Transcript 第3章

安全在庫配置最適化
東京海洋大学
久保 幹雄
1
意思決定レベルによる分類
原材料
長
期
調達物流
ストラテジック
生産
工場内物流 輸送
配送拠点 配送
需要
地点
ロジスティクス・ネットワーク最適化
資源配分最適化
中
期
短
期
タクティカル
オペレーショナル
安全在庫配置
在庫方策最適化
生産計画最適化
ロットサイズ最適化
スケジューリング最適化
配送計画最適化
配送計画
2
在庫の分類と安全在庫配置
輸送中在庫(ストラテジック)
作り置き在庫(タクティカル)
サイクル在庫,ロットサイズ在庫(タクティカル)
安全在庫

安全在庫配置(タクティカル)

在庫方策 (オペレーショナル)
3
在庫配置の基本原理
安全在庫量はまとめて配置するほど少なく
なる(統計的規模の経済の原則)
品目の価値はサプライ・チェインの下流
(顧客側)に近づくほど高くなる(在庫保管
費用の単価が上昇する.)
4
リード時間と最大在庫量
需要の平均μ=100,標準偏差σ=100の正
規分布(正確には負の部分を切り取った分
布:切断正規分布)
サービスレベル(品切れを起こさない確率)
95%->安全在庫係数 1.65
リード時間 (発注から品目の到着までの時
間) L
最大在庫量=  L+安全在庫係数  L
5
リード時間と平均,安全,最大在庫
量の関係
3000
2500
2000
平均需要
最大需要
安全在庫
1500
1000
500
0
0
5
10
リード時間
15
20
リード時間を変数とすることによる安全在庫量の削減
6
在庫費用の計算
前回の公式
在庫費用=在庫保管費用×在庫量
今回の公式
在庫費用=
在庫保管比率×品目の価値×在庫量
調達
付加価値
10円
10円
10円
10円
品目の価値
10円
20円
30円
40円 7
安全在庫配置モデルの目的
在庫はなるべくまとめて置きたい.(どこ
に?どれだけ?)
->リスク共同管理
在庫はなるべく上流に置きたい.でも,顧
客へのサービス条件を満たさなければい
けない?
->押し出し・引っ張りの境界
これらを同時に最適化!
8
生産時間と保証リード時間
保証リード時間:発注後,この時間内には
商品を届けることを保証している.
(アスクルなら1日,デルなら1週間)
安全在庫量
=2日分
2日
下流の地点への保証リード時間
=2日
2日
上流の地点の
1日 生産時間=3日
保証リード時間
在庫(生産)地点
=1日=入庫リード時間
9
入庫リード時間
入庫リード時間:
品目発注後に生産を開始できるまでの日数
3日
保証リード時間
入庫リード時間=max{3,10}=10日
10日
10日
10
補充リード時間
補充リード時間:品目発注後に生産が完了
するまでの日数
3日
保証リード時間
10日
入庫リード時間=max{3,10}=10日
10日
1日
生産時間=1日
補充リード時間=10+1=11日
11
正味補充時間と安全在庫1
正味補充時間=補充リード時間ー保証リード時間
=11ー0=11日
安全在庫 = 11日間の最大需要ー11日間の平均需要
3日
保証リード時間=0日
安全在庫=11日分
保証リード時間
10日
1日
10日
補充リード時間=10+1=11日
12
正味補充時間と安全在庫2
正味補充時間=補充リード時間ー保証リード時間
=11ー5=6日
安全在庫 = 6日間の最大需要ー6日間の平均需要
3日
保証リード時間=5日
6日
保証リード時間
10日
5日
1日
10日
13
保証リード時間を増やすと...
(保証リード時間が)11日までは在庫が減少!
安全在庫も11日までは減少!
安全在庫量
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
11
保証リード時間
14
直列多段階モデルの例
(保証リード時間がすべて0のケース)
平均需要量=100個/日
標準偏差=100 の正規分布
安全在庫係数=1
保証リード時間
=0
保証リード時間
=0
外部
供給
生産時間
3日
2日
1日
1日
商品1個あたりの在庫費用(商品の価値×在庫保管比率)
10円
20円
30円
40円
安全在庫費用
1732円
2828円
3000円
4000円 合計 11560円
15
Excelによるシミュレーション
16
最適解
保証リード時間=3
入庫リード時間=2
安全在庫量=3-(2+1)=0日分
生産時間
3日
保証リード時間
0日
安全在庫費用
1732円
2日
1日
1日
2日
3日
0日
0円
0円
8000円 合計 9732円
17
(16%減)
押し出し型と引っ張り型
押し出し型システム:需要予測に基づき,
見込みで生産する.
引っ張り型システム:実際の注文に基づき,
確定された需要を満たすために生産する.
->押し出しと引っ張りの境界(デカップリング
地点)
18
押し出し・引っ張りの境界
4日間の最大需要量
3日間の最大需要量
保証リード時間
=0日
保証リード時間 0 0 2 3 0
需要
部品工場
生産時間
工場
卸売業者
小売店
3 2 1 1 引っ張り
押し出し
在庫保管比率×価値 10 20 30 40
19
押し出し・引っ張りの境界の移動(1)
3
3
保証リード時間=1日
保証リード時間 0 0 2 0 1
需要
押し出し
6928
引っ張り
安全在庫費用 9732円 -> 6928円 に削減
20
押し出し・引っ張りの境界の移動(2)
5
保証リード時間=2日
保証リード時間 0 3 0 1 2
需要
押し出し
引っ張り
安全在庫費用 6928円->4472円 に削減
21
4472
押し出し・引っ張りの境界の移動(3)
3
保証リード時間=4日
保証リード時間 0 0 2 3 4
需要
押し出し
引っ張り
安全在庫費用 4472円->1732円 に削減
22
1732
顧客サービスと在庫費用のトレードオフ
総安全在庫費用
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
0
1
2
3
4
顧客の保証リード時間
23
リスク共同管理
小売店の在庫の合計
1.65×100×4=660
サービスレベル=95%
標準偏差=100の同じ需要分布
需要分布
需要分布
倉庫の在庫:1.65×200×1=330
4つの小売店の在庫
をまとめると,在庫は1/2になる!
需要分布
需要分布
24
リスク共同管理
一般にN個の小売店の在庫をまとめて管理すると...
安全在庫量の合計は
1
N
この効果をリスク共同管理とよぶ.
在庫管理の基本法則
在庫は集約するほど(1ヶ所で管理するほど)少なくなる!
25
ネットワーク型モデル
共同管理係数α
倉庫
需要地点1 N(100,100)
平均100
標準偏差100
正規分布
需要地点2
N(100,100)
最大需要量 平均需要量

(最大需要量1  平均需要量1 )  (最大需要量2  平均需要量2 )
α=2 独立分布, α=1 完全相関, α=3 負相関

 1/ 

26
1つの需要地点における安全在庫量と倉庫におけ
る共同管理した場合の安全在庫量
(共同管理係数α=1,2,3)
1600
安全在庫
共同管理係数=1
共同管理係数=2
共同管理係数=3
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
0
5
10
15
20
日
27
ネットワーク型モデルの例
6万円 ≦ 4日
≧ 0日
≧ 0日
6
1万円
3
1万円 ?日
?日
3
?日 3万円
≧ 0日
2
1万円
4
3
?日
5万円
付加価値=1万円
3
平均=100
標準偏差=10
?日
6万円 ≦ 1日
1
3
平均=100
標準偏差=10
28
ネットワーク型モデルの例
(保証リード時間=0;593万円)
0日
0日
6
6
3
3
3
3
0日
0日
3
3
0日
2
2
3日
3
0日
3
0日
0日
1 1日
2
3
29
ネットワーク型モデルの
Excelによるシミュレーション
30
ネットワーク型モデル(近似解;558万
円)
0日
6日
6
6
6
4日
4
3
3
1
9日
6日
9
6
4日
9
9日
3
11
9
1
1日
3
6日
6
4 2
3
1
1 1日
3
31
ネットワーク型モデル(最適解;515万
円)
0日
0日
6
6
3
2
2
3
3
3
3日
0日
3
0日
3日
3
6
3日
3
3
0日
0日
1 1日
2
3
32
遅延差別化
(トレーナーのサプライ・チェインの改
善)
調達->布染工程->トレーナー製造工程
各工程の作業時間は1日,付加価値1000円
在庫費用は価値の10%,サービスレベルは95%
完成した4種類のトレーナーの需要は,平均 100,
標準偏差 100 の独立な正規分布
調達リード時間は 0日,顧客には注文後 1日以
内に商品を届ける
33
トレーナーのサプライ・チェイン(現状)
2
6
3
7
4
8
5
9
1
在庫量=330
在庫費用=3.3万円
165×4
3.3万円×4
0
合計=16.5万円
34
トレーナーのサプライ・チェイン(改善
後)
3
工程の順序を入れ替えることに
よって異なる品目になる地点
を下流に移動!
1
4
2
5
6
在庫量=0
在庫費用=0
466
9.332万円
0
合計=9.332万円
35
遅延差別化のための他の方法
部品の共通化による方法

白黒とカラーによって異なる部品を用いていたものを
共通なものに置き換えるようにリエンジニアリング
モジュール化による方法

白黒印刷機能を備えたプリンタ本体とカラー印刷用の
オプションキットのモジュールを製造
標準化による方法

国ごとに異なる電圧の仕様をもつ電源をどんな電圧
にも変更可能な万能型の電源に変更
作業工程を後ろにずらすことによる方法
36
日々の在庫シミュレーション
37
日々の在庫シミュレーション(グラ
フ)
在庫レベル
25
20
15
10
5
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
38
日
WebSCM データ入力項目
品目データ
品目ID,品目名称,生産時間,付加価値,
保証リード時間,下限,上限,補充リード時間,
正味補充時間,平均,標準偏差,安全在庫率,
在庫保管比率,共同管理係数,累積需要,
価値,在庫量,在庫費用
品目対データ
子品目ID,親品目ID,必要量,移動時間
39
まとめ
安全在庫の配置モデル
押し出し・引っ張りの境界
リスク共同管理
複数拠点の在庫を1ヶ所に集約する.
遅延差別化
製品のバリエーションを増やすのを,なるべくサ
プライ・チェインの下流(需要側)でやる.
40