B( x, t ) 0
D( x, t ) E( x, t )
B( x, t ) H ( x, t )
D( x, t ) 0 E( x, t )
B( x, t ) 0 H ( x, t )
波動方程式の導出
第1式
E( x, t )
B( x, t )
t
ここで媒質は、等方性かつ線形かつ非分散性と仮定している
D( x, t ) E( x, t )
B( x, t ) H ( x, t )
両辺の rotation をとる
2
2
D
(
x
,
t
)
E( x, t )
E( x, t ) B( x, t ) H ( x, t )
t
t
t 2
t 2
ベクトル恒等式
( E) ( E) E
H ( x, t )
D( x, t )
t
第2式
( E( x, t )) E( x, t )
0
従って、
D( x, t ) E( x, t ) 0
第3式
2 E( x, t )
E( x, t )
0
2
t
波動方程式
練習のため、第2式の rotation をとり、磁場に対する式を求めてみよう
2 B( x, t )
B( x, t )
0
t 2
波動方程式導出においての変位電流の役割
変位電流は、MaxwellがAmpereの式に理論的考察を行って付加したものであるが、
仮に、この変位電流の項が無かったとしたら、どんな方程式が導かれるだろうか?
変位電流が無い場合の、自由空間でのMaxwell方程式は、以下のようになる。
rot E( x, t )
B( x, t )
t
第1式の rotation をとると、
E( x, t )
rot H ( x, t ) 0
B( x, t ) H ( x, t )
t
t
0
div D( x, t ) 0
div B( x, t ) 0
第2式 H ( x, t ) 0
( E( x, t )) E( x, t )
0
D( x, t ) E( x, t ) 0
従って、
E( x, t ) 0
となり、
静電場の場合のラプラスの方程式となってしまう。
波動方程式の意味
2
2 E ( x, t ) 0
t
2 E( x, t )
E( x, t )
0
2
t
2 2 2
2 E ( x, t )
0
2 2 2 E ( x, t )
2
x
y
z
t
ここで簡単のため、E(x, t)は x と y には依存せず、z と t のみの関数であると仮定
つまり、 E(x, t) → E(z, t)
2 E( z, t )
2 E( z, t )
0
z 2
t 2
1
v
今ここで、
と置くと、
2 E( z, t ) 1 2 E( z, t )
2
0
2
2
z
v
t
後で分かるように、v は電磁波が物質中を伝わる速度、真空中の場合には、v は
光速度 c で与えられ、
c
1
0 0
2.998108 m/s
波動方程式の解
波動方程式
(教科書 p.200 参照)
E( z, t ) 1 E( z, t )
2
0 の解は、 E(z, t) X1(z vt) X2 (z vt) で与えられる。
2
2
z
v
t
2
2
x
+ z 方向に速度 v で進む波 (進行波)
- z 方向に速度 v で進む波 (後退波)
z
y
より一般的には、波動方程式
1 2 E( x, t )
E( x, t ) 2
0 の解は、
2
v
t
E( x, t) X1(k x t) X2 (k x t) で与えられる。
+ k 方向に進む波
- k 方向に進む波
kは波の伝搬方向を示す波数ベクトル
は波の角周波数
参) 伝送線路と電信方程式
送電端
受電端
E
ZL
x
x=0
R: 線路単位長当りの抵抗 (W/m)
L: 線路単位長当りのインダクタンス (H/m)
C: 線路単位長当りの容量 (F/m)
G: 線路単位長当りのコンダクタンス (S/m)
上記の伝送線路に対して、以下の線路方程式が得られる
2v
v
2v
RGv ( RC GL) LC 2
2
x
t
t
2i
i
2i
RGi ( RC GL) LC 2
2
x
t
t
無損失線路(R = G = 0)の場合、
電信方程式あるいは伝送方程式
2v
2v
LC 2
2
x
t
2i
2i
LC 2
x 2
t
線路上での電圧波と電流波の
伝搬速度 v は、
v 1
LC
であることが分かる
参) 伝送線路上の電圧波の伝搬
x
E
入射波
Vxe j t V0e xe j ( t x) V0e xe j ( t x)
反射波
ZL
線路上の位置 x での電圧
-x方向に位相速度ω/βで進む電圧波。 α > 0なら、伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰
+x方向に位相速度ω/βで進む電圧波。 α > 0なら、伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰
ej(ωt±βx) = cos(ωt±βx)+j sin(ωt±βx)は、∓x方向に進む角周波数ω, 位相定数β の正弦波
ここで、 ( v p )
x
vp: 位相速度
V0e x は波の振幅を表し、α > 0 (α < 0)なら、xが増大する方向に振幅が増大(減少)する
因みに、波の包絡線の
形状が伝わる速度を群
速度: vgという
x
vg
d
d
進行する正弦波
+x 方向に伝搬する正弦波
2
1
x t
2
sin(kx t ) sin x 2 f t sin x 2 t sin 2
T
T
波数 角周波数
位相角
x1
従って、波数と角周波数の比は、
波の伝搬速度 v
0
t=T
x=λ
t=0
k
ある時刻(t = t1)について見てみると、
-x
x=0
t1
ある場所(x = x1)について見てみると、
+x -t
0
+t
平面電磁波
波面が平面からなる波が、波面に垂直方向に伝搬していく
k x t
波面
(等位相面)
z
x3
x2
x1
k
0
x
k・x – t を波の位相と呼ぶ。
これがある一定値 を保持し
たまま(等位相)、時間発展して
いく様子は、等位相面(波面)
が平面からなる波が波面に垂
直方向に伝搬する様子を表す
k x3 t3
k x2 t2
k x1 t1
y
k: 波数ベクトル(波の進行方向を向いている)
平面電磁波
今、自由空間を伝搬する電磁波(進行波)の中で、特別な場合として正弦波で表さ
れる電磁波を取り上げる。 角周波数 で振動しながら、+ z方向に伝搬する電磁波
Ex Ex0 sin(kz t )
Ey Ey0 sin(kz t)
H x H x0 sin(kz t )
H y H y0 sin(kz t )
Ez Ez 0 sin(kz t )
H z H z 0 sin(kz t )
kは波数で、
x
k
2
v
E
Ex0
z
Ey0
Ez0
y
平面電磁波
x, y 方向には一様
+ z方向に伝搬する電磁波
Ex Ex0 sin(kz t )
Ey Ey0 sin(kz t)
H x H x0 sin(kz t )
H y H y0 sin(kz t )
Ez Ez 0 sin(kz t )
H z H z 0 sin(kz t )
rot E( x, t )
電場の波と磁場の波
の間には位相差φが
あると仮定している
B( x, t )
に代入、
t
B
Ez Ey
E E
E E
B
B
ex x z e y y x ez x ex y e y z ez
z
x
t
t
t
z
y
x y
0
Ey Bx
z
t
B
Ex
y
z
t
Bz
0
t
0
0
0
φはゼロでなければならない
kEy0 cos(kz t) Hx0 cos(kz t )
kEy0 Hx0
kEx0 cos(kz t) H y0 cos(kz t )
kEx0 H y0
H z 0 cos(kz t ) 0
H z 0 0
平面電磁波
同様に、 rot H ( x, t ) D( x, t )
t
に代入、
D
H z H y
H H
H H
D
D
ex x z e y y x ez x ex y e y z ez
z
x
y
t
t
t
z
y
x
0
0
H y Dx
z
t
H x Dy
z
t
Dz
0
t
0
0
φ=0
kHy0 cos(kz t) Ex0 cos(kz t )
kHy0 Ex0
kHx0 cos(kz t) Ey0 cos(kz t )
kHx0 Ey0
Ez 0 cos(kz t ) 0
以上の関係より、
E
Ex
y
Hy
Hx
Ez 0 0
ここで、
Ez Hz 0 となる
k
v
の関係を用いた
平面電磁波
Ey
Ex
Hy
Hx
Ez Hz 0
E と H (ベクトル)は、波の進行方向に垂直な平面
内に存在し、互いに直交する。また、 E と H の大
きさの比は一定
x
Ex E
媒質中での電場と磁場の大きさの比を、媒質の
インピーダンスという
E
Z
H
真空中のインピーダンス Z0は、
0
1.2566371106
Z0
377 [W]
12
0
8.85418510
z
Ey Hy
H
y
平面電磁波
インピーダンス Z の媒質中を伝搬する電磁波に関して、E と H との間
には以下の関係が成り立つ
x
k
E Z H ,
k
1
k
H E
Z
k
k
E
z
y
H
電場の波と磁場の波は同相(同じ時刻に共に節や腹となる)
電磁気学Ⅱ
Electromagnetics Ⅱ
6/16講義分
波動方程式から導かれる電磁波の性質
山田 博仁
自由空間でのMaxwell方程式
自由空間でのMaxwell方程式 (自由空間では、真電荷および伝導電流がゼロ)
B( x, t )
t
D( x, t )
rot H ( x, t )
t
rot E( x, t )
等方性、かつ線形、かつ非分散性の媒質中
div D( x, t ) 0
真空中
div B( x, t ) 0
D( x, t ) E( x, t )
B( x, t ) H ( x, t )
D( x, t ) 0 E( x, t )
B( x, t ) 0 H ( x, t )
11 12 13 11 12 13
ε, μ は、異方性媒質ならテンソル 21 22 23 , 21 22 23 になる
31 32 33 31 32 33
非線形媒質なら電場や磁場の強さの関数( ε(E), μ(H) )になる (非線形光学で扱う)
分散性媒質なら電磁波の周波数の関数( ε(ω), μ(ω) )になる
等方性かつ線形かつ非分散性の媒質中として上の方程式を解くと、以下の波動方程式
2 E( x, t )
E( x, t )
0
2
t
2 B( x, t )
B( x, t )
0
2
t
が得られる
波動方程式とその解
波動方程式
2 2 2
2 E ( x, t )
0
2 2 2 E ( x, t )
2
t
x y z
2 E( x, t )
E( x, t )
0
t 2
ここで、 v
1
と置くと、
1 2 E( x, t )
E( x, t ) 2
0
2
v
t
1 2
2 2 E ( x, t ) 0
v t
v
1 2
□ 2 2
v t
□E( x, t ) 0
v は電磁波が物質中を伝わる速度
1
真空中の場合に v は通常 c で表記され、
c
ダランベルシアン
1
0 0
2.998108 m/s
(真空中の光速度)
波動方程式の解は、 E( x, t) X1(k x t) X2 (k x t) で与えられる。
+ k 方向に進む波
X1, X2は任意のベクトル関数
- k 方向に進む波
kは波の伝搬方向を示す波数ベクトル
は波の角周波数
平面電磁波
電場が e(1) 方向に偏り(直線偏波)、正弦関数的に振動する平面電磁波を考える
E( x, t) e(1) E0 sin(k x t)
2
1
E( x, t )
波動方程式 E( x, t ) 2
0 に上式を代入すると、
2
v
t
2 2 2 2
(kx k y kz ) 2 E ( x, t ) 0
v
0
上式が、任意の場所 x、任意の時刻 t で成立するためには、
つまり、 k
2
2
v2
k k kx2 k y2 kz2
角周波数 を、正の値と定義すると、 v k
これを分散 (dispersion) 関係という。
2 f
f は周波数(振動数)
k
2
と置けば、
v
f
T
T は周期
1
f
平面電磁波
電場が e(1) 方向に偏り、正弦関数的に振動する平面電磁波
E( x, t) e(1) E0 sin(k x t) を、
電場に関するガウスの法則 div E( x, t ) 0 に代入する
div E ( x, t ) ex(1) e(y1) ez(1) E0 sin(kx x k y y kz z t )
y
z
x
(kxex(1) k y e(y1) kz ez(1) ) E0 cos(kx x k y y kz z t )
(k e (1) ) E0 cos(kx x k y y kz z t ) 0
上式が常に成り立つためには、 k e(1) 0 でなければならない
即ち、電場の偏りの方向 e(1) は、その波の進行方向を表すベクトル k に直交する
つまり、電場の波は横波である
e(1)
E( x, t) e(1) E0 sin(k x t)
k
平面電磁波
磁場に対しても e(2) 方向に偏り、正弦関数的に振動する平面電磁波
B( x, t) e(2) B0 sin(k x t) を考え、
磁場に関するガウスの法則 div B( x, t ) 0 に代入する
div B( x, t ) ex( 2) e(y2) ez( 2) B0 sin(kx x k y y kz z t )
y
z
x
(kxex( 2) k y e(y2) k z ez( 2) ) B0 cos(kx x k y y k z z t )
(k e ( 2) ) B0 cos(kx x k y y kz z t ) 0
上式が常に成り立つためには、 k e ( 2) 0 でなければならない
即ち、磁場の偏りの方向 e(2) は、その波の進行方向を表すベクトル k に直交する
つまり、磁場の波も横波である
B( x, t) e(2) B0 sin(k x t)
従って、
k
電磁波は横波 !!
e(2)
平面電磁波の性質
媒質中での電場と磁場の大きさの比を、媒質の電磁インピーダンスという
E
Z
H
6
1
.
2566371
10
0
真空中では、 Z0
377 [W]
12
0
8.85418510
インピーダンス Z の媒質中を伝搬する平面電磁波に関して、E と H との間には
以下の関係が成り立つ
k
1
k
E Z H ,
k
H E
Z
k
つまり、電場および磁場の偏りの方向(偏波方向)は、波の進行方向に対して垂
直。(電場および磁場ベクトル E, B は、波の進行方向に対して垂直面内に存在
する。) また、電場および磁場の偏波方向( E, B の向き)は互いに直交する。
x
k
E
z
y
H
電磁波のエネルギー
1
2
1
2
媒質中の電磁場のエネルギー密度 u は、 u E 2 H 2 で与えられるが、
電磁波の電場と磁場の大きさの間には
E
Z の関係がある
H
1 2 1
E H 2 つまり、電場のエネルギーと磁場のエネルギーは等しい
2
2
2
2
従って、電磁波のエネルギー密度は、 u E H で表せる。
従って、
電場も磁場も正弦波関数的に振動している場合、
E E0 sinkz t
H H0 sinkz t
また、E = v B, Z = μv (Z0 = μ0c )
の関係も成り立つことが分かる
u は時間的にも空間的にも変動するが、1周期 (T=2/)について平均すれば、
1
1 T 2
1
u E sin (kz t ) dt E02 H02
2
T 0
2
2
0
平面電磁波の場合、E と H は電磁波の進行方向 k に垂直な平面内にあるので、
Poyntingベクトル S は、 S E H vu
k
と表せる。従って、
k
1
1
S v u v E02 v H02
2
2
ベクトル解析の復習
重要なベクトル恒等式
ラプラシアン
2 2 2
2 2 2
x y z
rot grad ( ) 0
div rot E ( E ) 0
div grad ( ) 2 (スカラー場)
( ) E E (ベクトル場)
div ( E H ) H rot E E rot H
rot rot E ( E) ( E) E
ガウスの定理
2 2 2 1 2
□ 2 2 2 2 2
x y z c t
1 2
2 2
c t
ストークスの定理
F ndS FdV
S
V
n
ダランベルシアン
F dr ( F ) ndS
C
S
F
dS
S
V
n
F
S
dS
C
dr