アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン(1)

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Transcript アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン(1)

財団法人日本医療機能評価機構主催
第4回 EBM研究フォーラム
「わが国における診療ガイドライン作成の現状」
-エビデンスに基づく合意作成-
アルツハイマー病
首都大学東京 健康福祉学部
繁田雅弘
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン
担 当(* 研究協力者)
• 統括:本間 昭(東京都老人総合研究所)
• 診断
– 田子久雄(福島県立医科大学)
– 中野正剛(福岡大学医学部)
– 児玉千稲(国立精神神経センター武蔵病院)*
– 浦上克哉(鳥取大学医学部)
– 谷口美也子(鳥取大学医学部)*
• 治療
– 繁田雅弘(首都大学東京健康福祉学部)
– 品川俊一郎(東京慈恵会医科大学)*
– 天野直二(信州大学医学部)
– 犬塚 仲(信州大学医学部)*
– 長田久雄(桜美林大学大学院国際学研究科)
• ケア・看護
– 加瀬裕子(桜美林大学経営政策学部)
– 太田喜久子(慶應義塾大学看護医療学部)
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン
• 診断ガイドライン
① 診察手順の実際
② 神経心理学的検査
③ 画像所見の解釈
④ 生物学的指標・鑑別診断
• 治療
⑤ 認知障害に対する薬物療法
⑥ 精神症状・行動症候に対する薬物療法
⑦ 非薬物療法
• ケア・看護
⑧ ケアマネージメント
⑨ 看護
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン(1)
① 診察手順の実際
- 痴呆(認知症)の診断にはDSM-III-RとICD-10が、
アルツハイマー病にはNINCDS-ADRDAが推奨され
重症度評価には、CDR, FAST, GDS, GBSが推奨さ
れる
② 神経心理学的検査
- MMSEなどのスクリーニング検査や神経心理検査
バッテリーは診断制度の向上に貢献するが、
他の言語性・視覚性検査は単独では解釈に注意が必要
③ 画像所見の解釈
- 形態画像は除外診断のために行うことが推奨される
- 機能画像は形態画像とともに行うべきであり、
その場合アルツハイマー病の診断精度の向上に有用
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン(2)
④ 生物学的指標・鑑別診断
- リン酸化タウ蛋白は感度・特異度ともに優れ、それ単独で最もよい
エビデンスが存する
- 簡便なスクリーニング検査として一定のエビデンスレベルに達する
マーカーはなかった
⑤ 認知障害に対する薬物療法
- コリンエステラーゼ阻害薬の使用が強く勧められる
⑥ 精神症状・行動症候に対する薬物療法
- 焦燥感・精神病症状に対しては非定型抗精神病薬の使用が推奨され、
少量からの開始が望ましい
- 上記で十分な効果が得られない場合、定型抗精神病薬の慎重投与も
選択肢となる
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン(3)
⑦ 非薬物療法
- 勧告の強さA:「記憶の訓練・リハビリテーション」と「Reality
Orientation Therapy」
- 勧告の強さB:「音楽療法・音楽の使用」
⑧ ケアマネージメント
- 患者の個別性に応じたマネージメントが介護者負担の軽減に有効
- 介護者のうつ状態の改善に有効
- 社会的ケア費用や医療費の削減に有効
⑨ 看護(行動障害への対応を中心として)
- 観察とアセスメントツールの活用が有効
- 環境調整、概日リズムの維持、日常生活動作の援助が有効
- スタッフの教育が有効
アルツハイマー病診断・治療・ケアガイドライン
評価委員会
• 委員長
笠原洋勇(東京慈恵会医科大学柏病院)
• 委員
粟田主一(東北大学医学部)
•
池田 学(愛媛大学医学部)
•
植木昭紀(兵庫医科大学)
•
北村 伸(日本医科大学第二病院)
•
中村 祐(奈良県立医科大学)
評価を老年精神医学会に委託したところ、上記委員会が
組織され、評価が行われた。
AGREE project * による全体評価
推奨でき
ない
条件付で
推奨する
強く推奨
する
①診断手順の実際
1
2
2
②画像所見の解釈
1
3
1
③神経心理学的検査
1
4
④生物学的指標・鑑別診断
5
⑤認知障害に対する薬物療法
2
3
⑥精神症状・行動症候に対する
薬物療法
4
1
⑦非薬物療法的アプローチ
3
2
1
⑧ケアマネージメント
3
1
⑨看護
4
1
* The AGREE Collaboration. Qual Saf Health Care 2003; 12: 18-23
評価のまとめ
• ①診断手順の実際、②画像所見の解釈、③神経心理学的
検査、④生物学的指標・鑑別診断、⑤認知障害に対する
薬物療法、⑥精神症状・行動症候に対する薬物療法、⑦
非薬物療法的アプローチについては、「条件付で推奨す
る」と「強く推奨する」を合わせると 4/5~5/5であ
り、ほぼ良好な結果と評価された
• ⑧ケアマネージメントと⑨看護は、不十分であると評価
された。この二つの領域については、エビデンスレベル
の高い実証的な結果を得にくく、他に比べてエビデンス
がきわめて少なかった。
問
題
点
• 非定型抗精神病薬の適応外使用について
• 非定型抗精神病薬に関するFDAのTalk Paper
(2005年4月11日)について
• ケアマネージメント・看護におけるエビデンス
の不足